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『グランディア』『原神』などの無料コンサートを実施。岩垂徳行氏、村上団長に聞く100人規模のゲーム音楽専門楽団アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズ設立の道のり

文:ことめぐ

公開日時:

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 2021年に結成されたゲーム音楽専門非営利吹奏楽団“Arc-hive Philharmonic Winds(アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズ)”。

 さまざまなゲーム音楽のコンサートを無料で実施しており、2023年1月に開催された第1回公演では『グランディア』などの楽曲が演奏され、第2回公演では『ファイアーエムブレム』シリーズ、『UNDERTALE』、『ラングリッサー モバイル』『逆転検事2』などの人気楽曲を披露。2025年1月開催予定の第3回公演では『百英雄伝』『ラグナロクオンライン』『原神』『グランディア2』の楽曲が演奏されることが発表されています。

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 この記事では、楽団の団長・村上晶紀さん、『グランディア』『ラングリッサー』『逆転裁判』等の作曲家でお馴染みの指揮・顧問を務める岩垂徳行さんに、楽団への想いやゲーム音楽等についてお伺いしました。

 このインタビューでは楽団結成のお話やお2人の吹奏楽の思い出をお届けします。

 なお、直近では2024年7月6日(土)に東京・八王子で
“Arc-hive Philharmonic Winds 2.5th Concertアンサンブルコンサート ~八花繚乱~”(無料)、2024年9月23日(月)に東京・武蔵野で“能登復興支援のための『ウインドボーイズ!』コンサートin東京”(有料)が開催予定でチケット発売中です。

ゲーム音楽を後世に残したい。ご縁、自身の経験が重なり合って出来た楽団


──まずは自己紹介をお願いたします。

岩垂徳行さん(以下、岩垂)
:作曲家です。アークハイブでは、指揮やアレンジ、顧問をやっております。よろしくお願いします。


村上晶紀さん(以下、村上)
:アークハイブの団長を務めさせていただいております。よろしくお願いいたします。

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▲写真左・岩垂徳行さん。写真右・村上晶紀さん。

──楽団はどのような目的、流れで結成されたのでしょうか?

村上
:発端としては、10年以上前となります。そもそも自分は学生時代は吹奏楽をやっていたものの、社会人になってからは裏方的な仕事が多く、演奏から遠ざかっていました。ゲーム音楽を聞くこと自体はずっと好きだったんですけどね。

 そんななか、大学生の時にゲーム音楽フェス“4starオーケストラ”における演奏者募集のX告知を目にして応募して参加したのですが……これが楽しくって!

 自分が遊んだことがあるゲーム、ないゲームを含めて、こんなにいろいろな曲があって、こんなに演奏していて楽しいんだと思いました。

 それをきっかけにゲーム音楽を演奏する楽団について調べたり、参加したりする間にゲーム音楽の楽団を作りたいという気持ちが高まっていきました。そんな時にいいきっかけがあり、ゲーム音楽を作っている会社に就職して、そこでイベント等を経験してノウハウをある程度蓄積できました。

 いろいろな楽団を見ていて、良いところや問題点なども目にするにつれて「自分が作るのだったら、ここの問題点を減らして、もっといいようにできないか」なんてことを考えているタイミングで退職して、ちょっとボーっとして過ごしていました(笑)。それが、ちょうどコロナ禍が始まったぐらいですね。

 そしてある時、なんとなしにフッと「そろそろ自分も楽団作るかな」と思ったんです。

 ちょうどその時、前職でイベントで関わった際に、岩垂さんと「吹奏楽やりたいよね」「いつかやれたらいいですね」みたいな話をしていたことを思い出しまして。

 私が「ゲーム音楽の楽団を作りたい」と思った時に「一応岩垂さんも作りたいって言ってたし、お伺いだけでもしておくかな」と思って、断られること前提で岩垂さんにお声がけしたところ、「どんなの作るの?」って結構グイグイ来まして(笑)。

 そこからトントン拍子に「じゃあ話を詰めていこうか」ということになりまして。すごく岩垂さんがアグレッシブに動いて下さって「アークハイブという楽団を作ろう」となったのが、大体2021年10月ぐらいの事です。

──“Arc-hive Philharmonic Winds(アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズ)”という楽団名の由来を教えて下さい。

