U.C.0079年12月25日は、アニメ『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(以下、ポケ戦)にて、バーナード・ワイズマンが乗るザクⅡ改と、クリスチーナ・マッケンジーが乗るガンダムNT-1(アレックス)が交戦した日です。
この戦いは“クリスマス作戦”とも呼ばれ、全『ガンダム』シリーズの中でも、とくに日付と紐づいて印象に残っている出来事の筆頭として挙げられるエピソードでもあります。
『ポケ戦』では“嘘だといってよ、バーニィ”という言葉も有名ですが、こちらは作中のセリフではなく、Vol5のサブタイトルとして使われたもの。作中でのアルのセリフは、「嘘だ! バーニィはあいつが怖くなったんで嘘をついてるんだ!」でした。
この戦いは“クリスマス作戦”とも呼ばれ、全『ガンダム』シリーズの中でも、とくに日付と紐づいて印象に残っている出来事の筆頭として挙げられるエピソードでもあります。
『ポケ戦』では“嘘だといってよ、バーニィ”という言葉も有名ですが、こちらは作中のセリフではなく、Vol5のサブタイトルとして使われたもの。作中でのアルのセリフは、「嘘だ! バーニィはあいつが怖くなったんで嘘をついてるんだ!」でした。
主人公がモビルスーツに乗らない、異色の『ガンダム』作品【ポケットの中の戦争】
まず『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、『機動戦士ガンダム』で描かれた地球連邦とジオン公国の戦いである一年戦争の終戦末期を描いた作品です。『ガンダム』シリーズ初のOVAであり、富野由悠季氏が監督を務めていない初の『ガンダム』作品(本作の監督は高山文彦氏)でもあるという、シリーズの歴史の中でも分岐点となった重要な作品でもあります。
現在『BOYS BE』などで知られる玉越博幸先生によるコミカライズも行われており(『月刊ガンダムエース』での連載は一時休載中)、OVAでは描かれていない過去のエピソードなどが補完されています。
現在『BOYS BE』などで知られる玉越博幸先生によるコミカライズも行われており(『月刊ガンダムエース』での連載は一時休載中)、OVAでは描かれていない過去のエピソードなどが補完されています。
本作の主な舞台となるのは、連邦にもジオンにも属さない中立区であるサイド6内に存在するコロニー“リボー”。そこに住む小学生であるアルフレッド・イズルハ(アル)の視点から戦争という現実を描いた、ロボットアニメというよりは史実を題材とした戦争映画のような作風が特徴です。
主人公が最後までモビルスーツに乗らない小学生で、作品の顔とも言える新型のガンダムが主人公の味方ではないという、『ガンダム』シリーズのアニメとしてはかなりの異色作と言えます。『ポケ戦』がリリースされたのは1989年から30年以上に渡って『ガンダム』シリーズの新作が作られ続けてきましたが、未だに『ポケ戦』の位置づけは唯一無二で、当時どれだけ挑戦的な作品だったかが伺えます。
12月25日に実施される"クリスマス作戦"は、その最終話にあたるエピソード。前提として、リボーコロニーには、連邦軍の新型のMSである“ガンダムNT-1(アレックス)"が極秘裏に運び込まれ、実戦投入のための最終調整が行われており、ジオンの特殊工作部隊であるサイクロプス隊には、その破壊指令が下されていました。
リボーコロニーに住んでいたアルは、サイクロプス隊に配属された新兵のバーナード・ワイズマン(バーニィ)と出会い、サイクロプス隊に協力することになるのですが、バーニィのミスによって作戦は失敗、サイクロプス隊はバーニィを除いて全滅してしまいます。
残されたバーニィは任務を諦め、一度は本国に帰投しようとするのですが、ジオン軍はサイクロプス隊が任務を失敗した場合、リボーコロニーへの核攻撃を行いアレックスを破壊するという備えを用意していました。バーニィは核攻撃をジオンに行わせないため、アルと共に壊れていたザクⅡ改を修理して、たった一人でアレックスへと挑む……というのが、クリスマス作戦実施までの大まかな流れ。
作戦決行の前日は、クリスマスに浮かれる街をよそに、覚悟を決めたバーニィがアルにビデオレターを託し、アルはクリスマスツリーの前でバーニィが生きて帰ってくることを願うという非常に印象的な場面となっていました。
互いに気づかないまま殺し合う、バーニィとクリスのすれ違いがあまりにも切ない【ポケットの中の戦争】
この時点でのアレックスは、当時の連邦軍が技術の粋を集め、ニュータイプ用の機体として開発された超のつく高性能機であり、ザクⅡ改との性能差は歴然。しかもバーニィはパイロットしても碌な実戦経験がない新米なので、まともに戦ったらまず勝ち目はありません。
そこでバーニィが取ったのは、アレックスを郊外の森の中におびき寄せた上で、煙幕とクリスマス用の巨大バルーンをダミーとして撹乱して不意をつくというもの。実際この目論見はうまくいったもののトドメには至らず、最後は森の外で戦わざるを得なくなり、コクピットにビームサーベルの直撃を受け、バーニィは戦死してしまいます。
この戦いが切ないのは、バーニィが死んでしまったということだけではなく、クリスマス作戦の直前、核兵器を搭載したジオン軍の部隊は連邦軍に投降しており、バーニィが戦おうが戦うまいが、核攻撃が行われる可能性はすでになくなっていたこと。
