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死にたいと願う少女の物語、でも「辛くても最後までやれば救いはある」。絶望とともに生きる意味も描く『ぎるぐる GiLGuL』Switch版発売記念インタビュー【高柳知葉×奈良輪和史】

文:電撃オンライン

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 Skeleton Crew Studioスケルトンクルースタジオ)がSteamで発売したドラマツルギーリアルタイムタクティカルアドベンチャー『ぎるぐる GiLGuL』。そのNintendo Switch版が10月23日に発売されます。

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 Switch版の発売を記念して、『ぎるぐる GiLGuL』の企画・シナリオ・ディレクターを担当した奈良輪和史さん(Production Exabilities)と、主人公・三津真央(みつ まお)役を演じた声優の高柳知葉さんにインタビュー。

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 とある少女から“クズ”と断言され、さまざまな理由で死にたがる女性たちの闇や救いを描く『ぎるぐる GiLGuL』はどのようにして生まれたのか。そして、そんな難しい役柄を高柳知葉さんはどのように演じたのか。作品の背景や思いを聞きました。
※この記事には『ぎるぐる GiLGuL』のネタバレが含まれます。

現代の闇、日本の今を描くストーリー【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――そもそも『ぎるぐる GiLGuL』はどのような経緯で開発をスタートしたのでしょうか。

奈良輪
少し前にゲームのイベントでオーストラリアに行った際、プロデューサーと『NEEDY GIRL OVERDOSE』の話題が出まして。本当にすごいゲームだなと。

 そんななかで、「もし奈良輪さんが、現代の闇みたいなところを対象にしたゲームを作るとしたらどうする?」と言われて、出てきたアイデアが『ぎるぐる GiLGuL』の原点でした。

 最初はまあ、世間話みたいなレベルでしたが、徐々に「実際に作ろうか」となっていき、現代の闇というか、“日本の今”というところを描くストーリーを考えていき、本格的に『ぎるぐる GiLGuL』の開発が始まっていったんです。

――本作は“死にたがってる人たちだらけ”というかなりシリアスなテーマがありますが、生死を扱うところはかなり早い段階からあったのでしょうか。

奈良輪
人間の感情が一番動くところ、人間の本質って、生と死の狭間とか、生きる・死ぬというところじゃないかなと。なので、“生きたい”と“死にたい”の中間の宙ぶらりんな世界に行った時に、人間は何を選ぶのだろうか? ギリギリの段階に置かれてどうなってしまうのだろうか? というところで間世(はざまよ)という設定が生まれ、ステージングをしていきました。

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「これはかなり覚悟して挑まなきゃいけない役」。高柳さんが感じた重さと本気【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――高柳さんは、『ぎるぐる GiLGuL』の主人公・三津真央(みつ まお)役のオファーが来たとき、そして開発コンセプトやストーリーを知ったときの第一印象はいかがでしたか?

高柳
最初にいただいた資料としては、作品概要、イラスト、キャラクターシートなどでした。真央の資料を見て、「これはポップ系ダークかと思いきや、しっかり重たいヘビーなダークだ」とわかり、「かなり覚悟して挑まなきゃいけない、大変な役をいただいたな」と思いましたねね。

 あわせて、台本の一部やあらすじ・プロットもいただいたんですが……「なんかちょっと毒っぽいな。ダーク系だな」と思うなかで、なんだか「奈良輪さんの作品っぽいな」と直感で感じたんですよね。

 奈良輪さんとは別の作品でもご一緒したことがあったのですが、最初にオファーをいただいた時点ではシナリオ担当者の名前は知らされてませんでした。でも、後日、本当に奈良輪さんの作品だったことがわかって、すごく不思議だなと感じました。

 今回はオーディションじゃなくてオファーで役をいただいたので、何かしらご縁が繋がったのかな、不思議なこともあるものだなあと。

奈良輪
逆に私の方は高柳さんをイメージしてキャスティングしました。音響監督、シナリオライターの両方をやらせていただいていたので、ある程度キャスティングを考えていたんですが、書いている途中から主人公の真央は、高柳さんの声のイメージができてきて。

 キャラクターを演じる声というより、高柳さんの地声の方にすごくイメージが湧いて、「真央ちゃんは高柳さんでいく」と現場で宣言しました。他のキャラは周囲と相談して決めていくし、他の人が決めてもいいけど、「だけど真央ちゃんは高柳さんだから」とアピールしていました。

――高柳さんの声を選んだ決め手は?

