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『ドラゴンクエスト7』24周年。ドラクエで昼ドラ!? 突然始まったドロドロの愛憎劇に困惑し、最後は咽び泣いた思い出【メモリの無駄づかい】

文:電撃オンライン

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 三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームを遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。

 何年、何十年たっても、「なんでオレ(私)、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。

 そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は、PlayStationで2000年8月26日に発売されたRPG『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』について語らせていただきます。

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幼いイメージの主人公ながら、重く泣けるエピソードが豊富


 『ドラゴンクエスト7』の主人公は、世界にたった1つ浮かぶ小さな島・グランエスタードにある村の漁師の息子という、普通の少年。村の網元のお嬢様マリベルと、グランエスタードの王子キーファが親友。キーファ王子と島を探検して見つけたふしぎな石板の力で、過去の世界へと導かれるストーリー。石板を集めて過去の世界へ行き、冒険を終えて現代に戻ると石板で訪れた町が復活している…と繰り返して物語を進めていきます。

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▲世界地図がシンプル! ここからどんどんほかの島が復活して行きます。
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▲石板はかけらで手に入るので、集めて組み合わせます。残り1枚のかけらが見つからない! と必死に探すことも。

 筆者はタイムトラベルものが好きなので、過去で救った町が現代で平和になっているのを見るのが嬉しくて、石板集めもやる気が出ました。

 大きなメインストーリーがありつつも、石板で訪れる町はそれぞれ独立したストーリー展開。16歳で幼い見た目の主人公ですが、各町でのストーリーに泣けるものが多かった印象です。途中経過でこんなに泣けたドラクエはない! と個人的には思います。

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▲等身低めなので、年齢より幼く見えるキャラクター達。

 とくにロボット兵の健気さに涙するフォロッド、悔しさと怒りでも涙が出るレブレサック、不安になりながら現代と過去を何度も行き来したルーメンなどは、何年経っても忘れられない、心に深く刻まれる物語でした。

 今回はそんな中でも、一番私の心に残ったグリンフレークの町でのストーリーの思い出に浸ります。

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国民的RPGで突如始まる昼ドラ展開に困惑


 物語の舞台となるグリンフレークは、ハーブ園が有名な町。主要な人物はハーブ園の庭師の息子ペペ、道具屋の娘のリンダ、ハーブ園経営者の息子イワン、イワンの家のメイドのカヤの4人です。

 ペペとリンダは両想いですが、イワンはリンダに、カヤはイワンに想いを寄せる四角関係です。しかもリンダは、亡くなった両親がイワンの父にお金を借りており、息子がリンダを好きだと知るイワンの父の計らいで、イワンの婚約者になってしまったのです。

 ハーブが好きで父や弟と仕事を頑張るペペに、気持ちを抑えきれないリンダは2人で町を出ようと駆け落ちを迫ります。ペペのいる庭園へ通うリンダを見て、不安に駆られるイワンには、メイドのカヤが妖しく近づいて…。

 こ、これは…令和の世には無くなってしまいましたが、主に主婦が夢中になる昼帯ドラマ…通称昼ドラみたいだ!! タイトルをつけるなら…“おハーブの園”! 昼ドラにはアットホームな内容の作品もありますが、話題になるのは愛憎劇。ゴールデンタイムの恋愛ドラマとの違いは、設定の違いでしょうか。大学やオフィスではなく、舞台はハーブ園とお屋敷。元カノやライバルも、メイドや婚約者と高貴な雰囲気の漂う単語に変えればそれは昼ドラ! ヒロインが不幸体質で、駆け落ちや借金の肩代わりとかの単語もエッセンスとして重要です。これでカヤがリンダにいじわるする娘なら完璧でした。語っていますが、自分はドラマはあまり見ないので、昼ドラ好きの母親が歌っていた『牡丹と薔薇』の歌を覚えている程度の知識ですが…。懐かしい反面、最近の少女漫画でも見かける設定だったりするのは、リバイバルというか、様式美というか。

 とにかく冒険ファンタジーからの昼ドラとは…『ドラクエ』…底が知れない!!

 しかもこの四角関係、過去も現代も消化不良で終わりを迎えます。現代に戻ると町は滅んでハーブ園の名残を残すのみ、少し離れた場所に巨大なハーブ園ができていました。新しいハーブ園を見下ろす丘の上にはペペのお墓が…。あのあとグリンフレークではいったい何があったのかと、謎は残ったままでした。

 ほかの町ではこんなことはなかったのに、ここだけ何故…? 答えは旅を続けた先にありました。

30年経っても安定の昼ドラクオリティ。おハーブの園には続編がありましてよ


 別の石板で行った町から開通した道の先に、グリンフレークの町があったのです。訪ねてみるとそこは、あれから30年という時間が経っていました。

 ハーブ園は健在、経営者は勿論イワン…ではなくカサドールさん。えっ誰!? イワンはハーブ園をブドウ園にし経営するも失敗してやさぐれて、情けによりカサドールさんのハーブ園で下働きとして雇われていました。

 さらには病床に臥したカサドールさんの妻は、主人公たちのよく知る人物で…。酒に溺れるイワンを救うのは誰だ? 家政婦は見た、お屋敷で起こる毒入り料理事件の犯人は? と、“ドラクエ愛憎劇場・おハーブの園”はサスペンス要素が加わりパワーアップして戻って来たのです。30年て…、ドラマのリバイバルにしてもなかなかのブランク。軽く見積もって50歳近い人たちの愛憎劇。当時小中学生のプレイヤーはどう思ったんだろう。

 最後に残った現代に存在する巨大なハーブ園と、グリンフレークの町が廃れてなくなった理由もここで判明します。ペペのお墓があの場所にあった意味も。とくにハーブ園が見える丘でのストーリーは、嗚咽が止まらなくなりました。愛憎劇の最後に待っていたのは純愛だった…。

 最初に町を石化させたモンスターを倒したあとは昼ドラの世界だったので、主人公一行がほぼ話にからまないのも、今思うとかなり挑戦的なエピソードでした。自分でも信じられないほど泣いたので、昼ドラが今も続いていたら、母と同じくハマっていた可能性があったのかも。

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▲関わらないぶん、仲間会話でのそれぞれの言い分が楽しめました。とくにこの時点で紅一点のマリベルの歯に衣着せぬ物言いが光る。

 グリンフレークの一連の話が終わった時、『ドラクエ5』のルドマンさんがなんとも恋しくなった、ビアンカ派の筆者なのでした。

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