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『終末トレインどこへいく?』最終回前に推しキャラの東雲晶と千倉静留を語りたい。こんな一面見せられたらそりゃ…好きになるでしょ!(ネタバレあり)

文:米澤崇史

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 『SHIROBAKO』『監獄学園』など様々な人気作でコンビを組んできた、水島努監督と横手美智子さん(シリーズ構成)が再びタッグを組んだオリジナルTVアニメ『終末トレインどこへいく?』。

 “7G”という新技術が起こした事故によって崩壊した世界を舞台に、離れ離れになった友人に会うため、4人の少女たち(と1匹)が電車に乗って池袋を目指す旅が描かれる作品です。TV放送は6月24日に最終回が放送予定とまさに今クライマックスに突入しており、大きな盛り上がりを迎えています。

 今回はそんな『終末トレイン』の魅力の一つである個性的なキャラクターの中から、とくに筆者が個人的に推したい二人を紹介します。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『終末トレインどこへいく?』の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。


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背伸びをしたい年頃の寂しがり屋・東雲 晶【終末トレインどこへいく? キャラ推しトーク】


 自分が序盤からずっと最推しなのが、メインキャラクターの一人である東雲晶(しののめ あきら)。吾野から主人公・千倉静留と一緒に池袋を目指すことになる友人たちの1人で、メインキャラクター4人の中では最年少(唯一の中等部)です。


 晶というキャラクターを表現するなら、“大人ぶろうと一生懸命背伸びしている中学生の女の子”。いわゆる、“厨二病”と呼ばれる系統のエッセンスも入っているんですが、晶の場合はちょっとリアル寄りとういうか、サブカルに傾倒した方向性になっているのに独特の味わいがあります。

 自分を他人と違うように見せたいがために、同世代があまり触れないマイナー系の分野に背伸びして触れようとしているところとか、昔の黒歴史的な自分を思い出してしまうような面もあったり、個人的に共感できる部分も多かったです(自分がこじらせたのは、中学生ではなく高校・大学時代でしたが)。

 メインキャラクター4人の中では、一番歳が近い久賀玲実とコンビ的な関係性。性格はまるっきり真逆、常に喧嘩が絶えない犬猿の仲……のように見えるんですけど、実は誰よりも仲が良く、お互いのことを大切に思っているという、実質相思相愛なのに、お互いに自覚していない感じがたまらなく尊いです。オシャレにこだわりが強そうな玲美が、子どもの頃に晶からもらったブレスレットを今でも腕につけているあたり、どれだけ大切にしているかが分かります。

 晶は序盤にスポットが当たるエピソードが結構多いんですけど、とくに印象的なのが第3話の“ショートでハッピーイージーに”。


 この回で一行が訪れていた東吾野では、住民がキノコに寄生されるという異常が起きていました。その住民たちの罠に掛かり、静留に撫子、そして玲実までキノコに寄生され、晶が1人で立ち向かうという、3話にして絶体絶命の窮地に立たされてしまいます。

 実は晶はそれまでの旅で、池袋に行くのにあまり積極的ではありませんでした。にも関わらず、キノコの影響で無気力になってしまった静留に、「池袋に行くんだろ!」「(葉香は)友達でしょ!」と必死に呼びかけて説得を試みたり、普段はクールを装ってあまり表にしてない、友達への熱い気持ちのような感情が垣間見えたのが非常に良かった!

 しかもそういうカッコよさだけではなく、このエピソードは“実は晶もキノコに寄生されていた”というオチがありまして、大のビビリもである晶は後日それを皆に言う勇気が出ずに、どんどん寄生が進んでしまいます。

 そんな晶を助けるため、今度は玲実が奮闘することになるのですが……。そちらでは、キノコの影響で大人ぶってた仮面が外れた晶は実は大の甘えん坊で、必ず玲実がなんとかしてくれると信頼していることが分かるという、ギャップ萌えの魅力がこれでもかと詰まったエピソードが展開されました。


 あと、この4人のチームは結構タイプが偏っているというか、静留・撫子・玲実は全員腕っぷしが強くて、RPGのパーティなら4人中3人が戦士職みたいな、大分脳筋寄りの編成なんですね。

 皆困ったら身体能力やパワーでゴリ押ししがちなので、唯一の頭脳労働担当でもある晶は独自の見せ場があるのも嬉しいところ。モールス信号に無茶苦茶詳しいなど、晶がいなかったら詰んでいたんじゃないかという場面が結構あります。

 時に頼りになり時にかわいくなる、『終末トレイン』の中でもとくに魅力が分かりやすく伝わりやすいキャラクターだとも思っています。

素直になれない等身大の主人公・千倉静留【終末トレインどこへいく? キャラ推しトーク】


 自分のもう一人のイチ推しキャラが、主人公である千倉静留(ちくら しずる)。正直な話をすると、実は静留については、最初の頃の印象はそんなに……だったんです。

 というのも、物語の序盤、準備不足の状態で旅立った中で、池袋に向かうべきか一度吾野に戻るべきかの話し合いをしている時、静留が撫子たちに対して「無理して来なくてもよかったのに」と言い放つ一幕があり、「ついてきてくれた友達にそんなこと言っちゃうの!?」と内心で驚きました。

 撫子たちは、静留が池袋に行くと知ってからその場の勢いで勝手についてきたので確かに静留の指摘も間違いではないんです。ただ、1話時点での静留の印象は、運動神経抜群で活発な主人公というポジションも相まって、明るくて誰とでも仲良くなれる元気系の、まさにアニメの主人公のお手本みたいなタイプのイメージだったので、結構ギャップは大きかったです。


 ただ、物語が進むにつれ、実はその最初の認識が完全に的外れで、静留は年齢相応に子供らしい、ちょっとリアルな女子高生っぽさみたいなのを含んだキャラクターだということが分かって、それからどんどん好きになっていきました。

 例えば、静留たちが探している中富葉香が池袋に向かった原因を作ったのも、静留が彼女の夢を否定する不用意な一言が原因でした。ただこれも、葉香と離れ離れになりたくない気持ちとか、静留自身の夢に対する諦めとか、色々な人間臭い感情が背景にあったからこそ出た言葉になっていました。


 撫子たちに対する「無理して来なくても良かったのに」もそうですが、“感情を抑えきれず、つい言ってはいけないことを口に出してしまう”というのが静留の面白いキャラ性の一つで、ここが分かるとすごくいろんな言動に納得が行くようになっていきましたね。

 内心では葉香に酷いことを言ってしまったのを理解しているのに、表向きにはそれを素直に認められずに責任転移して拗ねたり、たぶん登場人物の中で一番精神的に幼いのが静留だったんじゃないかなと。


 一方で、物語が進むにつれ、ついてきてくれた皆への感謝や、葉香への想いも言葉にできるようになって、しっかりと主人公らしい成長を感じられるのも好きになってきたポイント。とくに7話“笑うゾンビはゾンビじゃない”では、雨で髪が濡れた時の姿にドキっとさせられつつ、静留が自分の間違いを受け入れて前に進み出すまでのいいお話になっていました。

 静留は物語を通して印象が一番変わったキャラでもあるので、改めて1話から見直すと、また新しい一面に気づけそう。

 各キャラクターの魅力を振り返る意味でも、クライマックスに向けて、もう一度今までのエピソードをおさらいしてみるのも良いのではないかと思います。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

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