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『ガンダム ジークアクス』6話感想:普通になりたいニャアンと、普通を脱したいマチュの対比が秀逸。まさかあの作品からもキャラが登場するとは…!(ネタバレあり)

文:電撃オンライン

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 放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』第6話“キシリア暗殺計画”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ガンダム ジークアクス』6話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

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 ジークアクスを動かしていたのがニャアンだったことを知り、キラキラが自分とシュウジだけのものではなくなったことにマチュが激しく動揺する様子が描かれた第6話。

 6話では、まず初代『ガンダム』ではシャリア・ブルと一緒にブラウ・ブロに乗って戦死したシムスが登場しました。

 『ジークアクス』では、アムロがガンダムに乗ってないですし、キケロガはブラウ・ブロと違って複座ではなく単座式のようなので同乗することもなかったでしょうし、無事なのは納得のところ。見た目が一年戦争時代のイメージのままだったのが嬉しかったです。


 ちょっと気になったのは、シャリアの意図を推測するコモリの独白の中で、アナハイム・エレクトロニクスの名前がさらっと出ていたこと。

 アナハイムといえば、宇宙世紀の歴史を語る上であまりにも絶大な影響を与えた存在ですが、アナハイムが躍進したのは、一年戦争集結後にジオニック社を吸収したことが大きかったと思われますが、ジオンが勝利した『ジークアクス』の世界線ではジオニック社も健在。

 コモリは、ジオニック社と並ぶような形で名前を挙げていたので、元の宇宙世紀のようなアナハイム一強体制にこそならなかったものの、企業としてかなり力を持っているのは『ジークアクス』の世界でも同じようです。

 キシリアの護衛も兼ねてという名目でキケロガが運び込まれていたようですが、当のキシリア派は、元々ギレン派だったシャリアの存在をかなり警戒しています。6話でも仄めかされていましたが、やはりエグザべは最初からシャリアに対する監視役として、キシリア派から送り込まれてきたようです。

 一方、6話のラストシーンの後、マチュは結構ストレートに自分の居場所が奪われたことに対する憤りをニャアンにぶつけていたことも明らかに。

 ニャアンはシュウジを盾にしてしまったことに関しては「やってしまった」と思っっているものの、マチュがなぜニャアンに感情を爆発させたのかについては、いまいち理解しきれていなさそうな様子があります。

 ニャアンとしては、シュウジをマチュから奪おうなんて意図は一切なく、ジークアクスに乗ったのも、3人が一緒にい続けられるようにするためという考えからの行動なので、確かにそうなるのかなとも思うのですが……。


 今のマチュが抱いているであろう、“自分だけができると思っていたことを他人にアッサリとやられてしまった時のなんとも言えないもどかしさ”は、ものすごく共感できます。

 しかもマチュ自身は、ニャアンにそんな意図がなかったことも含めて理解はできているみたいなんですよね。ニャアンにほぼ非はなく、自分が悪いとわかっているからこそ、2人の前に顔を出せないんだろうなと。

 また、今回かなり印象的だったのが、ニャアンの部屋に“ジオン工科大学”と書かれた赤本が置かれていたこと。

 純粋に宇宙世紀に赤本が存在していたことがまず驚きで、参考書などの書籍はほぼ電子化されているイメージだったので、かなり意表を突かれました。

 『ガンダム』ファンとしては、「さすがに現代日本に寄せすぎでは?」という考えもよぎったんですが、この赤本があることで、ニャアンが大学に入りたくて勉強していたことが一瞬でわかるようになっていて、演出としてスマートかつ効果的だと思いました。

 しかもよく見ると、赤本が並ぶ棚の前には物が結構置かれているので、最近はあまり使ってないのかな? という推測もでき、買ったはいいものの結局難しくて諦めたとか、そもそも生活が苦しくて勉強どころではなくなった……とか、この本棚だけでもいろんな妄想が広がるようになっているのが秀逸です。

恵まれた生活を送っていても、満たされていないマチュ【ガンダム ジークアクス感想】

 そんなニャアンと対象的だったのが、Bパートでのマチュのシーン。

 今のニャアンは非合法な仕事に手を染めている、社会から逸脱した存在ではあるんですが、学校に行って勉強するという、いわゆる普通の生活に憧れています。

 対して、現在その普通の生活を送っているマチュは、日常でものすごいフラストレーションを溜めていて、そこから逸脱したいと思っているようなんですよね。

 マチュの母のタマキ・ユズリハは、娘からするとちょっとノンデリ気味なところはあるかもしれませんが、忙しい仕事の合間にもしっかり三者面談の時間も確保して、心から娘の将来を心配していて、親として本当に頑張っていると思います。

 歴代の『ガンダム』主人公の中でも、マチュほど恵まれた環境で暮らしているキャラクターってそんなにいないんじゃないかと。

 一方で、一般的には恵まれているとされる生活をしていても、当人の心が必ずしも満たされるわけではないのは、平和な国で過ごしている人間としては痛いほどよく分かります。

 この“持つ者”と“持たざる者”であるマチュとニャアンの関係性は非常におもしろく、いろいろな意味で対になるキャラクターとして設定されていることが、今回でより顕著にわかった気がします。


