電撃オンライン

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』7話感想。赤城の真相を知った瞬間の、パズルのピースがハマっていく心地よさ。ラストの急展開で続きが気になりすぎる(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』7話“ヒルベルト空間の彼方から”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』7話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

6話での予想を超えていた赤城の真実【青春ブタ野郎】


 ナイチンゲール編の完結回となった第7話。赤城郁実についての真実に驚かされつつ、今後への様々な伏線も感じさせるエピソードとなっていました。

 6話では、赤城が知りようのないはずの情報を知っていたことに気づいた咲太。双葉との会話から察するに、咲太はあの卒業文集を読んだ時点で赤城の事情を概ね予想できていたようです。

 赤城の方も、咲太がそれに気づくことはある程度予期していたようで、教室に咲太が入ってきた時にも一切動じてはいませんでした。

 その後の同窓会のシーンもそうですが、この二人ってナイチンゲール編を通して相手に見破られるだろうという前提の上の化かし合いみたいなのを続けていて、本質的に似た存在なんだろうなと。


 また、高校編を通しての舞台だった峰ヶ原高校が再び描かれたのには、実際に通っていたわけではないのに、自分が通っていた校舎にもう一度来た時のような不思議な気持ちに。

 とくに受付の窓口は、花楓が勇気を出して入学願書を出しに来ていたシーンを思い出して懐かしかった。めちゃくちゃハラハラしながら花楓を見守っていたのを覚えています。

 前回、自分は今の赤城が『ランドセルガール』での咲太と同じ峰ヶ原高校に通っていた赤城から何らかの影響を受けている……と予想していたのですが、実際には赤城の人格がそっくり入れ替わっていたという、予想をさらに越えた真相が隠されていました。

 確かに、まるっと意識が向こう側の世界に飛んでいた『ランドセルガール』の時の咲太と同じと考えれば、そちらの方が可能性としては高そうなんですが、あちらでは咲太が自力で問題を解決しているので、咲太を助けられなかった後悔が赤城の中で存在しないと思ってたんですよね。

 ここが一番予想と違っていたところでして、赤城の中で引っかかっていたのは、咲太を助けられなかったことではなく、自分が何もできなかった後悔の方で、咲太が自力で解決してしまったからこそ赤城を拗らせてしまっていた……と分かった時、パズルのピースがハマったような気持ちよさがありました。

 前回、赤城は自分の思春期症候群の原因が咲太にあると言っていましたが、確かにその通りだったなと。あちらの咲太が優秀すぎたからこそ起きてしまった問題だったと分かります。


 おそらく、向こう側の世界と今の世界の赤城では、それぞれ咲太に向けている感情が違っていて、向こう側の赤城にとっての咲太は、自分にできないことができる憧れの存在であり、同時に嫉妬の対象でもあるという、なかなか複雑な感情があったんだろうなとも推測できます。

 そんな一番自分を見つけて欲しい相手だった咲太に、ここにしかいない自分を見つけてもらったことは、アイデンティティを見失いかけていた赤城にとって、本当に救いになったんじゃないかと思います。

 また「ずっと見ていたから」の台詞とかからもある程度推測できていたとはいえ、かつて向こう側の世界に行っていた時、赤城が咲太に告げようとしていたのが「好き」という告白だったと見抜いて、それを自分から切り出せる咲太はすごいなと。

 あまりにも外した時に恥ずかしすぎるのもあって、仮に確信していたとしても、自分のことを好きだっただろうと指摘するのって、なかなかできないですよね。

絵に書いたような善人ではなく、人間味にあふれていた赤城【青春ブタ野郎】


 一方、本来の世界の赤城は、中学時代を引きずりながらも、咲太自身はとうにそれを乗り越えていたことを知ってショックを受け、向こう側の世界の赤城と同じように逃げ出したくなった……というのも、それまでに自分が赤城に対して抱いていたイメージとのギャップがあり、意外性がありました。

 大学に入る前の赤城は、咲太に同情していた一面もあったのではないかと思うのですが、その対象にとっくに追い抜かれていたと気付いた時の辛さみたいなのは、すごくリアルだし共感できます。

 今回のお話までは、赤城というキャラクターを「咲太を助けられなかったことをずっと後悔し続けている善人」と認識していたのが、むしろものすごく人間味のある存在だったんだと改めて気づきましたね。

 あとは山根さんの二人の赤城の演じ分けもすごいと思ったポイントで、人格が戻ったあとの赤城が第一声を発した瞬間に、「あの赤城はもういないんだ」と実感する寂しさが自然と生まれていました。『ランドセルガール』の時も含めて、我々が見てきた赤城って、ほぼ全部向こう側の世界の赤城だったんですよね。


 赤城に向けて咲太が語っていた「毎日朝ごはん食べて~」のくだりは、咲太自身が辛い過去を乗り越えた時の経験談なんだろうなと。

 ドン底だった咲太が立ち直れたのは翔子の言葉が大きいですが、当然それですべてが解決したわけではなく、『青ブタ』の物語開始時点の咲太になるまでにも、いろんな苦しみや葛藤があったんだなと、あの台詞から想像ができました。

 向こう側の世界の赤城が帰った瞬間には、入れ替わりで『ランドセルガール』に登場していた小さい麻衣がいたり、ラストには向こう側の世界の咲太からの警告があったりと、次回以降に向けた伏線らしきものも多数あり、俄然続きが気になる展開に。

 第2期になってからはあまり本筋には関わっていなかった麻衣にもスポットが当たりそうで、非常に続きが気になります。

『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』感想 関連記事



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります