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なぜボールスポーツとアクションゲームを融合させた?集英社ゲームズ×SAYIL GAMES『BAKUDO』が挑む新たなゲーム体験【BitSummit the 13th】

文:そみん

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 「投げる→キャッチする→投げ返す」という対戦感や爽快感がたまらない——そんな新感覚ボスラッシュアクションゲーム『BAKUDO(バクドウ)』の開発者インタビューをお届けします。
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 『都市伝説解体センター』のヒットが記憶に新しい集英社ゲームズの新作『BAKUDO』は、台湾のゲームスタジオSAYIL GAMES(セイルゲームス)が開発するもの。彼らが手がける『BAKUDO』は、学園SFの世界観にドッジボールの要素を取り入れた新感覚アクションゲームとなっています。


 主人公ユリアを操作して、次々と現れるボスと対峙し、球技と格闘が融合した対戦を繰り広げる『BAKUDO』は、7月18日~20日に京都で開催された(BitSummit the 13th(ビットサミット2025)にプレイアブル出展。ビットサミット会場で、ゲームディレクターのアーサーさん、UIとエフェクトを担当するタコさん、そして集英社ゲームズで『BAKUDO』のプロデューサーをつとめるワン・ジョナサン氏に話を聞きました。
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▲左から、タコさん、アーサーさん、ジョナサンさん。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

学生時代に出会った仲間たちとスタジオを設立。『BAKUDO』がSAYIL GAMESの初作品【BAKUDOインタビュー】


——まずはSAYIL GAMESを設立した理由やきっかけ、目指していることなどを教えてください。

アーサー:SAYIL GAMESは現在7人で形成されているスタジオなんですが、最初は5人でした。実はメンバーはそれぞれ大学で出会っていたんですけれども、最終的に卒業制作の展示会で全員が集まることができまして、お互いの作品が良かったので「これから一緒にゲームを作ってみないか」という話になりました。

 その後、スタジオを設立してインキュベータープロジェクトにも参加し、そこで『BAKUDO』のプロジェクトを始めました。『BAKUDO』がスタジオ設立後の第1作目になります。

——『BAKUDO』は学園SFの世界観にドッジボールのような球技を取り入れた、非常にユニークなコンセプトだと感じました。このゲームを開発することになったきっかけや、目指したコンセプトについて教えてください。

アーサー:1作目として何をつくるか、いろいろな案がありました。そんななか、たまたまなんですけれども、『銃夢(ガンム)』という漫画の実写映画(アリータ:バトル・エンジェル)の中にボールを使って戦う場面があったんですね。それを見て、「自分たちもそういったボールを使って戦うゲームを作ったら面白いんじゃないかな」とひらめいて、そこから『BAKUDO』を作り始めました。

 学園をテーマにした理由については、皆さんには体育の授業だったり部活動で、ボールに触れた経験が少なからずあると思うので、ボールと学園は関連性が高いと思いました。そうした方が皆さんが分かりやすいものにできるんじゃないかなと考えたんです。また、学園という舞台は“成長”というテーマにも繋がりやすいので、今回の熱い物語との相性も良かったんじゃないかと思っています。
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——確かにスポーツの動きやルールとアクションゲームを組み合わせるというのは面白い発想ですね。

アーサー:スポーツ(球技)とアクションゲームを結合させたのは、両者には共通点があると思ったからです。例えば、相手の動きを見極めて反応しないといけないという反射神経を求められる部分や、試合の中での緊張感といった共通項目に着目して、両者を融合させるというアイデアにたどり着きました。

——プロデューサーであるジョナサンさんは、『BAKUDO』の初期コンセプトを聞いたときにどう感じましたか?

ジョナサン:現在の市場にあまりないユニークなキーワードが多いので、ポテンシャルが高そうだなとワクワクしました。その反面、言葉で聞いたときにはそういった要素がどうやって1つのゲームになっていくのか、正直あまりピンときませんでしたが、実際に1対1で戦うテスト版をプレイしたら「面白い!」となりまして。その面白さを際立たせていくために、何度も議論を重ねてきました。

——今回の『BAKUDO』デモは1対1の対戦形式になっていますが、これは駆け引きをより楽しむための意図的な選択だったのでしょうか?

アーサー:ボクシングなどが近いと思っていますが、1対1にすることで、よりプレイヤーが1つのキャラクターに集中しやすくなります。それによってキャラクターの描写も強化することができますし、より緊張感を与えることができると考えました。

——確かに敵が2人いたら、一気に難しくなりますよね。1対1だからこそ敵の予備動作をしっかり見て対応できるし、同じ敵と戦い続けることで徐々に慣れていき、パターンを覚えていくという楽しさがありました。特にボールの軌道をキャッチするという部分は非常に面白かったです。今回のデモ版でもかなり遊びやすくなっていたと思いますが、今後はどのような進化を考えていますか?

