
第6回となる今回のテーマは“映画”のプロデュース。
子どもの頃から1人で映画館に通い、ホラー映画に夢中になった新川少年が、ゲームクリエイターとして長いキャリアを歩んだのち、近未来日本ディストピアを舞台にした短編ホラー映画『教育』で原作者・映画プロデューサーとしても一歩を踏み出すことに……!
映画との関わりのはじまりから、作品づくりの裏側、そしてゲームと映画の"ものづくり"の違いまで、じっくりと話をお聞きしました。
なお、新川氏が原作小説を執筆し、プロデュースまで担当しているPS5/PS4/Switch/PC向け新作ゲーム『エトランジュ・オーヴァーロード』が、ブロッコリーから好評発売中です(パッケージ販売はNintendo Switch版のみ)。

さらに新川氏が設立したキマイラ機関より、超絶やり込みシューティングRPG『宇宙銀河ウォーズ』もSteamにて好評配信中なので、本連載とあわせて、ぜひチェックしましょう!

新川宗平:1996年、日本一ソフトウェアに営業職として入社。プロデューサーやシナリオライターとして『マール王国の人形姫』『魔界戦記ディスガイア』などの制作に携わる。2009年、同社代表取締役社長に就任し、2022年退社。同年、合同会社スーパーニッチを設立し、代表を務める。同時期から“喜多山浪漫”名義で小説『エトランジュ オーヴァーロード』を執筆&発表。ゲーム化などのメディアミックスに乗り出す。
ゲームクリエイターが映画へ踏み出した理由と想い【新川宗平53周年:スーパーニッチの流儀#6】
「映画から受ける人生への影響は、非常に大きい人間です」
――まず基本的なところからお聞きしたいのですが、もともと映画はお好きだったのでしょうか?
新川宗平氏(以下、敬称略):はい。映画は子どもの頃から大好きで、小学生の時から1人で大阪・梅田の映画館まで通うくらい好きでした。
特に中学生に入ってからはホラー映画に熱中して、いわゆるスプラッター映画……ジェイソン(『13日の金曜日』シリーズ)とか、フレディ(『エルム街の悪夢』シリーズ)とか、あとは『死霊のはらわた』とか……まあちょっと古いところだと『悪魔のいけにえ』『エクソシスト』『オーメン』とか、一通り見てきたという感じです。
怖いんですけど……私は本来怖がりなんですが、好きだったんですよ。その怖がるのが良かったのかもしれませんね。
――小学生の頃から1人で映画館へ通われていたというのは、なかなかすごい話ですね。
新川:それもそうですし、そもそもホラー映画の上映に普通は子どもが入ってはいけないと思うのですが、なんでか入ってましたね(笑)。今は結構レーティングが厳しくなってますけど、昭和の頃はそのあたりおおらかでしたから、お金を払えば普通に入れた気がします。問題もありましたが、いい時代だったと思いますね。
――大阪の梅田まで電車で出かけてまで通っていたとのことですが、地元には映画館はなかったのでしょうか?
新川:地元にもありましたけど、ホラー映画の上映がなかったので梅田まで電車で行ってましたね。小学生の頃でも。
「インディ・ジョーンズに憧れて考古学者を目指したほど、映画からの影響は大きかった」
――ホラー以外ではどんな映画がお好きでしたか?
新川:アクション映画とか、エンターテイメント性の高いものが好きでした。特に好きだったのがスピルバーグ監督の作品で、なかでも『インディ・ジョーンズ』シリーズにはすごく影響され、高校時代に進路を考えたときに考古学者になりたいと思い、本当に大学も考古学に関係する学部に進学しました。
――それは知りませんでした。ゲームよりも先に考古学を志していたわけですね。
新川:ゲームは好きで趣味として続けていましたが、ずっと考古学者を目指して勉強していました。エジプトとかいろいろなところに冒険行きたくて仕方がなかった記憶があります(笑)。
――では、ゲームの道へ進まれたのはどういったきっかけだったんですか?
新川:『ファイナルファンタジー5』を遊んでクリアして、そのジョブをはじめとしたゲームシステムの斬新さに感動して、どうやってこれを考えたんだろうかとか、自分だったらどうするかなぁとか考え始めて、それがめちゃめちゃ楽しかったんです。
だから、これを仕事にしたいと思い至り、翌日大学の研究室に「考古学者辞めます、ゲーム作ります」って言いに行って。その翌日からゲーム業界に絞り込んで就職活動を始め、紆余曲折を経て日本一ソフトウェアに入りました。
――そこからゲームプロデューサーとしてのキャリアが始まったのだと思いますが、制作に映画の影響もあったりしたのでしょうか?
新川:はい。『マール王国の人形姫』がミュージカルRPGになったのもディズニー映画の影響で、戦える武器が少ない中で何か特徴を出さなくちゃいけないと考えて絞り出したのがミュージカルの要素を入れようというものでした。やっぱり自分の中の結構な割合の“成分”が映画でできてるのかなって思っています。
「独立してからはエンターテイメントをすべてやってやろうという気持ちだった」
――日本一ソフトウェア時代を経て独立されてから、映画への気持ちはどう変化していきましたか?
新川:日本一ソフトウェア時代はゲーム一筋みたいな感じでしたが、独立してからはやっぱりエンターテイメントをすべて、全部やってやろうぐらいの気持ちがあって。その中でも映画は、必ずやりたいことの1つでした。といっても、独立直後は具体的な構想があったわけではないのですが……。
――では、今回の映画『教育』制作につながるきっかけは何だったんでしょうか?
新川:たまたま、星海社さんが“ホラーマーケット”というイベントを主催されているのですが、そこで「短編を書きませんか」というオファーをいただいたんです。喜多山浪漫として。怪談のおみくじがあって、ランダムで誰かが書いた短編が当たる、みたいな企画で。その中の1編を担当させてもらいました。

――それが今回の映画につながる短編だったわけですね。
新川:はい。おみくじに書くような短編なので、そんなに長くはなかったのですが、書き終わってそれで終わりというのは、自分の中ではなんだか面白くないなという思いがあって。何かに繋げようと考えたんです。で、短編だったので、これを題材にした短編映画を作ろうかなと。
――そこからどのように動かれたのですか?
新川:ちょうど今年(2026年)の1月に、誰か一緒に作ってくれるいい監督いないかなと探していたら、二木(ふたつぎ)ユーキ監督と出会いまして。この方が『減塩』という短編で、“新生残酷映画祭”の大賞を取られているんですよ。なんかすごい賞があるんだなって(笑)。
で、実際に『減塩』を拝見したら、すごくおもしろかったんです。これどのぐらいのコストかけて、どういうふうに撮っているのかなという興味もあり、DMを送って連絡を取ってみました。それでオンラインで何回かお話する中で「一緒にどうですか」とお誘いしたところ、最終的に「やってみたい」というお返事をいただくことができました。
――1月に動き出して、インタビュー前日(6月)に撮影が終わったということですか!?
新川:はい、ちょうど昨日、撮り終わりました。朝から夜までかかりました。
おはようございます。
— 喜多山浪漫(本名:新川宗平)ゲーム『エトランジュ オーヴァーロード』発売‼ (@RomanKitayama) June 29, 2026
今日は朝から晩まで短編ホラー映画『教育』の撮影です。
来月には完成する見込みです(^^) pic.twitter.com/feTqfAerm2
「近未来日本ディストピアの、管理社会が行き着いた先の"滑稽さと悲劇"を描く」
――そうして撮影された映画『教育』は、どんな世界観・ストーリーの作品なんでしょうか?
新川:この『教育』の舞台となるディストピア世界の概要を説明しますと、近未来の日本がさまざまな困難に直面するなかで「日本を強くしなきゃ」という方向に国が進んでいくのですが、その行き先がかなり極端で、人の選別を始めてしまったんです。
優秀な人間を残して、無能な人間は切り捨てる――そんな管理社会が行き着いた先の滑稽さと悲劇みたいなものを描いているシリーズとなります。

――ホラー映画という枠組で、その世界観を表現するわけですね。
新川:はい。今回はその“短編小説おみくじ”とその朗読音声の配信、そしてこの『教育』という短編ホラー映画の2編を皆さんにご提供する予定です。『教育』はどこかのタイミングで無料公開する予定ですが、まずは映画祭に出してみようかなと思っています。
――“おみくじ”として発表される短編小説と、映画『教育』は同じ世界観にある作品ということでしょうか?
新川:同じディストピア世界を題材にしており、ホラーマーケットに出す短編も、映画の『教育』も、その1エピソードという位置づけにしています。なので、将来的にはこの世界を漫画やゲームに広げることもやってみたいですね。
――映画のタイトルが“教育”というのも、そのディストピアな世界観を反映しているのでしょうか?
新川:そうですね。タイトルから想像できるように、学校を舞台にしています。
撮影した場所は東京の飯田橋にある、昔学校だった施設です。ホラーマーケットの会場と同じ場所で、そこを使って撮影しました。
短編映画『教育』の第一弾予告編です#教育 #短編映画 #拡散希望 pic.twitter.com/fr1QqTFr8R
— 二木ユーキ監督 (@yuki22403583) July 5, 2026
「撮るまでの準備を丁寧にしっかりする──映画におけるアセットは撮影なんだと思った」
―― 新川さん自身は今回の映画にどのような形で携わったのですか?
新川:コンテンツプロデューサーとして携わっています。あとはカメオ出演的なやつで、セリフもないぐらいの端役で出演も……写真の中で1番左に写っている青い手術着を着てるのが私です。エキストラレベルですね。もしかするとカットされるかもしれません(笑)。
――実際に映画制作に携わってみて、ゲームづくりとの違いはどのように感じましたか?
新川:もの作りの過程だったりとか、そういったものはやっぱりゲームと近いものがあると思いましたが、実際に短い時間で撮り切る、今回だと1日で撮り切るっていうのがあって、そこは違うところだなと感じました。
今回は短編でしたが、仮に長編だったとしても、撮影日数は何日っていう縛りがあらかじめ決まっているので、それに備えての準備をかなり丁寧にするんだなって。
ゲーム制作で例えると、作りながら考える(その都度アイディアを取り込む)のではなく、先に仕様書をキッチリ書いて、全部設計が終わってからじゃないと実際の制作(アセット作り)には取りかかれないというか。
――映画における"アセット"は、撮影そのものということですね。
新川:そうです、映画におけるアセット(素材)は“撮影”なんだと思います。ゲームの場合、そのアセットを作る――3Dキャラクターを作ったり、バストアップイラストを作ったり――時間ってかなり長いんですけど、映画の場合は一定の期間で撮り切っちゃうんですよね。
やっぱり現場では思いどおりにいかなかったりとか、あれが足りないこれが足りないとか、いろいろトラブルが発生します。でも、絶対にそこで撮りきらないといけない。決まった時間内での勝負になるんです。
そのときどきの知恵と工夫やアイデア、機転みたいなもので乗り切って作り上げるというのが、まあ面白いですし、そこに長い期間をかけるゲームとは違うところなんだなと感じました。
――映画は基本的に“一方通行”ですが、ゲームはインタラクティブ(双方向性)な部分がありますよね。
新川:そうなんです。ゲームは完成させても実際に遊んでみないと分からない部分もあって。映画の場合は最初の準備、コンテの段階で完成度を上げることができますが、ゲームの場合は仕様書(映画におけるコンテ)だけで完成度を上げることは無理だと思うんです。そこの違いは、やっぱり大きいと思います。
「ディズニー映画の影響でミュージカルを入れた──映画は自分の成分の大部分を作っている」
――先ほど、映画から人生への影響が非常に大きいというお話がありました。具体的にはどんな影響を受けてきたと思いますか?
新川:インディ・ジョーンズに憧れて進路を考えたこと、ディズニー映画の影響を受けて『マール王国の人形姫』にミュージカルを取り入れたことは、かなり大きな影響ですよね(笑)。もちろんゲームのシナリオや小説を書くうえでも、これまでに観てきた映画の影響は出ていると思います。
日本一ソフトウェア時代はゲーム一筋みたいな感じでしたが、これからはその縛りはないので、映画作りも含めてエンターテイメントは全部やってみようと思っています。
――映画への関わりが、今後さらに広がっていくかもしれないということですね。
新川:そうですね。今回映画に携わりましたが、もうちょっとホラーを撮りたいなっていう気持ちがあって。あと、せっかく撮るならやっぱりアクションも撮りたいですね。カンフーアクションです。単純に、もう完全に趣味ですけど(笑)。
――カンフーアクション! それはまた意外な方向性ですね。
新川:最近で言うと『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』とか流行りましたよね。少し前では『キル・ビル』とか……いろいろなところにカンフーアクションのエッセンスを見かけるので、自分でも撮ってみたいと思っています。
――プロデューサーとして関わるというスタンスは変わらないですか?
新川:そうですね。そこはゲームと同じで原作、シナリオ、コンテンツプロデュースを担当して活動していきたいです。
ゲームを作るときのディレクターさんと、映画を撮るときの監督さんって同じだと思っているので、いいタッグを組める方が見つかれば、すぐにでもまた撮影したいなと思っています。
「映画プロデューサー、映画原作者としての喜多山浪漫にもご期待ください」
――今回の映画『教育』は、どのような方にオススメなのでしょうか?
新川:今回初めて、曲がりなりにも喜多山浪漫としての作品の映画化が実現し、またコンテンツプロデューサーとしても前々からやりたかった映画作りが短編とはいえ実現したというところは、非常にうれしく感じておりまして。これで終わりではなくて、これが第一歩だというふうに思っています。
――今後の展望についてもお聞かせください。
新川:まず、この近未来日本ディストピアを舞台にしたシリーズはなんらかの形で継続していきたいと思っています。それとはまったく別の……新しいホラーか、アクションか……シリーズの構想もすでにあるので、いいタッグを組める監督さんとご縁があれば、すぐにでも取り掛かりたいと考えています。
なので、ゲームクリエイターの新川宗平はもちろん、映画プロデューサー&映画原作者としての新川宗平と喜多山浪漫にもご期待ください。
次回へ続く
『エトランジュ・オーヴァーロード』好評発売中!

発売日:2026年3月26日
販売元:ブロッコリー
対応機種等:Nintendo Switch/PS5/PS4/PC(Steam)
CERO区分:B(12才以上対象)

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