2025年1月17日にPlayStation5/Xbox Series X|S/PC(Steam)で発売予定の『真・三國無双 ORIGINS』の開発者インタビューをお届けします。
庄 知彦氏:ω-Forceブランド長。初代『三國無双』からシリーズに携わる開発のキーマン。シリーズでの代表作は『真・三國無双2』~『真・三國無双5』。『ドラゴンクエストヒーローズ』シリーズや『Fate/Samurai Remnant』などコラボ作品にも関わる。本作では企画の立ち上げや総括的な立場で作品を見守る。
大島光洋氏:『真・三國無双 ORIGINS』ディレクター。入社後に『戦国無双3 Z』に関わり、その後は『真・三國無双 NEXT』でシリーズ作品を初めて担当。『討鬼伝』シリーズや『ドラゴンクエストヒーローズ』シリーズでもバトル関連のシステムに携わる。
関口 和敏氏:『真・三國無双 ORIGINS』ディレクター。『真・三國無双』シリーズに携わりつつ、主として新規タイトルに関わる。『討鬼伝』シリーズなどを手掛ける。
体験版からの調整や製品版での呂布の難易度はどうなる?【真・三國無双 ORIGINSインタビュー】
――発売が間近に迫った現在の率直な心境をお聞かせください。
庄
ついにここまで来たなっていう、本当にもうそれだけです。『真・三國無双』シリーズの最後のナンバリング作品から7年以上時間が空いたのもあって、今回の開発は今までとは大きく違うところがありました。開発メンバーもすごく苦労しながら、ゼロから考え直すことも多かったタイトルです。苦労も多かったですが、それで最新の、今だから出せる『真・三國無双』をついにお見せできるのが、本当に感慨深いです。
関口
自分は大陸地図やストーリーなど、主にRPG部分を担当していて、それらはまだ体験版ではお見せできていない部分なので、発売後の反応にドキドキしつつワクワクもしています。
大島
あまり意味のない仮定かもしれませんが、本作がもし『真・三國無双』ではない完全新作のアクションゲームだとしても、確実に面白いすごいものができたという実感があります。長く続いてきた『真・三國無双』シリーズだけに、シリーズファンも含めたユーザーの反応が楽しみ半分、怖さ半分といった心境です。
――主人公とストーリーを一本化してより濃く描くようにするなど、シリーズから大胆に刷新された要素も多い本作ですが、ユーザーからの反響はいかがでしょうか?
――主人公とストーリーを一本化してより濃く描くようにするなど、シリーズから大胆に刷新された要素も多い本作ですが、ユーザーからの反響はいかがでしょうか?
庄
主人公を1人に絞ったことについては、賛否両論あります。受け入れて楽しみにしていただいている方もいれば、従来シリーズのように90人以上のキャラクターで遊びたいという方も当然います。後者の方々からの「求めているのはそれじゃない」という声は認識しています。ただそこは、本作ならではの楽しみ、キャラクターを絞ったからこその違う視点での楽しみ方を提供しているので、ぜひ実際に手に取っていただきたいなと思っています。
長く続いているシリーズなので、本当に大勢の武将それぞれを好きだと言ってくださるファンのみなさまがたくさんいらっしゃるので、その方たちに対しても、失望させずに、本作ならではの体験を楽しんでいただけるかについては苦心しました。逆に今までのシリーズや『三国志』作品に触れたことがない人もわかりやすくなっています。
長く続いているシリーズなので、本当に大勢の武将それぞれを好きだと言ってくださるファンのみなさまがたくさんいらっしゃるので、その方たちに対しても、失望させずに、本作ならではの体験を楽しんでいただけるかについては苦心しました。逆に今までのシリーズや『三国志』作品に触れたことがない人もわかりやすくなっています。
――確かに、黄巾党の乱だけでもかなりていねいに描かれていますよね。
関口
今まで黄巾党の乱に関しては各勢力の2~3ステージで済まされていましたが、本作では1章丸ごとを使ってていねいに描いています。黄巾党の乱に決着が付く1章のラストバトルに関しては、かなり盛り上がる作りになっているので、ご期待ください。
――体験版でのアクションの反響はいかがでしたか?
――体験版でのアクションの反響はいかがでしたか?
