『ガンダム』シリーズにおける2月14日といって思い浮かぶのは、やはり『機動戦士ガンダムSEED』における“血のバレンタイン”ですよね。
個人的に『ポケットの中の戦争』の“クリスマス作戦”と並んで、日付の認知度が高い『ガンダム』シリーズの出来事だと思っています。ここでは、その“血のバレンタイン”について解説していきます。
個人的に『ポケットの中の戦争』の“クリスマス作戦”と並んで、日付の認知度が高い『ガンダム』シリーズの出来事だと思っています。ここでは、その“血のバレンタイン”について解説していきます。
索引
“血のバレンタイン”が起きた理由は? 実はその前から戦争は始まっていた【ガンダムSEED】
“血のバレンタイン”が起こったのは、C.E.70年の2月14日。プラントの農業用コロニーである“ユニウスセブン”に核ミサイルが撃ち込こまれ、住民24万3721名が亡くなった悲劇の事件でした。
主要キャラクターであるアスラン・ザラも、この“血のバレンタイン”によって母・レノアを失い、父であるパトリックがナチュラルの根絶を望む過激思想に走るきっかけになるなど、『ガンダムSEED』本編よりも前の時間軸で起こった出来事でありながら、後の『ガンダムSEED』の世界に大きな影響を与えている事件です。
ただ、この“血のバレンタイン”がきっかけで戦争が始まったと思われがちなのですが、実はそれよりも前から『ガンダムSEED』の世界におけるナチュラルとコーディネイターの対立は深刻化しきっており、既に地球連合からザフトへの宣戦布告が行われ、戦争は始まっていた状態でした。
主要キャラクターであるアスラン・ザラも、この“血のバレンタイン”によって母・レノアを失い、父であるパトリックがナチュラルの根絶を望む過激思想に走るきっかけになるなど、『ガンダムSEED』本編よりも前の時間軸で起こった出来事でありながら、後の『ガンダムSEED』の世界に大きな影響を与えている事件です。
ただ、この“血のバレンタイン”がきっかけで戦争が始まったと思われがちなのですが、実はそれよりも前から『ガンダムSEED』の世界におけるナチュラルとコーディネイターの対立は深刻化しきっており、既に地球連合からザフトへの宣戦布告が行われ、戦争は始まっていた状態でした。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/dengeki/33110/a1051b6550548cd35ae9d2be83a4dd7e1.jpg?x=1280)
開戦の直接のきっかけとなったのはそれよりも前。地球の各国(プラント理事国)の出資によって建造されたプラントにおいて、元はコーディネイターによる政治結社だったザフトが権力を掌握し始め、独自にプラントの一部を農業用コロニーへと改修を始めたことが始まり。これによりプラント理事国とプラント間の関係が悪化し、プラント理事国の威嚇行動に対し、プラントもモビルスーツ・ジンを投入して応戦するなど、少しずつ歯止めがかからなくなりはじめます。
致命的だったのは、その後のC.E.70年2月5日に起こった“コペルニクスの悲劇”。本来ここでプラント理事国とプラント間で交渉の場が設けられる予定だったのですが、この際に発生した爆弾テロによってプラント理事国側の代表に多数の死者が出てしまいます。
一方、プラント側の代表者だったシーゲル・クラインは、偶然起きたシャトル事故により難を逃れていたこともあり、プラント理事国はこれをコーディネイターによるテロと断定。宣戦布告へと繋がっていきます。
いわば、この“コペルニクスの悲劇”で起きた爆弾テロが、その後のコズミック・イラを泥沼にした最大の要因なわけですが、この事態を引き起こした犯人に黒幕がいたかについては分かっていません。
交渉に乗り出すとなると両国の中でも比較的穏健派の派閥が会議に出席してそうなことを考えると、地球とプラント間で戦争が起きることでメリットを得られる、ロゴスかブルーコスモスの過激派による犯行の線が濃厚でしょうか。
なおこの時に用意されていた核は一発きりだったので、本来地球軍側はユニウスセブンに核を撃ち込む意図はなかった可能性が高いです。おそらくは地球軍の中のブルーコスモスの派閥が密かに核を持ち込み、ナチュラルとコーディネイター間の確執を決定的なものに変えるために使用したと思われます。
『機動戦士 ガンダムSEED DESTINY』より「HG 1/144 ウィンダム&ダガーL用 拡張セット」が登場!