奈良輪
基本的に私は胸声が出る役者さんが好きで、特に下の音が強く出て、落ち着いた音が出る役者さんのお声が好きなんですが、今回で言うと、高柳さんの声の温度感がすごく真央ちゃんにピタッとくるなと思ったんですよね。

――実際に高柳さんの演技を聞いて、いかがでしたか?

奈良輪
「高柳さんが出してくれたものが真央ちゃんだから」という話は現場でもしていました。私のイメージの真央ちゃんと高柳さんのイメージの真央ちゃんをすり合わせるというより、高柳さんが出してくれたものが真央ちゃんだと感じたので、すごくよい形になったと思いますね。

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「毎回収録の後はヘロヘロになって帰ってた」。ボリュームも重さも大変だった収録秘話【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――三津真央について、演じる際に意識したポイントは?

高柳
単純にセリフ量が多い意味での大変さもあったんですけど、演技中に心に抱えているものが大きかったので、毎回収録が終わった後はヘロヘロになって帰ったという記憶があります。

 宗教や浮気で真央の家がボロボロになっていることは序盤で明かされますが、物語が進むとそのほかにもさまざまなことが真央を苦しめてきたことがわかります。彼女が育ってきた環境だったり、今の真央ちゃんという存在にたどり着くまでに彼女が抱えてきたものって、やっぱりすごく大きいんですよね。

 そこは自分自身も真央の感情を追体験しながらの収録になるので、すごくしんどかったです。

 収録の時に無意識に手をぎゅっと強く握り締めていて、手のひらに爪の跡が残っていたりしました。やはり真央は感情をバッと表に出す子ではないし、出せないような環境で育った子です。なので、すごくいろいろなものを抱えているけど、それを自分の中でぐるぐるさせて考えた上で言葉を紡ぐというタイプだと解釈しました。

 だから、内心の揺れ動きがものすごく大きかったとしても、それをわかりやすく表に出すことはないかなと。でも、それを表に全く出さないかといったらそうではなくて。抑えれば抑えるほど、ある種、身体的には体の中で抑え込むのが大変になり、一部は表に出てきちゃう部分があるんですよね。そういった意味で、つねに体にいっぱい力が入っていた収録だったなと思います。

 バッと発散するわけじゃないし、声のボリューム的にもものすごく抑えたものになったので、エンジニアさんは大変だっただろうなと思います。ノイズも乗りやすくなっちゃうでしょうし。でもそれだからこそ、細かくその瞬間の心の揺れ動きみたいなものまで音として捉えていただけたんじゃないかなと。

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奈良輪
いろいろなところで言っているんですけど、『ぎるぐる GiLGuL』のシナリオは文字を読まなくていいんですよ。高柳さんたちの芝居を聞いてくれたら、全部わかるので。

高柳
そう言っていただけるとすごく嬉しいです。

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――本作は非常にしんどい話が多いですが、真央の場合は現在の真央を演じながら過去の真央も演じたりするシーンもあったと思います。事件前と事件後で、キャラクターの感情がこんなにしんどい思いをしたのなら、そうなるだろうなと思わせる演技だったのが印象的です。

高柳
感情の揺れ動きを自然な形で表現できるよう、順序立てて収録していただいたり、回想は後で別に取りましょうという対応もしていただけたので、そういったところはすごくありがたかったです。

 大変だったのは……ルートが分岐するところですね。あるルートでやり切った後に、その感情をいったん忘れて、もう一回別ルートでその経験をナシにしてやり直すのは本当に難しくて。これは分岐がある作品はすべて大変なんですけど、特に『ぎるぐる GiLGuL』の真央の感情はすごく大きく動くので、各話のラストの扉の前の収録が大変でした。