村上
:詳しくは公式サイトにも掲げていますが、ゲーム音楽を何か形として残したいなということで、例えば英単語だと“ライブラリー”で“図書館”を示すよね、とかいろいろ考えました。“幻影旅団”なんて中二病っぽいものも含めて案を出したのですが、楽団名として言いにくいなど、あまりしっくり来なくて。

 そんな時、“保管庫”として“アーカイブ(Archive)”という言葉があると気付いて、ピンと来たんです。「あー、アーカイブ……アーク、アーク、これ“アーク”って言いやすいよね」と思って。

 調べてみたら、布を織る時の縦糸と横糸の“横糸”のことを“アーク(arc)”と言うそうで。「“物語を紡ぐ”ということで、いいじゃないか! じゃあ“ハイブ(hive)”は、ミツバチが集う場所……みんなが来て、ちょうど半常設だから、去りたい人は去って、また後で戻ってこれる環境、そういった楽団を作れたらいいよね」と考えて、「あ、じゃあ“アークハイブ”ってちょうどいいじゃないか」と思ったんです。

 そして「アークハイブ、どうですか?」と岩垂さんに聞いてみたところ、「あーいいね。でもそれだけだとパンチ弱いよね」と言われました(笑)。

 「さぁ、どうしよう? じゃあ、幻想音楽隊?」とかいろいろ考えて紆余曲折を経て、“フィルハーモニック・ウインズ”というのが一番収まりがいいんじゃないかということで“アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズ”となりました。

 (最初は吹奏楽ではなくて)“オーケストラ”も考えたのですが、だとちょっと王道すぎるかなという部分と、オーケストラだと“弦の取り合い”になっちゃうネックもありまして。

 自分の経験則も含めて、こういう楽団って圧倒的に弦楽器の奏者が不足することが多いんですよ。逆に管楽器の奏者の応募は非常に多くって。そういう倍率の問題もありまして、楽団に参加したいけれども参加できなかったという声も聞いたことがありました。

 そう考えた時に、弦楽器メインだと人を集めにくくて、練習もままならないのであれば、私自身も吹奏楽の経験がありますし、岩垂さんも吹奏楽をやりたいとおっしゃっていたので、まずは吹奏楽で始めてみようということで、“フィルハーモニック・ウインズ”っていう形でスタートしたんです。

 もし今後運用が安定して、オケもやりたいなとなったら、後ろを“オーケストラ”にすればいいじゃん! という打算的なところもあります(笑)。そのような形でこの名前を付けました。

──やはり吹奏楽は入りやすさがありますよね。

村上
:はい。特に日本だと中学・高校の部活でもやるので、経験者の母体としては非常に多いんです。ですので、まずは吹奏楽からがいいのではないかとなりました。

 オーケストラですと、なかなかサックスやユーフォ(ニアム )は出番が少なくて。現代音楽ですと結構出番があるイメージがありますけれど、それでも敷居が高いんですよね。

 とはいえ、前回募集したら、ユーフォの応募が結構多くて驚きましたが(笑)。

──岩垂さんの視点からだとどうでしたか? 楽団結成の話が来た時には、かなりノリノリだったそうですが。

岩垂
:元々僕は吹奏楽を小・中・高・大学とやっていたんですね。いつかずっとお世話になっていた吹奏楽に恩返しをしたいなと思っていたんです。これまでも何曲か吹奏楽用のアレンジをしたりもしてきたんだけれど、本格的にはやっていなくて。

 そんな中で「さて、どうしようかな?」と思っていた時にこの話が入ってきたんです。この楽団の、アーカイブ……楽譜を残していくということにすごく賛同できまして。僕たち作曲家も、1回曲を作って終わり、というのはとても寂しいんです。

 できれば定番の譜面を作って、それが世の中に広まってくれるのがベストだと思っているんですよ。そのきっかけになるかなと思いました。

──イメージ的に、ゲーム音楽は楽譜を残していく文化って、実は結構少ない気がします。

岩垂
:そうなんですよ。これはゲーム業界自体の問題だと思っているんです。それぞれのメーカーが、それぞれ楽譜を作ったり、CD作ったりとかをしているから、まとまりがあまりなくて。昔に比べるといろいろな動きはありますが、地道にやっていくしかないんでしょうね。

 僕のできる範囲のところで楽譜を作って、それを重ねていけば、いつかは良い形になってくるんじゃないかなとは思っています。

──そういった意味合いのアーカイブも含めて、ということなんですね。

岩垂
:これはね、メディアを通して広めてもらわないとね(笑)。

──ゲーム音楽は、本当にここ最近10年、20年は、生音で演奏したものがかなり増えていると思います。岩垂さんはメガドライブ、PCエンジンの時代の頃から譜面を作ることを意識されていたんでしょうか? それとも打ち込みスタートですか?

