グラビティゲームアライズより8月29日(木)に日本先行で発売される、PS5/PS4/Nintendo Switch用ワールドクラフトRPG『神箱 - Mythology of Cube -』。その開発者インタビューを2回にわたって掲載します。
インタビューのお相手は、プロデューサーの神崎喜多(かんざき よしかず)氏とアシスタントプロデューサーの石井政仁(いしい まさひと)氏。インタビュー前編では、本作の制作経緯や緻密な世界観、仲間キャラのお話などを掘り下げていきます!
※記事内のゲーム画像は開発中のものとなります。
幼い子どもも夢中になって試遊していた『神箱』
――あと少しで発売となる『神箱』ですが、本作においてお2人は主にどのような作業を担当されましたか?
神崎喜多氏
(以下、敬称略) 私はプロデューサーとして、全体の総括をしています。企画の構想から世界観やキャラクターのベースデザインなど、根幹部分を担当しました。
石井政仁氏
(以下、敬称略) 私はアシスタントプロデューサーという立場で、『神箱』では開発のスケジュール管理を行っています。あと、神崎と菊池先生(ゲームデザイナー・ライターの菊池たけし氏)が制作した世界観資料をゲームに落とし込むことも担当しました。
――『神箱』の開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか?
――『神箱』の開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか?
神崎
プロジェクトの始まりでいえば、2020年4月頃です。当初はスマートフォン向けのパズルRPGで、『ラグナロクオンライン』に次ぐようなオリジナルIPのゲーム開発を目指していました。
しかし、制作が進むにつれてボリュームが膨れ上がり、お客様に快適に遊んでいただくことを考え、家庭用タイトルに舵を切ることになったんです。
石井
私が本件にアサインされたのが2021年4月頃で、同年の6月から本格的に開発が動き出しました。なので、現在の形の『神箱』を作り出したのは2021年6月からということになります。
――8月29日発売はあくまで日本先行とのことですが、海外版の発売はその後に?
――8月29日発売はあくまで日本先行とのことですが、海外版の発売はその後に?
石井
はい。当初はSteamの日本語版も同日発売の予定でしたが、こちらは海外版と同時でのリリースとさせていただくことになりました。8月29日はPS5版、PS4版、Switch版の日本語版のみ発売となります。
神崎
マスターアップ自体は早かったのですが、内部でやり残したことがけっこう多くありまして。今は発売日までにさらなるブラッシュアップを目指しているところです。
――ジャンルは“ワールドクラフトRPG”となりますが、メインのターゲット層はRPG好きのユーザーなのでしょうか?
――ジャンルは“ワールドクラフトRPG”となりますが、メインのターゲット層はRPG好きのユーザーなのでしょうか?
神崎
ターゲット層として最初に狙っていたのは、パズル好きやRPG好きの方々です。しかし、徐々にさまざまな要素が追加されていき、今のようなジャンル盛りだくさんの内容となりました。
“誰でもとっつけるようなゲーム性が1つでもある作品”とでも言いましょうか。下は6歳の子ども、上は50歳の大人でも楽しめるようなゲームになったと自負しています。
“誰でもとっつけるようなゲーム性が1つでもある作品”とでも言いましょうか。下は6歳の子ども、上は50歳の大人でも楽しめるようなゲームになったと自負しています。
石井
開発がスタートした当時は、昔ながらのJRPGを愛する30~40代の方々に向けて作っていたと記憶しています。ただ、これまでイベントを通して年少のお客様が遊んでいる姿も目にし、こういう方々にもわかりやすいゲームにしようという姿勢になっていきました。
神崎
一昨年のBitSummit(国内最大級のインディーゲームイベント)に『神箱』を出展させたとき、6歳くらいの子がずっと遊んでいて席を離れなかったのが印象深かったです。去年のBitSummitでも兄妹らしき子たちが夢中になって遊んでいまして、子どもにも刺さるところがあるんだと驚きましたね。
こういう経験もあったのでもっと万人向けの作風にしようとシフトし、CEROも元々予定していたCやDではなく、全年齢対象のAになるよう調整を重ねていきました。
石井
個人的な考えですが、最近の若い方は家庭用ゲームを1人で黙々とプレイするようなスタイルではないと思っていたので、幼い子が熱心に『神箱』を遊んでいるのを見たときは本当にビックリしました。
世界観構築のために150ページの資料本を作成!
――本作は世界観がとても細かく練られていますが、どのような流れで制作したのでしょうか?
