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『ソニックレーシング クロスワールド』インタビュー:1周目からの白熱したレース展開、クロスプレイの実現までの苦労、ワールドワイドのコラボなど、開発者の熱い想いが明らかに【TGS2025】

文:レトロ

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 セガより好評発売中のNintendo Switch2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Steam/Epic Games用ソフト『ソニックレーシング クロスワールド』。

 9月25日から28日に開催された“東京ゲームショウ2025(TGS2025)”では多くの試遊台が設置され、プレイを楽しむユーザーが多く見られました。

 そこで、ここでは本作の開発のキーマンである『ソニック』シリーズプロデューサー・飯塚 隆氏、『ソニックレーシング クロスワールド』プロデューサー瀧 隆一氏へのインタビューを実施。その思いを語っていただきました。

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▲『ソニック』シリーズプロデューサー・飯塚 隆氏(左)、『ソニックレーシング クロスワールド』プロデューサー瀧 隆一氏(右)。

『ソニックレーシング クロスワールド』飯塚シリーズプロデューサー&瀧プロデューサーインタビュー。本作ならではのシステム実装の意図やコラボの選定理由が明らかに

1周目のトップがレース展開を決める“トラベルリング”システム


――最新作『クロスワールド』は、レースの1周目が終わった段階で1位のプレイヤーが次のルートを選べるという仕様が、レースゲームとして非常に新しいと感じました。これはどういった経緯で導入されたのでしょうか?

飯塚
まず、『ソニック』のレースゲームの新作を作るにあたって、やはりほかのレースゲームが実現していないような新しい体験をユーザーさんに提供しなければいけないということで、開発チームでアイデア出しを行いました。

 そこで出てきた案がまさにお話しいただいた、2ラップ目にまったく違う世界に行くというシステム“トラベルリング”です。これを導入することによって、いつも同じような展開になることがなく、常に何が起こるかわかりません。コースを選べるのは1周目の1位の人なので、ほかのプレイヤーはどのコースに行くかすらもわからない状態でファーストラップを終えることになります。この常にワクワク、ドキドキする体験を提供できるアイデアとして、今回“トラベルリング”を導入しました。

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――ネットワーク対戦をするうえでも、1周目をトップで通過することがすごく重要になりますね。やはり誰にでも苦手なコースはあると思うので。

飯塚
そうですね。どうしても3ラップのレースだと、最後の瞬間だけ頑張れば逆転できるケースが起こりやすいですし、「最終ラップにすべてをかける」という状況になりがちです。ですが、今回このシステムを入れることによって、ファーストラップから常に上位を目指した方がいいという、普通のレースゲームにはない新しいシステムが生まれたと考えています。

プレイスキルによる得意不得意もありますが、今回は“ガジェットシステム”も非常に重要となります。例えば、エアトリックが早くなるようなガジェットをつけている場合、そのポイントが多いコースを選ぶと当然有利になりますよね。なので、自分の車種やカスタマイズした設定に対して最適なコースを選ぶという戦略的な要素が入ってきたことが、ゲームとしてとてもユニークなものになったのではないかと思います。

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――ただ、序盤のみが大事ということでもないですよね。

飯塚
はい。2周目、3周目には、より逆転しやすいセッティングにもなっています。当然、1周目で後ろの方にいても、十分逆転する要素があるところがおもしろいと思います。

私は“抜きつ抜かれつ”の場面が多く発生することが重要だと思っていて、そういう要素がたくさん詰まっているのが本作です。とくに3周目はファイナルラップじゃないですか。2周目の異世界で盛り上がった以上に、さらに盛り上がってほしい。だから1周目と同じコースでありながら、リングだったりアイテムだったり、新たなショートカットができていたりと、盛り上げるためにいろんな仕掛けをしています。刺激がどんどん強くなっていく、そういうのも本作の特徴ですね。

――初心者でも楽しめるような工夫はありますか?

飯塚
お決まりの3ラップレースだと、どうしても熟練者が強いという構図になってしまいますよね。それが今回のシステムによって、初心者でも十分勝てるチャンスがある。そういう仕組みができたと思います。

100万DLを記録したネットワークテストと、クロスプレイ実現の裏側


――8月29日からネットワークテストが実施されましたが、参加人数やユーザーさんの反響はいかがでしたか?