大島
体験版で遊べた“汜水関の戦い”は製品版では2章後半にあたるステージなので、いきなりたくさんのアクション要素を解放していたため、操作に慣れず戸惑う方もいたかもしれません。我々としてはサービスのつもりだったのですが、やや複雑に感じてしまったユーザーの方も多かったようです。製品版ではもっと順を追って理解できる作りになっているので、安心してもらえればと思います。
――呂布の強さも話題でしたね。一部では『真・三國無双』が死にゲー化したといった声も……。
――呂布の強さも話題でしたね。一部では『真・三國無双』が死にゲー化したといった声も……。
大島
汜水関の戦いで呂布と1対1で戦うというのは、体験版ならではの仕様ですが、製品版でも、いつか呂布と決着をつけなければいけない時はやってくるかもしれません。ただ、本作ではRPG要素も強化されているので、しっかり育成したり装備を選んだりすれば、すべてのユーザーが呂布を倒せるようになっているはず……です。あくまでゲーム全体では、『真・三國無双』らしい軍団と軍団との戦いの中にプレイヤーが介入していく体験を中心にアクションを楽しめるようになっています。
――体験版のフィードバックから調整する要素はあるのでしょうか?
大島
発売日当日ではなくて、数日空いてしまうかもしれませんが、いくつか調整予定の要素はあります。まずは馬の誤爆(L3ボタン)です。意図せず馬を呼んで乗ってしまうことがあったので、L3ボタンを方向キーの下など、別ボタンに割り振ったり、長押しにするような設定の追加を考えています。あとはプレイヤーキャラクターの視認性を高めるためにキャラクターの境界線をハッキリ表示させるような設定を追加する予定です。それとPC版でのキーコンフィグ追加やカメラ速度の上限値調整なども行います。また細かい部分では、戦闘不能時の敗北演出を短縮して、すぐにボタンを押せば再開できるようにする予定です。
敵側の武将の描き方を変えることで今までと違う『真・三國無双』を描けた【真・三國無双 ORIGINSインタビュー】
――従来シリーズとは異なり、主人公を1人にして物語を描くということで苦労したポイントなどはあるのでしょうか?
関口
それはもう、全部です(笑)。記憶喪失の主人公の視点でイチから『三国志』を描く、というコンセプト自体は初期から決まっていました。とはいえ、いざ書き始めてみるといろいろと葛藤がありまして……。とくに、物語の始まり方については悩みました。初期案では主人公が1人の農民で、黄巾党に村を襲われて戦いに参加する流れで考えていましたが、そうすると主人公を最初からは強くできなかったんです。実際にアクション面でも主人公が弱く、初期では兵士5~6人に囲まれたら苦戦するレベルでした。ただ、それだとどうしても爽快感がなくて面白くなかったんです。
そうして、主人公を最初から強くしたいという狙いからバックボーンを考えることになって、そこから主人公の原型ができていきました。とはいえ、主人公を掘り下げようとしすぎると『三国志』ではなく彼の物語になってしまうので……そういう面からも、うまく『三国志』に馴染むようなバックボーンにしています。『三国志』に詳しい人であれば、モチーフがわかるかもしれません。最終的には、主人公と同じ視点で魅力的な武将たちと絆を結びながら、『三国志』を体験していけるという構造に落とし込めたかなと思います。
――主人公自身の秘密についてはどう描かれていくのでしょうか?
そうして、主人公を最初から強くしたいという狙いからバックボーンを考えることになって、そこから主人公の原型ができていきました。とはいえ、主人公を掘り下げようとしすぎると『三国志』ではなく彼の物語になってしまうので……そういう面からも、うまく『三国志』に馴染むようなバックボーンにしています。『三国志』に詳しい人であれば、モチーフがわかるかもしれません。最終的には、主人公と同じ視点で魅力的な武将たちと絆を結びながら、『三国志』を体験していけるという構造に落とし込めたかなと思います。
――主人公自身の秘密についてはどう描かれていくのでしょうか?
関口
主人公の物語の魅せ方については最後までみんなで悩みました。どう体験させるのか悩んだ結果、大陸地図という要素が生まれて、そこを探索するなかでサイドミッションのような形で主人公のバックボーンが理解していける形になっています。
――つまり、大陸地図は開発終盤で作られたのですか?
関口
はい、開発後半に現場スタッフからの提案で誕生しました。非常に大きな決断でしたが、そのおかげで、すべてのピースがハマったようにプレイヤー=主人公という構図が体験的にわかりやすくなったと思います。
――大陸地図ができるまではどうやってストーリーを進行させていったのでしょうか?
――大陸地図ができるまではどうやってストーリーを進行させていったのでしょうか?
関口
2Dの地図があって、そこから戦場を選んでいくような形でした。それはそれでいい部分もありましたが、やはり大陸を旅していく体験を表現しきれず……、スタッフも頑張ってくれて大陸地図を実装することができました。ちなみに2D地図は、ファストトラベル画面などに使用しています。
――となると、大陸地図での探索要素も開発終盤でできた?
