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『鬼滅の刃 柱稽古編』7話感想。“鬼”になってもおかしくなかった岩柱・悲鳴嶼の過去が重い…。義勇と炭治郎の天然ボケコンビがある意味癒しに(ネタバレあり)

文:米澤崇史

公開日時:

 2024年6月23日(日)に放送された、『鬼滅の刃 柱稽古編』第7話“岩柱・悲鳴嶼行冥”の感想をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『鬼滅の刃 柱稽古編』第7話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。[IMAGE]

呼吸を学ぶ前から素手で鬼を倒せる悲鳴嶼のとんでもない強さ

 6話のラストで、岩柱・悲鳴嶼行冥が課したこと……大岩をついに動かすことに成功した炭治郎。

 伊之助も岩を動かした時、善逸が自分だけ動かせてないことに焦るシーンがありましたが、動かせない隊士は善逸以外にも大勢いるはず。普段はあんまり口にしませんけど、やっぱり炭治郎と伊之助は善逸にとって特別な存在で、二人においていかれたくない、という意識はどこかにはあるんだろうなと思います。

 一方、岩を動かすことに成功した炭治郎は脱水症状で目がえらいことになっていました。走馬灯のようにいろんな人物の顔が浮かぶ中で、村田さんが出てきた時にはちょっと笑ってしまいましたが……すぐに悲鳴嶼が助けに来たあたり、実は近くで気配を消しながら様子を伺っていたのかもしれません。


 そして明かされた、悲鳴嶼の過去。“鬼殺隊最強”と言われていた男が実は盲目であったこともさらっと明かされ、『鬼滅』のキャラクターの中で悲鳴嶼だけ瞳が一切描かれていない理由がこれで判明しました。

 脅されて寺まで鬼を呼び寄せてしまった子供は、自分の命が掛かっていたと考えると仕方ないかと思う部分はあるものの、偶然遭遇した鬼が寺にたくさん人間がいることを知っていたとも考えにくいんですよね。仮に鬼に見つかった時、自分から進んで人間がたくさん集まっている場所があることを教えて、そこに案内する代わりに自分は見逃してくれと命乞いをしたのだと考えると、さすがにドン引きするレベルの外道さです。

 しかし、そんな鬼を武器もなしに殴り殺してしまうのが悲鳴嶼のとんでもなさ。この頃の悲鳴嶼は、呼吸が使えないどころか、ほぼ栄養のある食事を取れてない状態なんですよね。その上盲目で、今までに人を殴った経験もないというこれ以上ないほど厳しい条件で鬼と対峙して、ほとんど一方的に素手で殴り殺してるのが凄まじすぎる……! 呼吸を学ぶ前からもうこの強さなら、後に"鬼殺隊最強”の存在にまで上り詰めたのも納得です。

 ただ、あの歳の子供に何かを求めるのは酷だと理解した上で、「それでも労って欲しかった」と明かす悲鳴嶼はあまりにも悲しい。そもそも原因を作ったのは鬼とはいえ、命を掛けて守った存在から化け物呼ばわりされ、濡れ衣を着せられた上に殺されそうになるという、一歩間違えれば鬼に堕ちてもおかしくはないくらい人間からひどい目に合わされています。


 産屋敷のお陰でそんな展開にはならなかったものの、悲鳴嶼の中にはそのトラウマから子供に対する不信感がずっと残っていたんでしょう。

 最初に炭治郎と禰豆子が屋敷に来た時、悲鳴嶼は禰豆子を殺す側に賛同していて、その後の理性的な悲鳴嶼のイメージとギャップがあったのですが……「子供は嘘をつく」という不信感が強かった悲鳴嶼は、炭治郎の言うことを信じられなかったのかなと今となっては思います。