しかもアレックスのパイロットは、アルの家の隣に住むクリスチーナ・マッケンジー(クリス)であり、身分を隠してクリスとも交流していたバーニィは、クリスに対して仄かな恋心を抱いていました。アレックスのパイロットであることは当然軍事機密なので、バーニィもクリスもお互いに殺し合った相手のことを知らないまま物語は幕を閉じることになります。
バーニィがリボーコロニーを守るために戦ったのは、アルだけではなくクリスを守りたかったという感情も少なからずあったと思われ、そのクリスと戦って死んでしまうというすれ違いがあまりにもやるせない。
唯一、主人公のアルだけはジオン艦隊の投降を知り、戦う必要がなくなったバーニィを必死に止めようとするのですが、その声は戦闘中のバーニィには届かず。しかも追い打ちのように、戦闘が終わった後にアレックスのパイロットがクリスだった(=バーニィを殺したのはクリス)であると最後に気付いてしまうのも、あまりも容赦のない展開でした。
自分がアルの立場だったら、その後バーニィを死なせた怒りをクリスにぶつけそうなものなのですが、アルはそれをグッと我慢して、最後までザクのパイロットがバーニィだったという引密を守り抜きます。バーニィが残したビデオレターには、自分が死んでも、アレックスのパイロットや連邦を恨むなというメッセージを残していたのですが(このビデオレターがまた泣かせてくる)、その言葉をアルがしっかりと受け止めて成長した結果なんですよね。
自分が『ポケ戦』を初めて見たのはバーニィよりも少し歳下の頃だったので、視点がアル寄りで、結構バーニィも大人の兄貴分の印象があったんですが、そこから10年以上経ってからバーニィの年齢がまだ19歳ということを改めて意識した時、戦争の不条理さみたいなのをより一層感じたことも覚えています。19歳という若さで覚悟を決めて一人で勝ち目のない戦いに挑み、アルのための言葉を残したバーニィは本当に凄かったなと思います。
また、そんな『ポケ戦』を語る上で欠かせないのが結城恭介氏によるノベライズ版(小説版)で、とにかくやるせない終わりを迎えたOVA版とは異なるラストを迎えており、OVA版を見終えてなんとも言えない気持ちになった人に是非読んで欲しい内容になっています。
そこでバーニィが取ったのは、アレックスを郊外の森の中におびき寄せた上で、煙幕とクリスマス用の巨大バルーンをダミーとして撹乱して不意をつくというもの。実際この目論見はうまくいったもののトドメには至らず、最後は森の外で戦わざるを得なくなり、コクピットにビームサーベルの直撃を受け、バーニィは戦死してしまいます。
この戦いが切ないのは、バーニィが死んでしまったということだけではなく、クリスマス作戦の直前、核兵器を搭載したジオン軍の部隊は連邦軍に投降しており、バーニィが戦おうが戦うまいが、核攻撃が行われる可能性はすでになくなっていたこと。
しかもアレックスのパイロットは、アルの家の隣に住むクリスチーナ・マッケンジー(クリス)であり、身分を隠してクリスとも交流していたバーニィは、クリスに対して仄かな恋心を抱いていました。アレックスのパイロットであることは当然軍事機密なので、バーニィもクリスもお互いに殺し合った相手のことを知らないまま物語は幕を閉じることになります。
バーニィがリボーコロニーを守るために戦ったのは、アルだけではなくクリスを守りたかったという感情も少なからずあったと思われ、そのクリスと戦って死んでしまうというすれ違いがあまりにもやるせない。
唯一、主人公のアルだけはジオン艦隊の投降を知り、戦う必要がなくなったバーニィを必死に止めようとするのですが、その声は戦闘中のバーニィには届かず。しかも追い打ちのように、戦闘が終わった後にアレックスのパイロットがクリスだった(=バーニィを殺したのはクリス)であると最後に気付いてしまうのも、あまりも容赦のない展開でした。
自分がアルの立場だったら、その後バーニィを死なせた怒りをクリスにぶつけそうなものなのですが、アルはそれをグッと我慢して、最後までザクのパイロットがバーニィだったという引密を守り抜きます。バーニィが残したビデオレターには、自分が死んでも、アレックスのパイロットや連邦を恨むなというメッセージを残していたのですが(このビデオレターがまた泣かせてくる)、その言葉をアルがしっかりと受け止めて成長した結果なんですよね。
自分が『ポケ戦』を初めて見たのはバーニィよりも少し歳下の頃だったので、視点がアル寄りで、結構バーニィも大人の兄貴分の印象があったんですが、そこから10年以上経ってからバーニィの年齢がまだ19歳ということを改めて意識した時、戦争の不条理さみたいなのをより一層感じたことも覚えています。19歳という若さで覚悟を決めて一人で勝ち目のない戦いに挑み、アルのための言葉を残したバーニィは本当に凄かったなと思います。
また、そんな『ポケ戦』を語る上で欠かせないのが結城恭介氏によるノベライズ版(小説版)で、とにかくやるせない終わりを迎えたOVA版とは異なるラストを迎えており、OVA版を見終えてなんとも言えない気持ちになった人に是非読んで欲しい内容になっています。
毎年、クリスマスの時期になると必ずといっていいほど『ガンダム』ファンの中で話題に挙がる『ポケ戦』。全6話のOVAという、結構サクッと見れるボリュームの作品ということもあって、この時期になると定期的に『ポケ戦』を見直したくなるのは自分だけではないでしょう。
時間が経ってから見直す度に、新しい気づきを与えてくれる名作でもありますすので、今年のクリスマスも『ポケ戦』でやるせない気分に浸るのも良いのではないでしょうか。
米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。