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『終末トレインどこへいく?』10話ネタバレあり感想。池袋を目前にしてまさかのカオスギャグ回の再来。撫子と玲美が劇画タッチのまま話が進むのがシュールすぎた

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年6月3日(月)に放送されたTVアニメ『終末トレインどこへいく?』10話“これこそ反抗と退廃の証”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『終末トレインどこへいく?』10話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。[IMAGE]

世界よりも葉香が大事だと断言できる静留の変化に感動【終末トレインどこへいく? 10話感想】


 9話からさらにアポジー号は先に進んでおり、10話の冒頭時点でついに池袋まで残り2駅に。毎週少しずつ近づいてきているのは実感していましたが、ここまでくると「とうとうか……!」という、ちょっとそわそわするような気持ちが湧いてきますね。

 その池袋までの進路を変なぬいぐるみのような生き物が塞いでいて、「これが今回の敵キャラかな…」と思っていたら、まさか正体がクズリ化した静留の父だったとは。静留の父の話は確かに第1話でも出てきていたんですけど、あの後ずっと音沙汰がないままだったので、正直なことを言うとちょっと存在を忘れてしまっていて、少し謝りたくなりました。

 静留の父が吾野から出る際に言い残したのが「2時間か2週間くらいで帰ってくる」で、そこから2年以上経ったのもなかなかひどいんですが、そもそも2時間と2週間の差は結構大きいというツッコミどころが。そこはせめて“2日”くらいを間に挟むべきではないでしょうか。


 ちょっと気になったのは「変な爺さんに会った」という静留の父の台詞。池袋が危ないと話されたことも考えると、ほぼ間違いなくスワン仙人なんでしょう。二人がどのタイミングで会ったかまでは分かりませんが、人の言葉を喋るクズリとなると仙人の記憶にも残ってそうですし、実は静留が父についてスワン仙人に聞いていれば、もっと早く手がかりは掴めていたのかも。

 その静留の父が妙な連中と戦った末に奪ったベレー帽は晶に渡りましたが、ベレー帽から即ゲバラを連想するあたり、晶の知識の偏りっぷりがなかなかすごい。今まで晶に対しては、背伸びしようとする子供らしさが良いみたいな感情が強かったんですが、ここにきてちょっと将来が心配になってきました(でもベレー帽をちょこんと乗せているのはメチャクチャかわいいです)。

 そして感動したのが、善治郎が定期連絡でついにしっかりと必要な情報を伝えてくれたこと。最後の最後でまたいつもの調子に戻ってしまいましたが、7Gで変わってしまった世界を元に戻せる方向があるかもしれないという重要な情報を静留たちに伝える重要な役割を果たしました。


 そんな世界を救えるかもしれないという状況にも「どうでもいい」と言えてしまう静留の姿にもちょっとウルっときました。静留にとって葉香がどれだけ大切な存在かを自覚し、正直に口にできるようになったということでもあり、今の静留なら葉香と話せればしっかりと仲直りできそうな安心感があります。

 ただ、一方で2年ぶりに再会した父親にはそっけない態度をとり続けていたり、まだまだ反抗期は抜けてないんだな……という年相応な部分も同時に感じられたのが面白かったです。

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 そして問題(?)のBパート。第8話の『ネリアリ』回もすごかったんですが、10話のBパートもそれに匹敵するカオスさだったと思います。

 静留たちの前に立ちふさがったのは、その8話のとんでも展開を作った犯人である漫画家たち。今回の元ネタは分かりやすくて、手塚治虫先生、藤子不二雄先生、赤塚不二夫先生など超有名漫画家が住んでいたとされるアパート・トキワ荘。もちろんトキワ荘の存在は知ってたんですが、池袋の隣駅の椎名町にあったことは初めて知りました。

 エンディングのクレジットでその漫画家たちの名前のイニシャルを確認できるんですが、“A”に“F”、そして静留の父に倒されたという“T”と、なかなか攻めています。

 不思議なベレー帽の力でキャラクターへと変えられていくシーンでは、70年代にありそうなお嬢様キャラになった撫子と、やたら顎の尖ったヤンキー風になった玲美は、時代が違えば本当にこういうキャラ付けがされてそうな感が若干あります。割と二人とも自分の変化に違和感を抱かずに、そのまま話が進行していくのもシュールで面白かった。

 静留だけは父と同じくかわいい語尾をつけるマスコット化していましたが、どうやら元ネタはアニメ『ドン・チャック物語』のようです。自分はアニメ自体は知らなかったんですが、野球ファンなのでキャラクターは東京ドームで見たことがありました。


 いろんなキャラがベレー帽の力を使っていましたが、改めて見ていると晶だけはちょっと別格として描かれているなと。改変の力を防ぐバリア的なものを展開できているのは晶だけですし、大量のムンクやポチさんを召喚したりとやっていることのスケールもデカいです。漫画家たちは自分たちの想像力に自信をもっていましたが、想像力って子どもの頃の方が豊かだったりしますし、晶くらいの年齢が一番この力を使いこなせるのかも。

 最終的には熱血スポ根風にキャラを変えられ、自らベレー帽を捨ててしまう自滅であっさりと倒され、「展開が適当すぎる!」というメタなツッコミを入れる漫画家たちには爆笑しました。また、善治郎が一回だけ口にしていた「ポンタロー」の言葉をしっかりと覚えているあたり、静留は意外と記憶力が良いですね。


 ラストではついに池袋への道が開け、吾野から始まった旅の終わりが本格的に見えてきました。外からみるともう魔王の城のような雰囲気で、かなりおどろおどろしくなっていますが、ついにこの時が来たかと思うとなかなか感慨深い。

 なお今回の絵コンテ、数々の名作ギャグアニメを手掛けられたワタナベシンイチさんだったということを水島監督のXで知り、そりゃあ今までのどの回とも毛色が違うはずだ……とめちゃくちゃ納得しました(アフロのキャラクターも登場していましたし)。水島監督もギャグアニメに定評のある方ですから、このお二人が一緒にお仕事をされているというのは、アニメファンとして胸が熱くなるところがあります。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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