岩垂
:メガドラの頃は打ち込みスタートですね。僕の場合は、メロディー譜とコードを書いてました。でも、ほぼ打ち込みですね。

──別の方に聞いたのですが、PCエンジン辺りの音源だと譜面はなくて、自分でやる時に耳でもう一度聞きながら起こしていくみたいなお話をされていました。

岩垂
:自分の場合は譜面もありましたよ。ちょうどその頃は、すぎやまこういち先生の『ドラゴンクエスト』のMIDI音源を作るみたいな仕事をやっていたんです。

 それですぎやま先生からオーケストラ用の譜面をいただいて、それを全部データにして、すぎやま先生の家に行って聞いてもらう、ということをやっていたんですよ。だからやっぱり譜面を書かなきゃダメだなと。なので、メガドラの初期の頃から僕は個人的には譜面を書いていました。

──楽団でやるとなると当然ながら譜面があると思うのですが、音楽が分解できる、この音をこうやって出してたんだというのが見えるのでいいですよね。

村上
:特に岩垂さんはゲーム音楽以外の作曲もやっていらっしゃったので、そういうご経験も大きかったでしょうね。

岩垂
:確かにそういうことをやっていたんで、譜面作りはもう趣味みたいな感じで今でもやってます。

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吹奏楽はいい思い出しかなかった。過去の楽しい思い出が原点


──演奏面に関してお聞きします。岩垂さんは作曲家になった後、ご自身で演奏をする機会はあったのでしょうか?

岩垂
:それがしばらくなかったんですよ。キーボードで仕事はしていたんですけれど、自分でトロンボーンを吹くことは仕事になるとは思っていなくて。自分で吹いてレコーディングしてもいいという風に思うまでには時間がかかりましたね。

 例えば、市販されている音源のトロンボーンの音がどうしても自分的には気に入らないことがありまして。でもある時、本当に偶然なんですけど「あぁ、自分で吹けばいいんだ」と思った時があったんですよ。それからは、下手だったんですけれど自分で吹きだすようになりました。

 『グランディア オンライン』が出たころなんで、意外と最近ですね。それから自分の曲に関しては、トランペット、トロンボーン、ホルンは自分で入れてます。

──最近だと『ふたごうさぎのご近所ツーリズモ』のエンドロールで岩垂さんの名前が“演奏トランペット”みたいな形で入っていました。なのでご自身でやられているんだなぁと思いまして。

岩垂
:そのほうが楽チンなんでね(笑)。

──指揮のご経験はいかがでしょうか?

岩垂
:僕はですね、指揮は小学校からやっています。小学校からやっている、というのはちょっと違うかな。先生の代わりに振らせてもらっていたんです。小学校の担任の先生が音楽がすごく好きな人でして。

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 僕は小学校を卒業して、中学校も高校もその先生に音楽を個人的に教わっていたのですが、その時に、斎藤秀雄さんという方が書いた指揮の教則本『指揮法教程』というものがありまして、これを中学の頃からその先生と一緒にやっていたんですよ。それがなんか楽しくてね。

 そして、高校時代は吹奏楽の指揮をやっていましたし、大学の時もちょこっとやっていて、今もママさんコーラスでの指揮を地元・松本(長野県)で20年もやっているんです。こんな感じでちょこちょこっと指揮をずっとやっていたんですね。

──村上さんから指揮をお願いしますというお話は、どのような感じでお話がいったのですか?

