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AI VTuberユビちゃんは自分で『マイクラ』やホラーゲーム実況をして40カ国語をしゃべり、タッチにも反応!? ユビタスが目指す未来の技術とは【TGS2024】

文:電撃オンライン

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 クラウドゲームの最先端を走る企業・ユビタスのシニア・ディレクター中坪知幸氏へのインタビュー後編をお届け。目覚ましい活躍&発展を見せるAI VTuberのUbi-Chanのお話や“東京ゲームショウ2024(TGS2024)”の出展についてお聞きしました。

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 クラウドゲームやAI技術の最新状況をお聞きした前編に続き、AI VTuberが見せる未来の技術などをお届けします。

AI VTuberは40カ国語をしゃべり、自分で『マイクラ』やホラーゲーム実況をする時代。最新版Ubi-Chanは『Meta quest 3』に対応!【ユビタス】


――ユビタスさんは昨年のTGSでAI VTuberのUbi-Chan(ユビちゃん)を発表し、1年にわたって運営をしてきました。ユビちゃんに対する御社の取り組みや考え方を教えてください。

 弊社ではバーチャルヒューマンという形で開発しています。キャラクターと、事前トレーニングを積んだLLM(大規模言語モデル)とIPを連携させて、どんな質問にも答えてくれるシステムですね。

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 どんなものなのか皆さんにわかりやすくお伝えするために、弊社独自のAI VTuber・Ubi-Chan(ユビちゃん)を生み出し、いろいろな活動を行っています。

 一例として企業様のカスタマーサポートに利用できないかというお問い合わせをいただいて、Ubi-Chanのシステムを利用されているところもありますよ。


――Ubi-Chanの活動は見ていて面白いものが多いですね。

 Ubi-ChanはYouTubeに自分のチャンネルを持っていて、毎週さまざまな内容を配信しています。Ubi-Chanが実況配信するものもあれば、YouTube Liveでコミュニケーションを取るコンテンツもあります。

 まだ実験的に作っている状況で実用段階ではないんですが、自律的にゲームをプレイして、それを実況するコンテンツも作成させていただきました。『マインクラフト』を遊んで素材を集めたりするほか、ホラーゲームの実況なども行っています。

 対戦格闘ゲームなど、まだ複雑なゲームの自律プレイは難しい部分がありますが、レースゲームのプレイなどは目途がついてきています。ゆくゆくはファンの方と一緒に『スマブラ』なんかを実況プレイできるようなところを目指して研究を進めています。

 ほかにも絵を描くこともできますし、歌ったり、インタビューに答えたりもできます。 LLM次第というところはあるんですが、今後もいろいろな用途で実装を進められたら楽しいなと思っています。


――これからの活躍にも期待ですね。

 実はVRヘッドセット『Meta quest 3』対応のUbi-Chanを開発していて、とてもスゴイことになっています。Ubi-Chanが目の前に現れて、コミュニケーションを取れるんですよ。

 『Meta quest 3』対応のものもそうなんですが、最新のUbi-Chanは独自の透明なモニターに映して、いろいろなインタラクションをタッチ式で行えるインターフェイスも開発しました。ホログラムを見ているような臨場感を体験出来ます。

――御社ではメタバースの取り組みもされていますが、過去の事例や今後の展望も含めて教えてください。

 メタバースは、市場的には以前ほどの盛り上がりはないのかなと思っていますが、その可能性は各社とも試行錯誤を続けていて、弊社も皆様と協力して進めています。

 メタバースの問題はゲームと似ていて、いろいろなものを伝えたり、ユーザー体験を豊富にしたりすると、どうしてもリッチになってしまうんですね。リッチになるほどユーザー側のデバイスにも負担がかかりますし、リーチできる方が減っていくという、自家中毒的な状態が出ています。

 そのため弊社の技術を使って、より広いユーザーの皆さんにリーチできるようにすると言う試みが最近増えています。
 
 海外の事例ではありますが、『Bored Ape Yacht Club』などをリリースしているNFT制作会社の“Yuga Labs”さんと一緒になって、メタバース上での宝探しイベントを開催しました。昨年はアジアのフェスをメタバースで開催し、延べ30万人の方に接続していただきました。

