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『サイレントヒル f』開発裏話がネタバレありで濃すぎ。バケモノの命名方法、1960年台の日本を舞台にした理由とは?【TGS2025】

文:Ak

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 9月30日に実施・配信された『サイレントヒル f』TGSスペシャルステージのレポート記事を掲載します。


※この記事には『サイレントヒル f』のネタバレが含まれています。

“まず物語があってホラーという断面で見せる”のが新しい挑戦【サイレントヒルf】


 ステージに登壇したのは、プロデューサーの岡本基氏と、シナリオ担当の竜騎士07先生。まずは岡本氏からゲームの概要が語られたあと、質疑応答形式で『サイレントヒル f』の開発裏話が語られました。

――『サイレントヒル f』で日本を舞台にしたのはなぜですか?

岡本
日本のホラーの本質と西洋のホラーの本質が融合しているのが『サイレントヒル』シリーズだったんですけど、その日本的なDNAがシリーズを作っている間に弱くなってしまっていると感じていました。

 そこで今回改めて、100%和風のテイストで『サイレントヒル f』というゲームを作ることにしました。シリーズのホラーの要素を残しながら、サイコロジカルホラーの部分は竜騎士07先生がしっかり作ってくれたので、非常に質の高いものができたと思っております。世界中の皆さんから評価していただいて嬉しく思います。

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――今だから言える開発裏話はありますか?

岡本
ゲームに出演するのが初めての俳優さんが非常に多かったということがあり、モーションキャプチャーでの演技の撮影にかなり苦労しました。とくに2人の雛子が対面するシーン、そのシーンは加藤小夏さんが一人二役をやらなければいけないシーンだったので、非常に難易度が高くて苦労しましたね。

竜騎士07
文字で「おぞましくて美しい」と書くのは簡単なんですけど、それを実際に絵の世界、キャラクターの世界、演技、音楽、トータル的にコーディネートするというのは非常に難しい作業です。

 私は最初にこの世界観を書かせていただいたんですけど、そのビジュアル的なイメージを岡本さんに大変うまく汲み取っていただいて、言語化してもらえたというのが大きかったですね。

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――シナリオや世界観でとくにこだわった点はどこでしょう?

竜騎士07
ネタバレしないように言うのが難しいのですが、これまでの『サイレントヒル』シリーズの物語とは少し異なる物語の書き方をしてみました。ホラー作品というとホラーのためのシナリオがあるわけですが、私は今回そういう作り方ではなく、新しい挑戦として“まず物語があり、それをホラーという断面で見せる”というやり方でホラーを描くようにしました。

 今回『サイレントヒル f』で描いた物語はホラーゲームとして描いていますが、断面を変えればホラーではなくて、場合によっては青春の物語になったかもしれないし、若者の成長物語にもなったかもしれない。あくまでも素材に対する料理の仕方、断面の見せ方でホラーとして見せました。作品の核の部分は決してホラーと決めつけられたものではないという作り方をさせていただき、そこが今回の一番の挑戦でした。

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――マルチエンディングに関してはいかがでしょう?

竜騎士07
マルチエンディングに関しては、雛子の置かれた現状について、雛子がどの選択肢を取り得るのかということで考えました。すごく大事なことなんですが、よく『サイレントヒル』に限らずいろんなゲームで“グッドエンド”“バッドエンド”と言って、エンディングに序列がついているような言い方をよくします。ただ、私は本作ではそういう言い方はしていなくて、単純に、どのエンドもひなこの人生の選択でたどり着いたエンディングだと捉えています。

 案外、皆さんの中には「最後に見るだろうエンディングよりも最初に見たエンディングの方が納得がいった」とか、あるいは逆もあって、「このエンディングみんなは好きだって言ってるけど、僕はこれ違うと思うんだよな」みたいな感じで、みなさんの数だけ、どのエンディングが良かったかというのは違ってくると思うんです。

 どれが最善の“グッドエンド”かということはなく、雛子の人生の中で皆さんの目を通してみた時、どれが最善かなというのを考えてもらいたいと思います。『サイレントヒル』というのはただゲームをやれば終わりじゃなく、ゲームが終わった時に考察を楽しむ部分もサイレントヒルというゲームに含まれると思いますので、是非どのエンディングが雛子、あの時代、そして皆さんの身に当てはめた時に最善だったかを考えていただくのも楽しいゲームの続きだと考えています。

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岡本
発売後の皆さんの感想や考察をなるべく読ませていただいていて、非常に深い考察をされている方が多いので安心していますし、僕らとしてもドキッとする「あ、こうやって解釈されるんだ」みたいな、僕らとしても新鮮な気持ちになれるような鋭い考察もあるので、良かったと思います。

 それと個人的にかなり気に入っている部分としては、“アラアバレ”というクリーチャーがいます。非常に美しさと憎ましさを強調しているクリーチャーなんですけれども、そのクリーチャーが非常に雛子のトラウマが強く表れていると思うので、開発の中では僕はかなり気に入っているクリーチャーです。

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音楽担当の山岡晃氏からのメッセージでは日本舞台ならではのこだわりが!【サイレントヒルf】


 今回のステージイベントでは体調不良のため登壇できなかった、本作の音楽を手掛けた山岡晃氏。そんな山岡氏からは、本作の音楽を作るうえでこだわった点についてメッセージが届きました。

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山岡
『サイレントヒル f』の制作では、ただ恐怖を描くだけでなくプレイヤーの心にどんな余韻を残したいかという点に強い思いを込めました。『サイレントヒル』というシリーズは単なるホラーを超えて感情の深い部分に触れる体験であるべきだと考えていたからです。

