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『この世界は不完全すぎる』10話感想。パラメータがカンストしてそうなゲーデル戦があまりにも無理ゲーすぎる。自業自得とはいえヤマナカはさすがに不憫だった(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 TVアニメ『この世界は不完全すぎる』10話“ゲーデルとヤマナカ”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『この世界は不完全すぎる』10話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

黒幕かと思いきや、実は悪い奴ではなさそうだったヤマナカ【このふか】


 9話のラストで、村人たちがゲーデルの暗殺を計画している事実を知ったハガ。

 ゲーデルも相当に問題のある行動をとっているのは間違いないんですが、対話も試みずいきなり暗殺はいくらなんでも過激すぎるので、とりあえず村人たちを諌めたハガはナイス判断でした。

 村人たちから事情を聞き、ゲーデルの過去やあの身体になってしまった経緯も明らかに。どうやらヤマナカには、アソビング社の面々のような悪意があったわけではなさそうなこともわかってきました。

 ただ、一晩でムキムキになって帰ってきたゲーデルの姿はちょっとしたホラーで、本気の悲鳴をあげて逃げ惑っていた村人たちのリアクションも十分に理解できます。


 身体が大きくなったあとのゲーデルは、まさに力に溺れて周囲が完全に見えなくなっているような状態。

 ただ、ハガが分析していたように、ゲーデルが村人たちを攻撃に巻き込んでしまったのが不幸な事故だとするなら、誰が悪いとも言えないので解決が難しそうな問題です。事態を解決するために手段を選ばないアキラと、できるだけ穏便に済ませたいハガのスタンスの違いも、ここではっきりと描かれました。

 しかし、そんなハガの想いも通じず、先走った村人たちは皆ゲーデルに返り討ちにあい全滅。村人たちの側もゲーデルを殺すつもりで襲ったでしょうから仕方ないとはいえ、殺し方があまりにも生々しく、さすがにドン引きしていたハガたちと同じような感情になっていました。ここまで正気を失っているとなると、ゲーデルを殺して終わらせようするアキラの考えの方に同意しそうになります。

 やはりゲーデルの身体の変化は、予想していた通りヤマナカがデバッグストーンを使ってパラメータを弄っていたことが原因の様子。ヤマナカとしては、ゲーデルのため良かれと思ってやったことだと思いますが、ここまでゲームバランスを逸脱したぶっとんだパラメータにする必要はなかったはず。


 結局、好奇心に負けてそれを破ってしまったのは、ヤマナカの大きなミスと言えます。ただ、もし実際にNPCのパラメータがいじれるとなったら、ついつい最大まで上げるとどうなるのか、試したくなってしまう心情もゲーマーとしてはすごく理解できますね……。

徹底してUIを排除したことで起きてしまったヤマナカの悲劇【このふか】


 ゲーデルが向かった先には、騒動の元凶とも言えるヤマナカを発見したものの、そのヤマナカは一向に動く気配がありません。

 ハガたちは酒井たちのようなフリーズを疑っていましたが、どうやらフリーカメラ状態から戻れなくなっている様子。フリーカメラモードを解除するボタンが押せないから、フリーカメラモードを起動した時点でもう詰んでるってあまりにも罠すぎます。

 今回ので改めて気づきましたが、ハガたちがプレイしている『キングス・シーカー・オンライン』って、VRMMOもののお約束演出でもある、空中に投影されるタイプのウインドウが一切出ないんですよね。没入感を増すために画面から極力UIを排除するのは、最近のゲームでも意識されているところですが、システムメニューすら存在しないというのはちょっと異常とも言えるレベルのこだわりです(結果、ヤマナカは犠牲者となってしまったわけですが……)。

 いち早くヤマナカの状態に気づいたテスラが、ヤマナカを助けるのかと思いきや、「諦めろ」と口にしてヤマナカのデバッグストーンを躊躇なく食べたのはビックリ。


 デバッグストーンは本人しか操作できないとはいえ、ヤマナカの指を他の人間が動かしてデバッグストーンを操作したりすればワンチャンあるんじゃないか……と思ったりもしたんですけど、テスラの判断があまりにも早いあたり、過去に同じようにフリーカメラモードを解除できず元に戻れなくなったデバッガーを知っていたんじゃないかという気がします。

 そして、錯乱したゲーデルがあまりにも強すぎました。ゲーデル本人は不正な力は使っていないとはいえ、パラメータを弄っていた時のヤマナカの様子からして、全パラメータがカンストに近い状態まで引き上げられている可能性が高いです。

 フィジカル的な強さで言うならハガたちが今まで戦ってきた相手の中でおそらく最強で、ゲーム内で遭遇したら無理ゲーと速攻で音を上げそうになる相手です。


 ラストシーンで泣きながらゲーデルに謝るヤマナカを見ていると、自業自得の部分もあるとはいえさすがにかわいそうだなと。

 フリーカメラモードを起動しようとしたのも、元々はゲーデルを心配して様子を見るためで(ヤマナカとしては、問題があればパラメータを元に戻すというのも前提で考えていたように思えます)、他人のためを思ってとった善意の行動が、全部裏目に出てしまった……というパターンなんですよね。

 ヤマナカが滝でゲーデルと会っている時の回想では、真面目にバグ報告をしていたような描写もあり、間違いなく善人に分類される人間だと思いますが、悪意だろうが善意だろうが、気軽な気持ちでデバッグモードを使うことの危険性を改めて感じたエピソードでした。

 こちらの攻撃が一切通用しないゲーデルをいかに止めるのか、そしてヤマナカはこのまま元に戻れないままなのか。続きが非常に気になります。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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