アクワイアは、2022年9月29日に発売した、3DダンジョンRPG『残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-』のNintendo Switch、PlayStation 5に向けたメジャーアップデートパッチ“Ver.弐”を、10月10日に配信します。
これに合わせて開発を担当したカエルパンダのクリエイティブディレクター・奥田覚氏に、本作の制作経緯や“Ver.弐”についてのお話を伺いました。
これに合わせて開発を担当したカエルパンダのクリエイティブディレクター・奥田覚氏に、本作の制作経緯や“Ver.弐”についてのお話を伺いました。
“Ver.弐”の主な修正/変更内容
●全体の高速化を行いました。
●各種パラメータの調整を行いました。
・転職時のパラメータ減少量を元のレベルに応じて軽減するように調整しました。
・敵パラメータの調整を行いました。
・ダメージ量、魔法効果、アイテム効果、装備パラメータの調整を行いました。
・その他各判定時のパラメータ調整を行いました。
●蔵での操作にアイテムのフィルターやソート機能を追加しました。
●宝の箱の仕掛けを、自動的に事前に調べるように変更しました。
●UIの修正・変更を行いました。
・バトルでターゲット選択中、ターゲットの名称表示を追加しました。
・バトル中、魔法による効果ステータスウインドウへの表示を追加しました。
・味方ステータスアイコンに文字表記を追加しました。
・敵の前/後の表示を変更しました。
・装備選択中、キャラポートレート下部にレベル/職業/種族/善悪 の表示を追加しました。
・野営画面に、鎖宮の名称の表示を追加しました。
●武器や装備などの新規アイテムを追加しました。
●その他軽微な不具合修正を多数行いました。
クラシカルなシステムを、今風の絵作りや触り心地で届ける【残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-】
──あらためてとなりますが、そもそも『残月の鎖宮』を開発することになったきっかけや、目指したコンセプトについて教えてください。
元々アクワイアさんの方で白黒の和風世界観の『ウィズ(Wizardry)』ライクというコンセプトがあり、そのプロジェクトが試作途中でペンディング(保留状態)になっていました。そのプロジェクトの再開を模索されているというお話をうかがい、自分自身の出自(後述)の事もあって、ぜひカエルパンダでチャレンジさせていただきたく、コンセプトや世界観の再昇華含めてプロジェクトのリブートのご提案をさせていただいたのが起点となっています。
試作がペンディングになっていた理由のひとつとして、最初に作られたモック(試作段階のゲーム)が海外パブリッシャーの評価が良くなかった、といったことをうかがったので、日本人にはもちろんのこと、海外の方にも「面白そう」と思ってもらえそうな絵作りやシステムを軸に据えるかたちでコンセプトを練り直して、日本人から見たら『ウィズ』ライク、海外の方から見たら『D&D』や『パスファインダーRPG』などTRPGのデジタルゲーム化と見えるような建て付けを目指しました。
2010年頃からいわゆる海外のインディゲームを中心に、『ダンジョンマスター』クローン系の『Legend of Grimrock』のように、一度下火になったシステムや遊び方のゲームが今風な触り心地でリブートされて再評価されるといった動きを見てきたので、この手のジャンルもワールドワイドで再評価されるような目があるのではないかと考えました。
我々が関わる前のモックは画面や感触が少し2000年代のJRPG的な雰囲気だったんですよね。そこが海外のパブリッシャーからの印象悪かったのでは? と考えて、クラシカルなシステムであっても、絵作りや触り心地はモダンな雰囲気に見えるよう、今のハードに合わせてできるだけ横に広く使ったバトル画面や全体の画面構成をゲームUIを専門に手掛けられているグラフィック会社のエルエンジンさんと詰めていきました。
システムに関しては拡張するアイデアがいろいろとあったのですが、ハードな墨絵調という個性的な見た目や、システムが『ウィズ』ライクということもあって手に取る人を選ぶことが推測できたので、手に取ってくださった人ができるだけゲームについて来られるよう、ゲームのシステムの核になる面白い部分を残して、小難しくなりそうな要素は極力カットしました。
なるべく短い期間でしっかりバランスを取れる構造にしたかったという事情もあります。システムはファンタジーRPG王道ど真ん中って感じでまとめています。
舞台や世界設定、ビジュアルをまとめ直し、「我々ならこう作る」ってのが見えるプロトタイプを作成して、一定の評価をいただいて本制作に進んだ感じです。
墨絵調のビジュアルや世界観をフックに、システムはなるべく小難しくなく、現代のインターフェースと感触で、常に死と隣り合わせのバランスでヒリヒリできるみたいなところを特に重視しました。
このあたりを小細工せずに突き詰めればプレイ体験は普遍で、ワールドワイドで楽しんでもらえるものになるのではと考えました。
クラシカルなゲームシステムのゲームをモダンに再構築しているという意味で、自分は本作のことを、好きなヘヴィメタルのサブジャンルの名称から取って“ネオクラシカル・ダンジョンクロウラーRPG”と最近は呼ぶことにしています。
──墨というモノクロームで表現された世界・ビジュアルは非常に特徴的でした。そのコンセプトにいたった理由などがありましたら教えてください。
先ほどもお話したとおり、白黒のビジュアルで、さらに墨を使うというアイデアは我々が関わる前から既にアクワイアさんの方にありました。
最初に話をうかがった時は、Nintendo Switchで動作するモックとシナリオと墨絵調で試作された敵グラフィックも3体くらいあった状態で、試作の敵のビジュアルはアクワイアの遠藤社長がかなりこだわって細かくディレクションされたとの事で、既に捨てるのは勿体無いくらいカッコ良かったので敵の見た目はこれをリファレンスとして使わせていただく事にしました。
それ以外の部分に関してはモックのプログラムは使えないとの事だったのと、シナリオや設定等は我々がリブートして制作を進めていく中で逆に足枷になりそうだと感じたので、遠慮なく捨てさせていただきました。
弊社で作る事になってから引き継いだものは敵3体のグラフィックで、一切のレガシーを引き継がず完全にイチから構築しています。
アクワイアさんの方にあったアイデアは“和風の世界観で白黒のビジュアルだから墨をモチーフにした”くらいの雰囲気でしたので、できればもう少し捻りたいなと思い、単に見た目で奇をてらっただけみたく見えないよう、更に1~2段階踏み込んで「なんで墨絵調なのか?」「墨である事に意味がある」を世界観や舞台装置含めて再昇華していったという感じです。
最初は色のなくなった世界で赤とか青とかのボスを倒すと少しずつ色が戻っていくというコンセプトも考えたのですが、モノクロがカラーになることに墨は関係ありませんし、色が戻った後のビジュアルを別途に作るとお金が掛かるなぁ(笑)とか、現実的な作りやすさなども考慮しながら煮詰めていった結果、「墨の呪いに侵食された世界」というのが一番しっくりきました。
このあたりの大枠の設定を考えながらシナリオライターさんの選定も進めていきました。売りやすさや拡散力を考えると、こういうシナリオは有名なラノベの作家さんとかにお願いするのが順当だと思いつつも、そういった作家さんが普段使ってる筋肉だけで書けないような、できれば原子レベルで根っこの世界観から考えてくれる方とやった方が世界観の説得力が増すかなと思い、ゲームだとたぶん全然なじみが無いと思いつつ、劇作家の西田シャトナーさんへお声がけしました。
シャトナーさんへメールでプロジェクトの概要と“墨の呪い”のアイデアをお伝えしたら、「墨は生物が死んで炭化しないと生成しないものなので怨念が乗り移って暗黒物質化するとかはあり得るんじゃ無いか」みたいな、ものすごい長文の熱いメールが返ってきまして、「これはもうお願いするしか無い!」と、やりとりを進めながら、最終的な“滅びの墨”の設定に落ち着きました。
先ほどもお話したとおり、白黒のビジュアルで、さらに墨を使うというアイデアは我々が関わる前から既にアクワイアさんの方にありました。
最初に話をうかがった時は、Nintendo Switchで動作するモックとシナリオと墨絵調で試作された敵グラフィックも3体くらいあった状態で、試作の敵のビジュアルはアクワイアの遠藤社長がかなりこだわって細かくディレクションされたとの事で、既に捨てるのは勿体無いくらいカッコ良かったので敵の見た目はこれをリファレンスとして使わせていただく事にしました。
それ以外の部分に関してはモックのプログラムは使えないとの事だったのと、シナリオや設定等は我々がリブートして制作を進めていく中で逆に足枷になりそうだと感じたので、遠慮なく捨てさせていただきました。
弊社で作る事になってから引き継いだものは敵3体のグラフィックで、一切のレガシーを引き継がず完全にイチから構築しています。
アクワイアさんの方にあったアイデアは“和風の世界観で白黒のビジュアルだから墨をモチーフにした”くらいの雰囲気でしたので、できればもう少し捻りたいなと思い、単に見た目で奇をてらっただけみたく見えないよう、更に1~2段階踏み込んで「なんで墨絵調なのか?」「墨である事に意味がある」を世界観や舞台装置含めて再昇華していったという感じです。
最初は色のなくなった世界で赤とか青とかのボスを倒すと少しずつ色が戻っていくというコンセプトも考えたのですが、モノクロがカラーになることに墨は関係ありませんし、色が戻った後のビジュアルを別途に作るとお金が掛かるなぁ(笑)とか、現実的な作りやすさなども考慮しながら煮詰めていった結果、「墨の呪いに侵食された世界」というのが一番しっくりきました。
このあたりの大枠の設定を考えながらシナリオライターさんの選定も進めていきました。売りやすさや拡散力を考えると、こういうシナリオは有名なラノベの作家さんとかにお願いするのが順当だと思いつつも、そういった作家さんが普段使ってる筋肉だけで書けないような、できれば原子レベルで根っこの世界観から考えてくれる方とやった方が世界観の説得力が増すかなと思い、ゲームだとたぶん全然なじみが無いと思いつつ、劇作家の西田シャトナーさんへお声がけしました。
シャトナーさんへメールでプロジェクトの概要と“墨の呪い”のアイデアをお伝えしたら、「墨は生物が死んで炭化しないと生成しないものなので怨念が乗り移って暗黒物質化するとかはあり得るんじゃ無いか」みたいな、ものすごい長文の熱いメールが返ってきまして、「これはもうお願いするしか無い!」と、やりとりを進めながら、最終的な“滅びの墨”の設定に落ち着きました。
オープニングムービーのテキストは、プロジェクト最初期にシャトナーさんに書いていただいたプロローグのテキストほぼそのままで、最初にこれはイケる! となった設定を最後までブレずにやりきった感じです。
ただ、墨で炭素であることに意味がある設定なので英語のローカライズで“墨”が単に“INK”となっている点に関しては、もう少しどうにかしたかったという思いがありますね(苦笑)。
──あわせて、本作の世界観がどのように生まれたかも聞かせてください。
和風の世界観ではありますが、日本の特定の時代や場所を舞台にしてしまうと、何かと難しい(笑)ものがあります。
例えば、「この時代にこういうものがあるとおかしい」などのガチガチな時代考証的なことを難しく考えすぎて、作る上での自由度が減ってしまうのが嫌だったのと、プレイヤーにも教養を求めずそれぞれのファンタジー世界観を当てはめて楽しんだりできるものの方が良いんじゃ無いかという考えもあり、魔法もあって、エルフやドワーフとか定番の種族もいる、『指輪物語』的なハイファンタジー世界観と江戸時代初期~中期くらいを融合したような、ファンタジー感の強い本作オリジナルの世界を舞台にする事にしました。
この世界で、どういった敵やアイテムが出てくるか、という設定に関しては、TRPG落語などを演目に持ち、ハイファンタジーやウィズが大好きで、日本の妖怪などにも造詣が深い落語家の三遊亭楽天さんにお手伝いいただきベースを固めていきました。
テキスト描写に関してはあえて解像度を上げすぎず、想像の余地があるよう行間を持たせるようにしています。
和風の世界観ではありますが、日本の特定の時代や場所を舞台にしてしまうと、何かと難しい(笑)ものがあります。
例えば、「この時代にこういうものがあるとおかしい」などのガチガチな時代考証的なことを難しく考えすぎて、作る上での自由度が減ってしまうのが嫌だったのと、プレイヤーにも教養を求めずそれぞれのファンタジー世界観を当てはめて楽しんだりできるものの方が良いんじゃ無いかという考えもあり、魔法もあって、エルフやドワーフとか定番の種族もいる、『指輪物語』的なハイファンタジー世界観と江戸時代初期~中期くらいを融合したような、ファンタジー感の強い本作オリジナルの世界を舞台にする事にしました。
この世界で、どういった敵やアイテムが出てくるか、という設定に関しては、TRPG落語などを演目に持ち、ハイファンタジーやウィズが大好きで、日本の妖怪などにも造詣が深い落語家の三遊亭楽天さんにお手伝いいただきベースを固めていきました。
テキスト描写に関してはあえて解像度を上げすぎず、想像の余地があるよう行間を持たせるようにしています。
敵のグラフィックに関してですが、先方で行われていた試作のやり方を踏襲すると当初はコスト的にトータルで30~40体くらいしか作れなさそうでした。
自分がプレイヤーの立場でこのジャンルをプレイするなら、やはり敵グラフィックは沢山あればあるほど嬉しいので、本質を押さえつつ、要らないところは削って、色々やりくりしながらなんとか100体以上作れる体制を整備していきました。
キャラクターのデザイン、墨絵調へのレタッチ、モーション作成を完全に分業にして、和洋関係無くハイファンタジー系のクリーチャーに強そうで、有名なRPG作品にまだあまりかかわられていないプロフェッショナルなイラストレーターさんを色々探している中から森野ヒロさんを見つけてキャラクターの原画をお願いしました。
墨絵調へのレタッチはプロトタイプで確立されていた画風に寄せてもらう感じで、いろんなグラフィックの会社さんでやっていただきました。最終的に敵のグラフィックは差分込みで約150体、細かい差分までカウントするともっと用意できています。
森野さんには当初は敵キャラクターだけをお願いする予定だったのですが、色々あってプレイヤーも描いていただく事になり、本作の為に300点くらい絵を描いていただいたかと。
ゲームで出てくるグラフィックはすべて墨絵調にレタッチされているので、森野さん本来の画風とはちょっと違うのですが、繊細かつ大胆、硬軟巧みに伝統的なモンスターや日本古来の妖怪や人物をアレンジした本作のキャラクターデザインは森野さんあってのものです。
敵のモーションはどうしてもコストがかかってしまって、全体の半分作ったくらいのときにモーションつけるのをやめとけば良かったと、めちゃくちゃ後悔しました(笑)。本作のグラフィックのコストの2/3以上は敵のグラフィック関連ですね。
予算的にやみくもにリテイクも出来ないので、リテイクしてどうしても気に入らないところは自分で修正しました。今制作中のDLC用の敵キャラは奥田自身が墨絵調にレタッチしているものもあります。
ちなみに、プレイヤーキャラの方は森野さんの原画を元に、墨絵と漫画の心得のある苧川葉津季さんという作家さんに実際に墨で描いていただいたものを取り込んでいます。
──スーパースィープの江口孝宏さんによる楽曲も非常に秀逸ですが、音楽関連で開発中のエピソードなどがありましたら教えてください。
サントラのライナーノーツなどで何度かお話をしていることですが、音楽に関しては個人的にすぎやまこういち先生のドラクエのBGMに対する考えの薫陶を受けており、本作のような特定のサイクルを繰り返し続けるタイプのRPGなどでは、常にプレイヤーの気分を盛り上げてくれて、それでいて何度聞いても飽きない、聞き減りしない曲が重要だと思っています。
そのなかでも特にゲーム中一番よく聞く通常バトルの曲はとくに重要で、カッコ良くてテンション上がる曲、それでいて出しゃばりすぎない曲が理想だと考えています。江口さんも同じような考えで、まさにそれを体現した曲になっていますね。
(弊社で作った)プロトタイプで、既にバトル曲メロディーやアレンジ方向性など曲の骨格は出来ていたのですが、そこから2年の開発期間をフルに使って磨き上げられており、4年近く聞き続けてるけど未だに飽きないのでバトル曲の傑作だと思っています。ちなみに通常戦闘曲は最初のラフの前にセルフ没が10曲くらいあったと聞きました。
アートやデータ周りの最終的なアウトプットに関しては、かなり細かくディレクションしてて、最終的にほぼ奥田自身でかなり手を加えていたのですが、サウンドに関しては全曲毎回想像を超えるようなものが上がってきたので、最初にイメージのすり合わせを行ってからは江口さんへほぼお任せでした。数少ない例として、異土城の曲は当初イメージと合わなくて、2~3回ほどリテイクをお願いしました。
江口さんと同じような関係性でクリエイティブをお任せできるスタッフを見つけるのが今後の我々の課題です。
江口さんの曲は、神がかりすぎててみなさんに聞いて欲しいのですが、ホントにもっと名前売れて欲しいクリエイターさんです。最近はSwitchで出た『フォーエバーブルー』の新作で楽曲を担当されてます。
サントラのライナーノーツなどで何度かお話をしていることですが、音楽に関しては個人的にすぎやまこういち先生のドラクエのBGMに対する考えの薫陶を受けており、本作のような特定のサイクルを繰り返し続けるタイプのRPGなどでは、常にプレイヤーの気分を盛り上げてくれて、それでいて何度聞いても飽きない、聞き減りしない曲が重要だと思っています。
そのなかでも特にゲーム中一番よく聞く通常バトルの曲はとくに重要で、カッコ良くてテンション上がる曲、それでいて出しゃばりすぎない曲が理想だと考えています。江口さんも同じような考えで、まさにそれを体現した曲になっていますね。
(弊社で作った)プロトタイプで、既にバトル曲メロディーやアレンジ方向性など曲の骨格は出来ていたのですが、そこから2年の開発期間をフルに使って磨き上げられており、4年近く聞き続けてるけど未だに飽きないのでバトル曲の傑作だと思っています。ちなみに通常戦闘曲は最初のラフの前にセルフ没が10曲くらいあったと聞きました。
アートやデータ周りの最終的なアウトプットに関しては、かなり細かくディレクションしてて、最終的にほぼ奥田自身でかなり手を加えていたのですが、サウンドに関しては全曲毎回想像を超えるようなものが上がってきたので、最初にイメージのすり合わせを行ってからは江口さんへほぼお任せでした。数少ない例として、異土城の曲は当初イメージと合わなくて、2~3回ほどリテイクをお願いしました。
江口さんと同じような関係性でクリエイティブをお任せできるスタッフを見つけるのが今後の我々の課題です。
江口さんの曲は、神がかりすぎててみなさんに聞いて欲しいのですが、ホントにもっと名前売れて欲しいクリエイターさんです。最近はSwitchで出た『フォーエバーブルー』の新作で楽曲を担当されてます。
実況動画や掲示板からアップデートするべきものの知見を得た【残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-】
──2022年9月の配信から約2年。このタイミングで無料の大型アップデート『Ver.弐』を配信することになった理由や狙いについて教えてください。
発売後、世界中で喜んでくださった方も多くいらっしゃったのですが、厳しい評価も結構受けたのが悔しかったので、自腹切って水面下で更新作業を続けていました。これはもう意地です。
賛否色んな声を感じながらバラしたり、磨き直してを繰り返して改めて世界中の方にプレイいただきたいものに出来たのが今のタイミングになったという感じです。
今、コンテンツを作って勝負しようと思ったらユーザーさんの限られた可処分時間の中から、日常に組み込まれていたり習慣的に触れていたりするコンテンツから引き剥がしたうえで手に取っていただかないといけないわけですが、その勝負しないといけない相手が、ざっくりいうと“既に勝っていて、(その利益で)お金を掛けて際限なく磨き上げ、更なる楽しみを提供し続けているというループに入っているもの”、“クリエイターが採算度外視でありったけの時間を掛けて磨き上げたもの。その上で評判を得て勝ってるもの”になります。
ですので、それらを押しのけてより多くの方に遊んでいただくには、磨き上げて評判を積み重ねて勝っていくしかないんですよね。勝ってないものには誰も見向きもしてもらえないですし。
当初の予算内に収められなかった時点でプロフェッショナルとしてダメだし、一度勝てなかったものに自腹で金を突っ込みつづけるとか経営者として最低最悪のやり方です。実際、カエルパンダが一度潰れかけましたし(苦笑)。
ただ、コンセプトには自信があって、これまでのダンジョンクロウラー系のタイトルに負けてるとは全く思ってないので勝つためには時間を掛けて磨いて面白いという評判を積み上げてやるんだ、そこだけの信念でやった感じです。
リリース後、何回かのアップデートは行ってまして、コンシューマー版に関しては、国内は22年の年末のアプデが最後なんですが、その後、海外版の発売を経て海の向こうのユーザーさんからも意見をいただく機会も増えて、Steamの掲示板に出没して半年くらい張り付いてずっと海外ユーザーと情報交換していました。
あとは、世界中のユーザーの実況プレイをいろいろ観察してここはもうちょいこういうバランスの方がいいなとか、ここはガイドがあった方がいいなとか、ここはダレるなとかあったので、細かいところに手を入れていきました。
ほかには、自分は一応コードも書けるので、コードをチェックしてて、「この抵抗値、正しく反映されてないな」とか(苦笑)、そういうところもほぼ全部修正してます。
ただし、図鑑機能だとか、大がかりでがっつりプログラマーさんを抱えないと対応出来ないようなことはやれてないので、このあたりはクラファンを計画中です。
ローンチ開発の時はどうしても仕上げるための作業に追われてて、少人数開発なので自分も末端の作業を一杯抱えてる状態で、回してる業者のテストの結果のレポートだけしか見られないのと、これだと意見のレポートの背景が全然見えなかったり、テスターのアンテナに引っかかってないけど、人によっては重要な箇所が無意識に通り過ぎてしまわれたりするとキャッチアップ出来なかったりするんですよね。
調整する上で最も参考になったのは、先ほどお話したような無編集の実況で、こちらが意図せずプレイヤーがイラついてるポイントとか想定以上に引っかかってるポイントなどをフィードバックとして受け止め、今回のアップデートで調整しています。
テストの体制についてはこういう事を自然にキャッチアップ出来るような体制にアップデートしていかないといけないなと痛感しています。
あと、これはもう自分が悪いんですが、開発の最終盤は自分が作業量とメンタルともに詰まっており、報告が自分に向けられた悪意にしか受け取れなくなってしまって、意見に対してこっちも反論するもので周りの人が意見を言いやすい雰囲気を潰しちゃってたところ多分にありました。
そのため、時間に間に合わせるためとか、奥田に怒られたくない(苦笑)とかで周りのスタッフも奥田に対して気づいたことや改善の為の意見をしなくなる、という悪循環が生まれてしまったでしょう。
キャッチアップ出来てたら当初から対処出来ていたことも沢山あったので、リリース後に出たネガティブな意見をもう少し抑えられたんじゃ無いかという反省が多分にあります。
発売後、世界中で喜んでくださった方も多くいらっしゃったのですが、厳しい評価も結構受けたのが悔しかったので、自腹切って水面下で更新作業を続けていました。これはもう意地です。
賛否色んな声を感じながらバラしたり、磨き直してを繰り返して改めて世界中の方にプレイいただきたいものに出来たのが今のタイミングになったという感じです。
今、コンテンツを作って勝負しようと思ったらユーザーさんの限られた可処分時間の中から、日常に組み込まれていたり習慣的に触れていたりするコンテンツから引き剥がしたうえで手に取っていただかないといけないわけですが、その勝負しないといけない相手が、ざっくりいうと“既に勝っていて、(その利益で)お金を掛けて際限なく磨き上げ、更なる楽しみを提供し続けているというループに入っているもの”、“クリエイターが採算度外視でありったけの時間を掛けて磨き上げたもの。その上で評判を得て勝ってるもの”になります。
ですので、それらを押しのけてより多くの方に遊んでいただくには、磨き上げて評判を積み重ねて勝っていくしかないんですよね。勝ってないものには誰も見向きもしてもらえないですし。
当初の予算内に収められなかった時点でプロフェッショナルとしてダメだし、一度勝てなかったものに自腹で金を突っ込みつづけるとか経営者として最低最悪のやり方です。実際、カエルパンダが一度潰れかけましたし(苦笑)。
ただ、コンセプトには自信があって、これまでのダンジョンクロウラー系のタイトルに負けてるとは全く思ってないので勝つためには時間を掛けて磨いて面白いという評判を積み上げてやるんだ、そこだけの信念でやった感じです。
リリース後、何回かのアップデートは行ってまして、コンシューマー版に関しては、国内は22年の年末のアプデが最後なんですが、その後、海外版の発売を経て海の向こうのユーザーさんからも意見をいただく機会も増えて、Steamの掲示板に出没して半年くらい張り付いてずっと海外ユーザーと情報交換していました。
あとは、世界中のユーザーの実況プレイをいろいろ観察してここはもうちょいこういうバランスの方がいいなとか、ここはガイドがあった方がいいなとか、ここはダレるなとかあったので、細かいところに手を入れていきました。
ほかには、自分は一応コードも書けるので、コードをチェックしてて、「この抵抗値、正しく反映されてないな」とか(苦笑)、そういうところもほぼ全部修正してます。
ただし、図鑑機能だとか、大がかりでがっつりプログラマーさんを抱えないと対応出来ないようなことはやれてないので、このあたりはクラファンを計画中です。
ローンチ開発の時はどうしても仕上げるための作業に追われてて、少人数開発なので自分も末端の作業を一杯抱えてる状態で、回してる業者のテストの結果のレポートだけしか見られないのと、これだと意見のレポートの背景が全然見えなかったり、テスターのアンテナに引っかかってないけど、人によっては重要な箇所が無意識に通り過ぎてしまわれたりするとキャッチアップ出来なかったりするんですよね。
調整する上で最も参考になったのは、先ほどお話したような無編集の実況で、こちらが意図せずプレイヤーがイラついてるポイントとか想定以上に引っかかってるポイントなどをフィードバックとして受け止め、今回のアップデートで調整しています。
テストの体制についてはこういう事を自然にキャッチアップ出来るような体制にアップデートしていかないといけないなと痛感しています。
あと、これはもう自分が悪いんですが、開発の最終盤は自分が作業量とメンタルともに詰まっており、報告が自分に向けられた悪意にしか受け取れなくなってしまって、意見に対してこっちも反論するもので周りの人が意見を言いやすい雰囲気を潰しちゃってたところ多分にありました。
そのため、時間に間に合わせるためとか、奥田に怒られたくない(苦笑)とかで周りのスタッフも奥田に対して気づいたことや改善の為の意見をしなくなる、という悪循環が生まれてしまったでしょう。
キャッチアップ出来てたら当初から対処出来ていたことも沢山あったので、リリース後に出たネガティブな意見をもう少し抑えられたんじゃ無いかという反省が多分にあります。
──『Ver.弐』では非常に多くの改善・調整が行われます(上述)。とくに声を大にして言いたい調整点があれば、2~3つほどプッシュをお願いします。
細かいところはもう数えるの忘れたりしてるものもあって恐縮ですが項目自体は100項目以上に渡ります。全体的に快適かつプレイ体験の密度を上げる方向に調整を行っており、無駄な待ち時間を削ったり、カーソルが合う場所をなるべく最適化したり、高速化できるところは高速化したりといった事をコツコツ積み上げていきました。
本作は、ボリュームが少ないと言われがちなんですが1周のクリア時間はおそらく以前よりさらに10%以上短くなると思います(笑)。
一方で、サラッと流されがちだった箇所はあえてもう少し負荷を掛けるような調整をしたり、呉蓮寺院の前半など、ちょっと冗長だった箇所はドロップするアイテムを強化したり、多少変わった組み合わせのパーティでも突っ切る事ができる補助アイテムを足したりしています。
短くなるけど、プレイ体験は間違いなく濃くなっているし、リプレイ性も上がっていると思います。ボリュームを無理に引き延ばす対応をしなかったのは、元々エンドコンテンツを別途予定していたと言うのもありますが、できるだけ最後までプレイいただきたかったり、あと、もし気に入っていただけたなら初期の『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のように、組み合わせを変えたりプレイスタイルを変えて周回プレイを楽しんでいただきたい、という意図もあります。
──ゲーム後半、意味がありそうでなかった謎の空間などもありましたら、もしかしたら『Ver.弐』で何かが起こったりしますか?
ローンチ時は時間切れでイベント削った箇所がぽろぽろあったので、何カ所かそういう場所に本編に影響ない形でイベント追加したり、いくつかボツになってた敵を復活させて、それが固定の敵として出てくるエンカウント場所を増やしたりもしてます。
今後、有料DLC『深黒之刻』の制作も発表されていますが、現時点で公開できる内容があれば教えてください。
元々シャトナーさんと決めていた最終的な結末があって、遊んでくださった方全員にストーリーの結末まではプレイいただきたいので、多少意地悪めな謎がありはしますが、基本的にはキツイ場所があってもパーティを育て上げればクリア可能なバランスでまとめて行っています。ただし惰性でプレイすると、あっけなく死ぬと思うので、覚悟を持って対峙していただきたいです(笑)。
細かいところはもう数えるの忘れたりしてるものもあって恐縮ですが項目自体は100項目以上に渡ります。全体的に快適かつプレイ体験の密度を上げる方向に調整を行っており、無駄な待ち時間を削ったり、カーソルが合う場所をなるべく最適化したり、高速化できるところは高速化したりといった事をコツコツ積み上げていきました。
本作は、ボリュームが少ないと言われがちなんですが1周のクリア時間はおそらく以前よりさらに10%以上短くなると思います(笑)。
一方で、サラッと流されがちだった箇所はあえてもう少し負荷を掛けるような調整をしたり、呉蓮寺院の前半など、ちょっと冗長だった箇所はドロップするアイテムを強化したり、多少変わった組み合わせのパーティでも突っ切る事ができる補助アイテムを足したりしています。
短くなるけど、プレイ体験は間違いなく濃くなっているし、リプレイ性も上がっていると思います。ボリュームを無理に引き延ばす対応をしなかったのは、元々エンドコンテンツを別途予定していたと言うのもありますが、できるだけ最後までプレイいただきたかったり、あと、もし気に入っていただけたなら初期の『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のように、組み合わせを変えたりプレイスタイルを変えて周回プレイを楽しんでいただきたい、という意図もあります。
──ゲーム後半、意味がありそうでなかった謎の空間などもありましたら、もしかしたら『Ver.弐』で何かが起こったりしますか?
ローンチ時は時間切れでイベント削った箇所がぽろぽろあったので、何カ所かそういう場所に本編に影響ない形でイベント追加したり、いくつかボツになってた敵を復活させて、それが固定の敵として出てくるエンカウント場所を増やしたりもしてます。
今後、有料DLC『深黒之刻』の制作も発表されていますが、現時点で公開できる内容があれば教えてください。
元々シャトナーさんと決めていた最終的な結末があって、遊んでくださった方全員にストーリーの結末まではプレイいただきたいので、多少意地悪めな謎がありはしますが、基本的にはキツイ場所があってもパーティを育て上げればクリア可能なバランスでまとめて行っています。ただし惰性でプレイすると、あっけなく死ぬと思うので、覚悟を持って対峙していただきたいです(笑)。
結末へ至るまでのルートをどこまで興味深いものにできるか、というところに相当苦心していて、ここで悩んで時間が掛かっている感じです。申し訳ありませんがユーザーさんにはもう少しお待ちいただければ……。
──ゲーム発売後、ユーザーからの多くの感想が届いたかと思いますが、印象に残っている言葉はありますか?
リリース当初は正直なところ、ネガティブな反応を随分いただいたのが印象的ですね(笑)。なかには誤解によって生まれた反応もあったので、スペースで定期的に配信を行うなどして、できるだけ直接ユーザーさんに届ける機会を作るようにさせていただいてます。
また、ここ最近は『Ver.弐』をひっさげてイベントに出展させていただいてます。
リリース当初は正直なところ、ネガティブな反応を随分いただいたのが印象的ですね(笑)。なかには誤解によって生まれた反応もあったので、スペースで定期的に配信を行うなどして、できるだけ直接ユーザーさんに届ける機会を作るようにさせていただいてます。
また、ここ最近は『Ver.弐』をひっさげてイベントに出展させていただいてます。
印象的というか、イベントに出てみて改めて思ったのが、本作はビジュアルが立ってて非常にイベント映えするとういう事です。
本作は、かなりインディーな精神で作ったゲームではありますが、個性的なビジュアルの数々のいわゆるインディーゲーと並んでも全く遜色なくビジュアル立ってて目立つと感じています。
イベントでデモが置いてあると、目立つので、こういうジャンルは全くプレイしないような人がブースに来られたりするわけなんです。
先日も、イベントでこの手のジャンルをプレイしたことの無い野生のゲーマーみたいな20代のユーザーさんがやってきて、右上のミニマップを見ず、正面の3Dマップだけを見てプレイしながら、ゴリゴリとチュートリアルのダンジョンクリアしていき、そのうえで導入から容赦なく殺しに来るバランスを含めて普通に楽しんでもらえていたのを見て3Dゲームのネイティブ世代すげーなぁと思いました。
この手のジャンルはなんとなく、少年時代にファミコン版『ウィズ』を遊んでたおじさん向けみたいな先入観を持たれていたりするのですが、若い世代にも楽しんでもらえるものになっていると自信を持っても大丈夫だなと再認識できてありがたかったです。アクワイアさんの方針とか全然考えずに申し上げると、普通に若い世代にもっと遊んでもらいたいと思っています。
──3DダンジョンRPGというジャンルに対する思い出や想いがありましたら、教えてください。
多感な、ちょうど中2くらいの時期に、ファミコン版『ウィズ』やTRPGと出会って、他にも『マイト&マジック』や『ダンジョンマスター』など、こういうRPGからめちゃくちゃ薫陶を受けています。
色んな縁があって、社会に出て最初に入った会社がファミコン版『ウィズ』を作ったゲームスタジオ(GS)でして。新人時代に会社でこういうRPGを作れる人材を育成しようって取り組みの中でガッツリ教育を受けたものの、自分は「もっと、お姉さんに遊んでもらえるようなコンテンツ作りたいです!」とか言って、カジュアルなゲームを作る方向にキャリアを進めていったので、当初、後継者として期待してくださった先輩達を盛大に裏切ったんです(笑)。
その後、GS製『ウィズ』の系譜は途切れてしまい、個人的にその後に出て来た同系統の作品に対しては、求めているものと少しズレている感覚がありました。そういうのを払拭するために、GS製『ウィズ』の持っていたプレイ感とかプレイアビリティを、自分が得意としているカジュアルゲームのノウハウも加味しながら、意識的に入れています。
新人時代に教育していただいた先輩達に15年以上経ってようやく恩返しが出来たかもしれません(笑)。
──『Ver.弐』をきっかけに2周目を遊ぶユーザーも多いと思います。普通に遊ぶと見落としている可能性がある最強武器や隠し武器、隠しイベントなどについて、ヒントなどをいただけますか?
バランスや感触はかなり変わってるので、お時間をいただけるなら、ぜひ、もう一度最初からプレイいただけると嬉しいです!
同じパーティ組み合わせでもう一度プレイしていただいても良いですし、全然使ったことのない組み合わせのパーティで取り組んでみると、戦い方が変わってきっと面白いと思います。
『深黒之刻』をプレイしようと思っている方は、あんまりレベルを上げすぎずに、別のスロットで周回プレイしてみて下さい(笑)
──最後に、『残月の鎖宮』の今後の抱負や、ファンに向けたメッセージをお願いします。
最初にこの形でお届けできなくて申し訳ありません! 気合いと根性で命削って改めて磨き上げたので、きっと濃厚なプレイ体験が詰まっていると思います。一度プレイしてくださった方も未プレイの方も是非プレイいただけると嬉しいです!
ポジティブな反応を沢山いただけるといろいろな流れを変えられるので、面白い! と思ったら是非積極的に「面白い!」って現実でもSNSでも触れ回って下さい(笑)
製品情報
タイトル名:残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu- ver.弐
フリガナ:ザンゲツノサキュウラビリンスオブザンゲツ ヴァージョン ニ
対応機種:PlayStation🄬4、Nintendo Switch™ ※Steam🄬(SteamでのVer.弐 配信は近日中を予定しております。)
国内配信日:2024年 10月10日(木) 配信予定。
税込価格:0円(残月の鎖宮 本編が必要となります。)
ジャンル:3DダンジョンRPG
プレイ人数:1人
レーティング:CERO B
開発・発売 :株式会社アクワイア