『魔界戦記ディスガイア』をはじめとした多くのゲーム制作を手掛け、喜多山浪漫名義で小説も執筆する新川宗平氏が、2026年7月14日に53周年(53歳)を迎えます。それを記念して、電撃オンラインではインタビュー連載“スーパーニッチの流儀”を連載中です。
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今回は“スーパーニッチの流儀”特別編として、新川宗平さんが日本一ソフトウェアの社長を退任したあとに覆面作家・喜多山浪漫として「小説家になろう」、「カクヨム」に投稿していたWeb小説『エトランジュ オーヴァーロード』(現在はキマイラ文庫で第一部を無料閲覧可能)に関するインタビューをお届けします。
キマイラ文庫で小説版を読む(無料)小説から始まり、コミック化、そしてブロッコリーより2026年3月26日(PC版は2026年初旬)にはPS5/PS4/Nintendo Switch/PC用ゲームとして発売されるまでにいたった『エトランジュ オーヴァーロード』の誕生秘話や見どころ、裏話を語っていただきました!
新川宗平:1996年、日本一ソフトウェアに営業職として入社。プロデューサーやシナリオライターとして『マール王国の人形姫』『魔界戦記ディスガイア』などの制作に携わる。2009年、同社代表取締役社長に就任し、2022年退社。同年、合同会社スーパーニッチを設立し、代表を務める。同時期から“喜多山浪漫”名義で小説『エトランジュ オーヴァーロード』を執筆&発表。ゲーム化などのメディアミックスに乗り出す。
索引
閉じる『エトランジュ オーヴァーロード』インタビュー。新川氏の復活劇を支えたものは“悪役令嬢もの”と“友情パワー”だった!?
『エトランジュ オーヴァーロード』は、いわゆる“悪役令嬢もの”というジャンルながら、反省せずにどこまでも悪役を貫く主人公・エトランジュの活躍を描いた本作。小説を皮切りに、コミカライズにゲーム化、楽曲の作成など多方面へのメディアミックスがなされています。
そんな『エトランジュ オーヴァーロード』はいかにして生まれたのか? そして、メディアミックス展開はどのように進められたのか? 新川氏へ直撃インタビューを行い、大いに語ってもらいました!
“反省しない悪役令嬢”の誕生と自身の独立とのシンクロニシティ
──まず『エトランジュ オーヴァーロード』を書いたきっかけや、核となる部分について教えてください。
最初のきっかけは、会社を辞める前から“悪役令嬢もの”が好きだったってことですね。異世界転生ものを読んでいくなかで“悪役令嬢もの”を知り、ちょっとおもしろそうだと思って読んでみたら、ドはまりしちゃって〈笑〉。
これって元々は乙女ゲームの派生ジャンルですが、不思議なんですよね。本来は男性にはマッチしにくい乙女ゲームのフォーマットがありながら、“悪役令嬢もの”だと男が読んでもまったく苦痛じゃないんですよ。楽しく読めちゃう。そこがおもしろいなと思いました。
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ただ“悪役令嬢もの”って、悪役令嬢が本当に悪い娘というわけではなく、それまで悪役だったキャラに善人の人格が転移して“いい人”になっちゃったり、「自分が悪うございました」みたいな感じで反省して人生をやり直したりするパターンが多いんですが、「え、そうなの?」という違和感が私の中に少しあって。
「悪役なら、悪を貫くほうがいいよね。じゃあ、反省しない悪役令嬢を作ろう」と考えたのが『エトランジュ』の着想です。
──死んだり転生したりしてゼロからやり直す“悪役令嬢もの”のシチュエーションと、新川さんの社長を辞めてフリーになったシチュエーションが重なる部分があるように感じたのですが、実際はいかがですか?
いやいや、自分自身が悪役だとは思っていないんですけど(笑)。
──ああ、いやいや! 悪役かどうかじゃなくて、『エトランジュ』は新川さんや社長を辞めた直後に肩書がない覆面作家として発表したので、地獄に落ちて権力などを失い、自分の力一本で新たな道を歩むエトランジュに対して、ある意味で“強くてニューゲーム”的な心情を重ねた部分もあったのかなと思いまして。
正直なところ、そこはそんなに意識して書き始めてはないです。ただ、実際に小説を書いていくと、自分の気持ちとリンクするところはすごく多かったですね。
「地獄に落ちたけれども絶対に負けないぞ」「絶対に楽しんでやる」「自分のやりたいことはあらゆる手段で突き通す」という強い意志など、自分で書いていて勇気づけられる部分もありました。
1回こっきりの人生、楽しまないと損だよねって。「人生2周目」みたいなところはすごくシンクロしましたね。
──激辛料理やスイーツなど、グルメの描写もよく出てきますよね。そこも実体験?