— プレミアムバンダイ 【公式】 (@p_bandai) April 22, 2021
別売の対応アイテムと組み合わせて、「マルチランチャー」や「ドッペルホルン連装無反動砲」装着形態を再現可能です♪#g_seed #ガンプラhttps://t.co/M8rcnfXAQY pic.twitter.com/11QHvM78FN
この“血のバレンタイン”について、地球軍側は、戦争に踏み切るためのプラントの自爆作戦説を主張しているのですが、ブルーコスモスが極秘裏に独断でやったと考えると、当時の地球軍の上層部は本当にそう考えていたのではないかという節すらあります(実際、そんな命令は出してないわけですから)。
最初はごく一部の偏った勢力の独断行動だったのが、憎しみの連鎖に歯止めが掛からず、次第に世界中が狂気に飲まれて絶滅戦争の一歩手前までいったその後のコズミック・イラの歴史を考えると、改めてゾッとしますね……。
“血のバレンタインの悲劇”の後に起きた“オペレーション・ウロボロス”【ガンダムSEED】
”バレンタインの悲劇”が起きた後、プラントはこの報復として、地球への武力侵攻と核分裂反応を抑制するニュートロンジャマーを地表内に撃ち込む、“オペレーション・ウロボロス”に踏み切っています。
コズミック・イラでは、現実以上に原子力発電に依存した世界であったため、このニュートロンジャマーによる影響は凄まじく、深刻なエネルギー不足によって多くの飢餓を生み出し、社会システムが崩壊寸前にまで追い込まれたとされています。
宇宙世紀で例えるなら、“直接人を殺さないコロニー落とし”みたいなことをニュートロンジャマーはやっていて、プラントでは核攻撃を“野蛮”と揶揄していましたが、いわばスマートに大量の人間を殺すための手段がニュートロンジャマーだったと考えると、実に闇が深いです。
しかも皮肉なのが、この後続編の『ガンダムSEED DESTINY』にて、パトリック派の残党が“血のバレンタイン”で壊滅したユニウスセブンを地球に落とそうとする、本当のコロニー落としに使われたこと。ミネルバやジュール隊は奮戦したものの、砕ききれなかったユニウスセブンの破片が地球へと降り注ぎ、地球の反コーディネイター感情を再度爆発させるきっかけにもなります。
一度ならず二度までも、戦争を起こすために利用されることになるとは、犠牲になったユニウスセブンの人たちは、本当に浮かばれなかっただろうなと思います。
コズミック・イラでは、現実以上に原子力発電に依存した世界であったため、このニュートロンジャマーによる影響は凄まじく、深刻なエネルギー不足によって多くの飢餓を生み出し、社会システムが崩壊寸前にまで追い込まれたとされています。
宇宙世紀で例えるなら、“直接人を殺さないコロニー落とし”みたいなことをニュートロンジャマーはやっていて、プラントでは核攻撃を“野蛮”と揶揄していましたが、いわばスマートに大量の人間を殺すための手段がニュートロンジャマーだったと考えると、実に闇が深いです。
しかも皮肉なのが、この後続編の『ガンダムSEED DESTINY』にて、パトリック派の残党が“血のバレンタイン”で壊滅したユニウスセブンを地球に落とそうとする、本当のコロニー落としに使われたこと。ミネルバやジュール隊は奮戦したものの、砕ききれなかったユニウスセブンの破片が地球へと降り注ぎ、地球の反コーディネイター感情を再度爆発させるきっかけにもなります。
一度ならず二度までも、戦争を起こすために利用されることになるとは、犠牲になったユニウスセブンの人たちは、本当に浮かばれなかっただろうなと思います。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/dengeki/33110/affc6970de19d0c103619dfe9dc2d7222.jpg?x=1280)
『スーパーロボット大戦W』では、“血のバレンタインが”大きなストーリーの転換点に【ガンダムSEED】
ちなみにこの“血のバレンタイン”、『ガンダムSEED』の物語本編よりも前に起こっているので、アニメの中で直接的に描かれることはないのですが、ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズなどで、現在進行系の出来事として描かれることもあります。
