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万人に勧めたい『機動戦士ガンダム00』。TVシリーズ最高峰のハイクオリティな戦闘シーンや、グラハム・エーカーら個性的な敵キャラクターも魅力【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】

文:米澤崇史

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 『ガンダム』ファンのライター・米澤崇史がオススメの『ガンダム』作品を紹介する連載【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】。第2回は、『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』を紹介します。

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予備知識が必要ない初心者にオススメの『ガンダム』シリーズ作品【ガンダム00】


 『機動戦士ガンダム00』は、2007~2009年にかけて放送されていたTVアニメ。2010年には、続編となる映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -Awakening of the Trailblazer-』も公開されています。

 監督はアニメ版『鋼の錬金術師』や、後の『楽園追放 -Expelled from Paradise-』で知られる水島精二氏、シリーズ構成は『ガンダムビルドファイターズ』、アニメ版『僕のヒーローアカデミア』などを手掛ける黒田洋介氏が担当しています。

 ファンの間でも「最初に初心者に勧める『ガンダム』作品は何が良いか?」とよく話題になるのですが、その際に自分が必ず名前を挙げるのがこの『00』。初心者に真っ先に見てもらいたいと思っている『ガンダム』作品でもあります。


 『00』の特徴は、とにかくロボットアニメとしての完成度が全体的に高いこと。

 バンクをほとんど使わず、CGではなく手書きでクオリティの高い戦闘シーンがほぼ毎話に近い頻度で描かれていて、カッコイイロボットのアクションをこれでもかと堪能できます。

 とくに近年は『ガンダム』でも戦闘はCGがメインになりつつあるのもあって、「今後TVシリーズで、『00』レベルの手書きのメカ戦闘は見れないかも……」と思えてしまうほど。放送から15年以上経った今見ても、絵的にも近年の作品にまったく引けを取りません。

 また、近年では当たり前になりつつある、2シーズンにわけての分割方式(『00』の場合は2クール×2の合計4クール)での放送を採用した初の『ガンダム』でもあります。

 とくに『00』は、分割を前提としたストーリー構成になっていて、1期の終わりにもしっかりとしたクライマックスがあり、単体の作品としてストーリーがまとまっています。

 そのため、従来の4クールのTVシリーズ『ガンダム』にありがちだった、中盤の中だるみが一切ないので、サブスクでの一気見などにも適しています。

 『機動戦士ガンダム』から地続きである宇宙世紀が舞台ではなく、独自の歴史と世界観が設定された“オルタナティブ”シリーズ(昔は“アナザーガンダム”とよく呼ばれていました)なのも初心者にオススメしやすいポイント。『ガンダム』の知識が一切なくても楽しむのに支障がないので、初心者でもとっつきやすいと思います。

 ただ、少しだけ初代『ガンダム』のオマージュはあるので、初代『ガンダム』の知識があるとより楽しめるポイントが増える一面も。このあたりは、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を見ていると、すでにそのあたりの要素は抑えた状態になっているはずなので、『ジークアクス』の後に見る『ガンダム』としてもかなりオススメできます。

「俺がガンダムだ」など名言が次々と飛び出す【ガンダム00】


 本作の物語の始まりは西暦2307年。宇宙太陽光発電と軌道エレベータの建設により地球のエネルギー問題は解消されたかに思えましたが、その恩恵を受けられたのは“ユニオン”、“AEU”、“人類革新連盟”の世界三大国家群のみ。恩恵に預かれない国々はなおも貧困にあえぎ、様々な紛争が絶えず起こっていました。

 そんな中に現れたのが、“戦争根絶”の理念の元に、ガンダムを用いてあらゆる武力紛争に介入する私設武装組織“ソレスタルビーイング”。

 主人公である刹那・F・セイエイは、ソレスタルビーイングが所有するガンダムエクシアのパイロット(ガンダムマイスター)で、かつては少年兵として紛争の使い捨ての道具にされていたところを、“ガンダム”の介入により救われた過去を持っています。


 そんな刹那が度々口にするのが、本作を代表する台詞といっても過言ではない「俺がガンダムだ」。非常に有名な台詞なので、どこかで聞いたことがある方も多いでしょう。

 この言葉が初めて出た時、作中の登場人物と同じように視聴者の多くが「こいつは何を言っているんだ」困惑することになったのですが、ストーリーが進むにつれ、刹那がどんな想いでこの言葉を口にしたのかが分かるようになります。

 また、この台詞は『00』の物語全体のテーマにも関わっていて、最初は“迷言”のように聞こえたのに、作品を見終える頃には“名言”へと認識が変わるという、同じ台詞なのにまったく印象が変わっているという珍しい体験をすることができます。

 「俺がガンダムだ」の他にも、「狙い撃つぜ!」「万死に値する」「ところがぎっちょん!」などなど、今でも有名な名台詞が次々と飛び出すのも見どころです。


 物語の序盤は、ソレスタルビーイングが所有するガンダムが三大国家のモビルスーツよりも圧倒的な強さを誇っていることもあり、少し地味めな話が続くのですが、ファーストシーズン中盤、ソレスタルビーイングの別働隊であるチームトリニティが登場してから一気にストーリーが動き始めます。

 三大国家もガンダムに対抗できるモビルスーツを入手して、圧倒的な強さを誇っていたソレスタルビーイングがどんどん追い詰められていく絶望感もあったり、一気に面白くなってきます。