アーサー:今遊んでいただいたのはあくまで基本的なものになっています。これからは例えば速度の変化を入れたり、ボールの軌道を変化させたりと、様々な要素を加えてより刺激的な挑戦ができればと思っています。

「アクションゲームとボールスポーツの融合は前例が少なく、苦労している」——オリジナリティを追求する開発の舞台裏【BAKUDOインタビュー】


——開発は順調でしょうか? もし苦労している部分があれば教えてください。

アーサー:しっかりと開発は進んでいますが、苦労している部分もあります。というのも、ボールスポーツとアクションゲームを結合させるという概念自体、これまであまり試みられてこなかったからです。

タコ:初期は、3ヶ月くらいで3つのプロトタイプを作って、すべて破棄するという過程もありました。最終的にようやく、ボールスポーツ×アクションゲームというコンセプトにたどり着いた感じです。

——通常のアクションゲームでは敵の攻撃を避けるものが多いですが、『BAKUDO』は基本的にボールをキャッチしなければならないので、軌道が見えにくいと遊びづらくなりますよね。今回の出展版ではボールの軌道が見やすくなっていて、予測しやすく遊びやすくなっていたと感じました。そこまで到達するのに時間がかかったのでしょうか?

タコ:そうですね。他のゲームと違って、キャッチする機能があるので、ボールの軌道をしっかり見せる必要がありました。プレイヤーがボールの動きを正確に判断できるよう、軌道を明確に表示することに注力しました。

——開発する上で特に気をつけている点などはありますか?

アーサー:ボールの動きなどについて、精細に作り込むことを重視しています。例えば、どのような軌道だとプレイヤーが見やすいか、どのようなボールスピードだとプレイヤーが対応できるかなど、かなり時間をかけて調整しています。

 また、操作性にもかなり力を入れています。キャラクターが俊敏に動けるよう設計しているのは、プレイヤーが相手の動きに対応できるようにするためです。そのためには、もっさりとした挙動ではダメなので、気持ちよく、かつ思い通りに操作できるよう、操作性やプレイフィールには特に注意しています。

 また、大きなポイントとして、直感的な対戦体験を提供したいと考えています。「これはこう対処してください」というような直接的なヒントを与えるのではなく、ボスのモーションを見て、次にどう反応すべきかを目で見て理解できるよう調整しています。
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——最初のボスの隙を見つけるのに苦戦しました。右側と左側で投げ分けるのが最初は分からなくて、何度かやっているうちに「あ、こっちがこの動きなんだ」と気づくのも楽しい発見でした。

アーサー:そうですね。試合の過程で相手の弱点を見つけ出す楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。ボスを設計する際には、プレイヤーが対応すべきボールの種類をあらかじめ決めておき、それぞれに異なる色やアイコンを付けることで、視覚的に区別できるようにしています。

 また、プレイ中にテキストも表示されますよね。例えば、タイミングよくキャッチすると「PERFECT」と表示されたり、スマッシュボールが命中すると「POW」と表示されたりします。これは見た目の良さだけでなく、プレイヤーへのフィードバックとしても機能しています。

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——なるほど。SAYIL GAMESさんは7人のチームとのことですが、少人数での開発だとコミュニケーションがスムーズで、調整もしやすいのではないでしょうか?

アーサー:基本的に10人や20人以上のチームに比べれば、コミュニケーションは取りやすいですね。ただ、私たちはコミュニケーションのあり方にも力を入れています。私はゲームディレクターとしてすべてを決めるのではなく、問題提起をして皆で議論するというアプローチを大切にしています。

——開発チームは全員オフィスで作業しているのでしょうか? それともリモートワークも取り入れているのでしょうか?

アーサー:オフィスとリモートと、半々くらいですかね。オフィス作業かリモート作業かは、各メンバーの希望によって変わります。それぞれ、自分が集中しやすい形で作業しています。例えば、私たちが隣で議論していると邪魔になることもあるので、そういう時はリモートの方が効率的だと判断してリモート作業を選ぶこともあります。

『テニスの王子様』や『イナズマイレブン』のような誇張された球技アニメから影響を受けた——日本のアニメ・漫画・ゲームとの関係性【BAKUDOインタビュー】


——グラフィックやゲーム性を見ていると、日本のアニメや漫画の影響を受けているように感じる部分もありましたが、いかがでしょうか? また、特に好きな日本のアニメや漫画、ゲームがあれば教えてください。

アーサー:我々は『BAKUDO』を“超能力スポーツ”と呼んでいるのですが、子どもの頃に見た『テニスの王子様』や『イナズマイレブン』のような、誇張された球技アニメから影響を受けています。また、『ペルソナ5』のような学園を題材にした日常要素を取り入れたゲームも参考にしています。先ほど言及した『銃夢』も、今回のスポーツ要素の参考になっていますね。

——ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えていただけますか?