激辛料理が大好きかどうかはおいておいて、私自身、食べることが大好きなんです。元々『美味しんぼ』や『ミスター味っ子』などのグルメ漫画も大好きで。
日本一ソフトウェアの黒歴史(?)とも言われる『クッキングファイター好(ハオ)』も私が企画したタイトルですし。
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──『クッキングファイター好(ハオ)』は近年、再評価がされているとフォローしておきます(笑)。インパクトが強いゲームだったことは確かですが。
さておき、『マール王国の人形姫』や『魔界戦記ディスガイア』などでも大体食べ物にまつわるネタを入れています。バトルの掛け声で「スイーツ!」とか「かにみそ!」とか叫ぶのも定番になってますよね。
やっぱり食べ物や「美味しい」という感情は、人間の純粋な娯楽の一つだと思っているので、つい入れたくなっちゃうんですよ。
すべては“友情パワー”。小説からコミック、ゲームへの華麗なるメディアミックス
──『エトランジュ オーヴァーロード』は小説から始まり、コミカライズ、ゲーム化と様々な展開が行われていますが、ここに至った経緯をお聞かせください。
会社を辞めて小説家になろうと決意したときから、最終的にゲーム化まで持っていくことは強い意志としてありました。
とはいえ、それがいきなり実現するわけでもないので、まず小説を、読者のみなさんにきちんと評価してもらえるところまできっちり書き上げようと。そのあとに、イメージを視覚化するためにイラストレーターを決めようという流れになりました。
そこで、乙女ゲームの派生でありながら男性でも読める“悪役令嬢もの”ということもあり、男女ともに「かわいい」と思ってもらえる絵柄を描けるのは誰かを考えたとき、大塚真一郎先生しかいないと思い、アタックしました。
大塚先生も『Re:ゼロから始める異世界生活』などでお忙しい時期でしたが、小説を送ってみたら内容を気に入ってくださって。なんとか引き受けていただけました。
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コミカライズに関しては『電撃マオウ』さんに持っていきました。電撃マオウさんの創刊時に『魔界戦記ディスガイア2』の連載をさせてもらっていたご縁です。当時、一緒に仕事をしていた編集者さんが偉くなっていて、話を聞いてもらいやすかったというのも、本当に“ご縁”だなと感じましたね。
作家のみなさんが忙しく、選定はなかなか苦労したのですが、昔から付き合いのある漫画版『魔界戦記ディスガイア2』でご一緒した、へかとん先生はどうだろうという話になって。こちらのご縁とも、もう一度繋がって成立しました。これまた“ご縁”ですね。
そして、ゲーム化の企画はブロッコリーさんにプレゼンしました。ブロッコリーさんとは『うたの☆プリンスさまっ♪』や『神々の悪戯』『Z/X』などで一緒にお仕事をした経験がありまして。
乙女ゲームのブランドイメージがあるブロッコリーさんなら、男性ユーザーも取り込める良いタイトルになると思ったからです。これも二つ返事でOKをいただけました。
──開発のジェムドロップさんとはどのようなご縁ですか?
私が会社を辞めたタイミングで、日本一ソフトウェア時代の同期だったジェムドロップの北尾(雄一郎)社長が岐阜まで駆けつけてくれて。彼とはプライベートで一緒に遊びにいったり、結構長い付き合いなんですよ。
それで、2人で下呂温泉に一泊しに行ったんです。その時に「こういう企画を考えてるんだけど手伝ってくれない?」と話したら即答で引き受けてくれました。
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また、海外(北米・欧州・Steam)の展開は、古巣への恩返しの意味も込めて、NIS Americaにお願いしました。声優さんも、私のシナリオ作品に大抵出てくださる水橋かおりさんを起用するなどこれまたご縁で繋がっています。
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こんな感じで、ご縁が繋がっていき、本当にすべて“友情パワー”で成立している感じです。会社の看板が外れたら人が離れていくなんてよく聞きますが、そういうことは一つもなく、世の中、優しくできてるなあと感謝の気持ちでいっぱいです。
──ご縁と言えば、ホロライブとのコラボ(角巻わためさん、白上フブキさん)もそのうちの1つでしょうか?
あ、それは違います。推し活の結果ですね。
──ん? 推し活? なんと?
