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『この世界は不完全すぎる』第7話感想。7人のデバッガーを同時に相手取る、過去最大の窮地をひっくり返す奥の手に仰天。ロード時間が長かった時代のゲームを思い出した(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』第7話“社長”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』第7話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

初めて“死”を覚悟したハガ。それでもデバッグモードを使わないのが凄まじい


 ログアウトを目指した攻略に会社の方針を切り替えようとした社長が、それをよく思わない酒井たちの裏切りに合って殺されてしまう衝撃的なラストを迎えた第6話。

 やはりというべきか、ログアウトできなくなる前から、酒井たちアソビング社の社員たちの不満は積もりに積もっていたようで……。社長が方針を変える変えないに関わらず、こうなるのは時間の問題だったのでしょう。


 ただちょっとゾッとしたのは、酒井たちの話に出てきた“試しに死んだデバッガー”の存在。この世界で試しに死ねと言われても受け入れる人なんていないでしょうし、酒井がイメージしてる人物像も後ろから刺されて死んでいるので、“試しに殺したデバッガー”だったのかもしれないと考えると、かなり恐ろしい組織です。

 しかし社長が死んでも、ルゥの仇を取るためにここまできたアマノの気持ちは晴れません。ある程度アマノがルゥの死から早く立ち直れたのは、仇を取るという目的があったからで、それがこんな形であっさりと達成されるとは予想もしてなかったでしょう。「ルゥは返って来ねぇ!」とやりきれない想いをぶちまける、アマノ役の川島さんの演技も真に迫っていて素晴らしかった。

 その一方で、回収したデバッグストーンを頬に当ててグリグリされるニコラのかわいさに癒やされてもいました。


 酒井たちとの戦いでは、デバッグモードを使った攻撃に耐える並外れたハガの耐久力が改めて顕著になるも、やはり7人相手は分が悪すぎました。

 ハガがここまで追い込まれたのは間違いなく初めてで、酒井たちが一切手を緩めずに攻撃を続けていれば本当に殺されていた可能性が高い。それでも、デバッグの無敵モードを使えば少なくともハガだけは生き残ることはできたと思いますが、この状況になってもまだデバッグモードを使わないのが、ハガの凄いところです。

土下座が日常だったアソビング社の労働環境が最悪すぎる疑惑。ラストの展開で一気に不穏な空気が


 ハガにトドメを刺す前に、酒井たちはアマノに土下座を要求して再び仲間に迎え入れようといていましたが、個人的にはアマノが「元々よく土下座してた」という情報が、ある意味一番衝撃的だったかも。

 1回だけならともかく、頻繁に土下座しなければならないような状況が多発する職場って、アソビング社の労働環境は尋常じゃないくらいにヤバそうです。今まで社長や酒井だけが目立っていましたが、他の社員も似たような性格であることが分かってきて、ここで働いていた当時のアマノは本当にキツかっただろうなと思います。

 しかしそんな胸糞な展開があった分、アマノが使える数少ない魔法である突風(ガスト)の魔法一発で、すべての状況がひっくり返るカタルシスはむちゃくちゃ気持ちよかった……!


 7話ではハガがアマノにひたすら魔力を温存させようとしていたので、アマノの魔法が何らかの逆転の鍵になるのは予想していましたが、ロード時間を利用してフリーズさせるという発想は、本当にお見事の一言で感心されられました。

 ゲームって、ロード時間をロードだとプレイヤーに悟らせないように、めちゃくちゃ工夫してるんですよね。最近のゲームはハードの進化もありロード時間が早いことが多いので、あまり意識したことがない方もおられるかもしれませんが、とくにディスクメディアに切り替わったばかりだった初代プレイステーションやセガサターンの時代は、フィールドで敵とエンカウントした時、戦闘が始まるまでのロード時間を稼ぐため、カメラがぐるぐる回るような演出を挟んでいたタイトルが多かったなぁ……と思いだしたりもしていました。当時はそんな事情があったとは、まったく想像していませんでしたが。

 しかし何よりすごいのは発案者のハガで、アマノの魔力をずっと温存させていたことと、城門をみた瞬間に迷わず駆け出していたあたり、結構前からこの作戦を思いついていたっぽいんですよね。


 一発勝負に出るにはあまりにも危険なので、おそらくは別の場所で同種のバグが起きたことを知識として事前に知っていたんじゃないかなと。その上で、真面目にデバッグをしていなかった酒井たちはそのバグの存在を知らなかったであろうと考えると、デバッグに真面目に向き合っていたかが戦いの勝敗を分けたという、実に本作らしい構造になっているなと思います。

 フリーズした酒井たちの意識がどうなったかの気がかりな点はあるものの、すべて丸く収まったか思いきや、まさか最後の最後で社長が再登場したのは予想外の展開。

 社長は身代わり石を使ったと説明していましたが、ハガが抱いていた疑問に対しては答えを濁していて、めちゃくちゃ胡散臭いです。社長はNPCとデバッグモードを使ってゲームの仕様についてかなり調べていたようだったので、下手をするとハガ以上にゲームの仕様を知り尽くしている可能性もありそう。

 NPCを蘇生させる方法を餌にアマノとの繋がりを持とうとしている狙いも謎ですし、かなり不穏な伏線が残った回となっていました。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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