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『終末トレインどこへいく?』8話ネタバレあり感想。ネリアリランドで繰り広げられる屈指のカオス回。 唯一途中から登場していない、あのキャラがどうなったのか気になる

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年5月20日(月)に放送されたTVアニメ『終末トレインどこへいく?』8話“バチ当たらない?”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『終末トレインどこへいく?』8話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。[IMAGE]

『練馬の国のアリス』の原作以上にカオスな状況になっている“ネリアリランド”【終末トレインどこへいく? 8話感想】


 黒木と別れた後も、引き続き池袋を目指す一行でしたが、8話では冒頭から様々な7Gの影響を受けた駅が登場。

 全身が痒くなる東久留米は、痒がる4人の作画が妙に気合が入っていて躍動感がすごい。晶は胸、玲美は背中、撫子はお尻、静留は……詳しく触れないようにしますが、痒くなるところはそれぞれ違うっていて、いろいろ意味で危ない。相変わらず凄まじいアニメだなと、改めて冒頭から思い知らされました。

 一方、ひばりヶ丘では全員のトラウマが呼び起こされるという、これまでの駅の中でもかなりえげつない影響が。両親の離婚に責任を感じて頭を何度も打ちつける撫子も痛々しかったですが、一瞬だけ垣間見えたポチさんの過去らしきものもかなりヘビー。ポチさんは保護犬らしいので、葉香の家に引き取られる前の飼い主に飼われていた時の光景なのかもしれません。ただ、さっきの痒がるシーンからの落差が激しすぎて風邪を引きそうになります。


 しかし8話のメインとなっているのはそれらの駅ではなく、“ネリアリランド”と化した大泉学園駅一帯。『練馬の国のアリス(ネリアリ)』は玲美がこよなく愛するアニメ作品で、今までも何度か話題に上がっていましたが、ついにその世界観が今回で本格的に明らかになった形です。

 ただ、『ネリアリ』好きなのは玲美だけだと思ってたんですが、4人とも異様に内容に詳しいあたり、実はかなりの人気作品だったのかも。玲美は人間からアリスに変えられてしまった人をうらやましがっていましたが、登場人物に変わってしまった人たちの元々の意識はどうなったのかとか、深く考えるとなかなか恐ろしい状態です。

 元プロの拷問士で拷問に誇りを持っているごーもんティーとか、スーちゃんが自殺未遂を繰り返しているとか、ポップな雰囲気に隠れて元々の設定もかなりぶっ飛んでいます。静留の回想で葉香がニコニコしながら『ネリアリ』の解説をしてるシーンも、話している内容と表情にかなりのギャップがあります。


 しかし到着してみると、『ネリアリ』のメインキャラ3人は幹部たちに殺されてしまっており、住人のウライズミンも街灯にされたり車にされたりと悲惨な扱いで、稲荷山公園駅がかわいく思えるレベルのディストピア世界と化していました。

 またネリアリランドを支配するボスである渾沌は、池袋に誰も近づけないように命令を受けていたようです。今までの道中にはいろんな障害がありつつも、直接池袋に行くことを妨害しようとするキャラはいなかったので、これまでとは少し違う流れになってきた印象があります。

スーちゃんが消えても一切動揺しない撫子たちのドライさにビックリ【終末トレインどこへいく? 8話感想】


 ウライズミンに匿われて、唯一の生き残りとなっていたスーちゃんと共に、アリスを生き返らせるために奮闘する静留たち。こんなこともあろうかと、アリスたちを蘇らせるために必要な“持ち駒の泉”の中身をすり替えていたウライズミンたちは有能でしたが、伝説の泉的なものの水が大量のポリタンクに入れられているのはなかなかシュールな光景。風情も何もあったものではありません。

 アリスたちのかけらを取り戻すことには成功したものの、持ち駒の泉の設定が変更されており、逆にアリスたちのかけらが完全に消滅してしまう最悪の事態に。『ネリアリ』のモチーフは将棋のようなので、取った将棋の駒を盤面に戻すという機能が泉にあったんだと思いますが、一度取った駒はもう戻らないチェスのようなルールに変えられてしまったということでしょうか。

 スーちゃんが首を締められるシーンは、タイミングが完全にホラーだったり、芯に迫った悲鳴と合わせて、ここだけやたら死に方が生々しすぎました……。


 8話を通して言えることでもあるんですが、今回の静留たちは結構ドライというか、アリスやスーちゃんが消えてしまった後の切り替えも無茶苦茶早いんですよね。

 ウライズミンたちを叱咤する時の「起きたことはしょうがない」と割り切る撫子の台詞は、両親の離婚の時の自分の後悔を踏まえてのもので、実際正論でもあるんですが、その後も4人ともアリスやスーちゃんが消えたことに一切触れないので、さすがにちょっとくらいは気にした方がいいんじゃ……という気持ちにもなりました。

 その後のアクションシーンでは、今までも吾野弓術の使い手であることが何度か触れられていた撫子がついに大活躍。

 流鏑馬のように馬に乗っているわけでもなく、自分の足で走りながら、動いている相手に正確に命中させているのがヤバすぎる。静留と玲美の身体能力も相変わらずおかしくて、思えば肉体労働担当の3人+頭脳労働担当の晶という、意外とパーティとしてバランスが取れている構成だったんだなと改めて感じました(ちょっと晶の負担が大きい気はするものの)。


 モチーフになっている将棋の駒の通りにしか動けないという弱点(よく見ると戦っている墓地そのものが碁盤の目みたいな形になっています)を見抜いたことで、次々と幹部を撃破して形成は逆転。あと一歩のところで渾沌には逃げられたものの、前回黒木が言っていた女王の正体が葉香だったという情報も明らかになりました。

 池袋に人を近づけないように命令を出したのも葉香である可能性が高く、これからさらに池袋に近づくことを考えると、女王となった葉香との衝突は避けられなくなりそうです。

 8話は最後の最後までノリが独特で、ネリアリランドを改変した黒幕の存在の示唆や、ショックを受けている静留を3人が心配するシリアスなシーンの背景で、ウライズミンたちが電車を追いかけ続けている構図もかなりシュール。結局アリスたちは復活せず、問題はほぼ未解決のままになっていて、終盤に渾沌に対して「言ってるほどカオスじゃない」みたいな指摘をするシーンもありましたが、このエピソード自体は間違いなくカオスといっていい回だったんじゃないかと思います。


 ただ、個人的にちょっと気になったのが、ネリアリランドに着いたあたりからポチさんが一切登場しなくなっていたこと。今回は電車で留守番していたのかなと思ったりもしたんですけど、最後の車両内のシーンにも一切ポチさんが映っていないんですよね。

 運転席側とか別の車両とか、見えていないだけで画面外にいる可能性はもちろんあるんですけど、今まで最後に皆が集まって話すシーンにはポチさんも絶対にいた気がするので、ここまで徹底して映していないのは何か意図があるんじゃないかと深読みしてしまいます。来週にはケロッと普通にポチさんが車両内にいる可能性もあるんですけど、恒例だった善治郎との定期連絡も行ってないですし、いろんな意味で異質な回だったな……と思います。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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