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『スパロボY』戸澗宏太Pインタビュー。ゲームエンジン刷新は継続的にシリーズ制作することを見据えて。タクティカルエリアセレクトの改善点や、STGメモリー開放など気になる要素を聞く【スーパーロボット大戦Y】

文:米澤崇史

公開日時:

最終更新:

 バンダイナムコエンターテインメントから2025年8月28日に発売予定のNintendo Switch/PS5/PC(Steam)用ソフト『スーパーロボット大戦Y』。本作のメディア向け試遊会で実施された、戸澗宏太プロデューサーへのインタビューを掲載します。

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『スーパーロボット大戦』の34年という歴史を背負う重圧はあった

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――最初に、『スーパーロボット大戦Y』というタイトルに込められた思いについて教えてください。

戸澗さん
前作の『スーパーロボット大戦30』は30周年記念ということもあって、シリーズとしては変則的なタイトル付けになっていました。

 それから約4年経ちますので、改めて家庭用の『スーパーロボット大戦』シリーズ最新作が発売されることをしっかりファンの皆様にお伝えするため、「アルファベット1文字でいこう」と、最初から決めていました。

 その後いろいろなアイデアを検討していく中で、“Y”というアルファベットの形に着目しまして。この形が分岐路や、3方向からの交差点のようにも見え、本作の世界観と親和性が高いと感じたので、“Y”を選びました。

 それが「右は災厄、 左は破滅―宿命を越えろ、鋼の守護者​」という本作のキャッチコピーにも繋がっています。

 “Y”の上側は未来、下側は過去に相当していて、右左のどちらに行っても避けられない未来や、過去からの怨讐に鋼の守護者たちが立ち向かう……といったコンセプトをイメージしたものにもなっています。

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――ゲームエンジンを刷新しましたが、これにはどのような意図があったのでしょう?

戸澗さん
1番大きな理由は、『スーパーロボット大戦』というシリーズを今後も継続的にリリースしていきたいと思っているためです。一方でコアなゲーム性の部分については普遍的におもしろいものだと私は考えておりますので、その部分は大きく変えないという判断をしました。

 もう少し詳しく話すと、実は『30』までは、『αシリーズ』の時に作ったゲームエンジンを改良しながら使い続けていて、一部のエンジニアに負担が集中し、どこかのタイミングで致命的な不具合が出てしまうかも……との懸念点があったんです。なので、今後もシリーズの開発を続けるためにも、汎用エンジンであるUnityに移行する決断をしました。

――新しいゲームエンジンへ移行する際に苦労した点はありましたか?

戸澗さん
やはり『αシリーズ』の頃から20年近く独自エンジンでゲームを作っていたチームなので、Unityの仕様の把握であったりの習熟的な部分は開発当初は苦労したところでした。

 逆に新しいエンジンに切り替えるにあたって、今までの『スパロボ』の細かい仕様を再整理する必要がありまして、そこも大変だったポイントかなと思います。

――過去にも、ゲームエンジンを変えようという話が出たことはあったんでしょうか。

戸澗さん
私が把握している限りでは、ありませんでした。

 『α』の時代に一度変わっていますが、それ以降は大規模なエンジン改修は行っていなかったので、特定のエンジニアに負担が集中してしまうような構造を、今回を機にしっかりと直していこうと。

――シリーズの今後の展望について教えてください。

戸澗さん
正直なお話をさせていただくと、かつては年に1本くらいのサイクルで「スパロボ」の新作が発売されていた時期もあったと思うのですが、昨今のゲーム業界を取り巻く環境変化もあり、新エンジンへの移行が完了した後も、年1本の発売ペースを再び維持するのは難しいと考えています。

 その一方で、ファンの皆様が待ってくださっていることも十分理解しておりますので、少しでも早くお届けできるよう頑張っていきたいという思いは、開発一同で共有して持っております。

 今回で『スパロボ』シリーズを今後も継続していくための体制が構築できたと考えておりますので、お客様のご意見なども聞きつつ、どういった形でゲームエンジンを発展させていくのかベストかは引き続き考えていきたいと思っております。

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――『スーパーロボット大戦Y』の注目のポイントについてお願いします。

戸澗さん
最初のお話と少し被るところもあるんですけど、久しぶりの家庭用の新作ということで、まずはいつもの『スパロボ』として、安心してお楽しみいただけるタイトルになっております。

 その上で、キャラクターゲームとしての『スパロボ』の魅力をより引き出すため、アシストリンクの追加やUIの改善、オートバトルの改修、カスタマイズを広げるSTGメモリー開放といった要素も盛り込んでおります。

 エンジンの改修を機に、シリーズ初心者の方にもしっかりと楽しんでいただけるような工夫もしておりますし、『30』からの改善も行っておりますので、シリーズファンの方も含め、皆様に楽しんでいただける『スパロボ』になっているのではないかと思っています。

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――本作を発表した時のユーザーからの反響はいかがでしたか?