奈良輪
あと、シメのセリフをめちゃくちゃこだわったので、そこでの演技には時間を取らせていただいたりしましたね。

高柳
確かに毎回、締まり度合いが調整されましたね。

奈良輪
「ワンクールアニメでいえば7話なんですよ、ここ」とか「ちょっとこれだと最終回すぎる」みたいな。

高柳
「そこまでまだ心を張り切ってないんです」みたいな、謎のディレクションでしたね。

 でも確かにそうだなと思いました。真央にとっては一つ一つの扉を超えることがすごく大きなものを乗り越えた感覚があったので、「ようやくここを乗り越えられた、この扉の先に行く」という達成感を感じてセリフを言ってしまったりしたんですけど、奈良輪さんの中では全体構造がはっきりあるので、「ここはまだ、そこまでクライマックスではない」というストップをかけていただくことがありましたね。

奈良輪
逆に泣きのシーンは「もう好きにやってください、もっともっとノリノリでいいよ」みたいな感じでした。

高柳
『ぎるぐる GiLGuL』は、真央が一人一人との出会いの中で、抑えていた感情みたいなものを徐々に取り戻していき、抑えなくていいという決断や、仲間と出会っていく物語でもあると思うんです。そうやっていろいろなものを積み重ねたあとで、不意に「初期の真央ちゃん」みたいなニュアンスが必要になった時に、なかなか戻れなくて大変でした。

 「心を取り戻してしまったから、心がなかったころには戻れない」と言いますか、「これだともう友達がいる状態だ」みたいな。

 役者としても、シナリオを演じていく中で経験を踏んでしまったから、経験がないところに戻るのはすごく難しいんだなというのを改めて実感しました。

奈良輪
『ぎるぐる GiLGuL』はまさに、真央ちゃんが成長していく物語なんですよ、そのストーリーの中で。だから高柳さんの“最初の真央ちゃん”と“最後の真央ちゃん”って、実は声の高さも違うんです。最後の真央ちゃんは菩薩ですから、もう本当に全てを許してくれる人になっています。

高柳
そんななか、序盤でも感情が出せるという意味で楽しかったのは、ビッケとのやり取りでしたね。ビッケとの時だけ、なんか強く出られる(笑)。

奈良輪
真央ちゃんは、ビッケにだけは最初から当たりが強いんですよね。ええとですが、真央ちゃんって最初は子供なんですよ。それが途中から思春期に入って感情を爆発させるようになり、最終的には20歳くらいの大人になっていき、ある意味で菩薩のように超越した存在へなっていく。

 その成長が本当にわかりやすいなと。最初は大人ぶっているけど実はめちゃくちゃ子供なんですよね。

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高柳
そんなこともあったからこそ、これだけ「自分は大人でいなきゃ」という感覚がものすごくある子でした。全てを理解しなきゃ、理解して大人になって、ちゃんと社会と関わらなきゃみたいな使命感を持っているような。

 私自身も結構小さい時から周りが大人ばかりな環境で働いていたので、「早く大人にならなきゃ」「大人になりたい」みたいな気持ちがありました。なので、そういった部分に関してはちょっと分かるなと思いました。「そういう子っていたよね、私もそうだったし」みたいな。

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「物語の合間にバトルがあることですごく軽い気持ちで遊べる」。高柳さんがゲームを遊んだ感想は?【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――『ぎるぐる GiLGuL』を遊んでみた感想はいかがでしたか?

