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最終回を迎えた『終末トレインどこへいく?』。吾野からの旅の思い出と共に7つの名台詞を振り返る(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 先日にはいよいよ最終回を迎えたオリジナルTVアニメ『終末トレインどこへいく?』。

 最終話直前に総集編が入るハプニングに見舞われつつも、その後最終話も無事放送され、吾野から始まった静留たちの旅がついに終わりを迎えたことに感慨深さを感じている視聴者も多いのではないでしょうか。

 今回は、そんなアポジー号での旅を改めて振り返る意味でも、作中に登場した7Gになぞらえて、個人的に印象に深く残った7つの台詞を紹介していきます。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『終末トレインどこへいく?』の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。[IMAGE]

印象深い『終末トレイン』7つの名台詞たち

「だって準備しないと。着替えとか食料とか毛布とかキャンプ用品とか……」


 第2話“推測、だろう、思われる”より、久賀玲実の台詞。

 まず前提として、静留以外の3人(玲実、晶、撫子)は、静留が学校を辞めて池袋に行くと聞き、ほぼその場の勢いでついてきたので、何一つ旅の準備ができていませんでした。食料もかなり心もとなく、視聴者としても「本当にこれで大丈夫か……?」と思っていたところだったんですが、よく考えると電車を運転しているのは静留なので、いつでも吾野に戻ることもできるというのは結構盲点でした。


 実際この玲実の提案を聞いた時、他の3人が全員虚をつかれたような反応をしていて、「その手があったか」みたいな気持になっていたんだろうなと。唯一静留は反対していましたが、あまりにも真っ当な主張だったのもあって、一度電車を停止してから吾野に向かって引き返しています。

「でもまぁ良かったじゃん。進むしかなくなって」


 こちらも同じく2話での玲実の台詞。

 上記の提案に従って吾野に引き返そうとした矢先、発生した大津波から逃れるために吾野から大きく離れて線路も水没するという、もう引き返せない状態になってしまいます。「もう吾野に戻れないかもしれない」という、4人にとっては精神的に結構キツイ展開なんですが、それを前向きにさせたのがこの玲実の台詞でした。

 というのも、早く池袋に行きたい静留、一度引き返して準備を万全にしたい撫子と玲実、そもそも旅自体に反対の晶と、この時の4人は意見がバラバラで、まったく一つになっていなかったんですね。結果的に退路がなくなったことで、皆の目標が「池袋に行く」で一致した形になるんですが、それに一瞬で気付いて口にできるのが玲実のすごさだなと。


 玲実というキャラクターって面白くて、勉強はできないしあまり考えて行動していなさそうなんですけど、本能的に物事の本質を見抜く素質みたいなのがあって、こういう芯を食うような発言を度々しています。他の3人が結構考えすぎるタイプなので、良い意味での玲実の単純さや素直さみたいなところに救われたシーンも多かったなと改めて思います。

「葉香に会うんだろうが! こんなところで、キノコ培養している場合じゃないだろうが!」


 こちらは第3話“ショートでハッピーイージーに”での東雲晶の台詞。

 キノコに寄生され無気力状態になってしまった静留を焚きつけるために口にした言葉で、この後の「友達でしょ!」という部分も含め、『終末トレイン』屈指の名シーンの1つだと個人的に思っています。


 上でも少し触れた通り、晶は4人の中で唯一この旅に反対していたんですけど、実は晶も葉香のことをしっかり友達だと思っていて、素直になれなかっただけということが分かったシーンでもあります。

 個人的な話になってしまいますが、結構筆者自身もストレートな感情表現が苦手なタイプなので、素直になれないキャラクターって共感しがちなんですけど、晶は年相応のクールなものへの憧れみたいなものも混じっていて、独特の味わいに仕上がっていて、とくにお気に入りのキャラクターです。

「ぺこぺこ」


 第7話“笑うゾンビはゾンビじゃない”での千倉静留の台詞。

 この回で登場したゾンビに対策として有効な、えっちな単語について話し合っている最中に、「葉香に会って謝りたい」という静留の本音が3人に明かされたシーンでもありました。


 上で「素直になれないキャラが好き」という話をした矢先ですけど、主人公の静留もまさにこの素直になれないキャラクターなんですね。それ故に何度か撫子たちと喧嘩してしまう一幕もあったんですけど、この台詞はようやく静留が自分の本音を素直に明かすことができた瞬間で、「ようやく言えたか」みたいな安堵感がありました。