村上
:前職でゲーム音楽イベントをやっていた時に岩垂さんが指揮を振られていたので、指揮を振れる方だという認識がありました。

 そして、地元の松本の方でもママさんコーラスや吹奏楽団等の指揮もやられているというお話を伺っていたので、指揮をお願いしたという流れです。そもそも、こちらとしてはいろいろアドバイスをいただければということで、まずは顧問をお願いしたいというのが大前提としてありました。

 それプラス、指揮を振られていらっしゃったことも知っていたので、あわよくば一部の曲、それこそ岩垂さんのやられている楽曲だけでもいいので指揮をやっていただければということで、顧問兼指揮者という形でお願いできますか? と打診をしたところ、快諾いただけたんです。

岩垂
:人の曲を覚えるのって、大変だからね。

一同:(笑)。

岩垂
:自分の曲だったら説明がしやすいから。

──岩垂さんは、指揮に限らず吹奏楽などのアレンジ等も多くやられている印象があります。

岩垂
:でも大変なんです(笑)。このアークハイブという楽団は100人という大編成でやってるから、パートが増えちゃって。

村上
:A3サイズで楽譜を刷っても見づらいですもんね、(パート数が多くてスコアの)段が多くて(笑)。

岩垂
:ちょっと大変なことになってる(笑)。

──楽団には業界で有名な方もたくさん参加されていますが、どういった流れで増えていったのでしょうか?
※指揮者として山田雅彦さん、コンサートミストレスとして酒井優希さん、トレーナーとして殿村和也さん、志賀健輔さん、赤羽一則さん、村上絵麻さん、アレンジャーとして木原塁さん、渡辺将也さんが参加。


村上
:だいたい岩垂さんがお声がけしてる感じですね。それこそ第1回のゲスト声優の瀧本富士子さん、第2回の歌手の小寺可南子さんとかも岩垂さんが「呼んじゃった☆」って言ってきて「嘘でしょ……?」となったことがありました(笑)。



 他にも、リハの時に「近所にいる作曲家呼んできた!」と言って、急に某作曲者の方が自転車で乗り付けてきたりとかもありまして(笑)。岩垂さんと一緒に指揮をやっていた山田雅彦さんに関しては、元々全く別の系統で私が山田さんを知っていました。

 岩垂さんに全部の指揮を任せるのは辛いですし、ましてや岩垂さんが松本から毎度来るのも大変だから、基本的には山田さんに指揮を振っていただいて、本番とかは岩垂さんにやっていただくという、いわゆる副指揮という立場を山田さんにお願いをしていたのですが、いざ蓋を開けてみたら……毎回、岩垂さんが練習に来られるんですよ。

一同:(笑)。

岩垂
:練習が楽しいんですよ。

村上
:毎回来られるんで、山田さんにお願いする部分が減ってしまいまして(笑)。第1回からは指揮者が2人という形でした。

 あと、これは結構珍しいと思うんですが、楽団にはトレーナーが常駐でいます。楽団の設立の段階で「必ずトレーナーを入れよう」と思ったんですよね。

 理由としては、やはり楽団をやっていて、奏者のレベルにばらつきが出てしまうことが多いんです。これは仕方がないことなんです。十何年やってなかったけれど、ゲーム音楽がやりたいということで入ってきた人もいれば、ずっとフルで吹奏楽もやってきましたという人もるので。レベル差が出でしまうということは仕方がないんです。

 なので、そのままで進めると、ブランクがある方はうまく吹けなくてフラストレーションが溜まりますし、できる人からすればもっと上を目指したいと、ギクシャクしちゃうじゃないですか。

 岩垂さんも山田さんもかなりアドバイスをしてくださるのですが、とはいえ、それを全部指揮者が細かく見るというのは無理な話で。指揮者はあくまでもまとめる役割であって、個々の技量を指導したりアドバイスをする立場ではありません。

 なので、各セクションごとにプロでご活躍されていらっしゃるトレーナーの方を呼んで、ちゃんと細かく見てもらおうということでお願いをしたんですけれども……実は全員、私の知り合いでして(笑)。

 木管トレーナーの殿村和也さんは、私の大学時代からの友人で、金管の志賀健輔さんも古くからの知り合いです。赤羽さんは前職のゲーム音楽イベントで知り合いになったのが発端でした。

 みなさん、こちらが思っている数倍細かく指導していただいて……練習中、ちょこちょこ合奏が止まりますもんね、熱が入ってしまって(笑)。手を挙げて「ちょっとそこからそこのフレーズ」という感じで。

 「こうすればこういう音が出るんだ」ということが分かってくるんですね、奏者も。この息の使い方だとこういう音が出るとかということが、アドバイスをその場でもらって訂正をするとすごく身につくんです。