 メタバースでリッチコンテンツをやりたいというお声に、クラウドストリーミング技術なども備えた弊社のソリューションはぴたりと合うのかなと思っています。

――確かに、クライアントで体験しようとするとハードルが高いコンテンツが多いですね。先ほどのAI VTuberにも関連しますが、個人的にメタバース空間で、コミュニケーションを取ると言う体験には、さまざまな可能性を感じます。

 そういったコミュニティづくりが出来るのも魅力ですね。ただそこには、なぜメタバースが日本で事業としてなかなか実装されてこなかったのか、という部分が深く関わっていまして。

 これまでも実在の街をバーチャル空間として再現し、コミュニティを作り、広告を出してもらってマネタイズ(収益化)していましたが、持続性がネックになっていました。サービス継続のためにも、いかにマネタイズするかが次へのステップになっていると思います。

 弊社ではスマホゲームにおいて、マーケティングのソリューションも提供したいと考えており、そことメタバースは相性がいいのではと思っています。

 例えば実況者の方のプレイを、メタバース空間に集まって観戦したり、自分たちもプレイしたりできる環境にして、そこでマネタイズできるような施策ですね。

――ちなみに御社で、独自のメタバースを運営するご予定は?

 自社運営の何かをという計画はありますが、今はリッチコンテンツのサポートをするのが主流です。

 過去の事例では、海外ブランドさんが弊社のソリューションを使って3Dのバーチャルファッションショーを配信したことなどはあります。デザインの凝りようがすごく、本来は高性能なクライアントが必要になるものを、クラウド技術を使うことでタブレットやスマホでも見られるように出来たという実例があります。

新クラウドゲームプラットフォームやテレビ番組への協力など、最新技術が広げる未来【ユビタス】


――ここからは、具体的な御社の取り組みについてのお話を伺っていこうと思います。直近ですと、新クラウドゲームプラットフォーム“TapFun”への参画が話題になりました。

 TapFunさんとは、昨年の夏ごろからディスカッションを進めてきました。創業者はもともとDMM GAMESで活躍していた片岸憲一さんで、ゲーム業界に深い知見をお持ちです。そんな片岸さんをはじめとした皆さんがクラウドゲームに可能性を感じ、専用のプラットフォームを立ち上げるということで、弊社にお声をかけていただきました。

 弊社としてもTapFunさんのビジョンに深く共感しまして、むしろ弊社の方から参画をお願いし、立ち上げに至ることが出来ました。

 今年の8月にプラットフォームをロンチすることができまして、第1弾としてクルーズ様の『プロジェクトゼノ (PROJECT XENO)』のクラウド版を発表させていただいた形です。

 リンクからすぐにゲームを始められるので、ユーザーのゲーム体験としても快適だと思います。UIも気を配って作ってくださっているので、とてもいいものが出来上がっているのではないでしょうか。


 今も水面下で多くのパブリッシャー様と打ち合わせが進んでいまして、これからどんどん弊社のソリューションを利用したタイトルが実装されていく予定です。

 弊社としてもプラットフォームの成長に期待し、フルコミットで協力させていただきたいと思っています。

――プラットフォームが出来ることで、クラウドゲーム化の検討もしやすくなりそうですね。

 プラットフォームの運営会社さんからお話があれば、弊社としてもご協力させていただきたいと思っています。実際にお引き合いもあります。

 ただ新たなプラットフォームを提供するのはハードルが高い部分もあります。プラットフォームごとの要件があり、弊社のソリューションがハマる、ハマらないのもありますが、よいご縁があれば挑戦していきたいと思っています。

――そのほか、テレビ東京に生成AI技術を活用した新番組宣伝用VTRを提供されています。テレビと生成AIの共存に向けたテストや施策も始まっているんですね。こちらはどのような経緯で、決まったのでしょうか?