 やっぱり子どもの頃(大人になってからもそうかもしれませんが)って、自分の非を認めるのって結構難しいんですよね。とはいえ直接「葉香に謝りたい」と口にするまでの勇気はなくて、まだ抵抗が残っている感じが、年相応の幼さみたいなのも感じられて良かったです。この台詞を口にした時の髪が濡れた静留のビジュアルも抜群にかわいくて好みだったのもありますが……。

 この回以降、静留は撫子たちに対して葉香に対する本当の自分の気持ちを口にできるようになったので、仲間同士の衝突みたいな描写はほぼなくなり、物語的にも大きな転機となっていました。

「え、無理だけど。これから池袋に行かなくちゃなんないし」


 『終末トレイン』屈指のカオス回である第8話“バチ当たらない?”の星撫子の台詞。

 全12話の中で、一番ぶっとんだ回はどれか視聴者に聞いたら、ほとんどの人がこの8話を挙げるんじゃないかというくらいにはインパクトが強かったエピソードでした。


 この回に登場する大泉学園駅は、劇中内のアニメ“練馬の国のアリス”を再現した“ネリアリランド”に変わっていて、住人たちはアニメの中のキャラクターに変えられてしまっているんですが、主役のアリスたちは死亡、唯一の生き残りだったスーちゃんも敵の手であっさり殺されるという凄まじくハードな展開が繰り広げられます。ただ撫子たちは案外動じておらず、スーちゃんが殺された時も、速攻で立ち直っていました。

 この回でアリスの衣装を着て戦った撫子は、住人たちから新しいアリスとして歓迎されるのですが、上記の台詞で拒否。それでもなお残って欲しいと懇願する住人たちを「頑張って自分たちでなんとかして」と一蹴して次の駅に向かうという、一見優しそうに見えていた撫子が実はかなりドライな一面をもっていると判明した回でもありました。

 もちろん、それだけ「池袋に行く」ことが撫子にとって重要だったのもありますが、住民たちを放置して先に進むのに一切躊躇いとか悩む素振りすらありませんでしたからね……。

「人は変わる。世界も変わる。ずっと同じものがあるか?」


 第9話“思ってたよりつまんないみたいな”における、謎の老人・スワン仙人の台詞。

 この台詞に「(変わらないものは)あるよ!」と反論した静留に対して、「それは同じに見えているだけだ」と諭すシーンも含めた一連のやり取りは、すごく印象的でした。


 自分も現実で、仲がいいと思っていた友達がいきなり結婚して、疎遠になったりという経験をしていたので、「外からは変わってないように見えていても、実際にはずっと同じままの人間なんていない」というのは、結構はっとさせられた言葉でした。

 静留が反論したのも、おそらく今の関係のままずっと葉香と友達でいたいという気持ちがあったからだと思っているんですが、それもすごくよく分かります。学生時代仲の良かった友達とか、学校が変わってもずっと付き合いは続くものだと思っていましたし。

 スワン仙人って、存在が重要なのかそうじゃないのか今でも分からない謎のキャラクターですが、ここの台詞は大人としての人生経験の深さみたいなものを感じられたのも良かったです。改めて最終話を迎えてみると、ここでのやりとりが静留に非常に大きな影響を与えていて、スワン仙人がいなかったら葉香を元に戻せなかったかもしれないなぁと思います。

「地球と月が一番離れたところがアポジーで、後は近づくだけだから」


 最終話(12話)“いつもって何だっけ”のラストで、本作の物語を締めくくった静留の台詞。

 地球と月が静留と葉香の関係性や、吾野と池袋間の距離を表しているのは言うまでもないかと思うんですけど、アポジー号の名前がつけられたのって結構序盤で、まだまだ静留が自分の気持ちに素直になれてないタイミングなんですよね。


 実はもうその頃から、現状の自分と葉香の関係性がそれ以上悪くなることはなくて、あとは仲直りをするだけっていう、結構前向きな姿勢で解釈していたというのが、作中ではあまり表に出てなかった静留の想いの強さみたいなのが感じられて良いなぁと。

 それに地球と月って、一時的にはどんなに離れることがあっても、また近くを通るんですよね。静留と葉香の関係も、また喧嘩したりして離れることがあっても、地球と月みたいに近くの距離に戻ってくるとも解釈できます。

 さらっと宇宙に関連した用語が静留の口から出たことを珍しがっていましたけど、たぶん葉香の夢が宇宙に行くことと知って、静留なりに宇宙についてこっそり勉強していたのを表しているんだと思うんですよね。ある意味、どれだけ静留が葉香のことが大好きなのかが強調されたラストシーンにもなっていたのかなと。

 最後に出てきた台詞だけあって、いろいろな意味が込められた、非常に味わい深い名台詞だと思います。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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