高柳
このゲームは物語としてすごく重たい部分があるんですけれど、タクティカルパートに入った時にすごくポップになるのがメリハリになっている感覚があって。

 ボイス収録をしている段階では、バトル前後も重たい感情のままだったんですが、ゲームになると「こういう感じになるんだ」と思いました。ビッケが賑やかにギャーギャー言ってくれたりとか。

 タクティカルパートがあることで、重い物語の整理もできて、軽い気持ちで遊んでもらえるゲームになっているなと思いました。

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奈良輪
一息つけるみたいな。

高柳
そうですね! そういう感じがしましたね。

奈良輪
そこは私も意識していて、アドベンチャーパートオンリーにしちゃうとかなり重たいし、いっそボイスドラマで作った方が描きやすかった部分もあります。

 でも、ゲームとして見せる際には、インタラクティブな面白さはどうしても必要だなと。アドベンチャーゲームってどうしても静的なゲームになりがちなので、動的なタクティカルパートで緩急をつけたかったんですね。

 シナリオは緩急というか、剛速球か超スローなイーファスピッチという極端な二択しかないんですけど(笑)、ゲーム内としては静と動のメリハリをつけたいなと。

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――バトルでは誰をメインで使いましたか?

高柳
もちろん真央ちゃんが一番好きでメインで使っていたんですけど、楓さんがシンプルに好きというのがあります。キャラクターとして好きなんですよね。

奈良輪
結構キャラごとの特徴もあるんですよね。ちなみに私は恵美さんが大好きです。ピーキーですごく足が早いのに、紙装甲なんで、気がつくと死んでいるんですよ。でもアンビバレンツな感じはすごく可愛いなと思っていて、楽しんでいました。

 あとは姫奈ですね。本当にトリッキーな性能なので。

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――姫奈や恵美は、ほっとくとすぐにやられちゃうんですよね。でも、移動速度が速いキャラを使って宝箱を開けに行くとか、いろいろろ使い分けができるところも『ぎるぐる GiLGuL』の面白いところですね。

奈良輪
友里愛はめちゃくちゃ足が早いんです。逆に美玖さんは足が遅い。ちょっと年齢的に体力がないんですよね。そのぶん、遠距離攻撃や回復技とか、いろいろとテクニシャンですけど。

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「クズに見えても、多面的に見ると違う側面も見えてくる」。辛くても最後までやれば救いはある【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――『ぎるぐる GiLGuL』はかなりクセが強いゲームだと思いますが、どういうユーザーにおすすめしたいですか? また、もし序盤で遊ぶのをやめそうになったユーザーさんがいたら、どんな言葉をかけますか?

高柳
物語としてすごく重たい部分はあるんですけど、誰しもに重なる部分ってあるものだと思います。だからこそ、しんどい時は一旦休んでもらってもいいと思うんですけど、遊んでいく先で真央ちゃんの成長を見ることができるので、ぜひ最後まで遊んでほしいです。

 さきほど、「最初は子供で成長していく」という言葉がありましたが、子供の時ってすごく視野が狭いじゃないですか。それがいろいろな人と関わって成長することで視野が広がって、見える世界が変わっていくことを体現しているのが、真央ちゃんなんです。

 同じ事象であっても人やタイミングによって感じ方が異なるように、真央ちゃん以外のキャラクターも単純な一面的なキャラクターではありません。人は誰しも多面的な性格や人格を持っていて、その瞬間、その瞬間によって見え方が違います。それって、現実においても本当にそうだなと思うんです。

 だから序盤しんどいなと思うことも、もしかしたら時を改めて見てみたら「今日の自分にとっては、この前の自分ほどしんどく感じないな」と感じることもあると思います。遊ぶ時のユーザーさん一人一人の、その瞬間の感情や環境で感じ方が毎回変化するゲームになっていると思いますので、ぜひその変化も含めて楽しんでほしいです。

 そして、遊んだ時に「自分は今、こんなふうに感じているんだ」というのを、ちょっと客観視してみることで、普段の生活の中での周りの人たちへの関わり方も、もしかしたらちょっと変わったりするんじゃないかなと思います。

 人が言ったことをすごくネガティブなこととしてとらえて悩んでも、一晩寝て、明日になったら、その言葉のなかのポジティブな面が見えるかもしれません。そんな“気づき”も感じさせてくれるゲームだと思うので、少し遊んで自分に合わないと感じても、ぜひ粘り強く遊んでほしいです。

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奈良輪
鏡みたいなものかもしれないですね。

高柳
だから誰にでもおすすめしたいです。一見とっつきにくいかなと思った人にも、ぜひ遊んほしいですし、誰がいつ遊んでも、その時々でいろんなものを感じていただけて、ちょっと優しくなれるゲームだと思います。

奈良輪
優しくなりたい!

