電撃オンライン

『ガンダム ジークアクス』感想(ネタバレなし)。今しか味わえない衝撃を映画館で体験して欲しい作品。ぶっ飛んだマチュの言動には、あの『ガンダム』主人公に通じるものを感じた【Gundam GQuuuuuuX】

文:米澤崇史

公開日時:

 2025年1月17日から劇場公開がスタートし、大きな話題を呼んでいる『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』。

 すでに多くの『ガンダム』ファンが劇場で本作を楽しまれたかと思うのですが、ここではまだ劇場に足を運ぶか迷っている方向けに、極力ネタバレなしでの感想をお届けします。

[IMAGE]

「ちょっと『水星の魔女』っぽい?」と思っていた印象は、開始1秒で覆された

 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズで知られるスタジオカラーと、サンライズの共同制作による『ガンダム』シリーズの最新作となる『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、ジークアクス)。

 映画の公開前から、本作の感想記事を書くという話はしていたわけなんですが、劇場で映画を見終わった後「この作品の感想をネタバレなしで……?」と、普通の人とは違った方向で戦慄していました。

 ともあれ本作は、庵野秀明監督とともに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を手掛けた鶴巻和哉さんが監督、『エヴァンゲリオン』シリーズに『少女革命ウテナ』、『STAR DRIVER 輝きのタクト』の榎戸洋司さんがシリーズ構成を務め、さらに庵野監督も一緒に脚本に参加するという、事実上『エヴァ』シリーズのメインスタッフが手掛ける『ガンダム』ということで、注目を集めた作品でもありました。


 すでにTVシリーズとしての放送も決定しており、現在公開がスタートしているのは、劇場向けに特別編集された先行上映版となっています。なので言ってしまえば、しばらく待てばTVでも映画に近い内容が放送されるであろうにも関わらず、ここまで大きな話題を呼んでいるのには、やはり相応の理由があります。

 自分は長年『ガンダム』シリーズを追いかけてきたファンなのですが、作品を見た瞬間受けた衝撃の大きさ度合いでいうと、本作が歴代でもナンバーワンかもしれないと言っていいほどでした。

 最初に『ジークアクス』についての情報が公開された時、正直な話をすると、主人公が女子高生だったり、“クランバトル”というモビルスーツを使った決闘みたいな要素が存在してたり、「ちょっと『水星の魔女』と方向性被ってない?」と疑問を抱いたりもしていたんです。

 ところが、もう映画館で最初のシーンを見た瞬間、『水星の魔女』とは根本の部分から方向性の違う作品だとこれ以上ないくらいわからされました。

 中身については言及しませんが、今回上映された劇場版は2部構成になっていて、とくに『ガンダム』ファンとしての驚きに満ちていたのが前半のパート。ここについては、最初に見た時のサプライズをぜひとも楽しんでほしいところがあるので、とにかくネタバレを踏む前に見ていただいきたい、としか言いようがない部分になっています。

 公開から数日が経ったということで、この前半部のネタバレをほんの僅かに含んだ公式PVの公開も始まっており、そう遠くない内に、大々的なプロモーションも展開されるのではないかと予想されます。


 つまりは、劇場での初見の驚きを体験できる期間は、もう残りそう長くはないということ。

 ある程度ネタバレを知っても、絶対に予想しきれない展開や要素がある作品なので楽しめるのは間違いないんですが、事前情報なしだからこそ受けられる最初の衝撃は唯一無二であります。本格的な情報公開(とSNSでのネタバレ)が始まる前に、是非映画館で見ていただきたいなと。

 『ジークアクス』って、発表から劇場での先行公開までの期間が約一ヶ月とかなり早く、「このスピードは一体何なんだろうと」疑問を感じていたりもしたんですが、TV放映前にこのサプライズを劇場で提供するためだったと考えると、すごく納得がいっています。

発表時のイメージとかなりのギャップを感じたメインキャラクターたち

 個人的に印象的だったのが、キャラクターたちが発表時に受けていた事前のイメージとは結構違う、おもしろい性格付けがされていたことです。

 まず主人公のアマテ・ユズリハ(マチュ)については、『水星の魔女』のスレッタ・マーキュリーに続く女性主人公ですが、スレッタとはまったくタイプの違うキャラクターです。結構見た目は髪も短くでボーイッシュな雰囲気があるんですが、いわゆる男勝り系とも違っていて、オシャレでかわいい年頃の女の子といった感じ。