戸澗さん
印象に残ったのは、やはり新規参戦の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season1、『SSSS.DYNAZENON』、『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』、家庭用初参戦の『マクロスΔ』、『ゲッターロボ アーク』といった作品の参戦にしっかり反応をいただけたという実感です。

 また久しぶりの『勇者ライディーン』の参戦を喜ぶ反応も多かったですね。特に印象的だったのが、どの作品を発表してもそれぞれの作品のファンに本当に喜んでいただけて、『Y』を作ってよかったなと感じられた瞬間でもありました。

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――戸澗さんは、これまでどういった形で『スパロボ』シリーズに関わられていたのでしょうか?

戸澗さん
元々はカードゲームの『スーパーロボット大戦Vクルセイド』や『OGクルセイド』の商品担当をやっておりまして、その頃に『生スパロボチャンネル』にも出演したこともありました。

 その後はBANDAI SPIRITSのホビー事業部から『スパロボ』を作りたいという強い思いでゲームの『スパロボ』チームに異動して、本作のプロデューサーを担当することになったわけです。

――『スパロボ』シリーズのプロデューサーを務めるにあたって、どんな思いを持たれているのでしょうか。

戸澗さん
『スーパーロボット大戦』というシリーズは、元々好きだったロボットアニメを『スパロボ』をやることでもっと好きになったり、いままで知らなかった新しいロボットアニメに出会ったりできる、ロボットアニメという文化の裾野を広げられるシリーズだと考えています。私自身も、そんなシリーズの歴史を紡いでいきたいと思い、開発に携わらせていただいています。

――やはりプレッシャーもありましたか?

戸澗さん
めちゃくちゃありました!! やはり34年という歴史を背負っていますから。

 とくに発表するまでは、本当にプレッシャーで押しつぶされそうになっていたんですが、発表した瞬間、4年ぶりの『スパロボ』ということもあって、「待ってた!」とか「ありがとう」みたいな温かい声を本当にたくさんいただいて、「今までやってきてよかったな」と強く思いました。

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タクティカルエリアセレクトの改善は、『スパロボ』らしいシナリオが体験できることを目指したもの


――新要素も複数追加されましたが、ゲームシステム面で、とくに注目してほしいポイントはありますか?

戸澗さん
やはり新要素のアシストリンクは一番楽しんでいただきたいポイントです。

 あとは、『スーパーロボット大戦30』で導入したタクティカルエリアセレクトについても改善を入れています。

 好きな作品を優先的に加入させられるという点は残した上で、自由度が高すぎるがゆえにクロスオーバーが薄くなっていたことや、シナリオが分かりにくくなってしまっていたことなどの課題を解決するため、序盤は自由度をあげているのですが、ストーリーが進むにつれシナリオに集中できるといった形で、従来の『スパロボ』に近いシナリオ体験ができるように調整を加えています。

アシストリンクとは:戦闘に直接参加しない(機体に搭乗しない)キャラクターが、後方から支援するシステムです。戦術マップにおいて、あらかじめ編成したアシストクルーの持つ“アシストコマンド”を使用することで、アシストクルー固有の戦闘を有利にするさまざまな効果を受けられます。
――タクティカルエリアセレクトについては、どのくらいのタイミングから可能になるのでしょうか。

戸澗さん
本格的に始まるのはCHAPTER2からとイメージしていただければいいのかなと。CHAPTER 1については、まずは本作の世界の導入をじっくりと楽しんでいただきたいです。

――『V』から長く続いたエクストラアクションが廃止され、一部の機能がアシストリンクに移ったりもしていますが、その意図を教えてください。

戸澗さん
『V』『X』『T』『30』とシリーズを重ねるにつれ、要素がどんどん増えて複雑化していっていたので、初めて『スパロボ』に触れる方にも分かりやすいように、システムの整理・統合を行った形となっています。

 その上で、『スパロボ』シリーズの肝は、魅力的なロボットやキャラクターに自分の愛を注げることだと考えておりまして、その要素をより拡張して楽しめるシステムとして、アシストリンクを実装しました。

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――アシストリンクについて、アシストトークというイベントが発生するとお聞きました。従来のエースパイロットの時の会話イベントのようなものでしょうか?

戸澗さん
そうですね。おっしゃった通り、エーストークのアシストクルー版とご理解いただければ、シリーズファンには一番わかりやすいかと思います。キャラクターごとに細かい違いはあるのですが、基本的には本作のオリジナルキャラクター・エチカとの会話が中心になっています。

――新システムの“STGメモリー開放”について教えてください。

戸澗さん
STGメモリー開放は新しいゲーム的な遊びとして導入した要素です。

 バランスとしては、1回のプレイで全部のメモリーが開放できる想定にはなっておらず、防御特化とかアシストリンク特化とか、いろんなタイプをプレイヤーが試行錯誤して、周回プレイの遊びを広げる目的もあります。

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▲STGメモリーの画像。
 加えて、シナリオ的には、今回のオリジナル戦艦である“エーアデント”にまつわるテクノロジーという位置づけにもなっていますね。

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▲八神市の地下で建造されていた機動要塞都市にして、戦闘時には戦艦として出撃する“エーアデント”。甲板のドーム内に八神市とその周辺の街が収容されていて、独立した都市としての機能も持っています。
――今回、ハード以上の難易度では『30』のスーパーエキスパート+のような特殊ルールが採用されているとお聞きしました。そのようにした意図を教えてください。

戸澗さん
『30』の時にあったスーパーエキスパート+において、ゲームの基礎ルールに制限をかける実装をしたところ。歯ごたえがあるというお声を多数いただき今回は最初から実装してみようと考えました。

 具体的な中身としては、本作においてはハード以上の難易度だと、敵を撃墜した時に味方全体の気力が上がるルールがなくなるので、武装や能力の発動条件を満たすために、どうやって気力を上げていくかよく考えないといけなくなります。

 誰が優先して敵を撃墜するかもそうですし、アシストクルーや強化パーツ、STGメモリー開放などで上がりにくい気力を補填するのも選択肢になります。ただ、そちらにリソースを割きすぎると、今度は他のものに回せなくなったりもするので、その配分に悩みながら進めるのも面白いポイントです。

――スーパーエキスパート+は、引き継ぎなしでプレイするととんでもなく難しかったと思うのですが、それと比較して本作のエキスパートはどのくらいの難易度になりますか?

戸澗さん
本作ではシステムが異なる部分もありますので、単純に比較するのは難しいです。ただ、しっかりと歯ごたえを感じられる難易度にはなっていると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。

――アシストリンクとSTGメモリー開放など、新要素が複数増えていますが、開発時にバランス調整に苦労した部分はありましたか?

戸澗さん
アシストリンクやSTGメモリー開放も、実際にプレイしながら調整をしてはいるのですが、実は一番大変だったのはタクティカルエリアセレクトですね。

 ユーザーによってクリアするステージ数が変わってしまうこともあるでしょうし、メインミッションだけをクリアする最短ルートを通っている方、全部のステージをクリアしてきた方の両方を想定しないといけないので、そのぶん調整に時間が掛かりました。

参戦作品は、固定観念に縛られずファンが喜んでくれることを意識

――本作の戦闘アニメーションについて、注目のポイントはありますか?

戸澗さん
戦闘アニメについては、熟練のスタッフたちが引き続き担当しておりますので、『スパロボ』らしい、各作品の魅力を引き出したアニメーションになっております。

 そのため大きく変わってはいないのですが、より戦闘アニメを楽しんでいただくため、極力画面の暗転を減らして攻守の切り替わりをスムーズにしたり、UIの変更でアニメの表示領域をより広くするといった工夫を行っております。

――取材でメディアがプレイした試遊版ではゲッターアークが変形できませんでしたが、製品版では変形できるようになるのでしょうか?