神崎
日本のRPGはとにかく世界設定が細かいという特徴がありまして、JRPGを作ってほしいという会社からのオーダーに応えるためにも、まずは我々のなかで世界観に関するルールブックのようなものを作りました。
この世界観概要書は菊池たけし先生と一緒に作ったもので、歴史や人々の生活、どういう文化なのかといったアイディアが地方ごとにまとめられています。もっと細かく言うと各地方の気候や食べ物、風習に宗教なども考えられています。
この概要書をベースに、補完できない部分をゲームでどう表現すべきか石井が考えて盛り込んでいくという流れで世界観を構築していきました。
――世界観を固めるためだけに、これほどの資料本を作られていたとは驚きでした……。
神崎
やはりこれくらいやらないとRPGとして“薄く”なると感じていました。TRPGの分野で活躍されている菊池先生の協力もあって、全体的に説得力のある世界観に仕上がったと思います。
石井
ここまで分厚い世界観を用意したうえで開発に着手したのは、初めての経験でしたね。この概要書があったおかげでチーム内での意思疎通がしやすかったですし、概要書のルールさえ守っていれば誰もが自由な発想でクエストを作れたというのも大きなメリットでした。
まあ、その結果クエストの総数が600近くになってしまったのですが……(笑)。
まあ、その結果クエストの総数が600近くになってしまったのですが……(笑)。
神崎
β版ぐらいまでは広大なマップに対してやることが乏しかったのですが、サブクエストを作り始めたらどんどん中身が増えていったのを覚えています。
石井
若いスタッフでも積極的に意見を出してゲームに実装していく、という環境を生み出せただけでも世界観概要書は作ったかいがあったかなと。
神崎
あと、レベルデザインを設計するうえでも概要書は役立ちましたね。たとえばザンクトアリウムという国をひとつ作るにしても、スタッフそれぞれのザンクトアリウム像があると擦り合わせにとても苦労します。概要書という共通言語があったおかげで、監修の手間も大幅に減らせたと感じています。
――ゲームのプロローグには“魔王”という言葉も出てきますが、本作は魔王が存在する世界観なのですね。
――ゲームのプロローグには“魔王”という言葉も出てきますが、本作は魔王が存在する世界観なのですね。
神崎
はい。かつて神話の時代にゾフィール大陸で大きな戦争があって、戦いの末に女神側が勝利しました。それによって世界は平和になって女神信仰の世の中となりましたが、突如“大分断”と呼ばれる災厄で世界がバラバラになってしまいまして……。
この壊れた世界を直すために修復者がゾフィール大陸を旅していく、というのが『神箱』のストーリーラインになります。
この壊れた世界を直すために修復者がゾフィール大陸を旅していく、というのが『神箱』のストーリーラインになります。
各キャラのサブシナリオは著名なラノベ作家陣が担当!!
――先行プレイさせていただいた限りでもすさまじいゲーム量を感じる本作ですが、全体のボリュームはどれくらいなのでしょうか?
石井
ストーリーを追いかけるだけでもざっと100時間は超えると思います。さらにクエストまわりを隅々までクリアしようとすると、200時間以上は遊べる計算です。
神崎
効率よくプレイして物語だけをストレートに進めても、80時間ぐらいはかかるんじゃないでしょうか。ボリューム関連でいうと、本作のマップはマス目状になっているのですが、プレイヤーが行動できるマスは全部で20,000マスほどあります。
――冒険はザンクトアリウム地方から始まりますが、その次に訪れるノーアトゥーン地方からが本番という印象でした。
神崎
まさにそうです。ザンクトアリウムはゲーム的にはプロローグにあたりますが、それでもじっくり遊ぶと20時間は楽しめます。ノーアトゥーンに入ると敵の強さも跳ね上がりますが、ザンクトアリウムのクエストやダンジョンを全部こなしていると、ノーアトゥーン序盤をスムーズに攻略できる設計になっています。
なんだかんだパズル、バトル、クラフトをすべてバランスよくプレイすることが、効率のいい攻略法になっているんです。
なんだかんだパズル、バトル、クラフトをすべてバランスよくプレイすることが、効率のいい攻略法になっているんです。
石井
初見プレイでは難しいと思いますが、「あの場所でこの武器が手に入る」といった情報を知っていれば、ある程度のショートカットは可能です。基本的には古きよきJRPGらしく、レベルを上げることで段階的に探索範囲が増えていくデザインですが、抜け道的な方法も一応あります。
――公式サイトでは主人公、イリス、クロエム以外に10人のキャラが公開されていますが、彼らは全員プレイアブルキャラですか?
