ガンダムシリーズファンのライター・米澤崇史がオススメのガンダム作品を紹介する連載【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】。第3回は『新機動戦記ガンダムW』を紹介します。
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新機動戦記ガンダムWとは?
『新機動戦記ガンダムW』は、1995~1996年にかけて放送されていたTVアニメ。翌年の1997年にはTVアニメのその後を描いたOVA『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』も発売されています。
前年まで放送されていた『機動武闘伝Gガンダム』に続く、宇宙世紀ではない世界観を舞台とした“オルタナティブシリーズ”の2作目にあたります。
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『Gガンダム』は既存のガンダムの概念をガラリと一変させた、シリーズにとってターニングポイントとなった作品なのですが、『ガンダムW』も負けず劣らず、一線を画した作品でした。
メインのガンダムパイロットの5人全員が美少年である点や、体制側が打倒するべき対象として描かれている点、ガンダムの出撃シーンがない点など、数々の伝統を打ち破り、ガンダムの新たな可能性を打ち出しました。
『ガンダムW』自体も大きな人気を博しましたし、その後大ヒットする『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダム00』への影響も大きく、『ガンダムW』がなければ、今のガンダムシリーズの人気はないと断言できるレベルで重要な作品です。
あまりにも情報量が多すぎる第1話。あの伝説の名言も【ガンダムW】
そんな『ガンダムW』ですが、個人的に魅力だと思っているのが個性的なキャラクターと先の読めないストーリー展開。
とくにそれらが存分に感じられるのが第1話の“少女が見た流星”で、この回がとにかく情報量が多すぎてすごいんです。
地球圏統一連合による支配を打破するための“オペレーション・メテオ”を実行するべく、主人公のヒイロ・ユイは、シャトルに偽装したウイングガンダムに乗って地球を目指すのですが、事前にオペレーション・メテオを感知していたゼクス・マーキス率いる秘密結社“OZ”の部隊に発見されてしまいます。
ヒイロはウイングガンダムによる単機での大気圏突入を成功させるも、ゼクスの乗るリーオーの攻撃で機体を損傷。随伴機こそ撃破するものの、ゼクスのリーオーに動きを止められたまま水中へと沈められてしまいます。
1話のAパートで主役ガンダムが敵軍の量産機に敗北するという、ロボットアニメとして前代未聞の展開。やられたように見せかけたわけでもなく、本当に行動不能に陥って一度破棄されており、ヒイロが再び乗るのは第4話までお預けになるというのがまたすごい(しかも第10話で自爆して再び大破します)。
時を同じくして、他のコロニーから送り込まれた4機のガンダムが統一連合に対して各々に攻撃を開始する中、ウイングガンダムから脱出し海岸に打ち上げられたヒイロは近くを通りかかったリリーナ・ドーリアンに偶然救助されて顔を見られてしまい、機密保持のため自決を図るも失敗。駆けつけた救急隊員を気絶させ、救急車を奪って逃走するという、主人公らしからぬ行動に出ます。
……と、普通ならこのあたりで1話が終わるところだと思うんですが、そうならないのが『ガンダムW』。
その後ヒイロはリリーナの暗殺へと目標を切り替えて、なんと彼女の通う学園に転入生として潜入。ヒイロを覚えていたリリーナは、自身の誕生日会へと招待するのですが、ヒイロはその招待状をリリーナの眼前で破り捨て、かの有名な「お前を殺す」の名台詞と共にその場を立ち去ります。
このヒイロの転入から「お前を殺す」まで、時間にして約2分というスピード感で、視聴者の多くもリリーナの「何なの……この人……」という台詞と同じリアクションをしたのではないでしょうか。
「お前を…」はお察しの通りです。 pic.twitter.com/9NHtUHF6a6
— ガンダムW公式アカウント (@GundamW_Info) August 8, 2025
もっとも視聴者の視点からは、自分の正体に気づきかねないリリーナを危険視して殺そうとしているのは分かるようにはなっています。
が! そのために学園に転入する必要があるのかは疑問ですし、さらに大勢の生徒たちの注目を集めた挙げ句、これから殺そうとしている相手にそれをわざわざ宣言するのは明らかに悪手のように感じるなどツッコミどころも満載。でもそのエキセントリックさも含めて『ガンダムW』の魅力です。
「訳が分からないけど、それゆえにヒイロのことが気になってしまう」という、作中のリリーナと同じ状況に自然と陥るようになっているんですね。
リリーナも実はヒイロに負けず劣らずのエキセントリックなキャラであることは少し話が進むと判明するんですが、幼少期からエージェントとして育てられたヒイロと箱入りのお嬢様であるリリーナ、違う方向でぶっ飛んだ二人が互いに惹かれ合うようになっていくのがしっかり納得できる構成になっているのもすごいところです。
思わず敵側に感情移入しそうになる序盤のガンダムの強さ【ガンダムW】
『ガンダムW』の魅力は他にもいろいろあるんですが、個人的にとくに好きなのが序盤のストーリーです。
前述した通り、ヒイロのウイングガンダムこそ1話から早速負けてしまうんですけど、本作におけるガンダム系のMSは、単機で統一連合やOZの部隊を戦うことを大前提に作られているのもあって、基本的にめちゃくちゃ強いです。
その上で『ガンダムW』は、群像劇としての一面が強く、その圧倒的に強いガンダムと戦うことになる敵側の視点も結構描かれるのもあって、ガンダムに乗る主人公側が悪い奴のように見えることもあるんですよね。