とくに印象的だったのが、『スーパーロボット大戦W』における扱われ方。『スパロボW』は、2部構成でストーリーが展開されているちょっと特殊なスパロボで、その第1部と2部の間に挟まる出来事として発生するのが“血のバレンタイン”です(『W』の作中では“聖バレンタインの光”とも呼ばれています。
)。
『勇者王ガオガイガー』におけるラスボスである機界新種ゾヌーダとの決戦直後、プレイヤー部隊である“ヴェルター”に地球連合の一部隊が独自の判断でプラントへの核攻撃を行おうとしているという情報がもたらされ、“ヴェルター”は核攻撃を阻止するべくユニウスセブンへ。
しかしゾヌーダの戦闘によって、“ヴェルター”にはまともに出撃できるロボットがほぼ残っていない状態で、『宇宙の騎士テッカマンブレード』のラダム、『デトネイター・オーガン』のイバリューダー、さらに『スパロボW』のオリジナルの勢力であるザ・データベースといった多数の敵勢力と遭遇し、主人公であるカズマ・アーディガン、部隊の旗艦だったヴァルストーク艦長のブレス・アーディガンら多数の主要メンバーが行方不明となるなど、壊滅的な被害を受けてしまいます。
結果、連合を止められる戦力がなくなったことで原作のコズミック・イラと同様に“血のバレンタイン”が発生し、本格的に『ガンダムSEED』及び『ガンダムSEED ASTRAY』の物語がスタートする、第2部へと繋がっていく……という、ストーリーの大きな転換点として使われています。
とくに印象的だったのが、『スーパーロボット大戦W』における扱われ方。『スパロボW』は、2部構成でストーリーが展開されているちょっと特殊なスパロボで、その第1部と2部の間に挟まる出来事として発生するのが“血のバレンタイン”です(『W』の作中では“聖バレンタインの光”とも呼ばれています。
)。
『勇者王ガオガイガー』におけるラスボスである機界新種ゾヌーダとの決戦直後、プレイヤー部隊である“ヴェルター”に地球連合の一部隊が独自の判断でプラントへの核攻撃を行おうとしているという情報がもたらされ、“ヴェルター”は核攻撃を阻止するべくユニウスセブンへ。
しかしゾヌーダの戦闘によって、“ヴェルター”にはまともに出撃できるロボットがほぼ残っていない状態で、『宇宙の騎士テッカマンブレード』のラダム、『デトネイター・オーガン』のイバリューダー、さらに『スパロボW』のオリジナルの勢力であるザ・データベースといった多数の敵勢力と遭遇し、主人公であるカズマ・アーディガン、部隊の旗艦だったヴァルストーク艦長のブレス・アーディガンら多数の主要メンバーが行方不明となるなど、壊滅的な被害を受けてしまいます。
結果、連合を止められる戦力がなくなったことで原作のコズミック・イラと同様に“血のバレンタイン”が発生し、本格的に『ガンダムSEED』及び『ガンダムSEED ASTRAY』の物語がスタートする、第2部へと繋がっていく……という、ストーリーの大きな転換点として使われています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/dengeki/33110/aa9adc1e0d7d331036ce89884f173aadb.jpg?x=1280)
死ぬキャラが生き残ったり、いろんな原作にない救いの展開がある『スパロボ』シリーズですが、さすがに“血のバレンタイン”を防ぐことまではできませんでした(これが起きないと、『ガンダムSEED』の物語が始まらないので仕方ないですが)。
『ガンダムSEED』を語る上で欠かせない出来事である“血のバレンタイン”。本編中に直接描かれるわけではないため、結構その前後で、ナチュラルとコーディネイター間の亀裂が徹底的になるいろんな出来事が起こっていることまでは知らなかったという方もおられたのではないでしょうか。
『ガンダム』シリーズの中でもコズミック・イラはめちゃくちゃ世界観も作り込まれていて、設定を深堀りするのが楽しい世界でもあります。調べてみると、今でも知らなかった新しい発見があったり、やっぱり『ガンダムSEED』って凄かったんだな、と改めて思わせてくれました。
米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。