U.C.0079年12月31日は、アニメ『機動戦士ガンダム』にて、地球連邦軍がジオンの宇宙要塞ア・バオア・クーを陥落させた日です。この戦いをもって、地球連邦とジオン公国の戦いである一年戦争は終戦を迎えることになります。
ア・バオア・クーの陥落によって一年戦争は終戦へ【機動戦士ガンダム】
ア・バオア・クーでの攻防戦は一年戦争末期の戦いで、翌日のU.C.0080年1月1日には、地球連邦政府とジオン公国の間で休戦協定が結ばれ、一年戦争は正式に終戦を迎えることになります。
地球連邦軍によるア・バオア・クー攻略戦は、”星一号作戦”とも呼ばれ、連邦は地球上からジオンの主力部隊を撤退させた後、ジオン宇宙軍の最大の要所である宇宙要塞ソロモンを陥落させており、ほぼ戦争の大勢は決まっている状態でした。
ジオンの総帥であるギレン・ザビは徹底抗戦を辞さない考えをもっていたのに対し、国王であるデギン・ソド・ザビはもはやジオンに勝機はないと判断し、ア・バオア・クーに迫る連邦艦隊の総司令・レビルにコンタクトを取り、停戦協定を結ぼうと試みます。
しかし、それを良しとしなかったギレンの判断により、スペースコロニーを改造した超大型のレーザー兵器"ソーラ・レイ”の照射に巻き込まれ、連邦の艦隊もろともレビルとデギンは殺されてしまいます。
地球連邦軍によるア・バオア・クー攻略戦は、”星一号作戦”とも呼ばれ、連邦は地球上からジオンの主力部隊を撤退させた後、ジオン宇宙軍の最大の要所である宇宙要塞ソロモンを陥落させており、ほぼ戦争の大勢は決まっている状態でした。
ジオンの総帥であるギレン・ザビは徹底抗戦を辞さない考えをもっていたのに対し、国王であるデギン・ソド・ザビはもはやジオンに勝機はないと判断し、ア・バオア・クーに迫る連邦艦隊の総司令・レビルにコンタクトを取り、停戦協定を結ぼうと試みます。
しかし、それを良しとしなかったギレンの判断により、スペースコロニーを改造した超大型のレーザー兵器"ソーラ・レイ”の照射に巻き込まれ、連邦の艦隊もろともレビルとデギンは殺されてしまいます。
このソーラ・レイの照射によって、連邦は総司令官であるレビルを失った上、星一号作戦に参加していた全戦力の内約3割が失われたとされ、甚大な被害を受けました。
それでも残存戦力を集結させ星一号作戦は継続されるものの、ソーラ・レイによる被害が大きかったのもあり、ギレンが「圧倒的じゃないか、我が軍は」という台詞を口にしていたほど、当初はジオン優位に戦闘は推移していました。
しかし、その後にギレンが妹のキシリア・ザビに暗殺されたことで、ジオンの指揮系統は混乱。最終的には連邦の勝利という形で終わり、その翌日に月のグラナダにて終戦協定となるグラナダ条約が結ばれることになります。
どうしても脳裏をよぎる"デギン・ザ・グレート”の思い出【機動戦士ガンダム】
結果的に、父・デギン殺しを断罪する形でキシリアがギレンを射殺したことがジオンが負けた一因となっているんですが、このシーンの二人のやり取りが面白いんです。
それまでのギレンは、デギンの殺害だけではなく、弟のガルマ・ザビの死も戦意高揚に利用したり、とにかく冷徹な策略家として描かれているんですが、キシリアに銃を向けられた時には「冗談はよせ」と口にしていて、まるでキシリアの裏切りを微塵も考慮していなかったかのようなリアクションをしています。
これにキシリアは、「意外と……兄上も甘いようで」と返した上でギレンを射殺するのですが、これは皮肉ではなく、ギレンがこの展開を予期できてなかったのはキシリアにとって本当に意外だったんじゃないかなと。あのギレンですらも、ザビ家の身内にだけは心を許していた部分もあったと考えると、ギレンというキャラクターがまた深みが出てくるんですよね(自分を殺すことのメリットの薄さから、その可能性を考えなかっただけかもしれませんが)。
さらにこの後キシリアは、元々ザビ家の復讐のためにジオンに身を置いていたシャア・アズナブルの裏切りで殺されるわけですが、この時の自分の発言が返ってきている部分があります。
キシリアは、シャアがかつてザビ家に追いやられたジオン・ズム・ダイクンの息子であることも知っていたので、シャアを殺すなり拘束するなりの方法は取れたはずなんですよね。キシリアは優秀な人間は出自に関わりなく重用する能力至上主義的な思考の持ち主でもあるので、シャアを手元に置いて使う方法を取りましたが、結局はその裏切りのリスクまでは見抜けなかった“甘さ”が死因になっているのも皮肉だなと。
とはいえ、ギレンが生きてア・バオア・クーの防衛に成功していようがいまいが、ジオンの敗北は時間の問題だっただろうと考えられる一方で、ソーラ・レイでレビルが戦死したことは、後の宇宙世紀の歴史に大きな影響を及ぼしていそうです。
レビル自身がスペースノイドにどういう感情を持っていたかは見えにくいので一概には言えないのですが、一年戦争で改革派のレビルやティアンムらが戦死したことで、戦後に地球至上主義の保守派が勢力を増すことになったとも言われているので、レビルがもし生き残っていたらティターンズも結成されなかった可能性もある程度考えられるんですよね。
レビルは典型的な軍人タイプで、政治的な立ち回りは苦手そうな印象があるので、政略に長けたジャミトフの暴走を完全に止められたかというと微妙ではありますが、最終的にティターンズが地球連邦をほぼ乗っ取るほどにまで幅を効かせることはなかったのではないかとも思えます。
そう考えると、ギレンがソーラ・レイでレビルとデギンを同時に葬ったのは、後のアースノイドとスペースノイドの確執をより大きくしてしまったという面でも悪手だったのかもしれません。
また、これは完全に余談なんですが、個人的にア・バオア・クーの話題を出す度に思い出してしまうのが、『月刊ガンダムエース』で連載されていた『トニーたけざきのガンダム漫画』でして……。
タイトルの通り作者はトニーたけざき先生なんですが、『ガンダム』のキャラクターデザイン・作画監督を務めた安彦良和先生の漫画の絵柄が異常なほどに再現されていて、当時『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』と同時にガンダムエースに載っていたので自分はかなり混乱して、最初はどちらも安彦先生が描かれていると勘違いしていたほどでした。
その中にデギンたちがソーラ・レイで照射されたシーンをパロディしたネタもあり、ソーラ・レイのエネルギーをデギンが吸収、さらにはデギンの乗るグワジン“グレート・デギン”と融合・巨大化して“デギン・ザ・グレート”へと変貌し、連邦艦隊相手に大暴れするという、一度見たら絶対に忘れられない展開が描かれています。デギンといえばこのネタ、みたいな印象をもっているのは、絶対に筆者だけではないと思いたいです。
数多くの犠牲を出したア・バオア・クーの戦いを最後に一年戦争は終結したわけですが、結局その後もアースノイドとスペースノイドの間の確執は残り続け、終戦からそう間を置かず様々な戦いが起きているのも、宇宙世紀の無常さを感じてしまいますね。
米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。