――公式サイトでは主人公、イリス、クロエム以外に10人のキャラが公開されていますが、彼らは全員プレイアブルキャラですか?
石井
そうです。アルクとミナスはザンクトアリウム、残りの8人はノーアトゥーンのどこかで仲間になります。
――仲間キャラのなかでお気に入りを挙げるとしたら誰でしょうか?
――仲間キャラのなかでお気に入りを挙げるとしたら誰でしょうか?
石井
私はエリザですね。
神崎
え、そうなの? てっきりミナスだと思ってた(笑)。
石井
ミナスは初めに出会うキャラクターなので一番力を入れて作りましたが、キャラとしてのお気に入りはエリザです。姉キャラが好きなので(笑)。
神崎
私はパッと見の外見で決めるなら、ダントツでフーシェかな。キャラシナリオや背景も含めるとロイスも好きだけど。
――ゲーム内のキャラ詳細を見ると、各キャラも設定が深く考えられているのがわかります。
――ゲーム内のキャラ詳細を見ると、各キャラも設定が深く考えられているのがわかります。
神崎
仲間キャラにはそれぞれサブシナリオが用意されているのですが、著名なライトノベル作家さんたちにお願いしています。たとえば、エリザのキャラクターシナリオ原案はあの『リコリス・リコイル』の原案を手掛けたアサウラ先生が書かれています。
そしてスティールやアルライア、エリザのサブシナリオはなめこ印先生、アルクやミナスのサブシナリオは稲葉義明先生に書いていただきました。
キャラごとにストーリーと背景があるので、仲間キャラはぜひそのあたりにも注目していただきたいですね。
――ゲーム中には日付の概念がありますが、これによって発生するストーリーやクエストはあるのでしょうか?
そしてスティールやアルライア、エリザのサブシナリオはなめこ印先生、アルクやミナスのサブシナリオは稲葉義明先生に書いていただきました。
キャラごとにストーリーと背景があるので、仲間キャラはぜひそのあたりにも注目していただきたいですね。
――ゲーム中には日付の概念がありますが、これによって発生するストーリーやクエストはあるのでしょうか?
石井
初期の段階では日付に紐づいたストーリーも構想していたのですが、発見できないユーザーさんが出る可能性があったのでやめました。ただ、日付によって季節が変わり、これに応じて発生するイベントやクエストはあります。
神崎
メインストーリーと日付は絡んでいないのでいつでも進められますが、季節によって出現するモンスターや納品できるアイテムなどは変化します。土地の修復を進めておくと特定の時期にお祭りが開かれることもあって、ここでしか手に入らないアイテムが納品クエストの対象になっている……なんてこともあったり。
――キャラデザインはどれもポップでファンタジー感があり、万人受けしやすいデザインだと感じました。
――キャラデザインはどれもポップでファンタジー感があり、万人受けしやすいデザインだと感じました。
神崎
そう言っていただけるとうれしいです。キャラデザにも先ほどの世界観概要書が影響していまして、農耕民族がいるアナドゥール出身者は和風や東洋っぽさ、一番近代的なクルスト出身者は西洋的なイメージがあるなど、地方ごとに衣装がかなり異なります。
キャラに関してはデザインだけでなく、ボイスが入ることで本格的に色がついたような気がします。正直、ミナスのかわいさもアルクの男前っぷりもここまでのものになると思っていなかったので、やはり声優さんの力はすごいなと思いました。
キャラに関してはデザインだけでなく、ボイスが入ることで本格的に色がついたような気がします。正直、ミナスのかわいさもアルクの男前っぷりもここまでのものになると思っていなかったので、やはり声優さんの力はすごいなと思いました。
――仲間キャラについては、バトルにおける性能も気になるところです。
神崎
敵の属性や種族によって適したパーティ編成が変わるので、どのキャラもまんべんなく活躍できます。このあたりのバランス調整は、石井がかなりがんばったかと。
石井
10人もいるプレイアブルキャラそれぞれに、明確に異なる個性を与えるのはたいへんでした。キャラの職業に合わせて攻撃の特性なども変えているので、いろいろな組み合わせを試してみてください!
(後編へ続く)
(後編へ続く)
『神箱』プレイ日記
スズタク:RPGとアクションをこよなく愛するライター。近年、シミュレーションRPGのおもしろさに気づき始める。