会社を辞めたあとにVTuber関連のお仕事をすることになって、いろいろ見て勉強していたら、いつのまにやら推しができていきました(笑)。で、どうせなら推しといっしょに仕事をしたいなと。思い切ってご相談したところ引き受けてくださったという経緯です。
──……職権乱用というか、公私混同のような?
ダメですかね? プロデューサーの仕事って、これぞ!と思ったアーティストやクリエイターを推す仕事でもあると思うんですよ。ですから、まったく後ろめたい気持ちはありません!(笑)
そんなわけで、角巻わためさんには主題歌とエンディングをお願いし、せっかくならと声優(スイーティア役)としてもご出演いただきました。角巻わためさんと仲良しの白上フブキさんにもアリア役として声優をお願いしまして。
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なので、完全に推し活に近い動きですね。私の力で推しを武道館へ連れて行くお手伝いができるなら、いくらでもやりますよという気持ちです(笑)。
こだわりの“SUSHIレーン”にミュージカル。ゲーム開発の経緯も明らかに
──ここからは発売が間近に迫ったゲーム版についてお聞きします。小説原作ということで、ストーリーやキャラクター性が強い作品として考えるとノベルゲームという着地になりそうですが、そうではなくアクションアドベンチャーになった理由は?
海外市場を積極的に狙いに行きたかったからです。テキストアドベンチャー(ビジュアルノベル)は翻訳コストの面で海外展開が難しいんですよね。また、近年は海外でビジュアルノベルというジャンルが再評価されてきていますが、今回の企画当時は、海外展開のハードルが高かったことが理由です。
さきほど言ったとおり、海外展開はNIS Americaに貢献したいという思いが強くて。そこで売りにくいジャンルは最初から外していて、RPGやアクションRPGなどほかのジャンルに絞っていました。
そんななか、ジェムドロップさんから提案された3つのアイデアのうち“SUSHIレーン”で遊ぶという案がおもしろかったんですよ。まず見た目がおもしろくて。
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あとはレーンに流れるものを変えたり、レーン自体の形を変えたりとか、遊びの幅を広げられそうな感じが容易に想像できたので、満場一致で採用になってそのままアクションアドベンチャーに決まりました。
──マルチプレイも早い段階から見えていたのですか?
最初はシングルプレイで進めていたのですが、開発が進めば進むほど、プレイ中のわちゃわちゃ感が楽しく見えて「絶対にマルチで遊びたいよね」となりました。とはいえ、開発コスト的には難しいところもあるし、必ずしもマルチプレイがなくてもゲームは成立するので、どうすればいいのか悩んでいたところ……ジェムドロップの北尾さんが「絶対にマルチプレイを入れたほうがいいですよ! “SUSHIレーン”は大勢で遊んで面白いシステムに仕上がっているんで!」と断言してくれまして。
しかも、「これは自分たちがマルチプレイとして作りたいんで、ジェムドロップの持ち出し案件として自主的にやります!」と。
──開発会社が自腹でシステムを増やすなんて……なかなか珍しいのでは?
完全に北尾さんの男気ですね。もちろんブロッコリーさんからも追加予算をいただいたのですが、足りない部分はジェムドロップさんが持ち出ししてくださったので、販売数に応じてジェムドロップさんに成果報酬が入る仕組みを作りましたので、ジェムドロップさんにしっかり利益を出していただくためにも、また恩返しをするためにも売らなくちゃいけません。読者の皆さん、ぜひ応援してください! 具体的にはゲームを買ってください!
なので、このゲームをたくさん売って北尾さんに恩返しをしたいなと、プレッシャーも大きくなっています(笑)。読者のみなさん、ゲームを買ってください!
──ストレートな表現ですが、本当に“友情パワー”なエピソードですね。ゲーム的には、ミュージカル要素も特徴的ですが、その導入理由は?
ゲームは総合エンターテインメントだと考えていますが、そのなかでも歌というものの威力はすごいと思います。それに、ミュージカル要素の入ったRPGだった『マール王国の人形姫』以来、20数年ぶりに北尾さんと組むならやっぱりミュージカルを入れようと。
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今の時代の技術力、北尾さんとジェムドロップの技術力を使ったら、すごいミュージカルシーンが作れるんじゃないかと思ったのも、理由の1つですね。
ちなみに歌詞については、「めちゃくちゃ作詞しなきゃいけないよな」と覚悟していたところ、ジェムドロップさんが「小説に元々あったセリフをそのまま歌にする」という手法をとってくれて。こういうやり方もあるんだと思って、ちょっと新鮮な気持ちになりました。
──これまではゲームとして書いたシナリオを小説にするような動きだったのに対して、今回はその逆で、小説として書いたものをゲーム用のシナリオにしていくことになったわけですが、いかがでしたか?