アーサー:私にとって最も影響が大きかったのは『Outer Wilds(アウターワイルズ)』です。宇宙探索と謎解きを組み合わせたゲームなのですが、プレイヤーにあまりヒントを与えず、宇宙の中を探索しながら最終的な答えを見つけ出すという設計になっています。ゲームがプレイヤーに対して「これをしなさい」と指示するのではなく、プレイヤー自身が発見していく過程が大きな達成感をもたらします。プレイしていて、その精妙な探索や謎解きのデザインに感心しました。

タコ:私の場合は『ワンダと巨像』です。インディーゲームではありませんが、これが初めて触れたコンソールゲームだったということもあり、かなりの衝撃を受けました。

——両作品とも素晴らしいゲームですね。『Outer Wilds』は特に、自分で色々と工夫しながら考えていくというゲームの醍醐味を感じられる作品だと思います。ちなみにSAYIL GAMESのメンバーにとって、“ゲーム”とはなんでしょうか?

アーサー:私たちにとって、ゲームというメディアが他のメディアと異なる点は、やはりインタラクティブ性だと思います。そのため、プレイヤーの操作性にもかなり力を入れていて、プレイヤーがただ探索や戦闘をするだけでなく、ゲームの世界に没入できるように心がけています。

 だからこそ、あまりヒントを与えず、プレイヤー自身が色々なところを探索してこの世界のことを理解していく過程が重要だと考えています。
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——確かに、ヒントが多すぎるとやらされている感じになってしまうこともありますよね。自分で考えて攻略方法を見つけ出した時の喜びは格別です。そういう体験を大事にしているのですね。

アーサー:はい。ただ、あまりにもヒントがないとプレイヤーにとって負担が大きくなってしまうので、そのバランスは重要です。例えば、直接的なヒントではなく、環境を通じて伝えたり、キャラクターとの会話の中でさりげなくヒントを出したりするなど、より自然な形でプレイヤーをガイドするようにしています。そうすることで、プレイヤーとキャラクターの繋がりも強くなり、ゲームへの没入感も増すと思います。

「シングルプレイヤー体験を完成させてから、他のモードを検討したい」——今後の展望と開発方針【BAKUDOインタビュー】


——『BAKUDO』は現在ソロプレイ専用のゲームになっていますが、プレイヤー同士の対戦モードなどもアイデアとしてあったのでしょうか?

アーサー:開発の初期段階では確かにそういった話も出ていました。ただ、マルチプレイヤーゲームの市場はかなり競争が激しく、多くのプレイヤーはすでに主流のタイトルに時間を投資している状況です。新しい作品としてその市場に参入するのは、かなりリスクが高いと判断しました。

 また、チームの規模もそれほど大きくないので、まずはシングルプレイヤー体験をしっかり作り込んで、コアとなるゲームプレイと世界観を確立した上で、将来的に他のモードを検討していくという方針です。

——ゲームバランスはかなりシビアに感じましたが、難易度はこの方向性で行くのでしょうか?それとも、多少簡単にしたり、イージーモードを用意したりする予定はありますか?

アーサー:今回の出展でも、さまざまなフィードバックをいただけると思っていますが、アクションゲームに慣れていなくても『BAKUDO』の世界観が気になって、遊びたいという方もいらっしゃると思います。そういったプレイヤーのために、複数の難易度オプションを設計する予定です。

ジョナサン:私は全ボスをクリアできますし、各ボスは早ければ1分以内で倒せるようになっています。難しいゲームではありますが、ちゃんと遊んでプレイスキルが上達すればクリアできるバランスにはなっていると感じています。

——ユリアというキャラクターについても気になります。ストーリーモードなどは予定していますか? また、ボス敵の中にユリアのライバルになるような女性キャラクターは登場しますか?

アーサー:今回のシングルプレイは基本的にユリアがこの学園の中で成長していく過程を描くストーリーになっています。女性キャラクターに関しては、これから数名登場する予定ですので、期待していただければと思います。
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ジョナサン:『BAKUDO』のデザインは集英社ゲームズとして、私が紹介したイラストレーターと一緒に作り上げたものです。彼らと同じくらいの熱意を持って作ったデザインになっていますので、個人的にもとても気に入っています。

——最後に『BAKUDO』に期待するユーザーにコメントをお願いします。

アーサー:『BAKUDO』は私たちの第1作目であり、発表されてから多くの場所で熱烈な反響をいただいています。それに対して本当に感動していますし、もっと頑張りたいという気持ちになっています。

 『BAKUDO』は世界観もアートもかなり独特なので、それに興味を持ってくれたユーザーにしっかりと良いゲームを届けられるよう、これからも頑張っていきたいと思っています。

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