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『メダリスト』2話感想。“楽しむ”よりも”上手くなりたい”、いのりのガチ勢マインドに圧倒される。ライバル的ポジションの光もいい娘すぎて新鮮だった(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』2話“初級バッジテスト”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』2話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

完璧な歌詞と映像のシンクロが鳥肌もののオープニング【メダリスト】

 第1話では、母親にどうしてもフィギュアスケートをやりたいことを告げることができたいのり。2話では早速司のコーチングが始まりました。

 司としては笑いが堪えきれなくなるくらい順調なようなのですが、一方のいのりはというと、自分よりも歳下の子供たちの方が滑れていることに焦りを覚えている様子。焦るには早いんじゃないかとも思うんですけど、“トップを目指すには、11歳で始めるのは遅い”ということを、すでにいのりが強く自覚しているからこそなんでしょう。

 普段はオドオドしているのに、ことフィギュアスケートになるとめちゃくちゃ積極的になるギャップもいのりの面白さで、バッジテストをすぐに受けることにしたのも、とにかく早く上手くなりたいという決意が感じられます。

 そして2話からは、米津玄師さんが歌う主題歌“BOW AND ARROW”に映像がつきましたが、もう本当に素晴らしすぎて、ちょっと鳥肌が立ったレベルでした。 

 司が憧れから夢を挫折するまで、一人で泣いているいのりのシーンとか、ありとあらゆる歌詞と映像のタイミングが完璧にシンクロしてて、先に曲があり、それにあわせる形で映像が作られたのはまず間違いないと思います。

 司やいのりの表情が曇っていく長い“溜め”からのサビでの開放感も、凄まじすぎるフィギュアスケートの作画もあいまってめちゃくちゃ気持ちよくて、これは毎回絶対に飛ばせないオープニングになりそうだなと確信もしていました(公式でノンテロップOPも公開されていて、記事を書きながら無限リピートしてました)。


 本編はというと、硬い決意でバッジテストに赴いたいのりでしたが、スマホを破壊する明らかにヤバそうなおじさんや、ブスエビフライ呼ばわりしてくる男の子に遭遇してしまい、すっかりメンタルがボロボロに。

 直接危害を加えてきたわけではないおじさんはともかく、初対面でいきなりブスエビフライ呼びされたかと思いきや、仲良くなったかと思った女の子はノータイムで殴るわで、大分厄介なことに巻き込まれているので動揺するのは無理はないなと。言葉で表現するのがあまりにも難しい、この世の終わりのような顔になっています(ミミズを掘りめたのはさすがに大丈夫かと思いましたが)。
 そんないのりの状態を把握した上で、落ち着かせるための司のフォローが実にナイスでした。

 このシーン見ると、司ってコーチが初めてとは思えないくらい子どもの相手に慣れていることが分かるんですが、原作では司がコーチの仕事を始める前、とある親子の家に住み込みで働いていたことが描写されていて、子どもの相手がうまいのも納得できる部分があります。そこも踏まえると、スケートクラブのコーチって司にとって本当に天職っぽいですよね。

 アニメでは司の過去に関連のエピソードはまだ描かれていないんですが、アニメ版はあくまでもいのりの視点を軸にするという方向性で物語を再構成している可能性もありそうだなとも思いました。

エンジョイ勢とガチ勢のスタンスの違いを、いのりの姿から連想する【メダリスト】

 司のナイスフォローもあり、無事初級のバッジテストに合格したいのりでしたが、母からの「中学まで」というタイムリミットを課せられてしまいました。

 いのりの学年は5年なので、あとどんなに長くても2年弱しか残されていないと考えると、ほとんど時間はないに等しいので、「早く上手くならないと」と焦る気持ちも分かります。

 その上、異質な存在であるいのりに対する周囲からのやっかみもあり、またまた表情が曇りそうになったところに、バッジテストの時に出会った少女・狼嵜光が颯爽と鬱展開フラグをブレイクしていってくれました。

 全国ノービスB優勝という輝かしい実績を持っている光ですが、リードしてあげていた所をいのりに振りほどかれてもまったく嫌そうな表情を見せなかったり、スポーツもののライバルにありがちな高慢な態度もなく、純粋にいい娘なんですよね。

 いのりと接した時間はまだほとんどないに等しいのですが、いのりの心境を理解して送るアドバイスも的確で、まだ小学生とは思えないくらい大人びています。


 この時のいのりが、光がどれだけすごいかを理解した上で、もう勝つことを意識している、超のつく負けず嫌いマインドには圧倒されました。

 しかもその後司に対して口にしたのが「金メダルを取れる人になりたい」で、「オリンピックに行かせて」という光より、さらに高い目標を掲げてるんですよね。1話で司も言っていた、いのりにうまくなれる素質があるというのは、こういうところなんだろうなと。

 また、光が話していた大人との認識のズレは、部活とか対戦ゲームとかでも結構ある、ガチ勢とエンジョイ勢の考え方の違いみたいなところと通じるなと思いました。同じ“やりたい”でも、“楽しみたい”のか“うまくなりたい”のかのスタンスの差は結構あると思っていて、いのりは圧倒的に後者なんですよね。

 結構いろんなスポーツものを見て来ましたが、最初は前者寄りのマインドから始まる主人公がほとんどだったので、金メダルのために他のあらゆる楽しいこと犠牲にしてもいいと覚悟を決めているいのりは、かなり新鮮でした。

 誰に強要されるでもなく、小学5年でこの境地に至っているというのがまたすごくて、小学生だった頃の自分には絶対に無理だろうなと思えます。

 そこから流れるエンディングは、曲も映像も大分ポップな感じになっていて、オープニングとのギャップを感じたんですが、オープニングがフィギュアスケートをやっている時のカッコいいいのりだとしたら、エンディングは日常でのちょっと変わった女の子としてのいのりの姿を表現しているとも取れそうで、『メダリスト』らしい構成だなと。

 いのりがベッドにおいている巨大ミミズ抱き枕は、グッズとして販売したら結構人気が出そうな気がします(リアルなミミズで想像したら絶対に嫌ですが……)。


 フィギュアスケートをうまくなるために、本気の覚悟を固めたいのりと、本気でそれに向き合うことを決めた司。いよいよタイトル通りの“メダリスト”を目指すための二人の物語が始まりそうです。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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