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岩垂徳行インタビュー。エンジン音との共存が必要な、車ゲームならではの工夫した点とは?【ふたごうさぎのご近所ツーリズモ楽曲秘話】

文:電撃オンライン

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 Project Rabbie(プロジェクト ラヴィ)とピクセルより5月30日に発売されたNintendo Switch用ソフト『ふたごうさぎのご近所ツーリズモ(ふたうさ)』の楽曲を担当された、岩垂徳行氏のインタビューをお届けします。

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岩垂徳行(いわだれのりゆき):作曲・編曲家。長野県松本市出身在住。大学在学中にほぼ独学で作曲の基礎を築く。4年間のバンド活動のあと、数々のゲーム音楽の作曲、アーティストへの楽曲提供、テーマパークなどのショー・イベント、舞台、放送関係など多方面での音楽制作を行っている。また「Japan Expo」をはじめ世界各国でのライブやレコーディングの他、オーケストラへの造詣も深く、「逆転裁判」など多くのゲームタイトルのスコアを制作。指揮者としても活動歴が長く、特に若手の演奏家たちへの指導には定評がある。

Arc-hive Philharmonic Winds:指揮、顧問
Game Symphony Japan:顧問
●執筆:『音符の隙間』(ニンテンドードリーム)

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 なお、エビテンでは、作中で車に乗ってドライブを楽しむミウとリントのアクリルキーホルダー付きの商品が発売中です。

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『ふたうさ』の楽曲は「ハイブリッドな音楽」がコンセプト【ふたごうさぎのご近所ツーリズモ】


──『ふたごうさぎのご近所ツーリズモ』の音楽のオファーを受けた際の第一印象を教えてください。作品からどのようなイメージを受けましたか?

 2023年の2月か3月頃にオファーを受けて始まったこの『ふたうさ』の企画ですが、最初から「ハイブリッドな音楽にしたい」というコンセプトが固まってて、その上で僕にオファーが来たので、話も具体的で非常にわかりやすかったです。

 個人的にももちろん綺麗で壮大な映像のすごい作品ってのも大好きですが、自分がふと遊びたくなるのはちょっとしたシューティングゲームとかパズルゲームとか、意外と昔の単純なゲームなんですよね。そこで昔ながらのレースゲームを現代版にさせるというコンセプトにも惹かれましたし、実際に映像も可愛らしくて良かったですし、何よりスタッフが気さくでやりやすかったです!

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──岩垂さんがレースゲーム的なジャンルの音楽を手掛けるのは珍しいように感じましたが、実際はいかがでしょうか?

 レースゲームは……、そうですね、なかったと思います。レースゲームって大変なんですよね。常にエンジン音が鳴っている。そしてアクセルを吹かす・ブレーキをするなどでエンジン音の音程も変わってきます。

 この「変化する音程」ってのが音楽からするとものすごい邪魔(笑)というか、どうしようもない、でもなくてはならない存在でして……、音楽を作り出す前からどうしようかと苦悩していました。

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 実際に自分の車でも音程を確認したのですが、30Km/hから60Km/hになるとエンジン音がオクターブ上がるんですよ(当社比(笑))。この音程差はなかなかのもので、そんなエンジン音が鳴り続けるレースゲームって曲を作るのも難しいんですよ。

──実際に音楽を手掛けていく際に意識したことがあれば教えてください。 “レトロ風”ドライブアクションゲームという、“レトロ”な部分も意識されたのでしょうか?

 まず「レトロ風」とは、前述にもありますが「ハイブリッドな音楽を作ろう」という大前提のコンセプトがありました。これはせっかく今の時代に作るのだから、昔の音源、例えばファミコンなどのPSGサウンド(ピコピコ音)や、メガドライブなどのFM音源のサウンドをオーケストラなどの生楽器のサウンドとミックスして楽曲を作りましょう、ということです。

 さりげなく混ぜていくことも出来るのですが、今回はしっかりと際立たせていきたいと思い、メロディやバッキング、ベース、ドラムなどの楽曲の骨格となる部分をレトロサウンドで固め、その周りをオーケストラなどの生楽器で包み込む、という手法にしてみました。

 また、「レースゲーム」というよりは「ドライブゲーム」を主軸に置いていたので、楽曲的にもスリルを楽しむようなエキサイティングな曲というよりは、ドライブ中にハプニングが起きまくるゲームですから、楽しくドタバタした曲が多いかも(笑)。もちろん「爽快感」ってのは忘れずに作っていました。
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エンジン音と楽曲が邪魔をし合わないように、さまざまな“方向”から音の定位置を定めた【ふたごうさぎのご近所ツーリズモ】


──車が主体のレース・ドライブゲームというジャンルの音楽について、新たな発見や楽しかったこと、難しかったことなどはあったのでしょうか?