――最初はクズのように感じるキャラクターたちも、いっしょに旅を続ける中でさまざまな一面が見えてきて、それが最後のエンディングにも繋がってくるところがあると思います。ルートによって、キャラの成長度合いが異なることもありますが。

奈良輪
サブシナリオを見るか見ないかでも、だいぶキャラクターへの印象が変わると思いますよ。

高柳
私は収録で全シナリオを見てしまっているからこそ、「この子はこういうこともあるよね」と思えちゃっているんですけど、普通に遊ぶ方はぜひ根気強くいろんなルートを見て回ってほしいなと思います。そうすることで見えてくる世界があるはずです。

奈良輪
みんなクズはクズだけど、そこには理由もあるし、変化や成長もあります。

高柳
クズって一言で片付けたらダメです! そうやって拒絶するのは、もったいないです。

奈良輪
ルート分岐も含めて、キャラクターの裏表はしっかりと描きましたからね。

奈良輪
あと、辛くても最後までやれば絶対に救いはあります。途中でシナリオを読むのが苦しくなっても、ぜひ隠しエンディングを含めて、物語の結末まで見届けてもらえるとうれしいです。

高柳
そうですね。どこを救いとするかは、その人のその時々だと思いますが、でもやっぱり『ぎるぐる GiLGuL』の物語には救いが用意されていると感じます。決して、辛いだけじゃなありません。

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様々なことで悩み、死を願う少女たち。でも、姫奈だけは絶対に許せない!?【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――『ぎるぐる GiLGuL』は業が深いキャラクターばかりが登場します。それぞれのキャラクターや抱えるものについて、一言ずつ感想をいただけますか? まずはビッケからお願いします。

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高柳
一見非常にうざかわな子なんですけど、間違いなく愛ゆえのうざかわだというところはお伝えしておきたいです。真央への愛というのを存分に感じていただけて、「愛の形とは」という部分を問うキャラクターだと思いますね。

――続いて巽美玖については、いかがでしょう?

高柳
序盤に登場する"老"を恐れた女性で、最初にシナリオを読んだ段階では「だいぶ、しんどいな……」と感じましたが、後半に行けばいけばいくほど、「あ、まだまだ美玖さんはかわいいほうだったな」と(苦笑)。

 ただ、美玖さんが一番「こういう人は実際にいるかも」とリアルに感じるキャラでした。現代社会において、実際にありえそうといいますか、想像しやすいキャラクターでしたね。

――他のキャラクター特殊なシチュエーションが多いのですが、美玖さんはある意味、誰でもなり得るような。

高柳
うん、すごく切なくなります。最初に出会う存在として、遊んだ方にとっても生々しく辛いという意味では辛いですけど、ある種取っ付きやすい、入りやすい出会いなのかなと。

奈良輪
これ。1人目が姫奈だったら、もうそれこそ諦める人が多かっただろうね。

高柳
ヒメナーーー!(絶叫) はい……最初が姫奈じゃくてよかったです……。

――姫奈には並々ならぬ思いがありそうですが、まずは登場順番的に鳥飼友里愛についてお聞きします。

高柳
友里愛は……もっと広い世界を見てほしいと切実に願うキャラクターでした。彼女のシナリオを体験して、どこをどう感じるかで、その人がどんな性格がわかるかもしれません。

――名前に“愛”が入っているのに、家庭内暴力で愛がない場所で生きていますからね……。

奈良輪
友里愛は誰よりも"愛"を求めた少女ですが、愛だけじゃないし、友だちもいないし、里=家もないんです。名前に入っているものを何ひとつ持っていないんです。

――なんてひどい!

奈良輪
でも、いわゆるドキュン的な親って、こういう名前をつけがちなんですよね。そこはけっこうリアルに思い当たる方もいるんじゃないでしょうか。

――"病"を怨む水浦楓については?