――となると、大陸地図での探索要素も開発終盤でできた?
関口
個々の要素自体はもともとありましたが、まとまっていない感じでした。そこが大陸地図によって1つにまとまったので、あれは本当にスタッフがいい仕事をしてくれたと思っています。虎牢関など各ロケーションの見せ方もその段階で生まれて……、全体的にミニチュア的な新しい表現に落とし込んでくれました。
――拠点でNPCがしゃべるのも遊び心がありますね。
――拠点でNPCがしゃべるのも遊び心がありますね。
関口
そうですね。あれも本当に音声収録ギリギリのタイミングで「やりたいです」と提案されたものです。セリフにダジャレが多いのは、ちょっとやり過ぎかなと思いましたが(笑)、シリーズのお約束ですし、にぎやかになったのでいいかなと。
――三勢力のシナリオはどんな順番で書き上げていったのでしょうか?
――三勢力のシナリオはどんな順番で書き上げていったのでしょうか?
関口
基本的には並行して描いていましたが、孫呉勢力だけ少し毛色が違う結末になっているので、その関係で一番最初に完成しました。曹操勢力と劉備勢力は表裏一体な部分がありますが、曹操のほうが思想がしっかりしていたのもあって描きやすく、先に完成しました。劉備に関しては、仁徳の人になる前のキャラクターを描くうえでの苦労も多かったです。それもあって、完成したのは最後です。
――従来の『真・三國無双』シリーズとはまた違う描き方がされている無双武将たちですが、本作でとくに変化の大きい武将は誰でしょうか?
関口
張角と董卓です。今までと違う『真・三國無双』を描くうえで、どうしようかと悩んだ中、スタッフから出てきたのが「敵側のキャラクターを変えないと変わらない」という提言でした。敵側を変えることによって、より物語がドラマチックに描けるようになりました。張角に関してはよりカリスマ性のあるキャラクターに、董卓に関しては主人公と交流するシーンをしっかり入れることで、のちの戦いが熱くなるようにしました。
――敵側以外だと、劉備たちの若い姿も新鮮でした。
――敵側以外だと、劉備たちの若い姿も新鮮でした。
関口
義勇軍を立ち上げるところから始めるので、描き方には注意しました。とくに張飛をカッコよく描くことには気を使っています。というのも従来シリーズでは張飛はどうしても人気が出なかったんです。本来『三国志』において、張飛は中核を成す魅力的で愛らしいキャラクターだと思うんです。本作でより武将たちを魅力的に掘り下げるうえでのベンチマークとして、張飛の描き方には注意しました。一方関羽に関しては、見た目を変えても従来のキャラクター性を変えるのは難しいと感じたので、主人公との関係性によってキャラクターを掘り下げる形にしました。
――随行武将が一勢力3人=合計9人ということで、選定には迷ったことかと思います。
庄
“赤壁の戦い”までに活躍したキャラクターから選ぶ、ということは決めていたことなので、誰にするかはそこまで迷いませんでした。とくに劉備軍に関しては関羽、張飛、趙雲の3人は外せないだろうと。
今後のDLCの予定やコラボ無双の可能性は?【真・三國無双 ORIGINSインタビュー】
――『真・三國無双』シリーズの基本を踏襲しつつ操作性が進化している印象の本作のアクションですが、アクションを作り込んでいくうえで苦労したポイントはどこですか?
大島
最初に庄からは「ワールドワイドに楽しめるアクションにする」「即時性のある気持ちいいアクションにする」というオーダーをもらっていて、その2軸をベースに基本的なシステムを作っていきました。プレイヤーアクションについては、クオリティが高いものを作れるスタッフが揃っていたので、大きな苦労はなかったと思います。苦労したポイントとしては、今までの『真・三國無双』シリーズであまり力を入れられていなかった敵の挙動をしっかり作る必要があったことです。プレイヤー側に適応性のあるアクションを用意したうえで、強敵を乗り越える気持ちよさと爽快感を実現しようと。
最初は四方八方から敵が襲い掛かってくる構造でしたが、流石に兵士の横槍がきついので、武将が指示を出して兵士を動かすような形に調整しました。今までの『真・三國無双』シリーズと比べても、10倍以上は敵側のシステム構築やモーションにこだわったんじゃないかと思っています。
――個性的な武器種がそろっていますが、とくに人気が出る武器種はどれだと思いますか?
最初は四方八方から敵が襲い掛かってくる構造でしたが、流石に兵士の横槍がきついので、武将が指示を出して兵士を動かすような形に調整しました。今までの『真・三國無双』シリーズと比べても、10倍以上は敵側のシステム構築やモーションにこだわったんじゃないかと思っています。
――個性的な武器種がそろっていますが、とくに人気が出る武器種はどれだと思いますか?
庄
シリーズユーザー向けに最初に馴染みやすいのは剣だと思いますが、どの武器でも使っていくうちに愛着がわくと思うので、最終的に人気はばらけるかと思います。実際、モニターで行ったテストプレイでもバランスよく分かれていました。なかでも一番人気は剣で、次が棍という感じでした。
――何か条件を満たすことで発生する隠しイベントなどはありますか?
――何か条件を満たすことで発生する隠しイベントなどはありますか?
大島
戦闘のなかで発生するイベントは無数にあります。いろいろなプレイをして「こういったらどうなるんだろう」「この戦場であそこに行ったらどうなるんだろう」って思って行ってみたら、きっと何かしらリアクションがあるんじゃないでしょうか。
庄
近年の『真・三國無双』では「プレイヤーがこういうルートを通るだろう」という想定で作っている部分が多かったと思うのですが、本作ではプレイヤーがどういうルートを通るかわからないことを前提とした設計になっています。攻略ルートを考える戦術的な楽しさを味わえるようになっているので、ぜひいろいろ試してみてください。
――やり込み要素にはどんなものがあるでしょうか?
大島
大陸地図上での探索要素を始め、武器収集など多彩なやり込み要素を用意しています。メインストーリーだけを追ってもクリアできるバランスにはなっているとは思いますが、寄り道要素も充実しているので楽しみにしていただければと。また、まだ詳細は言えませんがクリア後のやり込み要素に関しても用意しています。
――発売後のDLCについての予定はありますか? DLCの予定がある場合、赤壁後の戦いが描かれるのか、時代は変わらず事件や戦いを掘り下げる形になるのかも気になります。
――発売後のDLCについての予定はありますか? DLCの予定がある場合、赤壁後の戦いが描かれるのか、時代は変わらず事件や戦いを掘り下げる形になるのかも気になります。
庄
もちろん作りたい気持ちはありますが、今のところ未定です。前提として一本でしっかり遊べるゲームを作りたいというのがあったので、DLCを想定した作りにはしていません。とはいえ実際に遊んだプレイヤーのみなさまから「もっとこういうものが遊びたかったな」というご意見が出てくる可能性はあるので、それを想定してもしDLCをもしやるのであればこういうものを作りたい、というものは一応考えてはいます。
ちなみに仮定の話ではありますが、もし続編を作る場合は本作のあとの時代を描きたいと思っているので、DLCを作る場合は“赤壁の戦い”までの時代を掘り下げる形になるとは思います。
――今後発売される『真・三國無双』シリーズ(コラボ作品も含めて)は、本作のアクション性が基準になるのでしょうか?
ちなみに仮定の話ではありますが、もし続編を作る場合は本作のあとの時代を描きたいと思っているので、DLCを作る場合は“赤壁の戦い”までの時代を掘り下げる形になるとは思います。
――今後発売される『真・三國無双』シリーズ(コラボ作品も含めて)は、本作のアクション性が基準になるのでしょうか?
庄
そこも作品しだいになるのかと思います。コラボレーションする作品に本作のようなアクション性がマッチすればそれを採用するでしょうし、作品ならではのシステムが必要になれば、それを考えていくかと。ただ本作が今後の『真・三國無双』シリーズのベンチマークになること自体は間違いないでしょう。
――最後に、発売を心待ちにしているユーザーにメッセージをお願いします。
大島
1つの戦場が有機的に動いていくのが、『真・三國無双』ならではのゲーム性だと思います。本作ではそんな『真・三國無双』ならではのゲーム性、アクション性を突き詰めているので、ぜひ遊んでみてください。
関口
長く続いてきたシリーズとしての魅力を大事にしつつ、今まで『真・三國無双』に触れてこなかった人でも魅力を感じてもらえるような作りにしています。もちろん、従来のファンにも「こういう切り口で武将を描くのもアリだよね」と思っていただけるかと思います。ぜひプレイしてみてください。
庄
最初の『三國無双』から数えて、人生の半分くらいは『真・三國無双』シリーズを作っていたといっても過言ではない自分ですが、本作はナンバリングの『真・三國無双』作品だけでなくコラボ作品も含めて、すべての集大成になっていると感じています。今だからこそ遊べる『真・三國無双』として自信を持ってお届けできるデキになっているので、多くのプレイヤーの方に手にとってもらいたいです。