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【バレンタイン×アニメ神回】『月刊少女野崎くん』最終回。半年渡しそびれた千代のチョコはどうなる? Bパート花火大会のすれ違いも秀逸で甘々(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 今年もバレンタインデーの季節になりました。

 バレンタインといえば、甘い思い出から苦い思い出まで、人それぞれ思い浮かべるものは違うかと思いますが、とくにラブコメ系のアニメ作品においては、結構定番と言えるイベントでもあります。アニメファンなら、一度は何らかの作品でバレンタイン回を見た覚えのある方も多いでしょう。

 今回はその中でも、筆者にとって印象的だった作品の神回的なエピソードをピックアップして紹介。今回は、ガンガンONLINEにて連載中の椿いづみ先生のマンガを原作としたアニメ『月刊少女野崎くん』(以下、野崎くん)のバレンタイン回について語ります。

※この記事には『月刊少女野崎くん』のネタバレが含まれています。

野崎くんに渡せないまま、半年放置されていたチョコレート【月刊少女野崎くん】

 アニメ版『野崎くん』のバレンタイン回は、最終号“この気持ちが恋じゃないなら、きっと世界に恋はない。”。バレインタイン回はいろんなラブコメでありますが、最終回に持ってくるケースは結構珍しいんじゃないかと思います。

 さらにこのエピソードが変わっているのは、明確な“バレンタイン回”なのに関わらず、バレンタイン当日の出来事をメインで描いていないんです。

 というのも、この回ではバレンタインから約半年後、夏祭りを目前に控えたある夏の日に、バレンタインに渡すことができないまま、冷蔵庫に入れっぱなしになっていたチョコを、佐倉千代がクラスメートに食べてもらおうと持ってくるという、あまりにも変化球すぎる流れで始まります。

 もちろん千代が渡そうとしていた相手は、千代が想いを寄せる本作の主人公・野崎くんなわけなんですけど、売れっ子少女漫画家“夢野咲子”としての顔をもつ野崎くんは、バレンタインの当日は漫画のネタ集めのために1日中忙しく駆け回っており、まったくチョコを渡すタイミングがありませんでした。

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 恋愛経験皆無なのに恋愛漫画を連載している野崎くんにとって、バレンタイン当日といえば、漫画に使えそうな恋愛ネタを集めるこれ以上ないタイミングですからね。そのためにいろいろ探られるカップルにとってはたまったものじゃないでしょうけど。

 なお野崎くんはバレンタインの数日前、「バレンタインは年3回あって欲しい(※ネタ集めのため)けど、ホワイトデーは1回で良い(※地味だしあまりネタにならないため)」という趣旨のノンデリ発言をしてクラスの女子たちからドン引きされており、義理チョコすらもらえなかった様子。

 もっとも本人はまったく気にしてないみたいですが、この時に千代が渡せていれば、野崎くんがもらった唯一のチョコとなっていたはずなので、多少は印象に残っていたかもしれません。

『野崎くん』らしい二人のすれ違いと、ロマンチックなシーンが共に描かれた最終回【月刊少女野崎くん】

 千代は友人の結月や鹿島くんに相談し、半年遅れになろうが野崎くんにチョコを食べてもらおうと決意するのですが、タイミングがいいのか悪いのか、チョコを持って廊下を歩いている最中に歩いてきた野崎くんとぶつかり、チョコをすべて床にぶちまけてしまうことに。

 これに関しては野崎くん側にはほぼ非はなく、なぜかチョコに蓋をしないまま、しかもよそ見をしながら歩いていた千代の方にほぼ過失がありそうではあったのですが、野崎くんは責任を感じてしきりに千代に謝罪します。

 千代は気にしてない素振りを見せつつも「本当は食べてほしかったけど……」と素直な気持ちを漏らすのですが、まさか自分へのバレンタインチョコとは想像していない(半年後なので当たり前ですが)野崎くんは、これを「拾ってでも食え!」と言われたと誤解(この時、野崎くんがイメージしているドS気味な千代が、ドスの聞いた小澤亜李さんの演技と相まってめっちゃ好きです)。

 結果的に野崎くんは、床に落ちたチョコを即座に口にするという、もっとも千代を喜ばせるイケメン対応をることに成功します。

 ただ、その結果野崎くんに"床に落ちたものを自分が食べる光景を見て喜んでいる千代”という、激しく実態から剥離したイメージを植え付ける形になってしまってはいたのですが、それに気付かないままいられたのは、千代にとって幸いだったかもしれません。

 その後千代は、お詫びとしてホワイトデーのお返し替わりの“飴”をお願いするも、あれがバレンタインのチョコだったという前提を野崎くんは知らないままだったので、"飴”が何か特別な隠語なのではないかという混乱も招いていました。バレンタインのエピソードだろうと、最後までまったく二人の調子が噛み合わないまま終わるのは、ある意味『野崎くん』らしさと言えるのかも。

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 といいつつ、この最終号には続きのBパートもあり、夏祭りの日に偶然合流した千代と野崎くんがいい雰囲気になるエピソードも描かれています。

 こちらでは、浴衣姿の千代を野崎くんがマジマジと見つめたり、千代の食べかけのリンゴ飴を野崎くんがいきなりかじったり、果ては二人で花火を見ていた時、千代が「好きだよ」思わず告白してしまうなど、これでもかと甘いシチュエーションが満載。

 それも結局野崎くんには「(花火が)好きだよ」と解釈され、肝心なところが伝わっていない……というオチではあったんですが、花火の音で告白の台詞がかき消されるような演出(告白が聞こえたのかどうかを一瞬分からなくする)が神掛かっていて、めちゃくちゃロマンチックなシーンになっています。

 入学式に遅れてきた千代を野崎くんが助ける、二人の最初の出会いが最終話の回想シーンで満を持して描かれたりもしていて、始まりから現在までの二人の関係値を表す、非常に良い最終回になっていました。

 『野崎くん』のアニメが放送されたのは2014年なので、もう10年以上前……と考えるとちょっとホラーではありますが、アニメもかなりヒットしただけに、未だ2期が発表されていないのは信じがたい部分がありますよね。

 原作の連載も続いていますし、直近でも千代と“みこりん”こと御子柴実琴のねんどろいど化などグッズ展開がされたりと、今もファンが多い作品なのは間違いないので、アニメも是非続きを作って欲しいところです。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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