高柳
病気って、普通に生きている人にとってもやってくる不幸で、本当に怖いですよね。楓さんの場合は特に、天才的な絵描きの才能を持っているからこそ、普通の人よりみ絶望が深くって。

奈良輪
楓は、普通に生きようと思えば生きられるはずなんですけど、なまじ天才として普通じゃ見えないところを知っちゃっているから、耐えられないんですよね。

 周りから見れば、そんな才能がなくたって、あなたはあなたのままでいいのよと、そこにいるだけで価値はあるんだよって受け入れてあげられるのに、本人はそう思えない。あまりに卓越した才能があると、それを失った時に耐えきれないんですよね。

――続いて、誰よりも"欲"の強い鬼首姫奈ですが……。

高柳
姫奈とだけは、友達になりたくないですね……。トラウマシーンだらけです。

奈良輪
自分はもう、「ヒメのこと一番に見てくれないし……」みたいなシーンを書きたくて、そのためだけに5万文字ぐらいを書いたような気がします。

 姫奈は自分の中では90年代〜2000年代くらいのビジュアル系バンドなんですよ。今のじゃなくて、昔のビジュアルバンド。

高柳
これはこれで、一つのあり方なんだろうなとは思いますけど、愛の形がそれぞれすぎて難しいですね。

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――最後の目代 恵美はどうでしょう?

奈良輪
なんか結構、自分の中で奇跡のバランスのキャラだと思っています。誰からも好かれるけど、誰からも1番にはならないやつみたいなキャラクター造形として。

高柳
姫奈の後に登場するってなったら、このくらいのキャラじゃないと。

奈良輪
そうなんですよ。ここに友里愛が出てきたら、ただただかわいそうな子になっちゃいますし。恵美くらいぶっ飛んでいてくれないと。

――恵美は"死"に取り憑かれたキャラで、だからこそ生きる意味みたいなものがよく出てきた印象です。「楽しくなくちゃ、生きる意味がない」みたいな感じで、なにがなんでも生きたいという真央とは逆と言いますか……。

奈良輪
真央とは二律背反に見えますが、ベクトルは違うけど考え方の根っこは一緒かもしれません。

「第一印象が変わったキャラランキングが気になる!」どんな人気投票をやってみたいか聞きました【ぎるぐる GiLGuLインタビュー】


――『ぎるぐる GiLGuL』のキャラ人気投票をやるとしたら、どんなテーマで実施してほしいですか?

高柳
そうですね。修学旅行を一緒に回りたいランキングとか?

奈良輪
俺、真央とビッケ以外、結構きついかもしれない……。真央一択かも(笑)。

高柳
ほとんどのランキングで真央ちゃんは強いと思うんですけど……お料理ランキングだけは下のほうかもしれませんね。

奈良輪
エンディング時に第一印象から印象が変わったキャラランキングとかは見てみたいですね。真央のように成長を見せるキャラもいますし、他のキャラもいろいろな理由で最初の印象から大きく変わっていくと思いますので。

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

高柳
『ぎるぐる GiLGuL』というゲームは、一歩目を踏み出すのがちょっと重たそうに感じる方がいるかもしれません。でも、先ほどもお話ししたように、遊ぶその時の自分の心の状態で感じ方がとても変わっていきますし、選択の分岐によっていろいろな価値観や物事の側面が見えてくる不思議なゲームです。

 ある意味、人間としての感覚を超えた先、一個上から物を見るというか、客観的に俯瞰して物を見た時に「ああ、こういう風に感じることもあるかな」とか。

 生々しい話も多いので、自分ごとには感じられない人もいるかもしれませんが、ちょっと置き換えたら全部自分ごとに感じるような物語になっているんじゃないかなと。

 すでにSteamで一度遊んでくださった方も、Switchで改めて遊び直したら感じ方が変わる部分があると思いますし、まだ遊んでないよという方は、ぜひまずは遊んでみてほしいです。きtっと「ああ、こういうことを言っていたんだな」というのは感じていただけると思うので。

 遊んだ先に自分自身の感覚や感じ方が変化していったり、新たなものの見方ができるようになると思うので、それがこれからの人生にもきっとプラスになると思います。私は一役者としていろんな魂を込めて演じましたので、楽しんでいただけたらとても嬉しいです。