 前述のエンジン音の問題を解決するために、各楽器の定位(配置)を明確にしました。ゲーム中ではエンジン音や効果音、音声などが真ん中から鳴っていることが分かったので、音楽の方では真ん中から鳴る音を極力減らしました。

 具体的には真ん中から鳴るのはベースとドラムのキックとスネアくらいで、メロディのPSG音はそれぞれ少し左右に振り、ブラスは10時や2時の方向(定位は時計の針で表すことが多いんです)、ストリングスなどはおもいっきり左右に広げたりしています。左右だけでなく前後の奥行きも考えています。こうすることで、それぞれの音が邪魔しあうことなくくっきりと聞こえてくると思うんですよ。

 エンジン音だけでなくSEや音声も含めたサウンドが「音楽」だと思っていますので、特にこの作品では最終的な曲のミックスは何度もやり直したりしました。音の定位的なこと、音程や音の周波数の帯域バランス的なことなどを気にしながら何度もミックスしていましたね。

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 それから、会話シーンにも色々とアイディアを入れさせてもらいました。会話に合わせて楽曲の再調整や再アレンジをしたりしたのは楽しかったですね。オープニングも長さの違う3パターン作って選んでみたりと、色々とこだわることができて楽しかったです!

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──本作でお気に入りの曲はどれでしょうか? また、最初に作った曲、難産だった曲などがあれば教えてください。

 実際にゲームもプレイしたのですが、あまりにも下手すぎてステージ1がクリア出来ていません!(笑)。なのでステージ1の「Liftoff!!」ばかり聞いていますが、この曲、やっぱり合いますね。楽しいです。逆にゲームオーバーの曲は嫌いですね(笑)。聞きたくない(笑)。

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──本作では効果音も担当されたのでしょうか? その場合、意識した部分や注目してほしい部分がありましたら教えてください。

 ME(Music SE, 音楽風なSE)ということで、ルビィの心の音は作りました。

イメージ曲『ROUTEヨンロク』は“原曲は崩さず、でも自由に元気に!”編曲しています【ふたごうさぎのご近所ツーリズモ】


──イメージ曲『ROUTEヨンロク』のアレンジも行われたとのことですが、どのようなイメージでアレンジされたのでしょうか?

 この曲はもともとがしっかりとレコーディングされていて、つまり完成しているものなのですが、今回はあえてゲームに合わせて、PSGなどのピコピコ音源のみで伴奏を作ろう、ということになりました。ファミコンの音がいっぱいバージョンですね。イメージは、“原曲は崩さず、でも自由に元気に!”という感じでしょうか。

 ファミコンっぽいフレーズや音色を散りばめたこのエンディングは、今までこの曲を知っているユーザーも初めて聞いたユーザーも、懐かしいんだけれど何故か新鮮に感じられると思いますよ。ゲーム中は1番のみなのですが、限定盤についてくるCDの方にはフルサイズのこの曲が収録されています!

──岩垂さんは吹奏楽団Arc-hive Philharmonic Windsでも活動をしていますが、本作のようなピコピコ音+生演奏のような特殊な楽曲についても指揮・演奏をしてみたいでしょうか?

 これはぜひやってみたいですね。オーケストラや吹奏楽でもシンセサイザーを取り入れたりすることは多いのですが、汎用性という意味でスコアに書き込む時に楽器の指定ができず苦労をしています。

 まぁ生楽器のところにアンプを使用しなければいけないシンセサイザーを入れるとどうしても音の質感が合わなかったりするのですが。ピコピコ音は汎用性という点でも大丈夫ですし(テルミンより使い勝手は良いですし)試してみたいと思っています!!

──最後に『ふたごうさぎのご近所ツーリズモ』に期待するゲーマーへのメッセージをお願いします。

 『ふたごうさぎのご近所ツーリズモ』、イージーモードとか付いていないので僕のようなゲーム下手な人にとってはあんがい難しいのかもしれませんが、その難しさを和らげるような軽快な音楽を聞くことで、プレイしていて楽しい気持ちになれると思いますよ!

 そして限定盤にはオリジナルサウンドトラックCDが同封されていますが、実際のドライブで楽しめますので、家でも外でも、どこでもこの『ふたうさ』の世界を楽しんでください!!(くれぐれもスピードの出し過ぎに注意を!)

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    ふたごうさぎの ご近所ツーリズモ

    • メーカー:ピクセル
    • 対応機種:Switch
    • ジャンル:レーシングアクション
    • 発売日:2024年05月30日
    • 希望小売価格:3,500 円+税