 個人的に『00』で一番好きなのが、このファーストシーズン中盤~終盤のあたりのエピソードでして、とりあえず1期中盤あたりまでは見て、視聴を継続するか判断いただきたいなと。

 少し地味めと書いた序盤についても、『00』の世界はどういう構造になっていて、ソレスタルビーイングがどういう立ち位置にいるのか、各組織のトップや軍人、一般の人々はソレスタルビーイングという組織をどう捉えているのかが非常に丁寧に描かれていて、積み重ねたものが後々に効いてくるような展開にもなっています。

 とくに一般人の代表として登場する沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィは、後々に物語のキーパーソンになっていったりもするので、振り返ってみると、ファーストシーズン序盤で描かれていた二人の日常は、非常に意味のあるシーンになっていたなと感じます。

グラハム、コーラサワーなど敵キャラクターも魅力的【ガンダム00】


 キャラクターの魅力というのも、『00』を語る上で欠かせない要素。

 刹那の兄貴分であるロックオン・ストラトスなどソレスタルビーイングにも好きなキャラクターはたくさんいるのですが、個人的に『00』でとくに推したいのが、三大国家側のキャラクターたちだったりします。

 中でもとくに好きなのが、ユニオンのエースパイロットであるグラハム・エーカー。初代『ガンダム』でいうシャア・アズナブルや、『新機動戦記ガンダムW』のゼクス・マーキスといった、正統派ライバルの系譜にあたるキャラクターです。


 グラハムの魅力は、なんといっても愛機であるユニオンフラッグへの強い思い入れを持っているところ。

 物語開始時点では、グラハムが乗るフラッグはユニオンが誇る最新鋭機で、三大国家の所有する中でも最高峰のモビルスーツではあるのですが、ソレスタルビーイングのガンダムはその性能を大きく凌駕しており、グラハムは圧倒的な性能不利を背負いつつガンダムと戦うことになります。

 にも関わらず、グラハムは序盤からしっかりとライバルキャラクターとしての存在感を発揮します。

 性能が劣るフラッグを改良しながら何度もガンダムと交戦し、撃破にこそ至らないものの、毎回のようにソレスタルビーイングの面々を苦戦させて一矢報いており、初代『ガンダム』でのシャアの名言である「MSの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる」を証明するかのような活躍を見せています(グラハム自身も、「MSの性能の差が、勝敗を分かつ絶対条件ではないさ」というシャアをオマージュした台詞を口にするシーンもあります)。

 中でもアツいのが、チームトリニティのガンダムスローネによって部下のハワード・メイスンが殺されてしまい、仇を撃つべく再出撃した第18話“悪意の矛先”。この回でスローネアインのビームサーベルを奪ってそのまま腕を切り落とすフラッグがもう最高にカッコイイんです。

 この回でグラハムが乗っていたカスタムフラッグのプラモデルが鬼のように売れたとされていますが、実際当時の自分も第18話の放送後、すぐにフラッグのプラモを買いに走った記憶があります。


 この後、グラハムはフラッグ以上に性能の高いモビルスーツに乗り換えられる機会を得るのですが、それを辞退し、あくまでもフラッグでガンダムに勝つことにこだわります。

 ガンダムに勝つだけなら乗り換える方が良いにも関わらず、自分の矜持を譲らずにフラッグに乗り続けるところに、ライバルキャラクターとしての美しさのようなものを感じました(カッコイイだけではなく、やたら芝居かかった言動で突飛な台詞を何度も口にする面白いキャラでもあるのも高ポイント)。

 あとは自称・AEUのエースであるパトリック・コーラサワーもめちゃくちゃいい味を出しているキャラクターです。

 コーラサワーは第1話で刹那の乗るガンダムエクシアに瞬殺され、その後もガンダムに挑んではやられていく、コメディリリーフ的なポジションなのですが、とにかく何度やられてもしぶとく生き残るんですね。


 やがて“不死身のコーラサワー”という異名がついたり、普通のキャラなら迷いや悩みを持ちそうな状況でも、コーラサワーだけは一目惚れした上官のカティ・マネキンに全幅の信頼を寄せ一切のブレがなかったり、話が進むにつれ「こいつは本当にすごいキャラなんじゃ……?」と印象が変わり始めます。

 グラハムのような見栄えのいい活躍こそないんですが、最終的にやられてしまうシーンでも、よくよく見るとコーラサワーの技量の高さが感じられるような戦闘描写がされていたり、ただのコメディ要員ではなく、カッコイイところもしっかりと描かれているのがとくに好きなところです。


 他にも、突き抜けた外道であるアリー・アル・サーシェスとか、初代『ガンダム』のランバ・ラルのような理想のナイスミドルなセルゲイ・スミルノフなど、出てくる敵が魅力的なキャラだらけ。

 それでいてソレスタルビーイング側のキャラもしっかり好きになれるのが『00』の凄いところで、敵味方ぞれぞれに正義があるという、『ガンダム』らしい魅力がこれでもかと詰まっています。

 シリーズの中でもとくに万人が楽しめる作品になっているので、まだ見たことがないという方は、是非ともご覧になってください。

 本連載では、引き続き『ガンダム』シリーズのオススメ作品を紹介していきますので、お楽しみに。

【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】バックナンバー(第1回)


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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