 テレビ東京さんの宣伝部から、お話をいただきました。芸人であるロバート・秋山竜次さんの新番組“ペリー・キーのパーフェクト・ジャパン・ライフ・ガイド SHOGANAI”がスタートする際に、秋山さんはアジア圏のスターという設定なので、「本人が英語を話しているような映像を作ったら面白いと思うのですが、実現できませんか」とお話をいただいたんです。ぜひやらせてくださいと言うことで、作らせていただきました。

 秋山さんの話していることを自動翻訳し、ご本人の声のまま、リップシンクもするというリアルなものになったと思います。弊社としても、よい経験をさせていただきました。


――ほかにも、東京大学発ベンチャー松尾研究所と共同でAIデジタルヒューマンを発表されていますね。こちらは、どのような取り組みだったのでしょうか?

 松尾研究所さんが開発したLLMと、弊社のデジタルヒューマン技術、クラウドストリーミング技術、インターフェイス技術が連携したデジタルヒューマンを作りました。

 かなり有意義なもので、松尾研究所さんとは今新たな取り組みも進めています。

“TGS2024”の展示では、AIやクラウドゲームの現在地を知ることが出来る【ユビタス】


――“TGS2024”に出展されますが、今年はどのような内容になるのか教えてください。

 9月26日、27日のビジネスデイのみの出展ではありますが、小規模ですがスペースを用意し、AIのデモを公開します。新しいUbi-Chanや、AIのNPCを実装したゲームのデモをご覧いただけるようになっており、ゲームの内容は恋愛シミュレーション系です(笑)。

 最新AIの到達点を知っていただいたり、エンタメ領域でどういう実装があるのかというアイデアを、弊社のブースで得ていただけたら嬉しいです。

 もちろんクラウドゲームのデモもございますので、ご興味がある方は足を運んでいただけたらと思います。ミーティングルームもありますので、そのままお打ち合わせも可能です。

――最後に、今後のユビタスが目指していることについて教えてください。

 ゲーム・エンターテインメント領域で、AIの実装が出来るように弊社内で技術開発を進めていき、パートナー企業様にソリューションを実装していただけるようにしていきたいです。

 LLMの現在地としては、自然言語で理解できるようになってきています。しかし、新しい技術だけにAIを怖いというイメージを持つ方もまだまだ多いです。メディアで、ネガティブな報道をされることもありますし、そういう一面があることは事実です。

 弊社としては、皆さんが使いやすく、身近に感じられるようなソリューションを発信していきたいです。

 そのためにも開発中のMLLをより高性能化して行かなけれないけませんし、先ほどお話した自治体の例のように問題解決に利用できることを証明する機会を得られたらいいなと思っています。

 この先の展望として、AIはきっと皆さんの予想しない分野まで結びついていくと考えています。仕事だけでなく、例えばコーヒーショップで気分や天候にあわせてオススメを選んでもらって決済までできるような未来は、すぐそこまで来ています。

 弊社としては将来より複雑な社会言語、ロボット工学などの言語を身に着け、理解できるAIを開発したいです。そこから、人工知能の開発に進んで行けたらいいですね。

――その領域になると、SF作品の世界ですね。

 そうですね。実は弊社で、ロボティクス、ロボット事業者の皆さんといろいろな実験をしています。

 今は犬型ロボットの挙動制御の段階ですが、先々は介護ロボットであったり、モビリティ(移動)だったりの領域に活用出来ればと思っています。人間生活とロボット技術が融合する時は必ずきて、それを制御するのは人工知能になるはずです。

 生成AIは人工知能ではなく、そこに至るまでの学習手段です。最終的には、人工知能の開発を目指したいですね。

“東京ゲームショウ2024”開催概要とユビタスの出展内容


 ユビタスはホール5(05-C47)のAIテクノロジーパビリオン(ビジネスソリューションコーナー内)、および国際会議場(BM-11)のビジネスミーティングエリアに出展。

 9月26日、27日のビジネスデイのみの出展となり、クラウドゲームのデモのデモ、新しいUbi-Chanや、AIのNPCを実装した恋愛シミュレーションゲームのデモなどを展示予定。

  • 会場:千葉県・幕張メッセ(展示ホール1~11、国際会議場、イベントホール)
  • 2024年9月26日(木):ビジネスデイ10:00~17:00
  • 2024年9月27日(金):ビジネスデイ10:00~17:00
  • 2024年9月28日(土):一般公開日10:00~17:00
  • 2024年9月29日(日):一般公開日9:30~16:30
※一般公開日は、状況により開場時間が30分早まる場合があります。

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