すごく反響は大きかったです。これは発表済みではありますが、約100万ダウンロードを記録しました。そして、4日間で1,000万回以上のオンラインレースが成立するぐらい世界中で遊んでいただけました。日本の深夜でもアメリカやヨーロッパが盛り上がっていたりして、24時間眠れない日々を過ごした感じです。

 すごく好評いただいたのはもちろんうれしかったのですが、我々にとって重要だったのは、このテストによってネットワークエラーの原因をつかめたことです。なんとかリリース前に修正することができたので、現在ではより快適な環境で遊んでいただけているんじゃないかと思います。

飯塚
初めてのクロスプレイによるワールドワイド同時開催のネットワークテストだったので、ご協力いただいた方には本当に感謝しています。おかげさまでネットワークのエラーが見つかって、それをリリースまでの1カ月ない期間で直すことができました。

原因を見つけるところからだったのでたいへんでした。我々がどんなに頑張っても人数には限りがありますが、100万人規模の方が一斉にプレイしてくれるという状況を事前に作れたことで、原因の特定まで早く至れたのかなと思います。

――今回、マルチプラットフォームでのクロスプレイを実現されたのは、どういった理由からでしょうか?

飯塚
まず、『ソニック』シリーズのタイトルは、ずっとマルチプラットフォーム対応を推進してきました。普通のアクションゲームでもPCからSwitchまですべてのプラットフォームで遊べる環境を用意してきましたが、やはりクロスプレイはワンランクハードルが高い。

 これまでもレースゲームは何本か制作してきましたが、クロスプレイの実現が難しいという課題がありました。ですが今回は、セガのアーケードゲームでレースゲームをずっと作ってきた、非常にネットワークの技術に長けた開発チームと一緒にタッグを組んでやるということで、このクロスプレイが実現したという経緯です。

世界中の方がプラットフォームの垣根なくオンラインで遊べるというワクワクするプラスの部分と、マッチングの数をしっかり担保しないと、どんなに素晴らしい仕組みを作ってもおもしろく感じられないという側面があります。レベル差が違う人と当たってしまったり。数を担保するためには、プラットフォームの垣根は取っ払った方が絶対に増えるわけじゃないですか。そういうメリットもあって、早期に決断しました。

――クロスプレイとなると、ハードごとの性能差という問題も出てくるかと思います。そのあたりはどのように考えられたのでしょうか?

そこが一番苦労した部分かもしれません。ハードスペックがかなり違うなかで、まったく同じ表現はできません。でも、同じ体験を与えなければいけませんし、かつ(対戦ゲームですから)平等な環境を用意する必要があります。そこは、もしかしたらアーケード開発のノウハウがすごく活きたのかなと思います。我々はオンラインゲームの制作を業界の中でもすごく早期からやっていた方だと思っていて、さまざまな情報の蓄積がありました。それに対して、ハードウェアのスペックごとに絶対に与えなければいけない“体感”というものを担保しつつ、スペックに合わせた最適化を個別にやっていきました。すごく地道ですごく時間がかかりましたが、今遊んでいただいたら、例えばXboxとPlayStationでプレイして「なんか違うな」と思うことはないレベルまで作り込めたのは、そのノウハウと、1つ1つに地道に向き合った結果だと思います。

飯塚
めちゃくちゃ時間をかけましたね。もう今までのレースゲームで一番開発期間もかかっています。

――クロスプレイのおかげで、自宅で家族と一緒に遊べました。同じプラットフォームを2台持っている家庭は、そう多くはないですよね。

それが嬉しいんですよ。友人と遊ぶ時も、「お前の持ってるハードと、俺の持ってるハードでも遊べるんだぞ」と言えることって、なんか“エモい”じゃないですか(笑)。

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ライバルとの差別化と“12人対戦”に込めた意図


――ライバルとなるレースゲームもあるかと思いますが、そのあたりとの差別化は意識されましたか?

飯塚
当然、我々がゲームを制作している間は、他社さんの動向はまったくわかりません。我々の中で「最高のレースゲームを作るには、こういう仕様が絶対いるだろう」というものを、他社の情報がない状態で作り上げてきました。自信を持ってお届けできたと感じています。

(他社作品の対戦人数について)おそらくいろいろな解釈があると思いますが、その広さで与えたい体験が明確にあるから、その人数なのだと個人的には思っています。我々は我々で、12台である理由が明確に存在しています。どういう風にユーザーさんを喜ばせたいかという明確なビジョンがあったので、ほかがどうというよりは、我々はそれをどのように実現できるかということばかり考えていました。

飯塚
とくに我々のゲームのようなトラックを走るゲームの場合は、やはり台数を制限しないとおもしろさが半減してしまいます。我々のなかでは、このゲームにおいては12台というのが最適な数だと思っています。

『クロスワールド』の名にふさわしい、セガの枠を超えたコラボレーション


――今回はキャラクターもかなり“クロス”しているイメージです。TGS期間中には新たに『ロックマン』とのコラボも発表されました。コラボキャラクターに力を入れている理由を教えてください。

