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『クレール・オブスキュール:エクスペディション 33』体験レビュー。日本のRPGへのリスペクトを随所から感じたコマンドRPG【Clair Obscur: Expedition 33】

文:米澤崇史

公開日時:

最終更新:

 4月24日発売予定のPS5/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam/Epic Games Store)用ソフト『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)』のプレイレビューをお届けします。

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アクション要素を盛り込んだコマンドバトルがとにかく楽しい【エクスペディション 33】

 ベル・エポック時代のフランスをモチーフにした幻想的な世界を舞台に、革新的なターンバトルシステムを採用した RPGである『Clair Obscur: Expedition 33』。2月25日には、世界初となるプレイデモ体験会も実施され、筆者もそこで一足先に本作を体験することができました。

 なお、開発を担当するSandfall InteractiveのCEO兼クリエイティブディレクターのギヨーム・ブロッシュ氏と、COO兼プロダクションディレクターのフランソア・ムーリス氏へのインタビューも掲載しております。


 本作の特徴は、なんといってもその独自のバトルシステム。本作はコマンドバトル方式での日本のRPGを強くリスペクトして開発されているのですが、“リアクティブターン方式”と銘打たれたバトルシステムは、かなり独自性が強い内容となっています。

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 本作のバトルシステムを簡潔に言い表すなら、“本格的なアクション要素を組み込んだコマンドバトル”とでも呼ぶべきもの。

 キャラクターはそれぞれHPの他にAPというパラメータをもっており、通常攻撃を行うごとにAPが溜まっていき、APを消費することで様々なスキルを発動できます。さらに味方→敵の順番でターンが進行していくという、コマンドバトルとしては比較的オーソドックスな仕組みがベースにあります。

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 その上で、本作ならではといえるのが回避とパリィという要素。本作では回避とパリィ用のボタンが設定されていて、アクションゲームのようにボタンを押すと回避やパリィモーションが発生します。

 これらのアクションを敵の攻撃タイミングにあわせて使うことで、攻撃を完璧に防ぐことができます。パリィの場合、回避より少しタイミングがシビアな分、成功するとカウンター攻撃が発生して大ダメージを与えられるようになっており、これがめちゃくちゃ強力。パリィを成功させられるかどうかで戦闘の難易度が劇的に変わります。

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 スキルを発動した際には、タイミングにあわせてボタンを入力するQTE的な要素や、APを消費して発動できる射撃攻撃では、TPSゲームのようにエイムする要素(敵の弱点部位を攻撃すると大ダメージ)があったりと、アクションゲーム的な操作が多く盛り込まれているのが特徴です。

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 個人的に本作が秀逸だと思ったのが、パリィが完璧に決められるならどんな不利な状況からでも逆転が可能なこと。

 コマンドバトルだと、一度パーティの一人が戦闘不能になると、その場の回復だけで手一杯になり、攻撃のチャンスがないままただただ味方のリソースだけが削られていくような、実質“詰み”に近い状況になる……みたいな経験を誰もが一度はしたことがあるのではないかと思うのですが、本作は違います。

 例えパーティが一人だけになろうと、敵の攻撃をすべてパリィできればゲームオーバーになることはありませんし、パリィに成功するとカウンターで大ダメージも入るので、極論自分のターンに何もできなかったとしても、カウンターだけでボスを倒すことも十分可能です。

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 今回のプレイでも、仲間が倒され残り一人となり、一発でも食らったら全滅する……という、普通のRPGならもう諦めそうな状況に陥ったこともあったのですが、そこから敵の攻撃をパリィですべて捌き切って勝利した時には、脳汁が出まくっていました。

 このあたりのシステムはキャラクターの性能とも結びついていて、主人公であるギュスターヴは、パリィや回避、QTEなどのアクション系の入力を成功させるごとに“チャージ”の段階が進んでいき、“チャージ”が最大の状態で使うと凄まじいダメージを叩き出せるという必殺技的なスキルを所持しています。パリィや回避が決まれば決まるほど高い頻度で大ダメージを与えられるので、使っていてかなり楽しいキャラクターになっていました。

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 なお、筆者は基本パリィが苦手なタイプで、最近のアクションゲームは悲鳴を上げながらプレイすることが多いのですが、それでも本作のパリィはある程度安定して成功させられています。