 かつ岩垂さんの引っ張っていくバイタリティも強くって、みんなが上手いこと乗せられて、さらにトレーナーも熱が入って。「この人達からこんな音が出るんだ」という驚きの連続ですね。

 本当にたまたま伝手(つて)があったのと、岩垂さんの求心力のお陰ですね。

──お2人のそれぞれのご縁を含めて、これだけの大きい楽団になったんですね。

村上
:いやぁ、これだけ大きくなるとは思っていませんでしたからね。最初に話してた時は、本当に「50人集まればいいよね」みたいな。

岩垂
:いやいや、俺は最初から100人とか200人って言ってたよ。

一同:(笑)。

村上
:岩垂さんは本当に100人くらいでやりたいっておっしゃってました、でも「馬鹿なこと言うんじゃありませんよ! 50人でも大所帯なんですから」って返していました(笑)。

 でも恐る恐る蓋を開けてみたら、非常に多くのメンバーが増えていきまして。本当に感謝しています。


──お2人とも学生時代から吹奏楽をやられているということで、何か吹奏楽の思い出がありましたら教えてください。

岩垂
:吹奏楽はやっぱりね、学生時代に楽しかった思い出が本当にあって。全然強豪校でもなかったんですけども、毎日毎日練習して、特に高校時代ですね。本当に毎日練習してるのが楽しかった。

 みんなと合奏して、時には自分が指揮をすることもあって……今考えればレベルはめちゃくちゃ低かったんですけど、でも当時はやっぱりそれが精一杯だったし、楽しかったなぁ。

 僕が高2の時に“All Japan High School Wind Band Conference”に参加したことがありまして。全国から高校生が集まって、浜松のホテルで練習をして、その後コンサートをやるという全国選抜みたいなものですね。

 宴会場みたいな場所に250人近くが集まって、一斉に新曲を練習するんです。全国レベルなんで、めちゃくちゃみんな上手くて。その体験をしてから、この大編成が楽しいなあと。

──おぉ、それが原点なんですね。

岩垂
:トランペットが30人いて、トロンボーンも18人いて。あっちの方を見てみると、なんかファゴットの森が見えるしチューバのタワーが出来てるし。とにかくどのパートもいっぱいいるんですよ。スネアも3人いたなぁ。

 その時に作曲家の櫛田鉄之助さんがいらしたのですが、新曲を作ったとかでその譜面を持ってきたんですよ。みんな「は?」ってなったんですけど、それぞれに新曲の譜面が渡されて、譜読みの時間もほぼなしで「せーの!」で演奏が始まるんですよ、いきなりですよ!(苦笑)。

 でもそれでもちゃんと音が合うんですよ。良い演奏が出来ている。それで「あ、(優秀なメンバーが)大勢集まると高校生でもこんなに素敵な音楽を作ることができるんだ。」と思いました。

 また、大学の時ですが専門でそれぞれの楽器を専攻しているAチームと、初めての人も多いBチームの合同で演奏する機会があったのですが、このときBチームのメンバーがAチームに引っ張られてというか、全く吹けなかった曲でも吹けた気になったという…まぁとにかく大編成は楽しいですよ! 吹奏楽はいい思い出がいっぱいです。

──村上さんは吹奏楽についての思い出はありますか?

村上
:私は中学から吹奏楽部に入りました。30人にも満たない小さな部活でしたけれど、やっぱり私も楽しかった思い出しかないんですね。岩垂さんがおっしゃったように。

 地域の夏祭りに呼ばれて演奏をしに行ったりとかもしましたし、コンクールも出るなど「みんなでやる」ということが楽しくて。

 高校でも吹奏楽部に入り、大学でもちょっとオーケストラの方に入ったりとかもしたんですけれど、吹奏楽はずっと続けていた状態でした。……でも特に岩垂さんみたいな面白エピソードはないですね(笑)。

──お2人とも学生の頃から演奏する楽しさを知ったんですね。

村上
:個人的には、いわゆる強豪校には行かなかったので、燃え尽きるということがなかったんです。だから結果的に、細く、長く続けられたのかなというところがありますね。


 以上、インタビューPart1をお届けしました。お2人のご縁、そして学生時代の経験などいろんな出来事やご縁が重なってできた“アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズ”。