奈良輪
このゲームって多分プレイするタイミングとか、自分の年齢とか置かれている状況によって、感じ方がかなり異なると思います。10代でやった時、20代でやった時、30代でやった時とかそれぞれで、きっとイメージするものとか、自分が置かれている環境が違えば見えてくるものも違うはずです。

 もちろんそれは、多くのことでありうると思いますが、『ぎるぐる GiLGuL』は特に顕著に出るんじゃないかと。

 ちょっと辛いところもあるかもしれませんが、最後のエンディングまでやれば絶対に何かしらの救いは感じられる物語にしています。

 どんな選択にしろ、後悔のないものになると思うので、ぜひプレイしてもらえればなと思います。あと、最後にもう一度言いますが、高柳さんをはじめとした役者さんの素晴らしい芝居があるので、文字を読まなくてもいいんです。ぜひ、声を聞いて物語を楽しんでください。

『ぎるぐる GiLGuL』とは


人はどうして死にたくなるんだろう……
人はどうして死にたくないんだろう……

 “可愛い”と“気持ち悪い”、“希望”と“絶望”そして“生きること”と“死ぬこと”この世界では、全ての“対極”が渾然となって混ざり合う。

 死を望みながら、それを成し遂げることもできない者が行き着く生と死の間に存在する宙ぶらりんな世界、間世(はざまよ)そこに迷い込んだ、生に執着する少女 三津 真央とそこで出会った死を望む者たちの物語が描かれるアドベンチャーパートを中心にゲームが展開。

 間世で、真央(主人公)の行く手を遮る魑魅魍魎を仲間たちと戦略的に倒し、攻略していくリアルタイムタクティカルパートも用意されている。

 彼女たちの生死の間の物語と、現世に帰るための道を切り拓く戦略ゲームの融合を目指したドラマツルギーリアルタイムタクティカルアドベンチャー。

これは、彼女と彼女と出会った人々の、現世を目指す間世の旅の物語


 生と死の間に存在する宙ぶらりんな世界、間世(はざまよ)

 ここは、死を願いながらもそれさえ成し遂げることができない者が⾏き着く世界。

 主人公である三津 真央は、誰よりも“生きる”ことを強く望んでいるにも関わらず気がつくとこの世界にいた。

 彼女は、この世界は階層構造になっており、一番上の階層に行けば現世に戻れる可能性があることを知り、現世に戻るための旅をする決意を固める。

 その旅の過程で真央は複数の死を望む者たちと出会い、会話をし、彼女たちの過去を知り、そして、影響を与え、影響を与えられ、時には別れを経験し、この世界と自分というものを認識していく。

間世に登場する個性的なキャラクターたち


三津 真央(みつ まお)【声優:高柳 知葉】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)に迷い込んだ間世の異分子にして”強き主人公”。

 誰よりも"生"に固執する少女

ビッケ(びっけ)【声優:伊藤 ゆいな】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)の水先案内人。その存在の本質と、口調の謎は神のみぞ知る。

巽 美玖(たつみ みく)【声優:優木 かな】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)で真央が最初に出会った"美しいヒト"。

 誰よりも"老"を恐れた女。

鳥飼 友里愛(とりかい ゆりあ)【声優:涼本 あきほ】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)に似つかわしくない、純粋で”幼いヒト”。

 誰よりも"愛"を求めた少女。

水浦 楓(みずうら かえで)【声優:田中 有紀】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)から遠い存在に感ぜられる”まともなヒト”。

 誰よりも"病"を怨んだ女。

鬼首 姫奈(おにこうべ ひめな)【声優:幸村 恵理】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)にあっても自分を貫き通す”我が儘なヒト”。

 誰よりも"欲"の強い少女。

目代 恵美(もくだい めぐみ)【声優:安野 希世乃】
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 生と死の間にある世界、間世(はざまよ)に最も近く、最も遠い”死を望むヒト”。

 誰よりも"死"に取り憑かれた女。

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