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『鬼武者 Way of the Sword』インタビュー:刀の軌道に沿って敵が真っ二つになる現代の技術で進化した一閃表現など、こだわりの部分に直撃【TGS2025】

文:シュー

公開日時:

 2026年にPlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)で発売予定の『鬼武者 Way of the Sword』。この記事ではプロデューサーを務める門脇章人氏、ディレクターを務める二瓶賢氏へのインタビューをお届けします。

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▲プロデューサーの門脇章人氏(左)、ディレクターの二瓶賢氏(右)。

『鬼武者 Way of the Sword』について門脇氏、二瓶氏に聞く!



――今回、久しぶりにシリーズの新作が登場します。別のインタビューで「今が最適なタイミングだ」とおっしゃっていましたが、このタイミングで再始動するに至った決め手は何だったのでしょうか

門脇
「最適なタイミングになった」というのが正しいかもしれません。

 じつは、かねてから社内では「『鬼武者』の新作を作りたい」という声がずっと上がっていました。ですが、『モンスターハンター』や『ストリートファイター』、そして『バイオハザード』と、年々プロジェクトが大きくなり、開発期間も長くなっていきました。大人数のスタッフが必要になるなかで、なかなか新作を作れるメンバーを集めることができなかったんです。

 それが2020年、ようやく開発メンバーが集まれる機会が訪れました。それに加えて、我々の開発エンジンである“RE ENGINE”もいい感じに成熟してきました。そのタイミングが、ちょうど合ったのが2020年だったのです。

 そこから「やってみようぜ」ということで始まり、今に至ります。昨今、和風の剣戟ゲームが注目されているという時流に、結果的にハマったという感じですね。

――2020年頃というとアニメ版も同時期に進行していたと思いますが、主人公が同じ宮本武蔵になったのは偶然でしょうか?

門脇
偶然ということにしておいてほしいですね(笑)。じつは、ゲームの開発当初、主人公は武蔵ではなかったんです。名もない1人の武将でした。しかし、私としては「グローバルで売りたい」という思いがどうしても強くありました。

 そこで、主人公を誰にしようかという話になった時、「武蔵はどうだろうか」と。グローバルで勝負するためには、宮本武蔵という偉人の名前を借りられるのは、こんなにありがたいことはないなと。それで、ほぼ即決で決まりました。その時には、もうアニメの方の企画は始まっていたので、結果的に偶然重なってしまったんです。

――宮本武蔵は海外でも知名度があるのでしょうか?

門脇
日本のコンテンツで武蔵が主人公のものは数多くありますし、それらは海外でも受け入れられています。日本のサムライ、剣豪としての宮本武蔵の知名度は、非常に高いものがあります。

――フェイスモデルに俳優の三船敏郎さんを起用されていますが、これも海外展開を意識してのことでしょうか。

門脇
海外で有名だから使っている、と思われがちなんですが、じつは全然違います。

 カプコンとして初めて作る宮本武蔵像、その新しい主人公のキャラクターに“パンチが欲しかった”んです。その象徴的な要素として、サムライスターである三船さんの顔を使わせていただきたい、と。キャラクターのアイコニックな要素、粗野でぶっきらぼうでワイルドな部分として、三船さんを起用した、というのが本当の理由です。

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――本作は宮本武蔵を主人公に据え、江戸時代を舞台にしています。史実とフィクションのバランスはどのように取っているのでしょうか?

門脇
開発にあたっては、まず時代考証の専門家の方に「こういう時代の、こういうものはありましたか」というように検証や考証をお願いしました。そのうえで、「こうした方がゲームとして面白くなるよね」という部分を、エンターテインメントとして構築しています。

 ですから、完全に史実ベースに寄り切ったゲームではありません。面白くなるように、場所によって適宜判断を加えています。

――本作は『鬼武者』シリーズを初めて遊ぶ方も多くなるかと思います。新規プレイヤーが"一閃"の快感を味わえるようになるまでの難易度設定について、どのような工夫をされていますか?

二瓶
2つの難易度設定がありまして、これは単に敵の強さが変わるだけではなく、"一閃"の出しやすさも変化します。

 本作には"活劇"と"剣戟"という2つの難易度がありまして"活劇"のほうでは“一閃”がより出しやすくなるように調整しています。

 "剣戟"では少し難しくなりますが、かといって過去の『鬼武者』シリーズほどシビアにはしていません。アクションゲームに慣れたユーザーであれば、十分に狙って出せるようなタイミングに調整しています。ですので、最初から最後まで「全然できなかった」という感覚にはならないように考えて作っています。

 また新しいアクションを覚えるたびに、それを試せる場所を用意するなど、チュートリアルの充実も意識しています。

――ゲームを進めるなかで、主人公の武蔵はどのように成長していくのでしょうか。レベルアップのような概念はありますか?

二瓶
ゲーム的な成長要素として、最初に覚えているアクションからさらに数が増えていき、それによって敵との駆け引きの選択肢が広がっていきます。

 具体的にはスキルツリー形式を採用しています。敵を倒すことで得られる"赤魂"を使い、スキルを解放していく形です。それだけではなく、フィールドにドロップしているアイテムなどを集めることも成長に絡んできます。例えば集めたアイテムを使って、攻撃力や体力の最大値を向上させることが該当します。

――装備品のような要素もあるのでしょうか? また過去のシリーズでは武器を強化・成長させる要素がありましたが、本作ではどうでしょうか。

門脇
過去作における“お守り”のような、パッシブ効果を持つ装飾品系統のアイテムも存在します。また武器そのものが成長して見た目が変わるといった要素は本作にはありませんが、育成の自由度という点では攻撃力を上げるといったパラメータ強化だけでなく、新たに"鬼ノ武具"という武器を用意しています。

 これは物語を進めたり、特定のアイテムを拾ったりといった探索を通じて手に入ります。これにより攻略の幅が広がり、成長の拡充性を体感していただけるのではないかと考えています。高い難易度でも成長させることで敵が倒しやすくなるという遊び方ができると思います。

――アクションについてもう少しお聞きします。武蔵といえば二刀流のイメージもありますが、今作は使えますか?