 『ガンダム』シリーズって、やっぱり戦争が身近にある世界観が多いこともあってか、こういういかにもな女子高生らしいキャラクターっていなかったので新鮮に感じました。


 ただ、内面には結構とんでもないものを抱えていて、一回見ただけだと「なぜその行動とった!?」とツッコミたくなったくらい発想が斜め上で、行動力もとんでもないです。

 『ガンダム』シリーズの主人公の中なら、一番近いのは『Zガンダム』のカミーユ・ビダンなんじゃないかと感じた……と言えば、シリーズファンにはそのぶっ飛び具合を理解してもらえるのではないかなと。

 声を担当されている黒沢ともよさんは、『響け! ユーフォニアム』の黄前久美子とか、思春期特有の揺れ動く女子を演じればピカイチの役者さんで、個人的にもナイーヴなキャラが多い『ガンダム』の主人公に合う声質をされていると昔から思っていたのもあって、これ以上ないくらいハマり役でした。

 マチュに関しては事前にイメージ通りだった部分とそうではなかった部分がそれぞれにあった一方で、もう一人のメインキャラであるニャアンは、事前に想像していた造形とかなり違っていました。


 “故郷を追われた難民で、非合法な運び屋をしている”という設定から、平和に暮らしてるマチュに対して戦争という世界の現実を突きつける、シリアスでクールなキャラなのかなと想像したりしていたんですが……こっちはこれ以上ないくらいに予想を外していましたね。

 むしろマチュよりもニャアンのほうが等身大というか、共感しやすいと感じる部分が多かったり、危なっかしくて放っておけない、気づいたら逆にお世話されているようなタイプ。見た目と中身のギャップが一番強くて、個人的に一番印象に残ったキャラでした。

 シュウジはクランバトルでマチュの相方になるキャラクターとして事前に紹介されていましたが、何よりも彼の乗っていたモビルスーツにまずビックリ。

 シュウジに関してはミステリアスで不明な点が多く、「見終わってもよくわかっていない」のが正直なところなんですけど、想像していた以上に物語の鍵を握りそうな存在で、男性ではあるんですが、『ガンダム』シリーズにおけるヒロイン的な要素を結構持っているのがおもしろいなと思いました。

スタジオカラーだからこその“作家性”や“癖”を感じられる『ガンダム』

 ビジュアルや演出面も印象的だった部分。キャラクターデザインを務める竹さんは『サン・ムーン』以降の『ポケットモンスター』シリーズや、西尾維新先生の『戯言』シリーズで知られるイラストレーターで、従来の『ガンダム』シリーズにはあまりなかった、ビビッドな色合いで表現される世界はかなり新鮮でした。


 このあたりのちょっと彩度高めな作画の雰囲気は『フリクリ』や『トップをねらえ2!』とも共通していて、街に描かれているアートのサブカル的要素や、クランバトルチーム“ポメラニアンズ”の面々のどこかコミカルでクセが強い感じとか、随所に鶴巻監督と榎戸さんのタッグらしいテイストが盛り込まれています。

 おもしろかったのは、後半が鶴巻監督や榎戸さんの色がめちゃくちゃ出ているのに対し、前半はどちらかというと脚本を担当した庵野監督のテイストを強く感じられること。

 『ガンダム』シリーズがここまで長く愛される作品になったのは、アニメの中で表現されてきた富野由悠季監督の作家性が大きいと個人的に思っているのですが、『ジークアクス』からも制作陣の作家性というか、一種の“癖”みたいな要素を明確に感じられました。

 作り手の「俺はこれが好きなんだよ!」っていう情熱が感じられるような作品って、やっぱり自然と引き込まれるんですよね。


 まさにスタジオカラーらしさに溢れた作品になっているわけですが、これが今後のTVシリーズで『ガンダム』らしさとどう融合していくのかは気になるポイント。映画で描かれたのはまだ序章という感じなので、このあたりはまだまだ未知数のところも多く、『ガンダム』ファンとしては期待もありつつ不安もあり……というのが正直な心境でしょうか。

 ただ、今まで見たことがなかった、『ガンダム』を見せてくれるのではないかという期待を抱ける出来になっていたのは間違いないです。

 本作は、『Gガンダム』とかとはまた違ったベクトルでのぶっ飛んだ挑戦の数々が盛り込まれた作品でもあり、ギリギリまで情報を隠した状態での劇場での先行公開という試みも、そのひとつになっていたんじゃないかと思われます。

 つまりは、TVアニメをリアルタイム放送で追いかけるのと同じで、『ジークアクス』を余すことなく楽しむには、今この瞬間に劇場のスクリーンでその衝撃を体験するのがベストであるということ。「どうせ後でTV放送されるし……」と言わず、一刻も早く映画館に行かれることをオススメしたいです。

米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

    本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります