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『この世界は不完全すぎる』11話感想。善意で始まったはずの物語は、やりきれない結末に。一方アキラたちとのお風呂シーンは、ある意味今までで一番刺激的だった(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』11話“アルバ”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』11話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

ヤマナカの言葉を思い出し、ゲーデルは一度は正気に戻るものの……【このふか】


 同じデバッガーであるヤマナカの手でパラメータをいじられたゲーデルの前に、撤退を余儀なくされたハガたち。

 ゲーデルは完全に正気を失って暴走しており、もう完全に手がつけられない状態。狂気に支配されている時の唸り声の迫力が凄まじく、やっぱり小林ゆうさんはすげぇ……と圧倒されていました。とにかく声の圧みたいなのが尋常じゃないですよね。

 無抵抗の村人や子供すら手にかけそうになったところで思い出されたのが、ゲーデルがかつてヤマナカにかけられけていた言葉。子供の姿が、かつての自分の姿と重なったのもあるのでしょうけど、ゲーデルにとってのヤマナカは、本当に尊敬できるいい兄貴分だったんでしょうね……。

 ゲーデルが正気を取り戻し、これで一件落着かに思われた矢先、いきなり血まみれになって倒れるシーンは、顔面の至るところから出血する描写も相まって、かなりショッキングな光景でした。



 ゲーデルの死因となったのはアキラが使用したデバッグモードのKILLコマンド。基本的には善人でありながらも、目的達成のためには手段は選ばないアキラの爆弾の一つがここで爆発してしまった感があります。

 ヤマナカがああなってしまったのを見た以上、デバッグモードを徹底して使わないハガの正しさは以前よりも理解できるようになってはいますが、ある程度安全と分かっている範囲であれば、生き残るための最終手段としてデバッグモードも利用するというアキラのスタンスも正しいと感じられるんですよね。自分が同じ状況になったら、ハガよりもアキラに近い考えを持ちそうだなと思います。

 しかも、これだけ村人を殺してしまった以上ゲーデルが村に戻ることは絶対にできないでしょうし、正規の手段でゲーデルのパラメータを元に戻せる方法が存在するとも考えにくい。ハガがやろうとしていたのは結局はその場凌ぎで、また問題が起きるのは目に見えていたんじゃないかとも思えます。


 一応、ハガたちの誰かがデバッグモードを使えば戻せる可能性はあったんじゃないかと思いますが、また何が起こるか予想できず、誰かがが大きなリスクを負う必要があり、それはそれで問題があります(そもそもハガはそれを承諾しないでしょうし)。

 村の戦士たちはほぼゲーデルに殺され、ゲーデルとの戦いでハガたちも消耗、さらにそのゲーデルも死んでしまったという最悪すぎるタイミングでの巨人の襲撃で、村はあっけなく壊滅してしまいました。すべての原因はヤマナカがゲーデルのパラメータを弄った点にあり、ヤマナカのちょっとした親切心が、村一つを滅ぼしてしまったと考えると、デバッガーがNPCに過度に干渉してしまうこと自体が本当に良いのかとも考えてしまいますよね。

 しかし、唯一フリーカメラモードからヤマナカが戻れなくなっていることを知っているテスラが気を失ったまま移動してしまったので、結局ヤマナカは当分あのまま放置されることがほぼ確定に。ヤマナカの肉体があの洞窟にあることを知ったゲーデルも死んでしまったので、あとから別のデバッガーが来てくれるという可能性も低いわけで……。村を滅ぼした戦犯とはいえさすがに同情しますね。

アキラのスキンシップがやたら過激だった理由が明らかに【このふか】


 意識が戻らないままのニコラを治すため、アキラの仲間がいるというサイ公国へと向かうハガ達。ニコラの意識が戻らないなかでもついついデバッグをしてしまうハガも相変わらずぶっ飛んでますが、その直前のシーンでNPCはNPCとして割り切っているシビアさを見せていたアキラが、ニコラだけは人間とまったく同じように扱っているのが興味深いところです。

 株式会社エンタメイションのアキラの仲間たちも登場しましたが、いきなりの溝口とのディープキスは予想外すぎて度肝を抜かれました。最初、二人は恋人同士なのかとも思ったんですけど、どうやら純粋にストレスを軽減するための手段の一つとしてハグやキスをしているだけだった様子。


 ハグはともかく、あそこまで激しいキスをするのはちょっとなと……思いつつ、よく考えると実の肉体ではなく、あくまでゲーム内のアバター同士なので、そのあたり現実と感覚が違うのはおかしくないのかも。混浴風呂も、自分の身体じゃなくアバター同士の裸を見せ合っていると考えると、そんなには抵抗感はなさそうですよね。

 ただ、それはそうとして、混浴シーンで描かれた下からのアングルで見るアキラの裸は、本作が始まって以来ある意味一番刺激の強いシーンにもなっていました。


 アキラたちの指導者であるアルバも登場。明らかにただのNPCとは違う雰囲気をまとっていましたが、テスラと同じメタAIで、しかもテスラの弟分であることも判明します。途中までの威厳に溢れた様子から、テスラに一発殴られてただの子どもに変わる瞬時の演じ分けは、さすが松岡禎丞さんといった感じ。

 一応、アルバはデバッガーたちを集めて悪質なデバッガーを取り締まらせようとはしていたようで、テスラの方針とも対立しているわけではなさそうですが、自らが主体となって悪質デバッガーを排除しようと動いているアルバと、あくまでも裏方としての役割に徹し、解決はハガたちプレイヤーに任せるテスラでスタンスの違いはあります。

 話し合いでこの溝が埋まるのか、それとも対立せざるを得なくなるのか。次回が気になるところです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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