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『鋼鉄帝国-STEEL EMPIRE-クロニクル』をレビュー。多くのゲーマーが熱中し、黙々とプレイした思い出深い横スクロールシューティングが復刻【電撃インディー#1004】

文:電撃オンライン

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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、メビウスから7月31日に発売されるNintendo Switch用ソフト『鋼鉄帝国-STEEL EMPIRE-クロニクル』のレビューをお届けします。

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 本作は、ホット・ビィが1992年に発売した横スクロールシューティングゲーム『鋼鉄帝国』の復刻版です。オリジナルの発売以降、携帯ゲーム機や家庭用ゲーム機でも続編がリリースされており、現在もこのジャンルの名作として知られています。

 本作はSwitchの機能を活用することで画面の見やすさなどが大きく向上しつつも、ゲームシステムやステージ、作品の雰囲気はそのまま。レトロな空気感を壊すことなく、最新ハードに適応させて復刻されています。

 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

『鋼鉄帝国』とは


 『鋼鉄帝国』は、1800年代を舞台に、軍事国家モーターヘッド帝国の侵略に対抗するシルバーヘッド共和国の奮闘を描いたスチームパンクな世界観の作品です。

 戦闘風景は、ゲームの世界ならではのフィクション感の強い描写ですが、登場する小型飛行機や飛行船などの兵器は、現実離れしているとは言いきれず、絶妙に現実とフィクションの狭間を感じさせます。

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 ゲーム全体として“とある戦記を描いた映画”のような雰囲気も意識されており、タイトル画面で流れる時代を感じさせるBGMにはしっかりと楽譜が用意され、非戦闘画面では映写機のカタカタという音が聞こえるなど、プレイヤーである私たちが兵器を操作することで映画の物語を紡いでいくという感触が、本作のひとつのテーマにもなっています。

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 1800年代にありそうな兵器が登場する世界観、という物語の映画をゲームにしたという設定、そしてその作品の復刻版という構成により、何層にも築かれたレトロ感は、ただ古めかしい雰囲気を演出するだけでは生まれない、味わい深さを感じさせます。

2種類の機体と特徴的な前後への攻撃


 プレイヤーが操作するのは、単葉機状の高速戦闘艇“エトピリカ”と飛行船状の攻撃戦闘艇“ゼッペロン”の2種類です。

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 “エトピリカ”は機動力が高く攻撃を避けやすい反面、耐久力が低く、“ゼッペロン”は機動力がない代わりに耐久力が高く、攻撃と同時に発射される爆撃の方向が少し変化します。

 個人的には、いわゆる弾幕ゲーに慣れている人は“エトピリカ”でテクニック重視のプレイを。不慣れな人はある程度のミスが許される“ゼッペロン”がオススメです。

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 『鋼鉄帝国』の攻撃方法は、横スクロール系の中でも少し特殊で、後方への攻撃も可能です。そのため、一般的な横スクロール系のゲームでは画面左側から敵が現れるのが主流ですが、本作では左右から現れる敵に対し、前後の攻撃をうまく使って倒していかなければなりません。

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 画面内の敵を一掃できる大技“スーパーボム”の使いどころも肝心です。考えなしに使うのは勿体ないものの、使う前に撃墜されてしまっては元も子もないため、有効な場面をしっかりと見極めたいところです。

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 本作のプレイヤー機は、このタイプの横スクロールでは珍しいレベルアップ制とライフ制を採用しており、道中でポイントを集めることで機体をレベルアップできます。上げたレベルに応じて、ノーマルショット、サブショット、オプションショットが強化されていき、この強化はゲーム終了時まで維持されます。

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同時配信の『鋼鉄帝国クラシック』は歴代作の盛り合わせ


 本作と同時配信される『鋼鉄帝国クラシック』は、歴代作品を収録したバリューパックとなっており、『鋼鉄帝国』のオリジナル版、携帯ゲーム版の国内版と海外版、そして同作のスタッフ陣が制作に協力した『オーバーホライゾン』を一度に楽しむことができます。

