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『メダリスト』4話感想。いのりとのぞみの親子愛に涙腺崩壊。想いを打ち明けたいのりが見せる、前半と対照的なスケートシーンは何度も見返したくなる(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 放送中のTVアニメ『メダリスト』4話“名港杯 初級女子FS(前)”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『メダリスト』4話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことをオススメします。 [IMAGE]

ついに打ち明けられた“メダリスト”への想い【メダリスト】

 母・のぞみに自分の本気を見てもらうため、いのりは初めての大会となる名港杯に出場することになりました。

 今まで話題の中でだけ出ていた、いのりの前にずっとスケートをやっていたという姉の実叶も初登場。スキンシップがだいぶ過激でいのりも驚いていたようでしたが、このあたりは海外留学の影響なのかも? 構図としては、何でもできる天才肌の姉とマイペースな妹……という姉妹だと思いますが、仲が良さそうでほっとしました。

 “親元を離れて一人で海外留学できる英語力”、”友達経由で雑誌モデルの仕事をやっている”という、この僅かなシーンから感じ取れるスペックの高さが尋常ではないです。

 実叶についてすごいと思ったのが、フィギュアスケートに対して一切ネガティブになっていないこと。今までの話からしても、フィギュアスケートを辞めざるを得なくなったのは、かなり辛かった経験なのではないかと推測できます。

 が、それを一切表に出さず、楽しかった思い出として話題にしているあたり、メンタルも強いし人間的にもすごくできた子なのだなと思えますね。


 そして、名港杯当日にかけて練習が始まりましたが、いのりは思うような滑りができなくなってしまいました。

 おそらく最初の失敗は、司が言っていた通り、初めてすべるリンクの氷の違和感からのちょっとしたミスだったはず。けれど、その後は初回の失敗がずっと尾を引いていた感じなんでしょうね。

 ミスをした時、リカバリーしようとして焦って、その後のことがさらにめちゃくちゃになる……という経験は、誰しもやったことがあるのではないかなと思います。もっとも確実性の高いフライングシットスピンで良いイメージを取り戻させようとする司の作戦も完全に裏目に出てしまい、この時のいのりはかなり追い込まれていたのではないでしょうか。


 そこから、のぞみがプログラムを簡単なものに変えるよう司にお願いするシーンは「こんなに愛しているのに、なんですれ違うんだろう」という切なさで涙腺を刺激されました。

 視聴者の視点からすれば、いのりが母にめちゃくちゃ愛されていること自体は結構一目瞭然です。が、「スケートまで失敗の思い出にさせたくない」という言葉が、実叶に最後につらい思いをさせてしまったという後悔が背景にあることまで自然と想像できて「お母さんならそう言うよね……」という納得感がありました。

 そしてそんな母の想いを理解したうえで、今まで伝えられなかった「メダリストになりたい」という想いをいのりが打ち明けるシーンは鳥肌もの。その前のシーンで、司がのぞみに対して、これはいのり自身が伝えないといけないことだと、言葉をグッと堪えていたのも良かったです。

母と子、愛のシーンの前に、もらい泣きした作中の司たちと同じ状態に【メダリスト】


 そこからのBパートでのスケートシーンはまさに圧巻で、実際の演技と同じように曲に合わせて滑り続けるスピード感が尋常ではなかったです。

 1回転んだところから復帰したのも、一度のミスからの動揺でその後すべて崩れてしまったAパートでの姿とは対照的。いのりのメンタル的な部分の変化が見て分かる、構成にもなっていました。


 そして最高だったのが、演技をやりきった後のいのりとのぞみの母子の抱擁のシーン。オリンピックでメダルを取りたい、という娘の途方もない夢をすべて受け止めて、それを応援すると約束する愛の深さ……その様子を見て、もらい泣きしている司たちとまったく同じ状態になっていたのは自分だけではないはず。

 とくに司よりも先に、ずっといのりのスケートへの想いを知っていた受付のおじいちゃん(瀬古間)からすると、とんでもない感慨深さがあったんだろうなと。

 4話は全体を通して“親子愛”の印象が深かった回でしたが、公式Xで公開されている、原作者のつるまいかだ先生の描き下ろしイラストが、また泣かせてくるんですよね。

 小さい頃のいのりとのぞみの一幕と思われますが、いのりの描いたミミズの絵を大切にアルバムにしまってるのがさりげなく分かるようになっているのが素晴らしいです。『メダリスト』、主人公であるいのりが中心の物語ではありますが、彼女を取り巻く人物の成長も描かれているのがとても好印象です。


 いのりがミミズを好きなことを両親も承知していたと考えると、エンディングで彼女が抱えている巨大ミミズの抱き枕も、イメージ映像とかではなく、両親が買ってくれたものとして本当にいのりの部屋にあるんだろうなと想像できます。その光景を想像して、より心がほっこりとしていました(どこで売ってるんだろうという疑問はありますが)。

 クライマックスのような展開ですが、まだ大会は途中。現時点での1位には立ったものの、いのりをライバル視するミケの演技はどうなるのでしょうか……5話も目が離せなさそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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