飯塚
過去に『ソニック&セガ オールスターズ レーシング』という作品がありまして、ファンの方からは『チームソニックレーシング』を出した時にも「セガキャラクターは出ないの?」という声をたくさん聞きました。我々としても、最新作を作るのであればすべてのシリーズファンの方に喜んでもらえるものにしようということで、セガキャラクターを毎月無償で追加していく計画を立てました。

 それ以外に、今回の『クロスワールド』というテーマをもとに、『ソニック』以外の世界、アニメーションからゲームから、いろんなところからIPをお借りしてきたらもっと楽しくなるだろうという思いから、さまざまな企業の方々にお声がけして実現しました。

――DLCパックのラインナップを見ると、国内というよりは海外を意識されたような、バリエーション豊かな印象を受けます。

飯塚
 我々のお客様はやはりグローバルですので、コラボレーションするキャラクターにおいても、まずグローバルで認知があること。そして、そのキャラクターのレーストラックも一緒についてくるので、トラックになった時にいかにソニックにはできないおもしろいコースが作れるか、という世界観も選ぶ基準にしています。

――『マインクラフト』のコースは走っていてとても楽しかったです。

ありがとうございます。あれは作っていても楽しかったですね。『ソニック』の世界のコースを作っているなかで、『マインクラフト』のコースを入れて切り替わった瞬間に、「これこれ!」って声が出るわけですよ、作っている人間からも。可能性を制限しないでいろんなところに“クロス”していくことで、より大きいおもしろさとしてプレイヤーさんにフィードバックされる。それは目指していたものなので、やって良かったなと思います。

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――音楽にもすごくこだわりを感じます。『ロックマン』の発表トレーラーでは、音を聞いただけでわかりました。

飯塚
今回ご協力いただいたIPはすべて、グローバルで音を聞くだけでわかるものばかりです。『マインクラフト』もそうですし、『パックマン』もそう。本当に最初の1音を聞くだけで「ああ、これだ」となります。そういったところは、コラボレーションで使わせていただく際にもすごく重要視していて、原作ファンにも愛され、『ソニック』ファンにも楽しんでもらえるように作っています。

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――今後のコラボレーションの予定について、お話しできる範囲で教えていただけますか?

飯塚
シーズンパスの内容に関しては、発売日をもってすべて開示しています。毎月無償で配信されるセガフランチャイズのDLCについては、時期が来たらアナウンスしていこうと思っています。ただ、海外のパッケージ裏に掲載させていただいていますが、近々『ナイツ』を追加キャラクターとして追加する予定です。もちろん、キャラクターと専用マシンのセットです。

無償追加は、今発表しているのは12カ月間ですね。1カ月に1回、必ず何かしらのアップデートがあります。久しぶりにやろうと思ったら、「あれ? なんかめっちゃ増えてない?」ということが今後起こりえます。

飯塚
まずは1年ですが、今回ファンのみなさんからご好評いただけたら、我々の気持ちとしてはどんどん続けていきたいと思っています。その際はまた、シーズンパスのセカンドシーズンという形で、いろんなコラボレーションを作っていきたいなという気持ちはあります。

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――ちなみに、キャラクターごとの性能差はどの程度あるのでしょうか?

すごく影響が出るようには作っていません。なぜかというと、好きなキャラクターに好きな車を乗せたいじゃないですか。でも性能的に「いや、こっちを使う」という状況はイヤだったんです。パワータイプの車にパワータイプのキャラを乗せている人と、スピードタイプのキャラを乗せている人がぶつかったら、後者が負けてしまう、といった差はあります。基本的には、マシンやガジェットで個性を出して、そこに自分の好きなキャラを乗せるというスタイルで、推しキャラで遊んでいただければと思います。

――最後に、まだプレイされていない方と、すでに遊んでくれている方にそれぞれメッセージをお願いします。

まず、まだ遊んでくれていない方々へ。本作は、自分なりのプレイスタイルを突き詰めることができる仕組みがたくさん入っています。1人でも友人とでも、オンラインでもオフラインでも、それぞれのシチュエーションで楽しく遊べる要素もたくさん入っているので、まずは体験版を一度触って遊んでいただきたいなとすごく思います。

 そして、すでにプレイしてくださっている方々には、我々は少なくとも12カ月間はオンラインサービスを提供します。これは、ただオンラインをつなげるということではなく、改善点を見つければ改良もしていきますし、アップデートもしていきます。要は、本作はパワーアップしていくんです。できればプレイヤーさんと一緒にパワーアップさせていきたいなと思っているので、今後の本作にご期待いただければと思います。アーケードスタイルで、みなさんと一緒に作っていくものだと思っていますので。

――ユーザーからのフィードバックも歓迎ということですね。本日はありがとうございました。

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