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『青ブタ』サンタクロース編感想。最後に残された霧島透子という“謎”

文:米澤崇史

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 アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』サンタクロース編(第11話~第13話)の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』11~13話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

福山が物語の鍵を握っていたまさかの展開【青春ブタ野郎】


 『青ブタ』2期もついに最終回に。7年ぶりのTVシリーズで、毎週『青ブタ』を見られる楽しみが終わってしまった寂しさがあります。

 ラストエピソードとなったサンタクロース編は、2期を通して登場していた霧島透子……を自称していた岩見沢寧々に焦点が当たったエピソードでした。


 岩見沢が霧島透子当人ではないというのは、今までの流れからもなんとなく予想ができていましたが、まさか福山の彼女だったのには、かなり度肝を抜かれました。

 11話のマフラーを拾うシーンとか、確かに改めて見返すと自分がプレゼントしたマフラーを雑に扱ってしまった福山にキレていることがよく分かるんですが、最初見た時、そこまで深い仲だったというのはまったく想像できてなかったです。最後の最後に来て、福山がこんな重要な存在になるとは……。


 切ないのは、思春期症候群になった岩見沢を福山が認識できていなかったこと。とくに福山に新しいマフラーを買って渡そうとするシーンは見ていて辛かった。

 結果的に、すでに十分に絶望していた岩見沢に最後のトドメを刺してしまい、福山とゆっくり話をする時間がなかったタイミングの悪さもあって、咲太にしては珍しく悪手を打ってしまった形でした。

 美東が予想したとおり、麻衣が大学に入ってきて周囲からチヤホヤされなくなったのがきっかけで岩見沢が思春期症候群を発症していたのだとしても、せめて福山だけにでも姿が見えていれば、きっとここまで岩見沢がこじらせることはなかったんだろうなと。

 福山が思い出したと思えば、今後は岩見沢の方が福山を忘れてしまったり、見ていてなかなかもどかしいカップルでした。

 上田麗奈さんの演技も本当に素晴らしく、咲太や福山に対して激昂するシーンはあまりに真に迫りすぎていて、素でちょっとビビっていました。あの“圧”は、声が上田麗奈さんだからこそだろうなと。


 また、今までは双葉の手を借りたりはしつつも、思春期症候群を治すきっかけを作るのは咲太の役目でしたが、岩見沢に対しては早い段階でお手上げで、福山にほぼ任せるような形になっていたのは珍しいパターン。

 失敗したら麻衣に危険が及んでいた可能性があるわけで、普段は割と福山には冷たい咲太ですが、なんだかんだ友人としては信頼しているんだな……ということが分かります。

 あとは、並行世界の自分からのメッセージも関わっているとはいえ、北海道まで一緒に来てくれる赤城の付き合いがあまりにも良すぎる。話を聞いたその日のうちに飛行機で北海道に行って来るとか、普通はなかなかできないですよね。

「何かになりたい」という望みが共通点だった?【青春ブタ野郎】


 福山の懸命の告白の甲斐もあって、岩見沢の説得に成功し、これで一件落着……かと思いきや、他にも大勢の“自称・霧島透子”が麻衣の元に押し寄せるという驚きの展開に。麻衣の挨拶を聞いている大勢のサンタクロースの姿はなかなかシュールでした。

 怪我をする役割を咲太が肩代わりしたことで、古賀の見た未来とは異なる結果になりましたが、もしあそこで麻衣が咲太の頭部を守っていなかったら、未来通り咲太は意識不明の重体となっていたのではないかと。

 さすがに咲太が意識不明になって2期が終了ではあまりに救いがなかったので、バッドエンドが回避されて一安心です(咲太が足を滑らせた瞬間は、本当にそのオチになってしまうんじゃないかと思いました)。


 また、最終回まで通して見て、「何かになりたいという願望」が、ある程度共通した2期のテーマだったのかなと思ったりもしました。

 空気を読める普通の人になろうとした卯月、もう一人の自分になろうとした赤城、他人の気持ちが分かるようになろうとした姫路、そして霧島透子になろうとした岩見沢と、自分を変えたいと望んだ結果思春期症候群になったという大まかな方向性は一致しています。

 現実でも、誰もが何かしらのコンプレックスや、「こうなりたい」という願望は持っているものですし、どこか共感できるリアリティのある心理描写が、やっぱり『青ブタ』の魅力なんだろうなと。

 また、それと並行していて、キャラクターたちがどんどん大人になっているのを感じるシーンが多かったのも印象的でした。

 麻衣が車を運転するシーンが何度も描かれていたのは、それを実感させるような演出になっていましたし、サンタクロース編では、花楓の大学受験の話や、咲太が免許を取るシーンも描かれていました。なまじ現実でも、アニメ1期から数えて7年くらいの時間が経っていることもあって、感慨深さと寂しさが入り混じった不思議な感覚を味わいましたね。


 ただ、結局『サンタクロース編』でも、霧島透子とは結局なんだったのかは分からずじまいで、未来の麻衣が自分が霧島透子だと名乗っていた理由、美東の過去など、多くの謎が残されたままに。

 今までのキャラクターが総登場する最終回らしさはありつつも、ちょっとモヤっとしたものが残る終わりにはなっていたので、すぐに新作『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』が発表されたのは嬉しかったです。

 『ディアフレンドの夢を見ない』は原作最終巻のタイトルなので、アニメでも完結作となるのではないかと思われます。


 もう残り2巻まで来ていたので、いつかは残りのアニメ化にも期待はしていましたが、こんなに早く来てくれるとは。

 もちろん、作品自体の面白さがあってこそではありますが、完結までアニメ化されるライトノベルってめちゃくちゃ貴重なので、本当に映像化に恵まれたシリーズだなと改めて思いました。劇場公開が始まったら、しっかりと映画館で咲太たちの物語を見届けたいと思います。

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米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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