戸澗さん
はい、製品版ではゲッターキリク、ゲッターカーンに変形できます。

 本作ではZガンダムやビルバインなど、変形機能があるものの変形するとゲームとして使いにくくなってしまうユニットは、移動時だけ自動で飛行形態に変形するように変更しています。

 ただ、ゲッターアークに関しては3形態分の変形を製品版では用意しております。そのゲッターアークの変形についても、移動後に使えるように仕様を変更しているので、アークで攻撃したあと、キリクに変形して敵を迎え撃つ……といったこともできるようになっています。

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――PS5版で試遊させていただいた体感としてロードも早かったですし、操作についても今まで以上に快適にプレイできた印象でした。操作まわりについて工夫した部分はあるのでしょうか。

戸澗さん
昔は複数のボタンを押すことで行っていた操作を1つのボタンでできるように変えるなど、細かいところで操作性の向上を行っております。

 あとは操作のガイドを、これまでよりもしっかりと入れているので、初めてプレイするユーザーがどのボタンを押せばスキップなどができるかわかりやすくなったと思います。

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――主人公のモチーフに忍者をチョイスした理由を教えてください。

戸澗さん
主人公のコンセプトを決めるにあたって、エチカを陰から守るような存在として、忍者を選びました。一度忍者という設定を固めてからは、主人公の立ち位置だけではなく、デザインだったり乗るロボットだったり、いろんな要素が一気にイメージしやすくなりました。

 戦闘アニメの部分でも、忍者っぽいロボットの動きみたいなのを大事にしつつ、いろんなアイデアが広がって生まれたりもして、すごくいいアニメーションになったのではないかと手応えを感じています。

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――忍者は海外での人気も高いですが、グローバル市場を意識した点もあったのでしょうか?

戸澗さん
そこについては、後になって「そう言えばそうかも」と気付いたんですけど、決めた時にはまったくそういう意識はなかったですね。純粋に、今回のシナリオで一番しっくりくる主人公のモチーフが忍者だったという形です。

――『スパロボ』はアジア圏での人気が高いタイトルだと思うのですが、今回のグローバル的な反響はいかがでしたか?

戸澗さん
『スーパーロボット大戦Ⅴ』あたりからグローバル展開が始まっていますが、本作でも海外に向けて同時にトレーラーを公開しています。それぞれにいろんな喜びの声をいただいております。

 中には「この作品を知ってるんだ!」と私たちが驚かされることもあるほどで、海外にも『スパロボ』のファンが増えてきているんじゃないかという体感はありますね。

――今回のゴジラや、『30』のグリッドマンなど、ロボットアニメに分類されるか分からない作品の参戦も増えている印象があるのですが、『スパロボ』シリーズとして、今後はさらに参戦作品の裾野を広げていくようなイメージをお持ちなのでしょうか。

戸澗さん
そうですね。明確に今後の構想があるわけではないのですが、やはり様々な作品が一つのゲームに集まるのが『スパロボ』の大きな魅力ですので、それをより広げてくれるような作品をどんどん入れていきたいという思いは持っています。

 すでにアプリの方でもいろいろな作品が参戦しておりますし、固定観念に縛られることなく、ファンの皆様に喜んでいただくことを第一に、常に可能性は模索していきたいと考えています。

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――最後に、改めて発売に向けての現在の心境についてお聞かせください。

戸澗さん
まずは、発売まであと1カ月というところにまで辿りつけたことに、『スパロボ』シリーズを支えてくれたファンの皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。

 先程もお伝えした通り、やはり34年間続いたシリーズのプロデューサーとしての重責はすごく感じてはいるのですが、発表の時のファンの皆様からのありがたい声を聞いて、これまでやってきてよかったなという思いが強いです。

 今は残る1カ月を全力で走りきりたいというところなんですが、未発表の情報も残っておりますので、そこをしっかりとお伝えしつつ、皆で発売の8月28日をお祭りのように盛り上げていければと思っております。

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『スーパーロボット大戦Y』プレイ動画


『スパロボY』最新情報を公開する“スパロボY情報局”が8月7日20時より配信。第3弾PVが公開予定

 『スーパーロボット大戦Y』の最新情報を公開する配信番組“スパロボY情報局”が、8月7日20時より配信されます。


 こちらの番組には、特別ゲストとして深川和征さん(月ノ輪クロス役)、山根綺さん(月ノ輪フォルテ役)が出演。『スーパーロボット大戦Y』の制作を手掛ける戸澗宏太プロデューサーより、第3弾PVをはじめとした新情報、並びにキャンペーン情報などが公開予定とのことです。

※追加参戦作品の発表はありません。

■番組スケジュール
  • 第3弾PVのご紹介
  • 特別ゲストをお呼びしたオリジナルキャラクター深堀りコーナー
  • 『スーパーロボット大戦Y』Q&Aコーナー
  • 『スーパーロボット大戦Y』キャンペーン情報

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