 シャリアからの接触があったことで、ポメラニアンズ側にも大きな動きが出てきました。

 アンキーが元ジオンというのは今までの素振りからしても納得のところでしたが、いかにジークアクスがヤバい代物かが、シャリアとの会話で確信できたんでしょう。

 シャリアはデータを集めてくれた謝礼を払ってもいいとまで言っていましたが、引き渡しが終わった後、不都合なことを知りすぎたアンキーたちが全員消される可能性も十分考えられるわけで、アンキーがマチュを即座に切り捨ててまで逃げる算段を整えたのは、冷酷ではありますが納得感はありました。

 ただ、ナブはそれに納得がいってない様子でしたね。ナブは当初からマチュがクランバトルに参加することに反対していましたし、その後も自分たちの借金返済のためにマチュを巻き込んだことに後ろめたさのようなものを感じているようにも見えました。

 アンキーやシャリアが自分の目的のためには容赦なく他を切り捨てられるタイプの大人なのに対して、ナブは自分の利益と良心の間で葛藤するタイプの大人として描かれているなと。

 本当にマチュのことを心配しているなら、アンキーがマチュを見捨てる計画を立ててといることも明かした上で、もうここに来るなと伝えるべきだったんですが、そこまでの勇気はなく、一応の警告はすることで自分の罪悪感を和らげているのは、悪人にも善人にもなりきれない弱さみたいな面も感じられました。

『Zガンダム』からまさかの出演を果たしたバスクとゲーツ【ガンダム ジークアクス感想】

 そしてなんといっても今回もっとも度肝を抜かれたのが、その後のバスク・オムとゲーツ・キャパ、『機動戦士Zガンダム』のキャラクター二人が登場したこと。

 直前にソドンのクルーが、連邦の強化人間の研究施設であるムラサメ研らしき話をしていたので、そんな予感は少しあったのですが、とくにバスクはデザインほぼ『Zガンダム』の時のままだったのもあり、姿を見た瞬間には「お前か!」と思わず声が出ましたよね。


 ムラサメ研の強化人間として、ドゥー・ムラサメという新キャラクターも登場。

 ムサラメ研の強化人間といえば、『Zガンダム』のフォウ・ムラサメが有名ですが、ムラサメ研の強化人間は被検体に割り振られたナンバーをもじった名前がつけられる法則があり、ドゥーはフランス語の“2”を指しているので、フォウよりも前に作られた被検体ということかなと思います。


 ゲーツ・キャパは、『Zガンダム』でも強化人間の付き添い役みたいなポジションでしたが、ゲーツの所属はロザミア・バダムに処置をしていたオーガスタ研で、ムラサメ研じゃないんですよね。

 ドゥーの強化され具合をみて、「ムラサメ研は普通じゃない」とドン引きしているのはおもしろかったですが、偽の記憶を植え付けてスペースノイドを憎ませたり、カミーユの妹と思い込ませて潜入させたり、人間としての尊厳を奪っていたロザミアへの所業を考えると「オーガスタ研のほうが非道なのでは?」とツッコミを入れたくはなりました(※『ジークアクス』の世界だと、まだそこまではやってないってことかもしれませんが……)。


 バスクたちが進めているらしいキリシア暗殺計画ですが、キシリアを殺すことに連邦側にメリットがなさそうだったのは気になったポイント。

 このまま放置していれば、ジオン内でギレン派とキリシア派での内紛が起こりそうな流れだったのに、キシリアが死ぬとギレン派でジオンがまとまり、付け入る隙がなくなるような気がします。

 とはいえ、バスクならそういう理屈を抜きに、ジオン憎しの感情や自分の功績を上げるのために行動しそうだな……と思うところもあります。『Zガンダム』でも、暴走に継ぐ暴走を重ねていたキャラなので、今回も連邦上層部の意向を無視して、独断専行で動いている可能性もありそうです。もしくは、ジオン中枢の人間関係やパワーバランスを把握できていないとか。

 今回も何かと不可解な行動をとっていた、シャリアの真意も非常に気になるところ。

 作中でもコモリにキシリア派、アンキーとありとあらゆるキャラから疑われていますが、実際のところかなり胡散臭く、裏でいろいろ手を引いているんじゃないか……と勘ぐってしまいます。

 6話ラストでは、軍警に追われたエグザべを救出するシーンがありましたが、明らかに助けに来るタイミングが良すぎるので、エグザべがキシリア派のスパイなのは見抜いていて、発信機や盗聴器なりで、その動向を掴めるようにしていたということなのかなと。

 ただ、スパイであることを知っているなら、結構なリスクを負ってまで、二度もエグザべを助ける行動をしているのか、尚更引っかかります。

 単に若いニュータイプであるエグザべのことを気に入っているだけなのか、シャリアの目的を果たす上でエグザべの存在が必要になるのか……どっちもありそうな気がしますね。

 次回は、今回存在が仄めかされていたサイコ・ガンダムらしき機体がサイド6内で戦闘しているような描写が確認できたり、マチュたちにとって過酷な展開が待ち受けている可能性が高そう。恐ろしくもあり、楽しみでもあり……次回の放送が待ち遠しいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。


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