二瓶
基本は一刀流で、戦闘中にスタイルを切り替えるようなシステムはありません。

 ただ、アクションの流れの中で二刀を使うような動きをしたり、"鬼ノ武具"でそうした表現を取り入れたり、脇差を使ったアクションを入れたりと、二刀流を意識した作りにはなっています。

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――"連鎖一閃"についても教えてください!

二瓶
本作にも"連鎖一閃"は存在します。これは、通常の"一閃"を成功させた時に、さらにジャストタイミングで入力することでつながっていく、従来通りの少しハードルの高いアクションです。

 一方で、比較的ハードルが低いものとして"連続崩し一閃"というものがあります。これは、敵の体勢を崩した時に出せる"崩し一閃"を、複数の敵を崩し状態にすることで連続して繰り出せるものです。特定の"鬼の武具"を使うと、まとめて敵を崩し状態にできるので、狙いやすくなりますよ。

――シリーズではキーアイテムである"鬼の篭手"が登場するのが印象的です。これはどのような位置づけのアイテムなのでしょうか。

二瓶
篭手を持つのは物語のキーとなる者たちのみです。

 "鬼の篭手"は、凄まじい力を持つがゆえに、これを悪用しようとする者が現れます。この篭手を主軸に、武蔵の人生が変わっていく様が描かれますし、巌流もまた、もともとはただの人間でしたが、篭手をつけることでその人生が大きく変わっていきます。今作において、最もキーとなるアイテムと言えます。

――ボス戦についてお伺いします。今回は佐々木巌流との剣戟がメインでしたが、今後、巨大な幻魔や、遠距離攻撃を主体とする敵など、戦闘のバリエーションはどの程度用意されていますか?

門脇
刀と刀だけのボス戦だけではなく、遠距離攻撃を得意とする敵や、巨大な武器を振り回す敵も、物語を進めていくなかで登場します。

 戦い方の変化、駆け引きの“味”の変化は、存分に楽しめるものになっていると自負しています。ただ、急にシューティングゲームになったり、パズルゲームになったりということはありません。あくまで、本作の核である剣戟アクションをしっかり楽しんでいただけるように作っています。

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――ステージギミックを利用した戦いについて教えてください。

門脇
ステージギミックについては、その場所ならではのものを意識しています。屋外なら大八車があったり、屋内なら畳を敵にぶつけたりと、そこに置かれていて自然なものをギミックとして扱っています。

 工夫した点としては、「ギミックがないと倒せない」という状況をなるべく作らないようにしたことです。あくまで「これを使ってみたら、すごく簡単に敵を倒せた」というような、プレイヤー自身の発見の喜びを主軸に置いています。

 剣戟を体験したいのに、ギミックの使用を強制されるとストレスにつながってしまいますから。メインはあくまで剣戟で、ギミックは味付けとして、バランスを取りながら考えて作っています。

――1周あたりのプレイボリュームはどれくらいを想定していますか?

二瓶
初見でプレイした場合、大体20時間くらいになるのではないかと想定しています。

 さらに、サイドミッションのような寄り道要素もありますので、それらをプレイすると時間はさらに伸びていきます。一度倒した敵ともう一度戦いたい、といったやり込みにも応えられるように考えています。

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――周回要素や、シリーズ恒例の"魔空空間"のようなコンテンツはありますか?

二瓶
本作に、過去作にあったような"魔空空間"はありません。

 その代わりと言いますか、サイドクエストの遊びの広がりは、これまでの『鬼武者』にはなかったものを見せています。誰かの依頼を受けて何かを成し遂げるといった、新たな楽しみ方ができるように作っていますので、ご期待ください。

――本作には多くの仲間が登場するようですが、彼らとの関わりはストーリー上だけでしょうか?

二瓶
今作では、宮本武蔵以外のキャラクターを操作するチェンジ機能はありません。ですが、仲間との関わりはストーリー上だけにとどまりません。プレイヤーが能動的に仲間と会話をすることで特定のイベントが進行し、新しいアイテムが手に入るなど、ゲームプレイに絡んでくる要素があります。

――最後に、本作で初めて『鬼武者』に触れる方と、シリーズのファンの方へ、それぞれメッセージをお願いします。

二瓶
初めて触れる方へ。ゲームショウなどで多くの方にプレイしていただきましたが、「見ているよりも、触ってみたらすごく楽しい」という意見をたくさんいただいています。まさに、触った瞬間に感じられる「気持ちのいいバッサリ感」。これを体験していただくために作っています。ぜひ、1人でも多くの方にこの感覚を味わっていただきたいです。

門脇
シリーズを愛してくださっているファンのみなさまへ。『鬼武者』の代名詞である「一閃」。あの空前絶後のバッサリ感を、現代の技術でさらに進化させました。今回、Zレーティングで開発しているからこそ可能になった表現があります。それは、切ったベクトルに合わせて敵の体が切断される技術です。この技術的な表現が"一閃"の気持ちよさに密接に絡んでいます。

 また、ハードウェアの進化により、カットシーンにおけるキャラクターの表情描写も、トップクラスのものができたと自負しています。眉間のシワの動き方1つとっても、今の技術だからこそできる表現です。

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