その辺が顕著だったのが第3話の“ガンダム5機確認”で、この回ではOZ側にゼクスの元部下であるワーカーというゲストキャラが登場するんですが、このワーカーがめちゃくちゃいい味を出しています。
ワーカーは尊敬するゼクスのために、ガンダムに対抗できる唯一のMSであるトールギスを自らの立場も顧みずゼクスに託した後、統一連合の部隊を救出するため、旧式のエアリーズに乗ってガンダムに戦いを挑みます。
ガンダムの襲撃を受けていた統一連合の部隊はOZを敵視していた上、共闘を拒否して独断行動をとっていたので、OZ側として助ける義理はなかったのですが、それでもワーカーは一人でも多くの兵士を生かすために出撃します。
その時に発したのが「我々もあの戦力の前には叩き潰されるでしょう。工場のデータ班に記録の指示お願いします。……後の兵士達のために」という台詞。ほぼ勝ち目がないにも関わらず、兵士たちの今後の戦いが少しでも楽になるよう、戦闘データを残すために戦いを挑むんです。
結果、トロワ・バートンの乗るガンダムヘビーアームズを追い詰めはしたものの、カトルのガンダムサンドロックの介入もあって撃破され、ワーカーは戦死してしまいます。1話限りで退場するにはあまりにも惜しく、ヒイロ達が戦っているOZの側にも正義があるということを一層感じさせる人物でした。
また、ガンダムは確かに戦闘においては強いのですが、OZ総帥のトレーズ・クシュリナーダはそれ以上に手強い存在で、実際の作戦はなかなかうまくいかなかったりするのも面白いところ。
第7話の“流血へのシナリオ”では、統一連合の最高司令官であるノベンタが軍縮とコロニーとの和平を進めようとするのですが、トレーズの流した偽の情報に騙されたガンダムが会議を攻撃してしまいます。
さらにトレーズは、自身のシャトルにノベンタが乗るように誘導。トレーズの暗殺を目論んでいたヒイロは、誤って和平派であるノベンタが乗るシャトルを撃墜してしまい、和平派の旗頭を失った統一連合はコロニーへの弾圧を一層強めることになるという、最悪の結果に終わってしまいます。
その後も、宇宙要塞バルジの主砲でコロニーが狙われて人質に取られ、ガンダムをOZに渡さないために自爆を実行せざるを得なくなってしまうという、ガンダムがどれだけ敵のモビルスーツを倒しても、どんどん苦境へと追い込まれていくのが『ガンダムW』の序盤。
最初はガンダムが理不尽に強いのでOZや統一連合側に感情移入していたんですが、ガンダムパイロットたちが苦境に追い込まれていくにつれ、今度は自然とそちらに感情移入できるという、非常によくできたストーリーになっています。
5機のガンダムはOZに抵抗するのですが、コロニーを人質にとられてはどうすることもできませんでした。そして、ついにヒイロが自爆を敢行するわけです。#ガンダム・モビルスーツ・バイブル#ヒイロ・ユイ#自爆 pic.twitter.com/ca3fjwLxoy
— ガンダム・モビルスーツ・バイブル(GMB)通信 (@SNRI8741) February 3, 2022
中盤にかけては敵味方の勢力が頻繁に入れ替わるので、ちょっとついていくのが大変になるんですが、終盤の展開は非常に熱く、とくにトレーズと張五飛の決闘は、屈指の名場面としても知られています。
トレーズはガンダムシリーズのライバルキャラクターの中でも頭ひとつ抜けたカリスマ性があり、『ガンダムW』の中でもとくに好きなキャラクターです。
6月2日(バラの日) ×26日(風呂の日)
— ガンダムW公式アカウント (@GundamW_Info) June 26, 2025
6月26日は??バラ風呂の日??
「次のバスタイムにはバラのエッセンスを用意いたします。」
レディ・アン
#ガンダムW #エレガント pic.twitter.com/5oh1aeHhGw
作品の代名詞にもなっているSE入りのオープニング【ガンダムW】
あとは『ガンダムW』の魅力として欠かせないのが、オープニングの格好良さです。
最初の主題歌である『JUST COMMUNICATION』は人気が高く、イントロのヒイロが手を広げるポーズは『ジージェネレーション』シリーズのウイングガンダムゼロ(EW版)の戦闘アニメに組み込まれています。この時代のOPならではの合間に入ってくるSEもまたカッコいいんですよね。
とくに5機のガンダムが次々に映し出される場面での、ガンダムサンドロックがヒートショーテルを振り下ろした際の“ブッピガン”音はあまりにも有名。
あのSEは『ガンダムW』だけで使われたSEではないのですが、『ガンダムW』のオープニングの印象が強すぎるがゆえに、“ブッピガン”=サンドロックのヒートショーテルの音として認識している人も多いんじゃないかと思います。
公開された30周年のPVでも、このSE部分がバッチリ再現されていて「これこれ!」という気持ちになって興奮しました。
ただこのオープニング映像、後期のOPである『RHYTHM EMOTION』に切り替わるタイミングが第41話とかなり遅めなんですが、これには当時の制作現場のスケジュールがかなり逼迫していたという事情があったため。
しかもこの時流れたのも仮のバージョンで、後期OPが完全な映像になるのは全49話中48話からと、たった2話しか使われていないというのはちょっとした伝説になってもいます。それだけ時間が掛かっただけあって、完成版の後期オープニングは無茶苦茶カッコいいので、これからご覧になる方は終盤のオープニング映像にも注目してみてください。
30周年を機に、OVAのさらに1年後を描いた漫画『新機動戦記ガンダムW 0.5POINT HALF PREVENTER-7』がガンダムエース上で連載されるなど、今最高にアツい『ガンダムW』。是非ご覧になってみてください。
本連載では、引き続き『ガンダム』シリーズのオススメ作品を紹介していきますので、お楽しみに。
【米澤崇史のガンダム、次に何見る?】バックナンバー(第1~2回)
米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。