 とくに今回は日本を舞台にしているため“和”という表現にこだわりました。ただしここで言う“和”とはいわゆる和風ではありません。日本人が本来抱いている情緒、とりわけ昭和中期に息づいていた日本人の感覚を音楽に乗せ、それを海外のプレイヤーが受け取った時にもその感情の深い部分に響く体験をしてもらいたいと考えました。

2BRO.による実況プレイでは気になる質問も!【サイレントヒルf】


 スペシャルステージの後半では、人気ゲーム実況者の2BRO.(弟者さん、おついちさん)による実況プレイが披露されました。

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 2人は9月10日に『サイレントヒル f』の世界最速生配信を行ったことでも知られる実況者。ステージでは、ゲーム中盤~終盤にあたる、深水家に向かう道中と深水家の探索をメインにプレイしました。

 ちなみにちょっとネタバレとなりますが、おそらく初回プレイで誰もが驚いたであろう「岡本水産です!」のシーンも披露。ここを見て(聴いて)、ニヤニヤしちゃった方も多いのでは?

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 多彩な武器の使い分けや、お守り同士のシナジーなどを試しながら、自由にゲームをプレイしていく2人(操作は弟者さん)。そこで2人からは岡本氏と竜騎士07先生に向けてさまざまな質問がぶつけられたので、気になるものを抜粋して掲載します。

――(バケモノを見て)このバケモノはどんなコンセプトで作られたのですか?

岡本
この“バケモノを生むバケモノ”は、雛子の出産に対する恐怖心が表れたバケモノです。どんどん新しい敵を生み出していくという特徴があります。

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 “イロヒヒ”は、雛子の男性に対する恐怖心、とくに女性に対して執着心が強い男性に対する恐怖心が形になったものです。

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――バケモノの名前はどうやって付けているのですか?

竜騎士07
バケモノの由来になっている漢字をいったん開いて、それを組み合わる形にしています。

――1960年代が舞台なのはなぜですか?

竜騎士07
今回の物語のテーマの一つが、主人公である雛子の自立や将来、どうやって生きていくか、子供から大人への脱皮みたいなテーマがありました。そこをとくにクローズアップして描こうとした場合、現代というのはとても多様性という言葉があって、どんな生き方も自分が納得すれば許容されるという風に幅広く受け取られています。

 でも、この物語の舞台である1960年台当時は「男に生まれたらこう生きろ、女に生まれたらこう生きろ」という風にレールが敷かれた時代だったんですよね。だからそんな時代に令和世代の我々がどう活躍するかというのが一つの挑戦でもありました。

――逆に言うと、今の若者が見たら、「この時代なのにすごく今の雛子に共感できる」というところが出てきたりするということですか?

竜騎士07
そう考えられると、1960年台には現代人の考え方がいかに異端だったかということが分かっていただけると思います。「雛子はかわいそうだな。あと何十年か後に生まれればこんな苦しまなかっただろうに」みたいな、そんな感想もあるかもしれませんね。

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――周回要素もあるんですか?

岡本
周回要素に関しては、2周目、3周目になるとお守りがそろってくるので、今度は色々組み合わせて楽しめるようになっています。ビルドを楽しんでいただけると非常にいいかと思います。アクションの部分でもパズルの部分でも、2周目3周目では難易度を変えて遊んでみていただけると楽しいかと。

――謎解きも印象に残りました。

竜騎士07
プロデューサーの岡本さんにとくに言われたことは、謎解きは単なる謎のための謎じゃなくって、「ちゃんと世界観に溶け込んだものにしよう」ということでした。

岡本
『サイレントヒル』の謎解きって、そのキャラクターの心理とか、見たくない原因に対する見たくない気持ちが現れているとか、そういった心理劇であると思っているので、プレイヤーや主人公、登場人物の心理がよく分かるような謎解きを試みました。

――そういえば、手帳の絵は雛子が描いているのですか?

岡本
はい、雛子が描いている設定です。

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コミュニティの考察力の高さには安心感と信頼感があった【サイレントヒルf】


 ステージの最後に、竜騎士07氏は『サイレントヒル』シリーズの魅力について次のように語りました。

竜騎士07
ゲームが終わってスタッフロールが流れたら「ああ、楽しかった」で終わりにする人もたくさんいらっしゃると思います。私は普段はサウンドノベルを作っているので、サウンドノベルを見ている方というのは考察が得意な方が多いんですけど、ノベルゲームではない『サイレントヒル』のファンの方に考察を楽しんでもらえるかという心配は少しありました。

 ただ『サイレントヒル』に関わることになって徹底的にコミュニティを調べたところ、みなさんは本当に考察が好きな、ものすごく顎の力の強い、どんなアイデアや謎も自分の考えで答えを導き出せる人達だと信頼できたので、私としては皆さんに期待するつもりで今回の謎を送り出したところがあります。

岡本
発売後の皆さんの感想や考察をなるべく読ませていただいていて、非常に深い考察をされている方が多いので安心しています。僕らとしてもドキッとする「あ、こうやって解釈されるんだ」みたいな、僕らとしても新鮮な気持ちになれるような鋭い考察もあるので、良かったと思います。

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“東京ゲームショウ2025”開催概要


会場:千葉県・幕張メッセ(展示ホール1~11、国際会議場、イベントホール)

ビジネスデイ:
9月25日(木)10:00~17:00
9月26日(金)10:00~17:00

一般公開日:
9月27日(土)09:30~17:00
9月28日(日)09:30~16:30

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