初めての試みでしたが、とてもうまくいったと思っています。最初に私が一人で小説を書き切るわけですが、完全に一人で、表現したいことや要素をすべて詰め込むので自然と熱量が高まります。
その熱量の高い小説を、今度はジェムドロップさんが熱量高くゲーム化してくれるわけですから、熱量×熱量でちょっと暑苦しいぐらい濃いゲームになりました(笑)。
──ああ、なるほど。これまでの新川さんのスタイルを考えると、ご自身でゲーム用のシナリオを担当する道もあったかと思いますが?
もちろん、そういうやり方もありましたが、ジェムドロップさんが率先して小説の良い部分を抜き出してイベントシーンを作ってくださったので、下手に私が手を出すよりもお任せしたほうがいいものになるという確信がありました。
また、独立した理由は自由にモノづくりをしたかったからなので、他のプロジェクトも同時に進行していました。発表済みの『デモンズナイトフィーバー』や昨年のゲームマーケットで発売したボードゲーム(『魔王クエスト』『うんこ探偵』)なども並行して作っていたので、ジェムドロップさんにお任せしたほうがいいところはお任せするというスタイルで開発しました。
原作小説は最終章まで全編執筆済み。ゲームではそのすべてが描かれる!
──原作小説は第1部まで公開されていますが、ゲームはどこまで描かれるのですか?
小説は全3部構成なのですが、ゲームは3部まで一気にやります。ゲームを遊んでもらう楽しみを減らしたくなかったので、小説の公開はあえて第1部(地獄編)で止めています。
──え! ゲームはてっきり第1部(地獄編)ベースで、その続きがちょっとくらい入るのかなと思っていたんですが……第3部まで、最終章まで全部楽しめるということですか!?
はい。キマイラ文庫で公開している小説の続きと言いますか、終わりまで全部、ゲームで楽しめます。
──ということは、第1部のラストで衝撃的なムーブを見せた、あの憎々しい“正ヒロイン”アンジェリーナと××したり、現世でがんばっていた忠義のメガネ執事ジュエルバトラー君の××なんかにも期待できちゃう!? てか、小説は全部書き終わっていたんですね。
はい、小説はすでにラストまで書いており、あえて止めていました。繰り返しになりますが、ゲームのためにネタを温存していた形ですね。
──書き終えている小説は、いつ公開するんですか? 早く読みたいんですけど。
そういう方は、ぜひゲームを遊んでください!
小説版の続きをいつ公開するかは検討中ですが、ゲームが発売されて、皆さんがクリアしたであろう半年とか1年後とかですかね、早くても。まずはゲームの形で物語を楽しんでほしいので。
──小説や漫画版のファンとしては、ゲームでその続きの物語を楽しむしかない状況です! では、最後にファンへのメッセージをお願いします。
私の復帰第1弾の完全新作ゲームになりますが、様子見や出し惜しみみたいなことは一切ありません。持てる力のすべてというか、“友情パワー”を含め全部盛り込みました。ジャンルはSUSHIレーンミュージカルアクションアドベンチャーという無茶苦茶なもので、なんというか寄せ鍋ではなく、闇鍋に近いところはあるかもしれないけれど、おもしろいと思ったものは全部詰め込んでいます。
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この作り方って、じつは『魔界戦記ディスガイア』を作ったときに似てるんですね。「何がおもしろいかもわからないから、とりあえずありったけおもしろいと思うのを詰め込もう」という感じの。ですが、今回は当時と違って私も経験を積んでいますし、精鋭ぞろいのジェムドロップさんがしっかりやってくださってるんで、計画的にハチャメチャなことができました。
スーパーニッチという会社の経営理念は、唯一無二のエンターテインメント体験を提供する、です。今回の『エトランジュ オーヴァーロード』は本作でしか味わえないゲーム体験というものがしっかり入っているので。ぜひそこを楽しんでいただきたいというふうに思ってます。
少しでも興味を持っていただけたら、私の復帰第一作の応援でも、ジェムドロップさんの男気を買うでも、角巻わためさんへのお布施でも何でもいいので、とりあえず手に取ってみてください。損はさせないつもりです。
そして、ブロッコリーさんからは「売れたら『2』を作っていいよ」と言われていて、すでに構想はあります。『2』ではとんでもない展開を考えているので、次を作るためにぜひ皆さん買ってください! 切実なお願いです(笑)。
──本日はありがとうございました。