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『デススト2』発売記念 小島秀夫監督インタビュー「歌も本作の重要なテーマのひとつ」「人との繋がりが密接になったことで"集団の中の孤独"を描いた」【DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH】

文:電撃オンライン

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 ソニー・インタラクティブエンタテインメントが6月26日に発売したPlayStation 5用ソフト『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』。

 その発売を記念したイベント「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in Tokyo」を前に、小島秀夫監督と複数メディアでの合同インタビューが実施されました。ゲーム内の演出や制作に関わる苦悩など、さまざまな視点から本作の裏側を語ったその様子をお届けします。

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人との繋がりが密接になったことで"集団の中の孤独"を表現した:『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』小島秀夫監督合同メディアインタビュー


――発売日を迎えた心境はいかがでしょうか

小島秀夫監督(以下、敬称略): 2019年に前作が出て、その翌年から準備したんですけど、すぐにコロナ禍となりリモートでの制作になりました。そして僕もちょっと病気してしまったりと、本当に大変な時期が重なりました。

 40年近くゲーム制作をしてきて一番のピンチだったんじゃないかと。なので、こうして発売を迎えられたことはうまく言葉にはできませんが「よくやったみんな!」という想いがありますね。

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――前作と反響の違いはありましたか?

小島監督:前作のほうが反響はあったと思います。なぜかというと、この世に存在しないタイプのゲームだったからです。

 また、僕のゲームを期待してくださった人たちが「『メタルギア』じゃないのか」とツッコんでくれたりとか(笑)。ただそれは、この時代でゲーム制作をするうえで意図した部分でもあります。

 今作に至るこの5年間で2,000万人の方に遊んでいただいたので、その土台の上に作ろうと思いました。

 前作ファンに喜んでいただきたいのは大前提ですが、テンポ感やシステム周りはかなり意識して変更しました。

 かといって『DEATH STRANDING』とはまったく違う感触のものを作ってはいけないと思っていたので、続編という範囲内でできることを意識しています。

――今作で挑戦した点はどこでしょうか?

小島監督:前作はサムが1人で山を越え川を越え、配達していました。すごく孤独な旅でしたが、今回は"マゼラン号"という母船、つまりサムにも帰る家ができたということです。

 船には徐々に仲間が増えていったり、ときには仲間同士のいざこざにサムが巻き込まれたりと今までになかったシーンがあります。

 前作ではポリゴン数やカメラなど技術的な制約もあり、3~4人で演技していましたが、今回は5~6人が集まって演技できるほど拡張したので、よりドラマ的な表現を目指せるようになっています。

――無口なサムに変わりお喋りな相方ドールマンが一緒に旅をしますが、このようなかたちとなった理由をお聞かせください

小島監督:いくつか理由はあるんですが、ひとつは僕がバディものが好きだからです。プレイヤーの疑問を解決してくれたり、緊張を解くジョークを交えたり、サムにはない役割を担当してもらいました。

 ただ、このドールマンが喋るさじ加減が非常に難しくて(笑)。

 最初はAIにボイスを取り入れて、サムの行動やリアクションなど、あらゆるものに反応するバージョンを作ったのですが、先々に起こることを全部言ってしまうためうるさすぎたんです。

 かといって反応を減らして喋らない時間が1時間でも空くと、マゼラン号に帰還した際にドールマンを壁にかけるシーンがあるんですが、そこで存在を思い出すほど影が薄くなってしまっていました。

 なので、そのちょうどよい塩梅を見つけるまで苦労しました。

――ホログラムではない生身の人間との関係性が強調されているように感じました

小島監督:今回サムには帰る家があり、そこにいろんなキャラクターがいて……と、いわゆる人間関係という厄介なものにサムが出くわす構図になっていますが、これはサムの"集団のなかの孤独"を描いています。

 本編にも関わることなのであまり詳しくは言えないですが、艦内でさまざまな人間ドラマが展開されるので、そこが前作との違いです。

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――インフラが整っていく快感が好きで、今作も国道の建設に勤しんでいましたが、今作ではさらにモノレールの敷設もありました。プレイヤーにどのように楽しんでもらいたいとお考えでしょうか?

小島監督:実は僕、あんまり国道建設をしないんですよ(笑)。カイラル結晶を入れるくらいで、人が作ったものを使うっていうスタンスなので。

 けれどもデータを見ると国道復旧に専念してる人は珍しくなく、そういうことであればと新たな建設物を増やしました。

 モノレールを作ったら大量輸送ができるし、自分も乗れるし、バイクも車も運べる。もちろん自分も乗れるので、非常に便利です。

 あとデータから見えるプレイヤーの傾向として、車やバイクを大切にする方が非常に多かったですね。最後まで修理して使い続けているようでした。

 僕は壊れたらそのへんに乗り捨てて、あるものに乗り換える主義だったんですが、今作では車両のカスタマイズもたくさん用意したんです。

 すると、いざ自分のカスタマイズした車両が破損すると無性に腹が立って(笑)。そういった部分も強化してありますし、前作から変わった部分でもあるのかなと思います。

――本作ではキャストが歌う演出が多くありますが、どのような意図が込められているのでしょうか?

小島監督:僕の中で本作はミュージカルなんです。本当は登場人物全員に歌ってもらうつもりでした。結果的に形は変わったものの、"歌"が本作の重要なテーマの1つであることは間違いありません。

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――随所に小ネタや遊び心を感じられるのが印象的でした。これらは小島監督自身が取り入れているのでしょうか? それともスタッフの方々が率先して仕込んでいるのでしょうか?

小島監督:明言しておきますが、こういう小ネタは僕が全部入れてます。スタッフに「入れて!」って言っても意味が通じずに知らん顔されちゃいますからね(笑)。

――長年クリエイターとして第一線を走り続けてこられましたが、なぜ作り続けるのでしょうか?

小島監督: トム・クルーズさんと一緒です(笑)。僕の人生は物作りに捧げていますし、それが僕の喜びなんです。

 体や脳が動き続ける限りは作り続けたい。周りに迷惑をかけるようになったら考えますが、基本死ぬまでもの物作りは続けたい思っています。

――監督は映画好きとして知られており、ゲームにも映画的表現を取り入れられていますが、逆にゲームでしか提供できない娯楽性についてどうお考えですか?

小島監督:カットシーンこそありますが、自分としては映画を作っているつもりはありません。

 たまに「小島は本当は映画が作りたいんやろ」とかいう人がいますが、そんなことはなくゲームと向き合ってます。

 ただ映画を観て育ったのでライティングやキャラの造形、演出などに影響が出ていると思います。

 映画作りではないことは常に意識してますし、遊び心も含めてゲームでしかできないことを考えていくのが基本です。

――最後にゲームを楽しみにしているファンに配達するべきメッセージをお願いします

小島監督: 配達するゲームですが、あまり難しく考えず、1つのエンターテインメントとして自由に遊んでいただければと思います。

 戦闘も建設も配達も、いろいろな遊び方を試してもらって、その先にあるストーリーを感じてもらえたら。テーマのひとつでもある"繋がり"の意味を感じ、何かを持ち帰っていただけたらうれしいです。

 それを皆さんの日常にも持ち帰って、皆さんも誰かの“配達人”になっていただければと思います。

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