 一部の攻撃は直前にどんなスキルを使ってくるかを表示してくれますし、基本敵のターンに取れる行動はパリィか回避のみ(ゲームが進むと、通常のパリィや回避ができない攻撃への特殊なパリィにあたるジャンプも追加されますが)なので、とにかくタイミングをあわせてボタンを入力することだけに全神経を注げるのが、パリィを決めやすい要因になっているのかなと。

 それでも敵によってはめちゃくちゃモーションが早かったり、いわゆるディレイみたいな攻撃を仕掛けてくることもあるので100%とはいかないですが(とくにタイミングを図りにくい魔法のパリィは難しめ)、アクションゲームが苦手な人でも、パリィが決まる爽快感はしっかりと味わえるようになっていると思います。

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 いわゆるノーマルにあたる難易度の“エクスペディショナー”以上からは、パリィを連続してミスると序盤でも結構すぐ倒されてしまうという、なかなか歯ごたえのあるゲームバランスでしたが、イージーにあたる難易度の“ストーリー”も用意されていて、そちらでは敵からのダメージが明確に軽減されます。難易度変更はいつでも可能なので、自分と同じようなパリィに苦手意識があるプレイヤーでも安心して遊べそうだと感じました。

グイグイ惹き込まれるストーリーや、懐かしのワールドマップといった要素も【エクスペディション 33】

 本作は自由度を重視したオープンワールドライクではなく、ストーリーに沿って様々な場所を順番に旅していく、ストーリー主導型のRPGでもあり、ストーリーも大きな見どころとなっています。

 本作の舞台となるのは“ルミエール”という架空の土地で、“ペイントレス”呼ばれる存在によって、一定の年齢以上の人間はその世界から消滅してしまうという呪いに掛けられています。本作の主人公であるギュスターヴもその呪いに掛かっており、残された時間はあと1年しかありません。

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 ギュスターヴは“ルミエール”の人々を救うために、“ペイントレス”を倒すための遠征隊のメンバーになるのですが、遠征隊は到着して早々に壊滅。ギュスターヴは命からがら生き延びるものの、周囲は“ネヴロン”と呼ばれる異形の怪物が跋扈しており、生き残りの遠征隊の仲間たちを探す旅をすることになる……というのが序盤の導入です。

 ギュスターヴは結婚しているのですが、すでに奥さんは呪いによって世界から消えてしまっている重い過去があり、全体的にシリアスで容赦のない展開が描かれます。冒頭で人々の希望を背負って出発した遠征隊が何もできずに壊滅していくシーンは、『進撃の巨人』を彷彿とさせるような絶望感もあり、この手の重厚なストーリーが好きな人にはかなり刺さる内容になっています。

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 また、本作は一応インディーズゲームという括りではあるのですが、映像が滅茶苦茶美しく、カットシーンもかなりの数が用意されていて見ごたえがあります。

 それでいて面白いのが、一昔前のRPG見られたワールドマップが存在ていること。ワールドマップを経由してそれぞれのエリアに入っていく、昔ながらのRPGの動線になっていて、次の行き先を示す細かいガイドがなかったり、脇道に逸れると宝箱的なアイテムが置かれていたり、映像は最新なのにどこか懐かしさも感じられるような作りになっています。

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 映像面も含めて、レトロな雰囲気を意図的に再現したタイトルは今も多いですが、映像とバトルは最新なのに、フィールドの作りやゲームデザインの部分で懐かしさを感じさせてくるというのは、なかなかない体験で新鮮でした。自分はゲームハードではPS~PS2の頃が青春で、RPGもめちゃくちゃたくさん遊んだ世代なのですが、本作からはまさにこのあたりの時代の日本のRPGの因子をヒシヒシと感じました。

 他にもユニークな点として、1キャラクターごとに最大3個まで装備可能で、いろいろなボーナス効果を得られる“ピクトス”と呼ばれるアイテムがあるのですが、固有のポイントを割り振ることで、他のキャラが装備している“ピクトス”の効果を複数人で共有できるという一風変わったシステムも存在していました。

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 武器にもキャラクターと同じくレベルが存在していて、一定レベルごとに性能が開放されたり、スキルツリーでキャラのスキルが増えていったりと育成に絡む要素が多く、いろいろな組み合わせを考えながらキャラクターを育成していく楽しみみたいなのもしっかりとありそうな予感がしました。

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 革新的なバトルにシリアスなストーリー、古き良き日本のRPGへのリスペクトなど、それぞれ刺さる人にはたまらない作品となっていると感じられた本作。4月の発売が非常に楽しみです。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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