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ドラマ『ウイングマン』10話(最終回)感想。ラストシーンのアオイの気持ちを想像して切なさに胸が締め付けられつつ、エンディング後の展開はあまりにも予想外すぎた(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 テレビ東京系にて放送中のドラマ『ウイングマン』10話(最終話)の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『ウイングマン』10話(最終話)の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

ここにきて赤いウイングマンが登場するアツさ【ウイングマン】


 ドラマ版『ウイングマン』も、ついに今回が最終話。リメルによる地球侵攻が本格的に始まる中、健太は今まで事情を隠し続けてきたアクション演劇部の仲間たちに、大切にしていたコレクションの数々を託します。

 健太がここまで追い込まれた最初のきっかけを作ったのは布沢ではあるのですが、健太自身も言っていた通り、リメルは総理大臣を操ることすらできてしまうので、布沢がどう動こうと、リメルが今と同じ状況を作るのはさほど難しくないのは確か。ただ、それは第三者視点から見ているからこそ分かることで、苦境に追いやられた当事者である健太がそのことを一切責めずに、あまつさえ大事なコレクション(おそらくは『超電子バイオマン』のバイオロボ)を託して、布沢の夢まで応援できる器の大きさが凄いです。

 シャリバンの玩具を託されて喜ぶ福本のシーンも印象的で、個人的にドラマ化で一番株を上げたキャラクターがこの福本なんじゃないかなと。福本が言っていた健太が変わっていないというのはまさにその通りで、結局ドリムノートを拾う前から、同じようなことを健太はやっているんですよね。福本はドラマを通して、アオイとはまた違う立場での健太の最大の理解者であり続けてくれていたなと思います。

 一方で、美紅にだけは会うことを避けていたのは、ちょっと健太らしからぬ行動でした。健太が仲間たちに挨拶まわりをしていたのは、リメルとの決戦で自身が死ぬ可能性を考えて、一種の形見分けのような意味合いがあったんだと思うのですが、美紅と会うことで決心が鈍ることを恐れていたのかもしれません。そういう意味でも、美紅がウイングマンのヘルメットを受け取らなかったのは、生きて帰ることを健太に強く意識させる意味でもナイスな判断でした。

 そうしてリメルとの決戦に赴いた健太とアオイ。ちょっと形勢が不利になるとみるや、速攻でラーク博士を人質に取るリメル、なかなかラスボスでは見ないタイプの情けなさです(本当は戦っても強いはずなのに)。

 結局キータクラーの乱入で博士は救い出されるものの、キータクラーはそのリメルに倒されて息を引き取ることに。トリックスターとしてのキータクラーと宮野さんの怪演はドラマ版『ウイングマン』の見どころの一つだっただけに、ここで退場となってしまったのは残念ですが、本人は満足そうに逝けたのが救いでしょうか。

 しかし、その後にはリメルがまさかの巨大化を果たし、状況はさらに悪化していきます。せめてドリムノートがあれば、対抗するための新しい力を生み出すこともできたのですが、ノートがリメルの手にある以上それも望めません。

 その流れを変えたのは、健太を助けるために駆けつけたアクション演劇部の仲間たちと、ウイングマンの戦いを見ていた人々の声援。皆の願いが奇跡を呼ぶというヒーローものとして超王道の展開ですが、勝ちパターンだとメタ発言をする健太には笑いました。

 元々健太が自作していたウイングマンスーツは赤だったので、ここにきてウイングマンが原点ともいえる赤色に変わるのは非常にアツい。結構リメルはあっさりと倒されてしまいましたが、その技が一番最初に使ったファイナルビームなのもニクい演出で、設定的にも名前的にも明らかにラストで使う技だという伏線を回収しているのもお見事です。

原作最終回のネタをやったにも関わらず、ここからライエル編に繋がる!?【ウイングマン】

 これですべてが丸く収まったかと思いきや、最後の最後でアオイが命を落としてしまうというまさかの展開。あれだけウイングマンであることに強いこだわりをもっていた健太が、躊躇いなくドリムイレイサーでウイングマンのページを消し、必死にアオイを生き返らせようとする姿からは、健太がどれだけアオイのことを大切に想っていたかが痛いほど伝わってきます。

 結果、健太の願いは叶えられたものの、ドリムイレイサーで消したウイングマンも始めから存在しなかったのように、人々の記憶は書き換えられてしまいました。生き返ったアオイだけがそれまでの出来事を覚えていて、健太の幸せを願って自分のことを告げずに去るラストは、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からない、グチャクチャな感情で見ていました。

 結局、健太もアオイも告白はしないまま最終回を迎えてしまったわけですが、アオイはここで「私の好きだった人」と明確な恋愛感情があったことを口にした上で、過去のこととして語っているのがまた切ないんですよね。原作のラストを踏襲しつつも、ドラマ版はとくにアオイの内面に重点を置いて物語が再構成され、感情移入もしやすくなっているだけに、より切なく感じられるシーンになっていたと思います。

 しかし、物語はそこで終わらず、新たな敵の存在が仄めかされる形でドラマ版は締めくくられることに。最後に喋ったのは、原作版でリメルを倒した後に戦うラスボスである帝王ライエルで間違いないと思いますが、ドラマ版最終話には原作のライエル編の展開がすでに盛り込まれていただけに、殆どのファンが度肝を抜かれたのでは。

 さすがにこのオチなら、当然第2期への期待も高まるところなんですが、原作のリメル編の終わりとはまったく状況が違うので、原作のライエル編にはそのまま繋げることはできないんですよね。そうなると、完全にドラマオリジナルのストーリーになるのか……?とか、妄想が無限に広がります。

 ちなみに最後のライエルの声を当てているGACKTさんは、『ウイングマン』のドラマ放送前に原作の大ファンであることを明かし、「もっと若かったら出たかった」と発言もされていて、結果として出演が叶う形に。当時の発言のツリーの中には、「ライエル役はどうですか?」というファンの方の声もあったりもして、今見返すと先見の明がありすぎて驚かされます。

 ただ、最後にリメルが自分を倒したウイングマンではなく、アオイの方だけを狙ったのが謎だったのですが、VTuber・花音めいさんとの同時視聴配信で原作者の桂正和先生が語っていたところによると、実はドラマ版でのリメルには、ライエルからポドリムスを守るためにドリムノートを欲していたという裏設定が存在していた様子。そうなると、アオイを殺した時の台詞や、人質をとってまで勝とうとしたリメルの必死な姿勢も、また見え方や解釈が変わってくるのも面白いです。

 最後はやや駆け足になってしまったという印象も多少なりとはあるのですが、ドラマ版『ウイングマン』としてのラストをしっかり描いてくれた最終回。ちょっとビターな結末は迎えたものの、まだこの先の展開が見れるかもしれないという期待も膨らませてくれ、いろんな意味でワクワクできた、ファンにとって最高に楽しめたドラマ化となっていたのではないでしょうか。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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