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『メダリスト』13話(最終話)感想。いのりが辿ってきた物語の集大成&理凰の演技シーンに泣かされた最高の最終回。第2期の制作決定も嬉しい(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』第13話“朝が来る”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』13話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

6級のテストを受ける話を聞いても一切驚かない光【メダリスト】

 ドヤ顔のいのりが口にした「見なよ……オレの司を……」が、バズりにバズっていた12話(“司”の部分をそれぞれの推しに変えることで、あらゆる作品に対応できるという使い勝手の良さもポイント)。

 そんな12話から続く、アニメの最終話となった13話では、全日本ノービスの出場条件となるバッジテスト6級にいのりが挑むエピソードが描かれました。

 冒頭では、本格的にフィギュアスケートを始める前のいのりのシーンも挟まれましたが、今までミミズを集めるシーンってギャグ気味に扱われることが多かったので、実はあの裏側ではこんな辛い出来事があった……というのは、なかなかに衝撃的。

 今回は総じて、12話のラストにいのり自身が言及していた“嫌いだった昔の自分”のシーンが印象的に使われていました。


 その上で良かったのがいのりと姉・実叶との会話で、実叶から見ると、昔のいのりも今と変わらず頑張り屋だったと語られていたこと。

 実叶は普段日本にいないこともあって、結束家の姉妹の関係はあまり描かれていない印象がありました。が、いのりにとっての実叶は一番相談しやすい家族で、実叶もいのりの悩みや頑張りを一番近くで見てきたんだろうなという関係性が、今回のやりとりからも分かります。

 いのりは司と出会う前から頑張っていたからこそ、本来コーチを引き受けるつもりがなかった司の心を動かしました。そして周囲に変な目で見られても、心を折られずにミミズを集め続けたいのりがいたからこそ、今のいのりと司がいるんですよね。

 いのりにとっての目標でライバルでもある、光も久しぶりに登場。スケートを始めてから一年とちょっとで、6級のバッジテストを受けられるようになったというスピードは本来驚くべきことだと思いますが、光はまるでそれが当たり前のことのように受け止めていたのが印象的でした。

 おそらくは光自身も、いのりのようなすさまじい成長スピードでバッジテストに合格しているのもあるのでしょう。加えて、前にいのりの滑りを見た時に、それくらいのことはできるだろう、という予感に近いものを持っていたからなのかなと。


 それくらいいのりのことを買っていそうな光ですが、それでも「自分が負けるかもしれない」という可能性は1ミリも考えてなさそうな、絶対的な自信のようなものも感じます。猛者……。

 この2人のライバル関係、スポ根ものでもなかなか見ないタイプで面白いのですが、今後いのりが光の実力に近づいていくことで、その関係に変化が生まれるのか生まれないのか……非常に気になります。

挿入歌のようなタイミングで流れる理凰の演技曲【メダリスト】

 合宿以来となる理凰との再会も描かれていましたが、最初に司を見つけた時の「明浦路先生」と呼ぶ理凰のたった一言の台詞に、隠しきれない喜びと尊敬の感情が籠もりまくってるのが分かるようになっていて、やっぱり声優さんってすごい……と再認識されられました。

 慎一郎共々、いのりたちにすら覚えられていなかった名字で呼んでいるのも、親子ならではの共通した律儀さみたいな部分も垣間見えます。

 Aパートは理凰側にも焦点を置いた話になっており、12話で司が代演していた演技曲『Go For The Gold』の使い方があまりにも完璧すぎて涙腺が崩壊しました。

 流れるタイミングがもう完全に挿入歌のそれなのですが、実際にこの曲にあわせて理凰が滑っているというのがまたエモい。理凰が合宿で見た司の姿をイメージしながら滑っているであろうことも想像できて、より泣けるんですよね。


 理凰のドラマが描かれたのは本当に終盤の数話だけですが、たったそれだけでここまで自然に感情移入できるようになっているのもすごくて、実際に楽曲を流せるアニメならではの良さが存分に詰まったシーンになっていたと思います。

 いのり側のドラマもしっかり描かれていて、とくにグッと来たのがフリーのテストが始まる前に、いのりが母・のぞみと司とそれぞれやりとりするシーン。元々『メダリスト』の物語は、いのりとのぞみの親子のエピソードからの始まっていますし、それが再度ピックアップされたことで、より最終回らしいエピソードとしてまとまっていました。

 そして司の方はというと、以前の大会でもいのりがやっていた“結ぶ”という行動にそんな意味があったとは……と、感想を書いている身として完全に盲点を突かれた気持ちに。

 確かに、司が真面目に話している時になんでいのりは首紐を結んだりしたんだろうとちょっと引っかかるところはあったんですが、まさか1話からの伏線があった上、最終話でそれが回収されるとは、まったく予想できていませんでした。

 いのりの名字が“結束”という結ぶことを連想させる単語になっているのも、実はそれに関連していたのかと妄想も広がったり、最終話で描くテーマとしても相応しいものになっていたなと。


 過去の回想を交えながらのいのりの滑りも、今までの物語を振り返る集大成みを最高に感じられて涙腺がまた刺激され、1つのアニメ作品としてのストーリー構成が本当に素晴らしかったと思います。

良い最終回だった……と思ったところに2期が発表されるサプライズ【メダリスト】

 そして個人的に13話で一番好きなのが、滑り終えた後、緊張して結果を待っている時のいのりを理凰が安心させるシーン。6回目の挑戦になる理凰の方が、不合格だった時のダメージは大きいはずですが、その状態でいのりのことを気遣った言葉を口にできるようになったのは、なかなかの驚きでした。

 初対面の時は「ブスエビフライ」呼ばわりしていた理凰が、めちゃくちゃ恥ずかしそうにしながらもいのりを褒めるのがあまりにも素晴らしいツンデレで、ニヤつきが止まらなくなったのは自分だけではないはず。

 12話の感想で「いのりと理凰のコンビが好き」ということを書きましたが、今回でよりそれが揺るがぬものになりましたね。


 原作はまだ続いていますし、Cパートは「俺達の戦いはこれからだ」的終わりになるのは仕方ない……と思っていたのもつかの間、早くも2期の制作が決定するサプライズが。

 正直なところ、作品の人気を考えると2期はもう決まってるんじゃないかという予想はなくはなかったんですが、今回の13話があまりにもしっかりアニメとしての最終話に相応しいエピソードになっていたのもあって、「アニメは一旦これで終わりかも。続きがあるとしてもさすがにまだ発表はされないかな……」という方に気持ちが傾いていました。

 それだけに、この早さで2期の発表をしてくれたのは驚きもありつつ嬉しかったです。光を始めとしたライバルたちとの熱い戦いが再び見られそうなのは、非常に楽しみですね。

 原作の絵の力がかなり強い作品なので、読者が脳内でイメージしていたクオリティで映像化するのはかなり高いハードルがあったのではないかと思うのですが、その期待に答えるような素晴らしいアニメ化になったのは、現在ファンの盛り上がりを見ても明らかだと思います。

 『BOW AND ARROW』があまりにも良すぎたのもあり、2期の主題歌はどうなるのか、放送時期はいつになるかなどの続報も気になるところで、今から放送が待ち遠しいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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