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『サイレントヒルf』岡本プロデューサー×Al Yangディレクター×竜騎士07インタビュー。雛子さんや狐面の男のミーム化など、発売後の反響を受けた感想は?(ネタバレあり)

文:Ak

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 『SILENT HILL f(サイレントヒルf)』の開発者インタビュー記事をお届けします。

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 今回のインタビュー記事では、発売後の反響やミーム化に対しての反応をうかがっていきます。

 なお、ストーリーやバトルシステムなどに関しては別記事でインタビューしていくので、そちらも合わせてご覧ください。

※この記事には『サイレントヒルf』の重大なネタバレが含まれます。全エンドクリア後に読むことをおすすめします。

岡本 基コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)所属のプロデューサー。『サイレントヒル』シリーズ統括プロデューサーとして短編作品の『SILENT HILL: The Short Message』、リメイク版『サイレントヒル2』や『サイレントヒルf』などを手掛ける。

竜騎士07ゲームクリエイター、シナリオライター。同人サークル“07th Expansion”の代表として『ひぐらしのなく頃に』(2002年)や『うみねこのなく頃に』などの作品を手掛ける。『サイレントヒルf』で、ストーリー制作全般を担当。

Al Yang『サイレントヒルf』ゲームディレクター。本作の開発を担当するNeoBards Entertainmentに所属。

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雛子や狐面の男のミーム化は予想以上だった【サイレントヒルfインタビュー】


――発売前後のユーザーの反応はいかがでしたか? とくに雛子のパワフルさと狐面の男(寿幸)への反響が大きかった印象ですが、どの程度想定されていたのでしょう?

岡本
かなり予想以上というか、ミームになってしまったのは想定外でした。

 やはり竜騎士07先生のストーリーはキャラクターが立っているという特徴があるので、従来の『サイレントヒル』よりもキャラクターの人気は高くなるかもと予想はしていましたが、あんなミームになるとは思っていませんでした。我々としては感謝しています。

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▲アーリーアクセス開始後、SNSで特に話題となった雛子の台詞。ここで挙げているもの以外にも“男前”な言葉がいくつもあり、シリーズに触れたことのない方が本作を知るきっかけのひとつに。
▲また、雛子のほかに“狐面の男”も人気に。演じている泰江和明さんよりメッセージも公開されています。

――今回のシリーズは未プレイのユーザーも参入してきたのでしょうか?

岡本
リメイク版『サイレントヒル2』と比較した時に、増えている分が新しいユーザーだと思いますが、相当入ってきているという印象です。

 全世界でその傾向がありますが、とくに日本は非常に新しいユーザーが多いと思っています。

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――その理由はどこにあると分析していますか? やはりアクション性が増したぶん、アクションゲーム好きの方がたくさん入ってきた感じなのでしょうか?

岡本
もしくはシナリオに惹かれて、あるいはミームとして話題になったから遊んでみよう、という方がいらっしゃるのかなと。

竜騎士07
私のファンには女性の方が多い印象だったんですが、『サイレントヒル』というこれまでのブランドを考えると男性プレイヤーの方が多いだろうとは思っていたので、どういう評価になるかは、私も正直蓋を開けてみるまでわからなかったところがあります。蓋を開けてみたら、これだけたくさんの女性プレイヤーの方が色々な関心や感想を持ってもらえたので、嬉しい驚きでした。

 シリーズ1作目の『サイレントヒル』がPlayStationで発売した時代とは違います。あの時代はゲーム雑誌を読んで、あるいは友達がやるのを見て買うから、当たり前だけど男性ゲーマーが男性ゲーマーに伝播する形でした。が、今はSNSの発達によって色々な情報が出ていますし、きっかけとしてキャラクターのビジュアルを見て「これ誰? 何に出るの?」というところから興味を持ち、それで「せっかくだからこれはやってみるべきだろう」だと言っていた方もいました。知ったのがまずSNSから、という感じですね。

 それからゲームに挑戦してみるという、これまでには考えられなかったプレイヤーの流入の仕方をしているのが一つ興味深かったです。結論からすると……私自身もこの盛り上がりには驚いています。

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――確かに、昔はゲームをやった人のものだったのが、今回はゲーム自体は遊んでいないけれども『サイレントヒルf』が好きになったというように、ミーム文化と化したというか、推し文化になったという感じでしょうか。

岡本
そうですね。最近のゲームに関する話題の消費はかなり早くなってはいますが、発売してから何ヶ月も話題が残っているゲームって、やはり考察が盛り上がっていたり、キャラクターのファンアートがすごく描かれていたりするんですよね。そういった盛り上がりを見せるタイトルは、すごく息が長く話題になり続けるなという感触があります。

竜騎士07
そこもたぶん、『サイレントヒル』シリーズの中での一つの挑戦だったんじゃないかと思うんです。“サイコロジカルホラーというのは誰のサイコロジー”という話になったら、結局プレイヤーの心に迫る話じゃないですか。だから極力、主人公は多弁でない方が好まれる。プレイヤーが自分のことだと思ってプレイできるように。

 だからそうすると登場人物も当然、陰のあるキャラクターが多くなって、必然的に“魅力”という意味がちょっと変わってきます。が、それは友達になりたいという意味での魅力的ではなく、ダークな意味で魅力的というキャラクターが増えていくわけです。なので、どうしてもあまり積極的にキャラものとして盛り上がりにくい要素のあるブランドではあったと思うんです。

 そういう意味では今回の作品が、もしもこの方向が受け入れてもらえるのなら、『サイレントヒル』シリーズの見せ方の幅の一つとして、今後「こんな表現もあるんだな」といった感じで思っていただければと。これからずっとこうなるのではなくて、こういうやり方も『サイレントヒル』なんだよという、シリーズの間口の広さの一つの表現としてアリだったんじゃないかなと考えています。

『サイレントヒル』シリーズファンからも予想以上に認めてもらえた【サイレントヒルfインタビュー】


――本作の舞台が日本の昭和時代という設定でありながら、女性主人公のストーリーとしてだけではなく、グローバルにも広く支持された理由はどのようなところにあると思いますか?

Al Yang
日本の昭和という非常に具体的な舞台設定で、女性主人公として女性の視点から描かれている物語であるにも関わらず、このストーリーの描かれ方や扱うテーマなどは、“自分の意思を持つ”“自分の道を切り開く”というメッセージ性において、あらゆるユーザー層に届く話だったと思います。

 雛子が抱えているトラウマや向き合おうとしている決断などに、多くのプレイヤーが共感できたのが、広く支持を集めた要因だったと感じています。

――『サイレントヒル』シリーズファンからの反響はいかがでしたか? 発売前は外伝的な作品と思っていた人も多かったと思いますが……。

岡本
概ね受け入れていただいたのではないかと思います。もちろん中にはごく一部、どうしてもこれは『サイレントヒル』だとは受け入れられないという方もいらっしゃるのは見てますけど、ほとんどの方には『サイレントヒル』として受け止めていただいたかな、と思っています。

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――やはり『サイレントヒル』として認められないというシリーズファンは、『サイレントヒル2』をマスターピースとしているからなのでしょうか?

岡本
そうですね。やっぱり日本が舞台であったり、設定的にも『サイレントヒル』的な神、キリスト教的な神ではなくて、東洋思想的な神々というところもあって、雰囲気は違うので……。

 「面白かったけど『サイレントヒル』としては見られない」という方もごく一部いらっしゃるかという感じはします。もっと賛否両論になるかな、という気持ちもあったのですが、思っている以上に受け入れていただいたという印象です。

※ストーリー編なども後日公開予定です。お楽しみに!

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