 Part2では、コロナ禍でのお話や、7月に開催されるコンサートなどの意気込み等をお届けする予定です。

アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズの今後の活動について


 直近では2024年7月6日(土)に東京・八王子で
“Arc-hive Philharmonic Winds 2.5th Concertアンサンブルコンサート ~八花繚乱~”(無料)、2024年9月23日(月)に東京・武蔵野で“能登復興支援のための『ウインドボーイズ!』コンサートin東京”(有料)が開催予定でチケット発売中です。

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アークハイブ・フィルハーモニック・ウィンズの主な過去の演奏曲について


●第1回公演:Arc-hive Philharmonic Winds 1st Concert -The Beginning of the Adventure-(2023年1月21日)

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【出演者】
MC(『GRANDIA』演奏時):瀧本富士子(『GRANDIA』主人公ジャスティン役)

指揮:岩垂徳行/山田雅彦
演奏:Arc-hive Philharmonic Winds

【演奏楽曲一覧】
・第一部
『モンスターハンター』より「英雄の証」
『グランブルーファンタジー』より「メインテーマ」
『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』より「群像夏」
『ウインドボーイズ!』より「Brand New WIND」
「星のカービィ」より「デデデ大王&メタナイト・タッグメドレー」
『Cuphead』より「Inkwell Isle Ⅰ」、「Die House」
『ウマ娘 プリティーダービー』 より「URAファイナルズメドレー」、「GIRLS' LEGEND U」

・第二部 ※アンサンブルステージ
『夜廻』より「夜廻」、「深夜廻」、「夜廻三」
『わるい王様とりっぱな勇者』より「日常メドレー」「おうちにかえろうメドレー」

・第三部
『グランディア』より「世界の果て」、「冒険の軌跡 -街メドレー1-」、「ミューレン」、「冒険の軌跡 -街メドレー2-」、「ガーライル」、「グランディアのテーマ」

(以下、アンコール)
『グランディア』より「戦闘3」
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』より「メインテーマ」
『逆転裁判6』より「追求〜追いつめあって」


●第2回公演:Arc-hive Philharmonic Winds 2nd Concert  -What is True Justice-(2023年10月1日)

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【出演者】
スペシャルゲスト:小寺可南子(Vocal)
MC:ブリドカットセーラ恵美

指揮:岩垂徳行/山田雅彦
演奏:Arc-hive Philharmonic Winds

【演奏楽曲一覧】
・第一部
『ファイアーエムブレム 紋章の謎』より「メインテーマ」
『ファイアーエムブレム if』より「if~ひとり思う~」
『ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王』より「神よ、その黄昏よ」
『ファイアーエムブレム 風花雪月』より「鷲獅子たちの蒼穹」、「再戦」、「天と地の境界」
※「再戦」「天と地の境界」はシークレットプログラム

・第二部
『UNDERTALE』 より「Once upon a Time」、メドレー「Peacefully Underground」、メドレー「We are Royal Guards!!」、メドレー「Do you like Butterscotch-cinnamon Pie?」

・第三部
『ラングリッサーモバイル』 より「The beginning」、「El Sallia」、メドレー「魔剣アルハザード〜力に集いし猛き者たち〜」、「Yeless」、「Geal' Paayis」、メドレー 「聖剣ラングリッサー~光に導かれた勇ましき者たち~」、 「Toywar」、「Knights Errant」

(以下、アンコール)
『ラングリッサー4』より「Wish…」
『UNDERTALE』より「華麗なる死闘」
『逆転検事2』より「追究 ~つきとめたくて」

岩垂徳行(いわだれのりゆき)

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作曲・編曲家。長野県松本市出身在住。大学在学中にほぼ独学で作曲の基礎を築く。4年間のバンド活動のあと、数々のゲーム音楽の作曲、アーティストへの楽曲提供、テーマパークなどのショー・イベント、舞台、放送関係など多方面での音楽制作を行っている。また「Japan Expo」をはじめ世界各国でのライブやレコーディングの他、オーケストラへの造詣も深く、「逆転裁判」など多くのゲームタイトルのスコアを制作。指揮者としても活動歴が長く、特に若手の演奏家たちへの指導には定評がある。

Arc-hive Philharmonic Winds:指揮、顧問
Game Symphony Japan:顧問
●執筆:『音符の隙間』(ニンテンドードリーム)

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