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【バレンタイン×アニメ神回】『銀魂』チョコをあげたいのに、素直になれない神楽。過去回からの神楽の変化が尊い(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 今年もバレンタインデーの季節になりました。

 バレンタインといえば、甘い思い出から苦い思い出まで、人それぞれ思い浮かべるものは違うかと思いますが、とくにラブコメ系のアニメ作品においては、結構定番と言えるイベントでもあります。アニメファンなら、一度は何らかの作品でバレンタイン回を見た覚えのある方も多いでしょう。

 今回はその中でも、筆者にとって印象的だった作品の神回的なエピソードをピックアップして紹介。空知英秋先生のマンガを原作としたアニメ『銀魂』のバレンタイン回について語ります。

※この記事には『銀魂』のネタバレが含まれています。

月詠とあやめの力を借り、神楽は銀さんたちにチョコを渡そうと奮闘するも……?【銀魂】

 『銀魂』におけるバレンタインのエピソードとして印象的なのが、TVシリーズ4年目の204話“カカオよりココロ”。実にバレンタインらしい“甘さ”が詰まったエピソードになっていて、主役となるのは万屋の紅一点でもある神楽です。

 神楽は新八の姉・妙が店の客に渡す義理チョコを用意しているのを知り、自分も世話になっている銀さんや新八にチョコをあげようと考えます。ところが、恥ずかしさからどうしても銀さんたちにチョコを渡すことができず、代わりに友だちの晴太にあげようとします。


 しかし、その様子を見ていた月詠が事情を察してチョコを取り上げ、神楽が渡しやすくなるように、自分のチョコを一緒に銀さんたちに渡すように頼みます。このあたりの大人らしい配慮がめちゃくちゃスマートで、まさに”空気の読める女”としての月詠の本領が発揮されています(月詠の方も恥ずかしくて、自分で渡す勇気が出なかったという理由もあったようですが)。

 とはいいつつ、神楽がちゃんと渡せるか不安になり、月詠も一緒についていくことにしたのですが、頼んだチョコが出来上がるまでの間に、お茶請けとして出されたウィスキーボンボンを口にし、完全に酔っ払ってしまったことで作戦は大失敗に。

 今度は神楽は、日頃銀さんに熱烈なアプローチをかけている“さっちゃん”こと猿飛あやめを頼るも(一番頼ってはいけない人の気がしますが)、こちらはこちらで正攻法でのアプローチをとったことがないことに土壇場で気づいて逃げ出してしまい、結局うまく行きません。

 普段あれだけ銀さんへの好意を露わにしながら、正面切ってまともに行こうとすると恥ずかしくて耐えられないという、あやめとしては珍しい(?)乙女な一面が垣間見えた展開でした。

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 結局二人は直接渡すのを断念し、神楽に万屋に置いておくように頼んでチョコを渡し、神楽も自分のチョコを川に投げ捨ててしまいました。

 さらにその様子を見ていた妙がやってきて、「本当にそれでいいのか」と神楽に確認するのですが、神楽は「チョコを渡さなくても二人に自分の気持は伝わっている」という結論に至ったことを明かします。妙もそれを受け入れ、無理に説得しようとはせず、神楽に自分の分のチョコも一緒に置いておくようにお願いすることになります。

93話から通して見ると、万屋の関係性の変化や神楽自身の成長を改めて感じる【銀魂】

 ……と、ここまでの部分でも割と良い話としてまとまっているんですが、個人的に好きなのがこの後のシーン。

 チョコをもらえないままバレンタインを終えそうになっている銀さんたちのもとに、神楽から雑に3つのチョコ(月詠・あやめ・妙の分)が届けられるのですが、銀さんたちがチョコレートの包みをあけると、すべてのチョコに書かれていたメッセージが“神楽より”になっていました。

 つまりは、3人共神楽が結局チョコを渡せないことを見越して、神楽の気持ちが銀さん達に伝わるように準備をしていた……ということなんですが、月詠と妙だけではなく、あやめまで同じことをやっているのがなかなか驚きです。

 あやめの分だと思われるチョコだけは、“さ”の文字が途中で消されて“神楽”に書き変わっていて、いろいろ葛藤していたのが察せられるようになっているのも非常に味があります。銀さんだけじゃなく神楽のことも友だちとして大切に思っていることも分かる、あやめの株が爆上がりしたエピソードでもありました。

 しかもそのチョコを目にした銀さんたちが「今年は4つもらえた」と、渡されていない神楽からのチョコの存在を察した会話をしていて、神楽の言う通り二人には気持ちがしっかりと通じていたことも分かるのがまた良いんですね。

 『銀魂』のエピソードって、途中までは腹が捩れるほど笑わせてくれて、でも最後は不思議と感動するいい話にまとまる温度差も大きな魅力だと思っているのですが、それが非常に明確に詰まった回になっていました。

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 ちなみに『銀魂』のバレイタイン回はこれよりも前の、TVシリーズ2年目の第93話“ヒーローだって悩んでる”も該当。

 “ウルトラウーマン”という仕事に疲れたOLのような宇宙人が、世界征服を目論む悪の宇宙人の“チェリー大佐”に恋をし、最終的に振られ必殺技の光線でチェリー大佐は倒され、恋には敗れるものの世界の平和は守られる……という、バレンタインなのになぜか『ウルトラマン』のパロディと昼ドラのドロドロ恋愛劇を混ぜた、『銀魂』のカオス側が色濃く出たエピソードになっています。

 とくに冒頭での、あの水彩絵具がぐにゃっと混ざり合ってタイトルが浮かび上がってくるような映像演出とか、微妙に聞いたことがあるようなBGMとか初代『ウルトラマン』のオープニングがほぼ完全再現されていて、アニメ制作陣がノリノリで作っていたのが伝わってきます。


 なお、こちらでも銀さんたちはチョコをもらえず、普段と違うおしゃれ(と本人たちは思っている)服装で露骨にアピールしているのを、神楽から呆れられるというシーンがあるのですが、この時の神楽は自分がチョコを食べることしか頭になく、銀さんたちにチョコを上げるとは一切考えてなかったことを踏まえると、よりこの204話が“神回”になってくるんですよね。

 長い間一緒に過ごしたことで起きた万屋の3人の関係性の変化や神楽自身の成長など、ギャグメインの作品でありながら、しっかりとエピソードの積み重ねが行われていることが実感できるのが『銀魂』のすごいところ。

 本編はアニメも完結したものの、既にスピンオフの『3年Z組銀八先生』のアニメ化も決定しており、そちらの放送も楽しみです。


米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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