 どんな時でも素直で嘘をつかない炭治郎のまっすぐさが、結果的に子供という存在への不信感から悲鳴嶼を解放する形になったのは非常に良かったです。


 悲鳴嶼が保護しておた子供たちはサヤ以外全員死亡……と思いそうになりましたが、あの悲鳴嶼たちを鬼に売った子供当人は、鬼と入れ替わるように逃げ出しています。その後、鬼が生きていればあの子供も追いかけて食べたかもしれませんが、結局鬼は悲鳴嶼に倒されたため、間違いなく逃げ遂せています。あの子供の顔を覚えていると、今後「あっ」と思うようなシーンに出くわすかもしれません。

似たもの同士の炭治郎&義勇の天然ボケコンビが面白い

 Bパートでは、鎹鴉からの手紙を受け取った善逸が、何かのを決意を固めたシーンが印象的。

 食事すらまともに取らず稽古に集中するのは、今までの善逸には見られない傾向で、炭治郎とのやりとりは台詞のすべてがとんでもなく真剣な声色になっています。普段のギャグシーンとのギャップでちょっとぞくっとしたほどでした。これぞプロの声優といいますか、演じる下野紘さんの凄さを改めて知ることができたシーンです。

 義勇と不死川の戦いは『鬼滅』の戦闘シーンの特徴でもある呼吸のエフェクトが美しすぎて、思わず見入りました。“打ち潮”など水の呼吸の一部の型は炭治郎も使っていましたが、(今回はそこまで状況が切迫していないのもありますけど)やっぱり義勇が使うとどこか優雅さに近い雰囲気が漂います。


 その後の義勇&炭治郎と不死川のやり取りは、義勇と炭治郎のW天然ボケコンビを相手にする不死川がなんだかかわいそうな感じに。もし善逸あたりがいれば、炭治郎がおはぎの話を始めたあたりで不死川の雰囲気を察して一度止めに入っていたのでしょうけど、義勇は止めるどころかさらに不死川の怒りをピークにさせる追撃を掛けているのが笑いました。

 クール系のキャラクターってそもそも他人に興味がないパターンが多いと思うんですが、義勇の場合は単に人付き合いが苦手で、それを自覚した上で改善したいとも思っているのが面白いところなんですよね。あれだけ不死川から敵意をぶつけられても、おはぎで仲良くなれると思っているあたり、性格は全然違えど本質的な人の良さは炭治郎と義勇って似たもの同士なんだろうなと。

 その後不死川に炭治郎がぶっとばされた時、起こすでもなく介抱するわけでもなく、ただ炭治郎が起きるのを横でじっと待っていたというのも義勇らしくて面白いシーンでした。

 そして7話ラストで、ついに産屋敷邸に姿を表した無惨。

 無惨が歩いてきてエンディングが入った時、「ここで今週は終わりかー!」と思ったら、まさかエンディング後にそのままBメロに突入し、悠然と歩み寄ってくる無惨の姿がじっくり描写されるのは大分予想外でした。まさにラスボスに相応しい格を感じる、贅沢すぎる登場シーンです。

 『柱稽古編』オープニングの『夢幻』は産屋敷と鬼殺隊の曲なのに対して、エンディングの『永久-トコシエ-』は無惨&鬼のテーマになっていて、改めて見るとかなり対照的。今までのエンディングと比べてかなりおどろおどろしい雰囲気があると思っていたので、無惨の登場シーンにはこれ以上ないほどピッタリでした。護衛の上弦すら連れずにゆっくりと歩いて近寄って声までかけるのは、柱が何人集まろうと自分を倒すことはできないという自信からでしょうか。

 これで『柱稽古編』も残すは最終回となる8話のみ。8話は1時間のスペシャル放送となるとのことですが……『無限城編』と『柱稽古編』の間には、明確な境目みたいな部分がなく、原作を知っていてもどのシーンまで描かれるのか予想が難しいところもあるので、さらに展開が楽しみになります。視聴者の心が燃える、どんなクライマックスを見せてくれるのか、今から期待が高まりますね。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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