 どれも時代を感じるレトロさがありつつ、携帯ゲーム版と家庭用版では画面の大きさを意識した機体グラフィックの差異や、ドット絵の描き方の進化などから、時代とハードの歴史を感じることができました。

 特に携帯ゲーム版と家庭用版の違いは、どちらもSwitchという同じハードでプレイすることでより鮮明に見えるようになり、異なるハードでのプレイ時に違和感を減らそうとした開発陣の創意工夫を、今さらながら感じました。

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 『鋼鉄帝国クラシック』でプレイできるタイトルにはチート機能が用意されており、弾薬やボムの無限化、自機の無敵化などの設定が可能です。ゲーム性は大きく変わってしまいますが、ボムを連発して敵を殲滅する爽快感は、ストレス発散にうってつけです。

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 巻き戻し機能もあり、ステージ攻略の練習に活用できます。ハイスコアを目指す熱意のある人は、攻略方法の研究にこの巻き戻し機能を役立てられるかもしれません。

90年代のゲームブームを支えた名作が蘇る


 そもそも初代となるオリジナル版が発売されたのは1992年で、30年以上前のことです。今となってはシンプルすぎるとも言えるゲーム性ですが、現在もこうして復刻版がリリースされていることを考えると、当時の人々にとってトップクラスに楽しいゲームコンテンツとして記憶に残っていたのでしょう。

 筆者は直撃世代ではありませんが、幼少期にオリジナル版のある家にお邪魔して、長時間『鋼鉄帝国』をはじめとした横スクロール系シューティングゲームに熱中したのを覚えています。

 よく考えれば、まだ10歳にも満たないような少年から成人した大人まで遊べるというだけで、このゲームの懐の深さがうかがえます。シンプルだからこそ、世代を問わず楽しめる良さが生まれていました。

 その頃からゲームに触れ始めた経験が、今のゲーム好きな自分を築いたと言っても過言ではありません。ある意味、本作が自分のルーツになっているのかもしれません。

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 本作とは少し離れますが、2000年代になってもおもちゃ屋や娯楽施設にはさまざまなタイトルのアーケード版横スクロールシューティングが残されており、それをプレイするために足を運んでいた人がいたのを覚えています。

 歳を重ねた今だからこそ、昔遊んでいたゲームは何年経ってもおもしろいという、当時そこでプレイしていた大人たちのノスタルジックな感情を、少し理解できるようになりました。昨今では、そういった場も少なくなってきているように思われますが、こうしてSwitchで遊べる環境が用意され、そうした人たちのニーズを絶えず満たし続けてくれるのは嬉しいことです。

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 「このご時世に横スクロールシューティングはレトロすぎるのでは……」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、各ジャンルで現在人気を博しているゲームタイトルのルーツは、当時人気を誇っていた90年代の作品にあります。

 本作のような横スクロールシューティングは、続々と現れる敵を倒すというシンプルなゲーム性でありながら、なぜ人々を熱中させる魅力を生み出せたのか……? 実際にプレイしてみると、シンプルだからこそ続けて遊んでしまう中毒性、失敗したときの喪失感とリベンジしたくなる執念など、昨今のゲームの面白さとして挙げられる要素をしっかりと押さえていることを再確認しました。

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▲この“YES or NO”のコンティニュー画面を見て、リトライを選ばずにいられるゲーマーはいないでしょう。

 世代を問わず遊べる面白さは、今もなお健在です。筆者のように少しでも思い出がある方は、改めて本作をプレイしてみて、懐かしさを感じてみてはいかがでしょうか。

 シリーズを知らない方でも、シンプルな操作と奥深いゲーム性のおかげで、すぐに夢中になれる作品です。初めて触れる方も、この機会にレトロゲームの魅力を体験してみてください。


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